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ストレス及び自殺念慮の 有無に関連を認めた要因 が特定できた

GK教育による認知的SC の変化と自殺予防関連 活動について評価できた

自殺対策を含めた心の健 康づくり事業を推進する上 で必要な視点について行政 へ提示・提言できた

地域社会でのGK教育カリ

キュラムの作成例が提供で

きた

125 第7章 総括

第1節 今後の課題と展望

本研究では、地域住民の心の健康状態に関する実態調査及び自殺関連要因

の把握(第 2 章)、実態調査によって特定された中年女性の心の健康支援に 向けての探索的検討(第 3 章)、自殺予防における GK 教育の効果について

SC 指標による検証(第 4 章)、GK 教育後の参加者の意識や態度、行動にお ける変化の把握(第 5 章)の 4 つの研究課題を設定し、地域社会での自殺対 策推進に向けて SCの側面から GK教育効果を明らかにすることは地域社会の ネットワークや自殺予防活動の活性化に貢献するという仮説の検証を行った。

また、各研究課題から得られた知見を地域社会における自殺対策支援事業の推

進に活用すべき点と自殺予防における GK教育の有効性について言及した。本 節では、各研究課題で示した研究の限界を整理・統合することで今後の環境共 生社会における自殺対策支援事業の推進に寄与するための課題と展望を提示す る。

1.自殺対策支援事業を推進する上での課題

本研究では、市が直面している自殺問題や住民の心の健康状態の改善のた

めに 2010年、2015年、2016年の3 回にわたって、地域住民の心の健康状態 に関する実態調査及び自殺関連要因を把握し(2 章)、その後、調査結果によ

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って優先的支援対象として特定された中年女性を対象に心の健康支援に向けて

の探索的検討(第 3 章)を行った。その結果、市民の心理的ストレス状態や 睡眠での休養充足度、また、自殺の相談、不眠相談、精神的健康度、配偶者同 居が自殺念慮の有無に有意な関連を認めた要因であることがわかった。また、

SC の構造的側面(地域活動参加、近所づきあいの程度・人数)を持つ部分に おいても自殺念慮の有無に関連ある要因であることが明らかになった。特に、

複数回の実態調査により女性が男性に比べて心の健康への不安感が高く、最近

1 か月間の生活の中でストレスを多く抱えていること、ストレスへの処理がで きていないことがわかった。また、中年女性のストレス要因と対処法、ソーシ ャル・サポートに関するグループインタビュー調査により、ストレス要因には

「個人内要因・対人的要因・共通要因」の 3 要因があること、対処法には

「自発的支援と他社からの支援」が存在していること、ソーシャル・サポート については「相談関連要望と地域活動関連要望」があることが明示された。こ

れらの結果を踏まえ、2011 年には東御市内の中年女性を対象に身近な家族、

同僚、友人との間でイライラする理由や性差によって生じるトラブルを理解し、

ストレスを抱えた際のセルフケアを狙いとした健康教育を地域で実施した(5 小学校区を対象に 1 回ずつ開催)77。この講座には、各地区から全 84 名の 女性が参加し、その内 75名(平均年齢55.1歳±SD 13.0)から2段階で構成 された質問紙(問:この講座は、あなたが心の健康を考える上で新たな気づき

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がありましたか?の質問に対して「ある、ない」)により評価することができ

た(回収率 89.3%)。75 人中、82.7%に及ぶ 63 名が「この講座により心の 健康を考える上で新たな気づきがあった」と答え(p<0.001、χ2 検定)、地 域で実施したセルフケア講座が参加者の気づきを促すに有効であることがわか った 77。しかし、2015 年に行った実態調査によって提案された自殺対策支 援事業を推進する上で必要な視点については、まだ行政との実現可能性を検討 中であり、持続的な提案が必要と考えられる。中でも、重要な視点として示さ れた提案の中で、「自死遺族に対する心のケアの充実(自死遺族のための家族 会、相談支援)」については、市の精神保健分野における健康政策として検討

したことがないことから今後の課題とも考えられる。以上の 2 つの調査によ り、市の自殺対策支援事業を推進する上で次の3つの視点が提案できる。

① 相談窓口(とくに不眠の相談)の充実と住民への周知

② 自殺リスクがある人への気づき・声がけ・つなぐ支援ができる GK 育成

(GK教育の充実と継続)

③ 地域社会の SC 活性化において大きな役割を果たす中年女性への持続的な 支援(地域社会のネットワークの活性化に貢献する潜在的人材であり、東 御市で実施する GK教育参加者の中で 8割が中年女性)

