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発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

集い、悩みを共有し、何でも語り 合える場づくりで、保護者を支援

 「はじめくんが、ゆうきくんを突き飛ばした」

 みかちゃんが職員室に飛び込んできました。

 M児童館の児童厚生員の吉沢さんがプレイルームに駆けつけると、ゆう きくんは床に突っ伏して泣きじゃくり、一方、はじめくんは何事もなかっ たかのように部屋のすみに座り込んで本を読んでいます。どうやら、ゆう きくんの読んでいた本を、はじめくんが強引に取り上げたようです。小学 3年生のはじめくんには発達障がいがあり、自分がしたいことを上手に言 葉にして伝えることができません。そのために、いきなり乱暴な行動に出 てしまうことがあるのでした。

 集団生活が不得手で、みんなと仲よく遊べない子は他にもいます。児童

「自分たちにできることは何か」からスタート

発達障がいのある子どもをもつ保護者は、わが子の障がいとどう つきあうか、常に悩みながら過し、子どもの今後の成長への不安 もあります。そうした保護者に対し、児童館はどのような支援が できるでしょうか。

ソーシャルワーク実践課題

M児童館の取組み例

事例④

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発達障がいのある子どもをもつ保護者支援

館のスタッフは頭を悩ませていました。はじめくんのような子たちにとっ て、児童館が心地よい居場所になるにはどうすればいいか��。発達障が いのある子をあたたかく見守る地域の人たちの理解も必要です。何より、

保護者自身も、どうしていいかわからずに不安を抱えています。吉沢さん たちスタッフは、子どもたちが周囲からの理解を得られずに孤立し、引き こもりや非行に走ることや、親の虐待につながることも心配します。

 「私たちにできることって何だろう」

 吉沢さんたちは、「親の会」が必要だと考えました。当事者である親自身 が集い、語れる場。そこから地域の人々に、自分たちの声を届けることも できます。

 児童館が全面的に支援するとして、「親の会」には、代表となって会を運 営してくれる人が必要です。吉沢さんはやってくれる人を探しました。M 児童館にはファミリーサポートセンターが入っています。吉沢さんが「こ の人だ」と思い、相談をもちかけたのは、サポーターとして活動している 林よしみさんでした。林さんには発達障がいのある子どもがいて、子ども の通う学校で学習支援活動も行っています。

 「“親の会”をつくりたい。林さんなら同じ親の立場で保護者のみなさん と話せるし、会を上手に運営していけるんじゃないかと思う」

 実は林さんも以前から、発達障がいの子をもつ親たちが何でも話し合え る場がほしいと思っていたのでした。ただ、自分一人でやる自信はなかった。

そこに吉沢さんからの申し出です。児童館が支援してくれるのなら心強い 限りです。意見は一致し、会の代表は林さん、児童館側の担当者は吉沢さ んということで、「親の会」の発足が決定。林さんが時間の空いたときに児 童館を訪れ、二人の間で立ち上げのための打合せが重ねられました。毎回、

1時間から 1時間半。「こんな会にしたい」「会の開催日は?」など、お互 いに意見を交わしながら、方向性や運営方法を決めていきます。話し合い

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保護者が集い、情報交換できる場をつくる

の後に疑問がわくと、そのつど電話で確認しました。

 そうして決定したのは、親が笑顔で帰れるように悩みや思いを語り合う 場であること。情報交換の場とすること。発達障がいに限らず、子育て中 のどの親も参加できること──などです。ゆったりくつろげる雰囲気の中 でおしゃべりできるよう、お茶やコーヒーを提供。参加費 100 円も決めま した。そして、最初の打合せから約1ヵ月。月に一度の親の会「おしゃべ り広場たんぽぽ」はスタートしたのです。

 第1回の会の参加者は 10 人。はじめくんのお母さんの顔もありました。

進行役は会の代表でもある林さんです。最初は何を話していいかとまどっ ていたお母さんたちも、子どものこと、学校のこと、さらには料理の話題 や近所のお店の評判など、会話をはずませ、気がつけば予定の2時間はあっ という間でした。

 「楽しくて、気分もスカッとする」。親の会「おしゃべり広場たんぽぽ」は、

参加するお母さんたちにとても好評でした。スタートして半年が過ぎた頃 です。年配のご婦人が自分の娘だという 30 代の女性を伴ってやってきま した。児童館の吉沢さんが事情を聞くと、娘さんには発達障がいの子ども がいるとのこと。そのことでふさぎ込んでいるのを見かねたお母さんが、

