第 4 章 アジアを対象としたウォーターフットプリントインベントリデータベースの開
4.1 アジアを対象とした水消費原単位の開発
4.1.1 直接排出係数の算定方法
4.1.1.1 農作物部門
本節においても前述した通り、農業部門における直接水消費は農地における蒸発散量(Etc) とし、作物に含まれる水分量は量的に少ないことから考慮しないこととした。蒸発散量は 農地からの蒸発と作物からの蒸散である。蒸発散量 (Etc)は次式によって得られる(式4-2)。 次にWFNの考えに基づき、以下の関係から各作物の生長に要する水源を雨水の場合と、河 川水・地下水に分類した1)。
・Etc≦ 降水量 ならばEtcの内訳は全て雨水由来の蒸発散となる。
・Etc > 降水量 ならばEtcの内訳は雨水と河川水、地下水由来の蒸発散(Etc-降水量 = 河
川水+地下水)となる。
作物別に植栽日から収穫日までの育成期間を設定し、蒸発散量Etcとあわせて作物の国別 作付面積2)との積和をとることで作物ごとの直接消費量を推計した(式4-3)。日本以外の国 に関しては作物重量あたりの水消費量(Water consumption intensity)3)に作物重量(Amount of Crop)4)を乗じることで推計した(式4-4)。以下にこれまでの式を示す。
Etc = kc × Et0 (式4-2)
d 1
DC n
( Et rain d × area) + d n 1( Et river, groundwater d × area) (式4-3) DC(Water consumption intensity i * Amount of Crop i) (式4-4)
ただし、kcは作物係数であり、Et0は基準蒸発散量である。DCは直接消費量、dは植栽日 からの経過日数、d=1は植栽日、d=nは収穫日であり、Et rainは雨水由来の蒸発散、Et river,
groundwaterは河川水、地下水由来の蒸発散、iは作物種である。
まず日本の基準蒸発散量(Et0)には農業環境技術研究所が作成したモデル結合型作物気象 データベース5)を用いた。前述した通り、全国のアメダス地点(約850地点)における日別気 象データが収納されている。アメダスでは気温、風速、降雨量、日射量の 4 つの基本要素 が測定されているが、それぞれの地点における日射量と湿度の測定値、ならびに基準蒸発 散量の値も収納されている。地点や年、月を選択することにより各地点の 1 日ごとの降水 量を把握することができる。収集した地点データを都道府県ごとに集約し、同一都道府県 内の地点データの日別基準蒸発散量を単純平均することで各都道府県における日別基準蒸 発散量の平均値を得た。
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次に韓国に関してはKimらの既存研究6)を用い、その他の国に関してはHoekstraらの既 存研究 3)に作物重量 4)を乗じて推計を行った(式 4-4)。Mekonnen らの既存研究 3)は
CLIMWAT2.0及びCROPWAT8.07、8)を引用している。CLIMWAT2.0及びCROPWAT8.0は全
世界を網羅した蒸発散算定ソフトウェアであり、気温、風速、降雨量、日射量の他、選択 地点の土壌などの複数データが収納されている。地点や日付、作物種を選択することによ り比較的容易に算定することが可能である。データを国別に集約し、同一国内の蒸発散量 を単純平均することで各国における作物種別蒸発散量の平均値を得ることが出来る。ここ で得られた灌漑水量の内訳は日本における各農作物の河川と地下水の水消費比率と乗じる ことで河川水と地下水を区別した消費量を推計した。
4.1.1.2 畜産業
畜産業における直接水消費量は、各家畜の成育に際する飲水量とする。家畜1頭あたりの 飲水量(L/日)と家畜数(頭、羽)と出荷までの日数との積から、直接水消費量を推定した(式 4-5)。
DC =Σ(Number of headx * Period * Amount of water / headx * Period) (式4-5)
ただし、Number of headは畜産頭数、x は家畜種、Periodは家畜の出荷までの日数である。
家畜種は牛、豚、鶏、ロバ、ラバ、ラクダ、羊、ヤギを対象としている。出荷までの日数 をヒアリングから豚は185日とし、出荷までの日数が一年を超える他の家畜に関しては産業 連関表を使用するため、1年間(365日)と設定した。Amount of waterは家畜1頭当たりの1 日の飲水量である。各国における家畜1頭当たりの1日の飲水量のデータについては、日本 及び韓国はそれぞれ既存研究9,6)の値を用いた。それ以外の国については、家畜数は
