以下に主要なプレゼンテーションの内容についてとりまとめる。
2−1 Plenary Session 2−1−1 Fuel Cells
Nancy Garland (DOE)
(1) 目的
目標は,輸送用,定置用,可搬型電力アプリケーション向けの燃料電池を開発し,実 証試験を行うこと。分野別の目標は以下のとおりである。
◆ 輸送用としては,2010 年までに最高効率が 60%かつ耐久性 5,000 時間,コスト
$45/kWの直接水素FCシステムを開発する。2015年までにはコストを$30/kWと する。
◆ 2011年までに,天然ガスまたはLPGを燃料とする発電効率40%,耐久性4万時 間,コスト$750/kW の分散電源用PEFCシステムを開発する。
◆ 2010 年までに,エネルギー密度1,000Wh/L,出力50W未満の家庭用電化製品向 けのFCシステムを開発する。
◆ 2010 年までに,出力密度が100W/kgかつ100W/Lの,出力3-30kWの補助電源 ユニット用FCシステムを開発する。
(2) 予算
図2-1にあるように,FY2009の要求額は$79.3Mである。
MY2008 予算
MY2009 要求 輸送システム $ 7.9M $ 6.6M エネルギーの
Distribute $ 7.6M $10.0M スタック
コンポーネント $43.6M $62.7M 燃料プロセッサ $ 3.0M $ 0.0M 合計 $62.1M $79.3M
図 2-1 Fuel Cellの予算内訳
FY2008予算トピックス($M)
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(3) 戦略
1)電解質膜の研究開発
燃料電池スタックの性能と耐久性は,電解質膜の特性に依存する。とくに膜の限界 性能は,システムの簡素化とコストダウンに多大な影響をあたえる。
高温膜研究のために,以下の3つの戦略がある。
◆ ポリマーと膜における相の分離制御:同じポリマー分子の中に,疎水性と親水性の 機能をもつ別々のブロックを含ませることや,機械的な強度とプロトン伝導性を受 け持つ2つのポリマーの複合膜の開発
◆ 非含水性陽子伝導体:プロトン伝導性のために,水を用いるのではなくむしろ無機 酸化物,ヘテロポリ酸,イオン液体を用いた電解質膜を開発
◆ 親水性添加物:高温で含水量と伝導率を高く維持するための添加物を加えた電解質 膜の開発
2)触媒および触媒担体
2007年のDTIによる分析結果では,年間50万ユニットが生産された場合のスタッ クコストは$51/kWで,このうち約 55%を触媒コストが占めるとされた。目標達成の ためには,触媒の耐久性の向上が必須である。
触媒と触媒担体のR&Dのためには,以下の4つの戦略がある。
◆ 白金系材料の低減:白金触媒の活用と耐久性向上の研究を含む
◆ 白金合金:Ptと比べて性能的に遜色なく,さらに安価なPtベースの合金の開発
◆ 非白金触媒:Ptと比較して性能と耐久性が遜色ない非貴金属触媒の開発
◆ 新規触媒担体:非カーボン担体および新たな構造を有するカーボン担体の開発 3)水輸送
フラッディング,膜のドライアウトを防ぐため,水輸送の現象解明が必要である。
そのための戦略として以下が挙げられる。
◆ GDL 構造にある細孔や,氷や水滴の形成,燃料電池内の水運動に関する先端画像 技術の開発
◆ CDF(計算流体力学)モデリング
◆ ガス拡散層特性の実験測定
(4) 成果 1) MEA
3M製のMEAは,一定の加湿状態と発電サイクルのもとで,7,300時間以上の耐久 性を達成した。DOEの目標は5,000時間である。
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図 2-2 MEAの耐久性
2) ナノ細孔膜
開発中のナノ細孔膜(Nano-Capillary Membrane)は,プロトン伝導性の中間目標 である室温,担体湿度80%で70mS/cmを達成した。
3) 三元触媒
ブルックヘブン製のPtAuNi5触媒は,従来触媒バルク活性を上回っている。
図 2-3 触媒性能の達成状況
4) 自動車用FCシステム
図2-4に示すように,自動車用FCシステムコストを$94/kWまで下げることができ た。これは,年間50万ユニットを作るとした場合の試算値である。
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図 2-4 80kWの直接水素形自動車用PEM FCシステムのコスト
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2−1−2 Hydrogen Storage
Sunita Satyapal (DOE)
(1) 目標
このプログラムの目標は,様々な種類の車両に対して使えるような,300 マイル以上 走行可能な車載用水素貯蔵システムを開発することである。
この目標達成のため,以下の開発項目がある。
◆ 容量
◆ 動作温度(-40℃〜85℃)
◆ 水素供給速度(0.02g-H2/秒/kW),充填速度(5kgの水素充填が3分以内)
◆ システムコスト
◆ 燃料コスト
◆ 安全性,C&S,信頼性,サイクル寿命,効率,他
(2) 課題
現在実証走行中のFCVは,300マイルは走れるように設計されているが,性能や搭載 スペース,コストはまだ市場に出回るには難しいものがある。
また,より低圧での貯蔵可能性の検討も課題である。
(3) 水素貯蔵関連予算
FY2008予算と,FY2009の要求額を表2-1に示す。
表 2-1 HydrogenStorageの予算内訳
MY2008予算 MY2009要求
金属水素化物 $10.4M $10.5 M ケミカルハイドライド $ 9.4 M $10.5 M
吸着剤 $ 8.2 M $11.0 M
タンク $ 0.9 M $ 2.5 M
他の材料やコンセプト $ 5.2 M $ 9.9 M テスト/分析/サポート $ 8.4 M $ 8.8 M エンジニアリングCoE $ 1.0 M $ 6.0 M
合計 $43.5 M $59.2M
※CoE:Center of Excellence