娘さんを引っ張ってきたのだそうです。

 「どうぞ、大歓迎ですよ」と吉沢さん。会の雰囲気を体験した娘さんは、「み なさん、いつもこんなに明るいのですか?」と驚いた様子。このとき以来、

毎回参加です。

 「この頃、勉強にもついていけるようになったと先生に言われたの」

 「よかったね。うちの子もそうなるかな。あせらないでいよう」

 「A小学校には発達障がいの子どもたちに学習支援があるのよ」

 発達障がいのある子をもつ親は、子どもの将来に対し、先の見えない不 安をかかえています。会のメンバーは、子どもの年齢も学年もさまざま。

親も子も孤立させない

発達障がいのある子どもをもつ保護者支援 事例④

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そして先輩ママの体験談は後輩ママにとって貴重な情報となります。「その うち、こうなるから心配しないで」��。発達の経過を話してもらうことで、

今後のわが子の成長の見通しがつきやすくもなります。

 会には、「子どもをたたいてしまう。どうしたらいいの」とせっぱ詰まっ た様子で来る人もいます。「私もそういうこと、あった」と、先輩ママたち の言葉。

 解決策が見つかったり、共感があったり。話すことにより、不安や悩み の堂々めぐりからも解放されます。子育てのことばかりではありません。

姑のこと、夫のこと、グチ��。自由に言い合える場があることは親の心 のゆとりにつながり、それは子どもにも影響します。

 その後、はじめくんの乱暴な言動も少し減ってきたようです。お母さん にも笑顔が増えてきました。

 会が2年目を迎える頃、林さんが市に申請していた活動助成金が認めら れました。会の活動をさらに充実させることができます。資金は、講師の 方を招いて発達障がいについての悩みや疑問を語り合う講座の開催などに 活用することにしました。

 そして会がスタートして5年。現在、市内に5つある児童館のうち、3 館にまで「親の会」が広がりました。M児童館のおしゃべり広場に来てい たお母さんたちの「ここに来ると笑顔になれる。うちの近くにもあるとい いのに」といった声もあり、会の代表の林さんやM児童館の吉沢さんの働 きかけもあって、新たに2つの児童館に親の会ができたのです。会には、

子育て中の人に限らず、課題をかかえる子どもたちを支援したいという一 般の方々も参加しています。

 会を立ち上げたとき、子どもたちをあたたかく見守り、その保護者も含 めて支援できるよう、活動を地域全体に広げたいと願っていた林さんと吉 沢さん。着実に実を結んでいるようです。

「見守り」「支援」を地域に根づかせる

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児童館だから できることが あります。

簡単で守れるルー ルづくりがカギ。

A

B

発達障がいのある子どもをもつ保護者支援 事例④

 発達障がいのある子どもをもつ保護者を孤立させず、

地域全体で子どもたちの成長を見守るためにも、親たち が集う場をつくることはとても意義があります。この事例 では、児童館側から 「やりましょう」 と保護者に声をかけ、

親の会を実現させました。必要だと思うことを考え出し、

自分たちから提案していく姿勢はとても大事です。

 M児童館は、親の会の立ち上げから運営まで全面的に 支援しています。場所を提供し、会のリーダーとともに ルールづくりをし、広報・告知をして人を集める。そし て児童館のつながりを通して、会の活動を必要に応じ各 機関や施設とつなげる。ただし、親の会の主体となるのは、

当事者であるお母さんたち。毎回の集まりに児童館の職 員は参加しますが、みなさんの話を聞くことに徹してい るのだそうです。

 M児童館の親の会が成功している背景には、いくつか のポイントがあります。

 一つは、月に一度の集まりを勉強会ではなく、どんな ことでも話せる、「おしゃべり広場」としたこと。発達障 がいについて情報交換できるのはもちろんですが、夫の グチでも何でもOKという気軽さが、お母さんたちを集 まりやすくしています。ただし、会員同士が必ず守らな

解 説

解説:大竹先生

 この事例からは、児童館が行うグループ支援の一 つの実践の仕方が見えてきますね。「親の会」があれ ばいいのにと思っている保護者は多い。けれど、何 をどうすればいいかわからない。それを手助けでき るのが児童館です。「まず、やってみよう」。M児童 館の成功例は、そう思わせてくれます。

できる

「発達障がいのある子どもをもつ 保護者支援」の事例について

こんなルール

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