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第 3 章 日本を対象としたウォーターフットプリントインベントリデータベースの開発

3.2 日本を対象とした水汚染原単位

3.2.1 直接排出係数の算定方法

3.2.1.1 農業(農作物)

農業部門(農作物)における直接排出量は農地への施肥に起因する土壌からの窒素、リ ンの流出を対象に推計した。農地における土壌からの流出量(t)は、施肥量に対して一定割合 が流出するものと想定し、次式により推計を行った(式3-4)。

Amount of direct emission c N,P = Area c × AF cN,P ×RR (式3-4) 1.1 各種統計値

ⅰ)各産業部門の窒素及びリン、

希釈水を推定

2.1 産業連関表(2005)

ⅰ)取引基本表を作成

2.2 正方化

ⅰ)作成した取引基本表を正方化

2.3 レオンチェフの逆行列

ⅰ)逆行列

3.1窒素及びリン、希釈水原単位

ⅰ)直接排出係数と逆行列の積をとる 1.2 産業連関表部門への適用

ⅰ)403部門に配分する

1.3 直接排出係数表

ⅰ)各部門の国内生産額で割る

STEP 1 直接排出係数(d)の算出 STEP 2 レオンチェフ逆行列 ((I-A)-1)算出

STEP 3 原単位(e)の算出

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ただし、Areaは栽培面積(ha)、cは作物の種類であり、農林水産省が公表している作物統 計1)を用いた。AF (Amount of fertilizer)は単位面積あたりに施肥される肥料中の窒素及びリ

ン(kg/ha)であり、各作物の施肥基準値及び堆肥の施用基準値を作付面積で加重平均して全国

平均値とした施肥量 2)から、肥料中の窒素、リン含有量を用いて算出した。肥料中の窒素、

リンの含有量は農林水産省が収集・公開している施肥基準(平成19年5月の時点で公開さ れていたもの)等から抽出したものを用いた。施肥基準値および堆肥の施用基準値の情報 が得られる作物数は,水稲:1,陸稲,麦類,豆類等の普通畑作物:11,飼料作物:4,工芸 作物:6,野菜:39(季節区分別のべ56),果樹:18,切り花類:17,球根類:4,鉢もの類:

10,花壇用苗もの類:5の合計115(季節区分別のべ132)となっている。年度は平成17年 度ベースで詳細に作成されており、平成17年度作物面積全体の93%をカバーしていること から我が国の農作物生産を代表するデータであると考えられる。RR (Runoff rate)は農地の土 壌からの流出率(%)である。流出率RRは対象地点の気象、土壌条件や環境への流出期間の 設定により変動すると考えられるが本研究では既存研究3に準拠し5%とした。

この結果、農作物由来の窒素負荷量は合計約2.70×104トンとなり、既存研究4の0.55× 106トンと比べて約0.05倍と大きく乖離する。これは本研究が環境中に排出される窒素に着 目しているのに対し、既存研究4が田畑に投入される窒素に着目していることに起因する。

そこで本研究も既存研究と同じく田畑に投入する窒素に換算したところ、約5.11×105トン と既存研究4と整合した。

3.2.1.2 農業(畜産)

農業部門(畜産)における主な窒素、リンの直接排出は家畜の排泄物(糞尿)によるも のであると考えられる。そこで畜産業からの窒素、リンの直接排出量(t)は次式により算定し た(式3-5)。

Amount of direct emission a N,P = NH a × P ×AD a N,P ×ER (式3-5)

ただし、NH (Number of heads)は家畜の飼養頭数[頭、羽]、aは畜産の種類である。頭数は

農林水産省が公表している畜産統計(2005) 5)を用いた(豚と鶏は2005の統計値が調査休止年 のため 2004 年値を採用)。対象とする家畜は、乳用牛、肉用牛、豚、排卵鶏および肉用鶏

とした。P (Period)は出荷までの生育期間(日数)である6)。本研究では産業連関分析を用い

た1年単位の分析であるため、各家畜の生育期間は365日とした。AD (Amount of discharge) は1頭1日当たりの窒素及びリンの発生量(t/頭/日)7)、ER (Emission rate)は自然への排出割合 である。“家畜排せつ物の発生と管理の状況”8)及び“家畜排せつ物処理状況調査結果”9) によると野積みや素掘りへの仕向け量については発生量の 1~2%とあるため、本研究では

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ER を 2%と設定した。前述した通り、適切に処理されているもののうち、下水道に放流さ れた負荷については下水道部門で計上されている。その他の負荷は天日乾燥や発酵などで 適切に処理され、肥料として再利用されるものと仮定したため、ここでは含めないものと した。

この結果、畜産由来の窒素の合計約1.08×104 t、リンの合計は約2.52×103 tとなった。た だし、その他の畜産については窒素及びリンに関する詳しい情報が得られなかったため、

乳牛、肉用牛、豚、排卵鶏および肉用鶏の窒素及びリンの直接排出量を各生産額で加重平 均することで平均の直接排出係数を求め、さらにその他の畜産の国内生産額を乗じること で直接排出量を推計した。

既存研究4の0.51×106 tと比較するとやはり大きな乖離が見られるが、これは自然への排 出率の差である。本研究の自然への排出を100%に設定したところ、0.54×106 tとなり、既 存研究4と非常に近い数値になった。

