• 検索結果がありません。

看護職者の職業生活の軌跡―看護職者の多様なキャリア

ドキュメント内 多様化する看護職世界と看護教育の未来 (ページ 55-88)

第二章では現在の多様化する看護職世界、第三章では多様化する看護職世界に対応でき ないことによる恒常的な看護職者不足について概括的に述べた。では、現在の看護職世界、

特にその専門職性は、どのように歴史的に形成されてきたのか、本章では、質問紙調査や 聞き取り調査によって得られた看護職者のライフストーリーから、看護職者自身が仕事の 内容や条件をどのように統制し、対応してきたのか、その実態を探る。看護職者たちには 職業を継続することを通して、キャリアを形成し、多様化していくというキャリア形成の 側面と、専門職性を自主的に高めていくという専門職化への動的プロセスの側面があり、

それらは看護職の専門職性を確立していく上での「知的財産」になるのではないか、とい うことについて検証する。なお、本章は筆者自身の先行研究(関口,2005,2006)を踏まえ、

本論文の趣旨に合わせて書き改めたものである。

第 1 節 看護職者の職業生活に関する調査方法

看護職者の職業生活の実態と意識については、厚生労働省や日本看護協会をはじめ様々 な調査が行われている。しかし、看護学校卒業後の生活の軌跡からみた横断的な看護職者 の調査はない。看護学は従来、規範的、政策的色彩が強く、看護職者の具体的な生活実態 に即した学問的形成がなされたとはいえない。

そこで、40 数年前にある看護学校を卒業したジェネラリスト・ナース(マジョリティ:

多数の一般の看護職者)である団塊世代の看護職者に、それぞれの人生、生活において“看 護師”という資格をどのように意識し、どのような形と意味を与えてきたのか、質問紙調 査と面接調査により探る。

団塊世代は、日本社会の高度成長期とともに生きてきた世代でもあり、歴史的体験の共 有という「世代」体験が、「年代」体験を越えた普遍性をもつ(天野,2001:9)。団塊世 代の引退により、さらに潜在看護職者(免許を保持しているが就業していない満 65 歳未満 の看護職員)と看護職者不足の増大が予測される。健康戦略の転換の時代といえる現在、

団塊世代の看護職者の職業生活の軌跡を調査することは、多様な看護職者のあり方や専門 職化への動的プロセスを検討する絶好の資料となると考える。

1.質問紙調査

≪調査時期、調査対象者≫

2008 年 10 月 20 日に質問紙を送付した。対象者は、昭和 41 年 4 月に九州にあるA国立病 院附属高等看護学院(筆者の母校)に入学し、看護婦(当時の名称、以下同様)国家試験 に全員合格し、看護婦資格を取得した 45 名で、調査時の年齢は 61~62 歳である。卒業後 の進路は看護婦として就職 34 名(看護学校所在地県内 22 名、東京 9 名、京都 3 名)、進

54

学 9 名(助産婦学校 3 名、保健婦学校 2 名、養護教諭課程 4 名)、未就職 2 名である。41 名が既婚者(夫と死別した 2 名を含む)、4 名は未婚者であり、全員女性である。

なお、昭和 41 年度厚生白書によると、当時の看護婦養成施設の数は 211 校であり、その 内訳は大学が 4 校、短大(3 年制)が 7 校で、高校卒業後の 3 年制の高等看護学校がほとんど で、A国立病院附属高等看護学院も一般的な看護師養成施設の一つである。

≪調査票、調査方法、集計方法≫

質問紙調査票(資料 4-1)は、生活や職務経験に関する 14 質問(選択回答)と看護職者 としての経験による看護に対する考えを聞く 9 質問(選択回答と自由記載)からなる。質 問紙についてはプレテストを施行するとともに、看護研究者の助言を受け、正確性、妥当 性を確保した。連絡可能な 37 名に調査票を送付(2008 年 10 月 20 日)した。

