相手方は、答弁書2・57 頁において、平成 25 年 11 月8日に発生 した台風 30 号によるフィリピンの台風被害に対する救援作戦(ダマ ヤン作戦)においてMV‐22 オスプレイが普天間飛行場からフィリピ ン に 飛 行 し た こ と 及 びイ ラ ク にお け る C H ‐46E の 活 動 を 挙 げ て い るが、これらの例は、いずれも、沖縄の地理的優位性を基礎づけるも のではない。
(1) 平成 25 年台風 30 号によるフィリピンの台風被害への救援活動
(ダマヤン作戦)について
平成 25 年 11月8日の被災後、翌9日に青森県・三沢基地に配備 されたP‐3哨戒機がフィリピンの被災地に赴き、捜索飛行を開始 した。そして、10 日にKC‐1302機が普天間飛行場から被災地に 赴いた。MV‐22 オスプレイが被災地に向かったのは 11 日のこと である。日本本土にオスプレイが配備されていたとしても、岩国基 地からでも2時間で沖縄に飛行できるのであるから、オスプレイが 日本本土に配備されていても、なんら対応に支障は生じなかったも のである。また、ダマヤン作戦には、東京都・横田基地に配備され てC‐130 も参加し、米軍機による航空援助活動は、MV‐22 オス プレイよりC‐130 の方が回数、飛行時間は多い。三沢基地配備の P ‐ 3、普 天 間 飛 行 場配備 のK C‐130、横 田基 地配備 のC ‐130 がダマヤン作戦には参加しているものであり、日本本土の中で、沖 縄に輸送航空機部隊がなければならないという必然性がないことを 示したものとも言えるものである。
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また、11 月 12 日に長崎県・佐世保基地の揚陸艦アシュランドと 揚陸艦ジャーマンタウンの増派が決定され、11 月 14 日に佐世保基 地を出港した2隻の揚陸艦は11 月 15日にホワイト・ビーチに到着 し、ホワイト・ビーチで約 2000 名の海兵隊員や車両、物資等を搭 載した後、11 月 18日にホワイト・ビーチを出港して被災地に向か い、同月 20 日に被災地に到着して活動を開始したものであり、水 陸両用戦隊(PHIBRON)乗艦中の MAGTAF(MEU)、すなわち、
水陸両用即応群(ARG)として、活動をしたものである。なお、米 軍の艦船で、最初に被災地に到着したのは、神奈川県・横須賀基地 に配備されていた空母ジョージ・ワシントンであり、定期パトロー ル航海で寄港中の香港から被災地に向かって11月 14日に到着して 活動を開始し、2隻の揚陸艦が到着するまで救援活動を行っている。
ダマヤン作戦をもって、沖縄の地理的優位性の根拠とすることも、
また、海兵隊の活動が揚陸艦と関係がないとすることの根拠とする こともできないものである。
(2) イラクへの輸送ヘリ部隊の派遣について
イ ラ ク に 普 天 間 飛 行 場 に 配 備 さ れ た 輸 送 ヘ リ 部 隊 が 長 期 に わ た って派遣されたことは事実であるが(平成 19年についてみると、1 月 26日から8月 14 日まで、第 262 海兵中ヘリ中隊がイラクに派遣 されている。)、これも、沖縄に送航空機部隊がなければならないと いう必然性がないことを示したものである。すなわち、7か月もの 間、イラクに派遣をされても、我が国の安全保障になんらの問題は 生じていないのであり、沖縄駐留の必然性がないことを示したもの である。また、イラクに派遣される部隊が、沖縄に配備される必然 性も認めえない。
相手方が主張するイラク派遣の事実は、沖縄に海兵隊輸送航空機
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部隊が配備される必然性がないことをこそ示したものというべきで ある。
第3 「抑止力」及び「矛」という主張について 1 「抑止力」という主張について
(1) 相手方の主張
相手方は 、「抑止力 とは、侵略 を行えば耐え難い損害を被ること を明白に認識させることにより、侵略を思いとどまらせるという機 能を果たすもの」(答弁書2・89 頁)と抑止力概念を定義している そして、「我が国を取り巻く国際情勢」(87 頁)、「日米同盟の抑止 力」(91 頁)を主張し、「在沖海兵隊は、在日米軍のなかで唯一、地 上戦闘部隊を有しており、様々な危機に対処するための任務・作成 を遂行する能力を有していることから、日米同盟の抑止力の不可欠 な一部を構成する要素である…我が国の戦略的要衝として地理的優 位性を有する沖縄県に駐留することは、我が国の安全保障のための 抑止力として機能している」(92 頁)と主張している。
(2) 抑止 力維持 の た め に海 兵 隊の配 置場 所が沖 縄で なけ れば ならな いとする相手方主張の非論理性
ア 審査申出人の主張は、安保条約を否定するものでなければ、海 兵隊を否定しているものでもない。
海兵隊が沖縄に駐留しなければならない必然性はなく、安全保 障 が 日 本 国 全 体 の 問 題 で あ る の に 沖 縄 に の み 米 軍 基 地 の 負 担 を 押 し 付 け て さ ら に 将 来 に わ た っ て 固 定 化 す る こ と は 正 当 化 さ れ ないといっているものである。これは、安保条約の否定でも海兵 隊の否定でもない。