3.2.1.3 育林

育林部門における窒素、リンの直接排出は木材の育成段階で土壌より流出する窒素及び リンと考えられる。しかし、人為的に窒素とリンの投入を行われていないため、本研究で は負荷は何もないものとした。

3.2.1.4 内水面養殖業

農業部門(内水面養殖業)における窒素、リンの直接排出の主な要因は飼料及び糞尿に 含まれる窒素、リンであると考えられる。そこで内水面養殖業からの窒素、リンの直接排 出量は次式により算定した(式3-6)。

Amount of direct emission a N,P = U N,P × P × W × 10-6 (式3-6)

ただし、Uは一日、重量当たりの負荷原単位(g/kg-魚・日)、であり、Pは育成期間(日数)、

Wは生産重量(kg)である。一日、重量当たりの負荷原単位は丸山ら10)が公表している窒素及 びリンの平均値(淡水魚の負荷原単位)を用いた。育成期間は養殖業者からのヒアリング により得た値を採用した。鮎は270日、それ以外の魚種については生産量が多い鰻を代表値 とした。鰻の育成期間は6か月から18か月であり、本研究では中央値の12か月を採用した。

最後に生産重量は農林水産省が公表している漁業・養殖業生産統計(2005) 11)を用いた。

3.2.1.5 工業

工業部門における主な窒素、リンの直接排出は工場排水を通じての排出であると考えら

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れる。工業部門からの窒素、リンの直接排出量は、排水水質、排水量を基に次式により推 計した(式3-7)。

Amount of direct emission sN,P = WW s × OD s × DWQ s (式3-7)

ただし、WW (Waste water)は一日当たりの排水量(m3/日)、sは部門、OD (Operating days) は年間稼働日数、DWQ (Drainage water quality)は排水水質(mg/l)である。一日当たりの排水量 は工業統計用地・用水編(産業細分類577部門) 12)を用いた。工業統計用地用水編は淡水、海 水について、一日当たりの用水量を水源別、用途別に記載している。年間稼働日数は 300 日稼働すると仮定して年間の排水量を求めた。排水水質は“日本下水道協会 流域別下水道整 備総合計画調査 指針と解説”24)が公開する各産業施設排水水質データの平均値を用いた。

工場排水は自然及び下水道に放流されると考えられるが、各産業が具体的にどの程度、

自然及び下水道へ放流するのかを割合として推定することは難しく、不確実性が大きい。

したがって、本研究では工場排水による負荷を全量計上することとした。これにより、下 水道部門に排水される分に関してはダブルカウントが起こっている可能性があることに留 意が必要である。

3.2.1.6 下水道

下水道における窒素、リンの直接排出量は下水処理後の排水に含まれる窒素及びリンの 濃度と排水量を基に、以下の式に示すように推計する(式3-8)。

Amount of direct emission N,P = ∑𝑛𝑖=1 ( WWi × DWQi × 365 ) (式3-8)

ただし、前述の通り、WWは一日当たりの排水量(m3/日)、DWQは排水水質(mg/l)、iは各 施設である。一日当たりの排水量と排水水質は下水道統計13)を用いた。下水道統計13)では 47 都道府県全ての下水処理施設とそれに関連する施設を対象としている。なお、各施設の 水量、水質データが欠損している場合、各都道府県の平均値を用いた。

3.2.1.7 その他のサービス業

その他のサービス業における窒素、リンの主な直接排出は廃棄物処理場からの排水や上 水の使用後に排水される下水に起因すると考えらえる。廃棄物最終処理場由来の負荷につ いては一部の限られたデータのみ入手したが、代表性を持った水質及び排水量データでは

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なく、これらのデータを基に代表性のある数値を算出することは困難であり、不確実性が 大きい。このため、本研究では廃棄物処理場の負荷は反映されていない。また、浄化槽や 農業集落排水処理施設、コミュニティプラント等の水処理施設の整備された地域における 窒素、リンの直接排出に関しても上記と同じく代表性を持ったデータがないため、これら 由来の負荷は反映されていない。一方、それ以外のサービス部門の負荷は下水道部門の波 及効果によって付与されるものとするため、直接負荷の算定は行わないものとする。

3.2.1.8 希釈水の算定

WFの算定において、水資源消費量、窒素排出量、リン排出量はいずれも異なる指標であ り単純に比較することが難しい。先にも述べたWFNの手法では、水系への汚染物質の排出 量を希釈水(Grey water)という概念を用いて水量に換算する。希釈水とは工場排水等を排 水基準濃度まで希釈するのに必要な水量であり、異なる水質指標や量的側面との比較評価 が容易になるため、本研究では各産業部門からの窒素、リンの排出原単位の希釈水への換 算も行った。以下に希釈水の算出方法を記述する。(式3-9)

DW iN,P = Amount of direct emission i N and P / WS N,P (式3-9)

ただし、DWN,Pは希釈水原単位を表し、Amount of direct emission i N and Pは各部門からの 窒素及びリンの直接排出量である。WS N,P (Wastewater standards)は窒素及びリンの排水基準 であり、国が定める基準値である N:120mg/L、P:16mg/L を用いた。なお、希釈水は排水基 準濃度まで汚染物質を希釈するために必要な水量であり、複数の汚染物質が存在する場合 には基準濃度に対する超過割合が大きい物質を優先して希釈水量を求める。すなわち、リ ンに比べて窒素の排水基準値が高い場合、式(3-8)のWSはWSNとなり、逆の場合はWSP

が採用される。