集計は単純集計とした。記述データは意味の類似性よりカテゴリー化した。アンケート 調査への参加協力は自由意志であること、プライバシー保護の遵守、発表することを説明 し、同意を得た。

2.聞き取り調査

≪調査対象者、調査期間≫

対象者は、昭和 44 年 3 月に筆者と同じ A 国立病院附属高等看護学院を卒業した 45 名の うち、連絡可能で承諾を得た 18 名(12 名の質問紙調査回答者を含む)であり、調査期間は 2008 年 10 月~2009 年 2 月である。

≪面接方法≫

インタビュー内容は、卒業後の生活、職務経験について話す内容を十分に聞きとるよう に心がけた。特に離職や再就職の理由については具体的に聞いた。時間は1人当たり 1~2 時間程度とした。インタビュー内容は文章化し、本人の確認を得た。参加協力は自由意志 であること、プライバシーの保護を遵守すること、発表することを説明し、同意を得た。

第2節 結果

1.質問紙による調査結果

対象者 45 名のうち、連絡可能な 37 名に調査票を送付し、29 名から回答を得た(回収率 78%)。結果は(表 4-1)である。

健康状態は「やや不良」が 2 名で、他は健康であり、現在も勤務している者は 12 名、勤 務していない者 17 名である。

看護職としての就業状況は、「一度も離職せずに 30 年以上勤務した」は 12 名(継続型 とする)、「離職を経験しながらも常勤、非常勤で看護職として勤務した」は 13 名(中断

55

再就職型とする)、「卒業直後に 3~5 年間勤務し離職、離職後は 1 度も看護職として勤務 していない」は 4 名(短期就職―離職型とする)であった。

婚姻状況、同居者や要介護者の有無、他県への居住移動の生活背景は、現在、配偶者な しが 5 名(独身 2 名、死別 3 名)、有配偶者 24 名で、独身者2名は現在も就業しており、

居住移動や要介護者の有無は「継続型」「中断再就職型」「短期就職―離職型」とも変わ りなかった。離職経験の有無については、「なし」が 6 名、「あり」が 23 名で、離職回数 1~4 回が 18 名、5~9回は 5 名だった。

看護職としての就業期間(通算)は最高 40 年、最低 4 年、平均 24 年であり、卒業直後 に看護婦としての勤務 23 名、進学後に助産婦としての勤務 2 名、養護教員として勤務 4 名 で、卒業直後の就業期間は 4~38 年であった。

就業内容、就業形態では、「継続型」では透析、小児、助産などの領域であり、常勤だ った。「中断再就職型」は訪問看護、ケアマネジャー、外来看護、高齢者看護など多様な 領域にわたり、非常勤と常勤の両方であった。「短期就職―離職型」は養護教諭など学校 保健領域の経験であり、離職理由は、家族介護 11 件、結婚 9 件、出産 6 件、子育て 6 件で あり、その他対人関係、疲労困憊、配偶者の転勤、ケアマネジャーや養護教諭への転職な どであった(図 4-1、複数回答)。

看護学校への入学動機は、女性の自立が 16 名、やりがい・社会的貢献などが 10 名、経 済的問題 9 名などであり、「継続型」、「中断再就職型」、「短期就職―離職型」による 大きな相違はない(図 4-2)。

自由記載内容は 157 件で、喜びは「患者の回復」、「患者・家族からの信頼と感謝」、

「仕事の評価」、「後輩の成長」、「自己成長」など 32 件、つらさは「患者の死や状態の 悪化」、「患者・家族への対応不十分」、「自分の子供の不十分な養育」、「生活リズム の乱れ」、「職場の人間関係」など 32 件、大切にしてきたことは「誠実さや体調管理」、

「患者とのコミュニケーション」など 29 件であった。記述内容は、職務経験や生活背景の 多少による相違はなかった(図 4-3)。

56

表4-1 生活背景と就業・離職状況(数字は人数)

勤務型 背景

継続

(12 名)

中断再就職

(13 名)