FAOSTAT4)の2005年の値を、家畜1頭あたりの1日の飲水量および出荷までの日数は、
Mekonnenら(2010)10)の値を用いた。
4.1.1.3 林業部門
林業用水の算出方法は基本的に同じ方法である。ただし、林業では河川や地下水等から の水供給がないため、蒸発散量の内訳は全て雨水となる。さらに雨水が蒸発散量よりも少 ない場合、その差分は賄われないものとする。林業は出荷まで複数年かかり、かつ本研究 では産業連関表を使用するため、ここでは一年間(365日)の値を用いる。中国、インドネシ ア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、アメリカの林業用面積はFAO統計値
11,12)を用い、日本及び韓国はそれぞれ既存研究9,6)の値を用いている。最後に日本及び韓国
を除く各国のEt0をCLIMWAT2.0及びCROPWAT8.0より推計した。
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4.1.1.4 水産養殖業
水産養殖業における直接水消費量は、養殖池に人為的に直接投入される水を対象とする。
上述した通り、日本に関しては国土交通省報告書の養魚用水使用量13)に鰻収穫量比率を乗じ て「内水面漁業・養殖業」の直接消費量を推計した。アメリカに関してはUSGSが公表する Estimated Use of Water in Estimated Use of Water in 200514)の水産養殖業における水投入量を 用いた。公表値は1日あたりの水投入量であることから365日を乗じ、年間値にした上で適 用した。韓国に関してはKimらの既存研究6)を用い、その他の国に関しては有力な情報が得 られなかったため、該当値なしとして扱った。このため、その他の国の水産業における水 消費は過小評価であるといえる。
4.1.1.5 工業部門
工業部門における直接水消費はボイラー用水及び原料用水とした。日本におけるデータ は工業統計用地・用水編(産業細分類577部門) 15)から前述したとおり、ボイラー用水及び原 料用水を産業連関表403分類に直接消費量として割り当てた。工業統計用地用水編は淡水、
海水について、1日当たりの用水量を水源別、用途別に記載している。本研究では年間300 日稼働すると仮定して年間の水消費量を求めた。事業者の中には工場内部で水質の浄化作 業をした後に下水放流することもあり得るが、各事業者における放水処理の実態が分から ないため、今回は取水源に戻すと仮定した。韓国におけるデータはKimら6)を引用した。
そ の他の 国々 に関し ては FAO が公開 している AQUASTAT16)より 、Industrial water withdrawal を取水量、 Fresh surface water withdrawal (primary and secondary),及び Fresh
groundwater withdrawal (primary and secondary)を取水源比率推計に用いた。取水量に対して消
費割合に関する情報が得られなかったため、日本の消費割合を同じく適用し、消費水量を 推計した。これらの推計値は各国二次産業における全水消費量であり、どの部門でどの程 度、消費されたか統計値等がないため、日本における水消費量を基に比率を作成した。比 率は二次産業各部門における水消費量の総額を二次産業の各部門における水消費量で除す ことで作成した。最後に取水源別に推計した各国水消費量を各部門に乗じることで各国二 次産業における取水源別水消費量が算出される。故にデータが未整備な国々の値は必ずし も実態を把握したものではないという可能性がある。
4.1.1.6 その他のサービス業
日本における水消費は上述したとおりである。韓国に関しては Kim ら 6)を引用した。次 にアメリカに関するデータUSGSが公表するEstimated Use of Water in Estimated Use of Water in 200514)のPublic supplyを参照した。Public supplyにはMinigが含まれているため、本研究
ではMinig を差し引いた値を用いていた。公表値は 1 日あたりの水投入量であることから
365 日を乗じ、年間値にした上で適用した。その他の国々に関しては AQUASTAT16)におけ る上水道を用いた。
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