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2.自殺予防における GK 教育の効果検証と GK 教育の活性化を考える上での

課題

本研究において、自殺予防における GK教育の効果を推論する上で重視すべ き研究課題は、第 4 章の SC 指標(SC の認知的側面)による自殺予防のため の GK教育効果の検証である。また、自殺予防における地域社会で GK教育の 活性化を考える上で重視すべき研究課題は、第 5章のGK教育後の参加者の意 識や態度、行動における変化の把握である。

第 4 章では、自殺予防分野において様々な健康指標との密接な関係性を示

す SC概念20-23)を用いた研究が未だに少なく、また、GK教育効果について検

証を試みた研究はないことから、本研究の結果は自殺予防における GK教育効 果と認知的 SCとの関連性を説明する上で貢献する知見として評価できる。し かし、認知的 SCの変化が参加者の自殺予防関連活動の活性化に与える影響に ついては第 4 章の研究だけでは検証できないため、第 5 章では、GK教育によ る認知的 SCの変化が参加者の自殺予防関連活動の活性化に与えた影響を質的 研究の視点から検証を行った。GK 教育受講後の参加者に現れた意識や態度、

そして行動変化を調べた結果、意識変化には「自己の生き方・心の健康問題・

つながりの大切さ」の 3 つの要因、態度変化には「接し方の変化・相談態度 の変化」2 つの要因、行動変化については「つなぐ支援・相談支援・自己支援」

の3つの要因が存在していることがわかった。

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本研究によって得られた知見は、自殺予防の一対策として実施されている

GK 教育の効果を多面的視点から捉え、また、GK 教育と自殺予防との関連性 を検討した先行事例をより深めて理解する上で貢献するものと考えられる。

GK 教育が自殺率や自殺行為の減少に与える効果 8,9)や参加者の意識改善 10,11) に与える影響などが言及されている中でのミックスプロトコルによる本研究成

果は、自殺予防に貢献できる GK教育のメカニズムの把握に一助となる報告と して評価できる。さらに、本研究では、GK 教育が認知的 SC の醸成に役立つ ことが検証できたことから、地域社会における GK教育の活性化は地域社会の ネットワークや自殺予防活動の活性化に寄与し得るものと考えられる。

GK 教育効果に関する今後の研究課題として、GK 教育参加者が受講後、実 際にどのような内容の自殺予防関連活動(相談、キャンペーン参加、情報発信

など)に参加し、どのぐらいの頻度で関わっているのかなど、GK 教育介入後 の成果(介入効果検証のための研究)について調べることが必要と考えられる。

3.本研究の限界と今後の展望

自殺問題や住民の心の健康状態の改善のために実施した実態調査(第 2 章)

においては、主要な研究限界として標本サイズと回収率が考えられる。市内の

20 歳以上の全住民を対象に、性・年齢階級別に分類して調査を実施したため に回収率が低く、解析を行うための標本サイズが少なくなったことで結果に影

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響を与えた可能性がある。今後、調査結果によって得られた知見を一般化する ためには標本サイズを大きくして観察することが求められる。

また、インタビュー手法を通して中年女性の日常に潜んでいるストレス要

因などを探索的に検討した研究(第 3 章)では、質的研究手法の限界点とも 言えるが、調査サンプルから得られた結果を母集団に一般化できる量的研究と は違って、合目的化のサンプリングを通して研究の焦点を人々の経験やその意 味を深く理解する部分に当てた研究結果であるため、全地域に一般化する部分 においては限界があり、解釈の注意が必要な点であることが考えられる。

最後に、GK教育が参加者の認知的 SCに与える影響(第 4 章)と GK教育 受講後の参加者に現れた意識、態度、行動変化を調べた研究(第 5 章)にお いては、各研究課題から得られた知見の一般化のためには更なる研究が必要で あり、これには、先例研究の少なさ、調査サンプリングバイアス(グループイ ンタビューに参加した人の意識の高さ)、思い出し(回想)バイアスの存在可

能性が主要な研究限界として考えられる。同時に、第 5 章の研究結果につい ては、第3章の研究の限界点として述べた質的研究の限界も含まれている。

以上の課題を踏まえ、今後の質高い研究の実施と成果の集積のためには、

性・年齢を考慮した十分な標本数の確保やインタビュー調査のサンプリングバ

イアスの検討(インタビュー対象者の代表性検討)、量的調査と質的調査の両 側面からのGK教育の在り方の明確化についての持続的な実施が望まれる。

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