短期就職―離職

(4 名)

健康状態 健康 11、やや不良1 健康 12、やや不良1 健康 4 婚姻状況 未婚 2、既婚 10(死別 1、

離婚・再婚 1)

既婚 13(死別 1) 既婚 4(死別 1)

同居者 独居 1、配偶者 6、配偶者と 子供 6、親 2

配偶者 7、配偶者と子供 3、親 3

配偶者 2、配偶者と子供 1、親 1

要介護者 2 2 1

居住移動(他県) 9 10 3

現在の就業 5 7 0

卒業直後の就業

(就業期間)

病院看護婦 10、病院助産婦 1、養護教諭 1

(4~38 年)

病院看護婦 12、病院助産 婦 1

(4~7 年)

病院看護婦 1、養護教諭 3

(4~5 年)

卒業直後の就業継 続期間

32~40 年 15~26 年 4~5 年

継続平均 24 年

復帰までの期間 - 3~16 年 - 就業の看護内容 透析、小児、助産、看護管

理、学校保健

訪問看護、ケアマネジャ ー、高齢者看護、外来看 護、精神看護、看護基礎 教育、継続教育

成人(内科、外科)看護、

学校保健

離職回数 0 回;6、1 回;6 1~4 回;8、5~9 回;5 1 回;4

就業形態 常勤 非常勤、常勤 常勤

57

資料4-1 質問票

Ⅰ.あなたご自身の生活や職務経験についてお聞きします。

【問 1】現在の健康状態についてお聞かせ下さい。

1.とても良好 2.よい 3.普通 4.やや不良 5.不良

【問 2】現在のお住まいの地域についてお聞かせ下さい。

1.政令指定都市・東京 23 区 2.県庁所在地 3.その他の市 4.町村

【問 3】看護学校卒業後お住まいの移転について伺います。

1.全くない 2.1 回 3.2~3 回 4.4~5 回 5.6回以上

【問 4】住居の移転理由を伺います。

1.自分の勤務の変化 2.配偶者の転勤 3.家族の都合 4.その他

【問 5】以下のうちお持ちの資格に○をつけて下さい。

1.看護師 2.保健師 3.助産師 4.養護教諭 5.ケアマネジャー 6.その他特定の領域の専門・認定資格(具体的に )

【問 6】現在、勤務されていますか(常勤、非常勤は問わない)

1.看護職として勤務 2.看護職以外で勤務( ) 3.勤務していない

【問 7】看護職の離職経験はありますか。 1.あり 2.なし

【問 8】看護職の離職経験がある場合、離職回数を記入下さい。( )回

【問 9】離職の理由を伺います。(複数回答可)

1.結婚 2.出産 3.子育て 4.自分の健康問題 5.家族の健康問題(介護) 6.疲労困憊(バーンアウト)

7.看護に対する意欲低下 8.職場の対人関係 9.その他( )

【問 10】看護職としての勤務経験年数は合計何年ですか、(6ヵ月以上は切り上げ)

( )年

【問 11】看護職者として勤務経験の長いのはどの領域ですか。(複数回答可)

1.成人慢性 2.成人急性 3.小児 4.母性 5.精神 6.リハビリ 7.がん、ホスピス 8.訪問看護 9.救急

10.透析 11.感染 12.外来 13.教育 14.管理 15.その他( )

【問 12】最終の勤務場所について、あてはまるものをお選び下さい。

1.500 床以上の病院 2.100~500 床未満の病院 3.100 床未満の病院 4.診療所 5.保健所 6.基礎看護教育機関 7.介護老人保健施設 8.訪問看護ステーション 9.社会福祉施設 10.その他( )

【問 13】ご家族について伺います。現在同居している方に○をつけて下さい。

1.同居者なし 2.配偶者 3.子供 4.親(配偶者の親、含む)

5.兄弟姉妹 6.その他

ドキュメント内 多様化する看護職世界と看護教育の未来 (ページ 55-88)

関連したドキュメント