• 検索結果がありません。

研究の展望と限界

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 84-87)

報酬制度に関して

本研究では、報酬に関して金銭的報酬を扱ったが、これ以外にも、ポイントや感謝の 言葉など、金銭的報酬以外の報酬もあげられる。特に、これらの報酬は、現実には、報 酬を支払うユーザのコストと報酬を受け取るユーザの利得は必ずしも一致しない場合 も考えられる。例えば、ポイントや感謝の言葉などの報酬に関して、報酬を支払うユー ザのコストに比べ、報酬を受け取るユーザにとってはその利得を高く見積もるといった 場合もあげられる。本研究で提案したモデルの場合では、質問者と回答者のあいだでや り取りされる報酬の大きさは共通としていたが、異なる係数値を取り入れることで拡張 可能であるといえる。

外発的モチベーション以外のモチベーションに関して

本研究では、外発的モチベーションである報酬に焦点をあてたモチベーション支援制 度を扱ったが、外発的モチベーションのみの支援では、ユーザの主体的な行動のための 内発的モチベーションを下げるアンダーマイニング効果といった問題を起こす可能性 も考えられる。このような問題は、長期的な観点でのサイトの活性化を考える上で大き な問題となる。ただし、アンダーマイニング効果の逆に、はじめは外発的なモチベーシ ョンによって行動していても行動に楽しみを覚えることで次第に内発的モチベーショ ンにもとづく行動に代わるエンハンシング効果といったものも期待できる。このため、

より現実的なモチベーション支援の方針としては、例えば、情報共有サイトのモチベー ション支援策としては、サイトに参加するユーザが尐なく、ネットワーク外部性が働き にくい環境においては、報酬などの外発的モチベーションによって外部からのユーザの 参加をうながし、多数のユーザが参加するようになったときには、外的報酬といった外 発的モチベーションではなく、内発的モチベーションを支援するといったアプローチが 有効であると考えられる。

このような観点に対し、本研究でのユーザのモデル化においては、ユーザのモチベー ションの変化や、ネットワーク外部性の効果に関しては、今回の課題の対象外でありモ デル化は行っていない。そのため、長期的な観点で情報共有サイトの活性化を考える上

では、これらのユーザ行動特性の変化によるサイトの発展の変化は重要な課題になって くる。今後、このような課題の設定や、そのためのモデル化に関しても検討していく必 要があると考えらえる。

有用な推薦に関して

本研究では、すべてのユーザに対してのNovelty推薦を行ったが、その方法に関して は、ユーザのサイトへの利用状況に適した方法についても検討する必要がある。

本研究では、どの程度のNoveltyの向上がユーザにとってより満足な推薦であるかと いった調査は行っていない。ユーザにおけるNovelty推薦への期待は、個々のユーザの 利用状況によって異なると考えられる。例えば、サイトを継続的に利用するユーザにと っては、推薦への飽きの可能性の観点から、よりNoveltyの高い推薦が必要となると考 えられる。逆に、サイトを一時的に利用するようなユーザに対しは、Novelty の高い推 薦よりも、そのときの情報取得目的に適した予測精度の高い推薦が必要となると考えら れる。このため、今後個々のユーザの推薦システムに対するNoveltyへの期待の把握や、

そのときのNovelty向上の度合いなど、これを実現する推薦手法に関しても検討する必 要があると考える。

情報蓄積と情報加工の連携に関して

本研究では、情報提供のモチベーション支援と、有用な情報推薦に関し、それぞれ個々 の課題として扱っていたが、情報共有サイトにおいては、どちらの支援も重要な課題で あり、これらはサイトに応じて適切な支援が必要になると考えられる。例えば、本研究

ではQ&Aサイトにおいては、情報提供のためのモチベーション支援を扱ったが、サイ

トに参加する参加者が膨大になると質問者も増加し、それにより回答者が回答できる質 問が埋もれてしまうといった問題もでてくることが考えられる。このような場合におい ては、回答者に対する情報提供を促すための支援(質問への接触機会の支援)も課題に なると考えられるが、これに対して、本研究でのNovelty推薦は、回答者の持つ多様な 知識の提供を促し、結果的に質問者に対する多様な回答を集めるうえで有効な方策の一 つとして活用できると考えられる。

また、推薦を利用するサイトにおいても、サイトの運用初期における参加者数の不足 や、参加者の特性の偏りによっては、他者情報にもとづく推薦に用いるコンテンツに対 する評価情報などが集まらず、効果的な推薦が行えないといった問題も考えられる。こ

のような問題に対し、報酬といったインセンティブによって、評価情報などの推薦に用 いる情報の蓄積を促すことで、効果的な推薦を実現するためにも有効な方法のひとつと して活用できると考えられる。ただし、これを検討するうえでも、モチベーション支援 や推薦などがユーザにもたらす効果の理解と、そのためのユーザのモデルの構築、また その長期的な効果を分析するためのエージェントベースシミュレーションといったア プローチでの研究も必要になってくると考えられる。

6. 結論と今後の課題

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 84-87)