71
第 7 章
考察
7.1 着火したアルミニウム粒子の燃焼表面近傍の反応層内の
第7章 考察 72 る[3, 12].
To
Ts
Tf
Regressing Burning surface
Solid zone Reaction zone Luminous flame zone
Propellant Gas flow
(a)
(b) (c)
図7.1 燃焼表面近傍の温度分布(1)
燃焼表面近傍の反応層内の温度分布の影響を解析するために,燃焼表面近傍の熱平衡か ら燃焼速度の式を導出する[3, 12].
固相でのエネルギー式は次のように表せる.ここで,T は温度,xは燃焼表面からの距 離である.
λp(d2T/dx2)sp−ρprcp(dT/dx)=0 (7.1) 固相での境界条件は次のようになる.
T =To at x=−∞
T =Ts at x=0
定常で燃焼しているときにrは定数であり,λp,ρp,cp も定数とできるので,燃焼表面 より固相内への熱移動量は次ようになる.
λp(dT/dx)sp =ρprcp(Ts−To) (7.2) 図7.1で燃焼表面近傍での熱量は次のようになる.
(a) 燃焼表面から固相への熱移動量 ρprcp(Ts−To) (b) 気相から燃焼表面への熱移動量 λg(dT/dx)sg
(c) 燃焼表面での発生熱量 ρprQs
(a),(b),(c)から燃焼表面近傍における熱平衡は次のように表せる.
第7章 考察 73
ρprcp(Ts−To)= λg(dT/dx)sg+ρprQs (7.3) 式7.3より燃焼速度rは次のようになる.
r= λg(dT/dx)sg
ρpcp(Ts−To −Qs/cp) (7.4) 式7.4から燃焼速度は燃焼表面近傍での熱平衡により決定されることが解る.
アルミニウム粒子を添加したAP系コンポジット推進薬では,(dT/dx)sg と比較してλg, ρp,cp の変化は非常に小さく,ほぼ定数とすることができ,初期条件が一定であるときTo も定数となる[3, 12].DSCと温度分布の結果よりTs,Qs もほぼ定数とすることができ,
燃焼速度rは燃焼表面上の気相側の温度勾配(dT/dx)sg によって変化することが解る.図 7.2の破線のように,燃焼表面近傍の反応層内の温度が上昇し,燃焼表面上の温度勾配が 増加することにより,燃焼表面への熱の流入量が増加し,さらに,輝炎層の温度も上昇す ることによって燃焼速度が増加する.
To
Ts
Tf
Regressing Burning surface
Solid zone Reaction zone Luminous flame zone
Propellant Gas flow
Burning rate is increased.
図7.2 燃焼表面近傍の温度分布(2)
燃焼表面近傍の反応層内で着火したアルミニウム粒子は反応層内での滞留時間は非常に 短いが,燃焼ガスを介して主に熱伝導によって瞬時にアルミニウム粒子の周辺の反応層内 の燃焼ガスの温度を上昇させ,燃焼表面近傍の温度勾配を増加させる.さらに,アルミニ ウム粒子は輝炎層まで燃焼し続け,輝炎層の温度も上昇させる.
アルミニウム粒子を添加したAP系コンポジット推進薬では,アルミニウム粒子が燃焼 表面近傍の反応層内で着火することにより,反応層内の温度が上昇し温度勾配も増加し,
第7章 考察 74 燃焼速度が増加する.また,燃焼表面の直近で着火するアルミニウム粒子が多く出現する ほど反応層内の温度勾配は増加し燃焼速度は増加すると考えられる.
このように,燃焼表面近傍の反応層内でアルミニウム粒子が着火すると,それは燃焼速 度が変化する要因の一つとなる.
第7章 考察 75