空軍であれば、飛行場所在地から戦闘機等が直接飛び立ち任務 地に向かうことになるが、海兵隊はそうではない。海兵隊が、「侵
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略を行えば耐え難 い損害」を与える任 務を行うならば、それは、
揚陸艦に搭載されて行うことになる。しかし、揚陸艦の母港は沖 縄には存在しない 。したがって 、揚陸艦が回航されるのを待ち、
揚陸艦に搭乗し、それから初めて任務地に赴くことになるのであ る。
朝鮮半島を考えるならば、揚陸艦が母港に停泊しているときに 急派されるとするならば、長崎県・佐世保から一旦朝鮮半島とは 反対側の沖縄に揚陸艦が向かい、沖縄で第 31MEUを揚陸艦に搭 載した後、朝鮮半島に向かうことになる。日本本土よりも沖縄に 近い台湾海峡を考えても、揚陸艦が母港に停泊しているときに急 派されるとするならば、長崎県・佐世保から沖縄に揚陸艦が向か い、沖縄の海兵隊はその到着を待ち、沖縄で第 31MEU が揚陸艦 に搭乗した後、は じ めて台湾海峡に向かうことになるのであり、
日本本土に海兵隊 が駐留し、日 本本土で揚陸艦に搭載された後、
台湾海峡に向かう場合と比して、即応性があることにはならない。
また、揚陸艦が洋上展開している場合には、その場所から任務 地に向かうのであり、海兵隊がどこで揚陸艦に搭乗したかは関係 がないから、海兵隊の配置される場所について必然性は存しない ことになる。
海兵隊が「侵略を行えば耐え難い損害」を与える作戦をするな らば、揚陸艦に搭載されて行うことになるものであり、揚陸艦の 母港が沖縄にはなく、日本本土に在ることよりすれば、沖縄に海 兵隊が配置されなけ ればならないという必然性は認め られない。
これまで述べたことのくり返しになっているが、相手方は、「地 理的優位性を有する沖縄県に駐留することは、我が国の安全保障 のための抑止力として機能」と主張しているものであり、地理的
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優 位 性 と い う 主 張 に 対 す る 批 判 が そ の ま ま 当 て は ま る も の で あ る。
ウ そして、“海兵隊の任務は揚陸艦に搭載されて行われるものであ るから沖縄に配置 する地理的必 然性がない”“揚陸艦の母港 は沖 縄ではなく日本本土である”との審査申出人の指摘に対して、相 手方は、揚陸艦に搭載されて行う任務自体については反論をなし えていない。
相手方は、第一次回答(甲 D4)が「『強襲揚陸艦は米海軍艦 艇であり、強襲上陸作戦など、海兵機動展開隊(MEU)等の海兵 空地任務部隊(MAGTAF)を大規模に遠隔地にある作戦地域に投 入する場合におい て有効な手段 であるとしつつ、『他方で、幅広 い任務を有する海兵隊にあっては、海軍艦艇による支援を要さな い次のような部隊 の運用も行わ れる』として、『一 小 規模な部 隊をもって隠密裏に遂行する必要がある偵察・監視任務や特殊作 戦』及び『一 高度な機動性や即応性が求められる民間人の救出 活動、捜索救難活動や人道支援、災害救助への対応』』(答弁書2・
56頁)としていることを、反論としている11。
しかし、これらの任務は、明らかに、「侵略を行えば耐え難い損 害を被ることを 明白に認識させることにより、侵略を思いとど まらせるという機能」とは異質なものである。
したがって、相手方の主張は、そもそも相手方が定義する「抑 止力」の論拠とはなりえないものであり、その主張は論理をなし ていない。
11 なお、人道支援・災害救助活動も揚陸艦に搭載されて行われているもの である。
46 2 「矛」という主張について
(1) 相手方の「矛」という主張
相手方は 、「様々な 島嶼からな る我が国においては、島嶼防衛の 要請が高いことから、優れた上陸作戦能力を有する米軍海兵隊は、
我が国の防衛に資する。さらに言えば、自衛隊と米軍の関係は、い わば『盾』と『矛』の関係であり、我が国の防衛にあたっては、自 衛隊が防衛作戦を担当し、米国が攻勢作戦を担当することで、我が 国の抑止力が担保されるのであって、即応性・機動性を有する米軍 海兵隊はこの『矛』の極めて重要な部分を占めることになる」(答弁 書2・96 頁)と主張している。
(2) 「矛」という主張は海兵隊が沖縄に配備されなければならないこ との根拠とはならないこと
ア 審査申出人は、海兵隊を否定しているものではない。
再三のくり返しになるが、審査申出人が主張しているのは、海 兵隊が沖縄に駐留しなければならない必然性はなく、安全保障が 日 本 国 全 体 の 問 題 で あ る に も か か わ ら ず 沖 縄 に の み 米 軍 基 地 の 負 担 を 押 し 付 け て さ ら に 将 来 に わ た っ て 固 定 化 す る こ と は 正 当 化されないといっているものである。
イ そして、相手方は、“海兵隊の任務は揚陸艦に搭載されて行われ るものであるから 沖縄に配置す る地理的必然性がない”“揚陸艦 の母港は沖縄ではなく日本本土である”との審査申出人の指摘自 体については反論 しないで、「強襲 上陸の遂行のみが米軍 海兵隊 の任務・作戦ではないから、強襲揚陸艦の母港との位置関係にお いて、米軍海兵隊にとっての沖縄本島の地理的優位性を云々する とは意味がない」(答弁書2・77 頁)と主張した上で、隠密裏に 遂行する敵地での偵察・監視活動、海賊対処、人質の奪還、危機