(4) 進捗状況
1) 新たな貯蔵材料の研究開発
水素吸蔵合金,ケミカルハイドライド,アンモニアボラン,水素吸着材,低温圧縮 など,さまざまな技術の検討を行ったが,図 2-5に示すように,体積容量も重量容量 も,現状はどの技術においてもDOEの2010年ターゲットに届いていない。
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図 2-5 水素貯蔵研究の現状
2) 水素貯蔵システムの目標達成状況
現在,フルスケールのプロトタイプ低温圧縮水素タンクの開発が進められているが,
2010年目標に届いていない(図2-6)。
図 2-6 水素貯蔵システムの目標達成状況
3) 圧縮水素タンク
圧縮水素タンクについては,Technology Validationに参加中の第1世代の車両92 台によって,航続距離が103〜190マイルであったことが実証された。また,TIAXに よるコスト分析では,大量生産時には,〜$27/kWh(700bar)になると試算された。
図2-7に現状のタンクのシステム容量と,生産量50万ユニット/年のときの700bar タンクのコスト分析結果を示す。
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システム容量
Wt.% g/L 350bar 2.8-3.8wt.% 17-18g/L 700bar 2.5-4.4wt.% 18-25g/L
図 2-7 現状のタンクのシステム容量と大量生産時のコスト分析結果
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2−1−3 Production & Delivery
Rick Farmer (DOE)
(1) 目標
石炭,原子力,再生可能エネルギーといった様々な米国内の資源から,低コスト,ク リーン,高効率な水素製造技術の研究開発を行うことを目標としている。
具体的なコスト目標は,水素の生産コストを$2〜$3/gge(課税なし,配給端)に,輸 送コストを$1/gge未満とすることである。
(2) EEREの水素生産・輸送プログラム予算
FY2008の予算を図2-8に示す。製造に関する予算が$28.9Mで,輸送に関する予算が
$10.7Mである。
図 2-8 水素生産・輸送プログラム予算の内訳
(3) 進捗状況・成果
◆ 電気分解装置性能の大幅な改善が示された
◆ バイオ由来液体燃料からの水素製造:コスト1/10(2005年比),触媒寿命は1年 を超えた
◆ 落下片レシーバー(falling particle receiver)と熱交換システムの実証を行った
◆ はじめて,光電気化学(PEC)材料(WO3)の電子表層構造の実験的な測定を行っ た
◆ 環境DNAサンプルを用いて新規ヒドロゲナーゼ(水素酸化還元触媒酵素)のクロー ンをつくり,生物体内で機能的なヒドロゲナーゼを発現させた
◆ 電気化学的水素圧縮機を開発し,最高4000psi,1500時間の連続運転を達成した
◆ APCI法(大気圧化学イオン化法)により,液体ハイドロカーボンを有望なキャリ アとして確認した
◆ 低コストかつ低透過性の繊維強化ポリマー(1psi/day もしくは<<0.1%水素/day)
水素の生産に 関する予算
$28.9M
(FY2008)
水素の輸送に 関する予算
$10.7M
(FY2008)
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を発見した
現時点での水素コストにかかる目標達成状況を図2-9に示す。
図 2-9 水素の製造・輸送に関する目標達成状況
中期:分散生産(水素輸送コストを 抑えるために,ステーションで生産)
長期:集中生産(水素輸送インフラ のために大規模な投資が必要)
天然ガス改質 水電解
再生可能液体燃料からの改質
バイオマスガス化 CO2隔離を用いた石炭 らの生産
太陽光の高温熱化学水 解
風力発電水電解 原子力発電関係
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2−1−4 Technology Validation
John Garbak (DOE)
(1) 目標
技術実証の目標は,輸送やインフラ,発電に関する水素と燃料電池のシステムを実証 することである。このために,水素インフラと直接水素形FCVの実証を並行して行う。
また,現状の技術進歩の評価をして,この結果を水素の研究開発へフィードバックして いく。
主要な数値目標を表2-2に示す。
表 2-2 数値目標
2009年 2015年
FCスタック耐久性 2000時間 5000時間 航続距離 250マイル以上 300マイル以上
ステーションでの水素コスト $3/gge $2-3/gge
(2) 予算
表2-3にあるように,FY2009の要求額は$14.8Mで,FY2008の予算($29.7M)の 約半分となっている。
表 2-3 Technology Validationの予算内訳
MY2008予算 MY2009要求
車両 $19.6M $ 9.1M
インフラ $ 3.6M $ 3.6M
エネルギーステーション&パワーパーク $ 2.1M 0 分析とサポート $ 4.4M $ 2.1M
合計 $29.7M $14.8M
(3) 挑戦すべき課題
以下のような問題点と課題に対して取り組んでいる。
◆ FCVの性能と耐久性のデータが不足している
◆ 燃料インフラの性能と利用可能性のデータが不足している
◆ 3つの異なった気候条件下での,FCの起動および運転に対する評価が必要である
◆ 寒冷な気候条件下での,FCの起動可能性の評価が必要である
◆ 70MPaでの充填での評価を行う
◆ FCVとインフラのインターフェースに関する課題を解決する必要がある
(4) 2008年の進捗状況
現在,FCV92台と水素ステーション15箇所が稼働中である。その中には第2世代の 車両も含まれている。
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今までに,のべ 130 台の車両がこのプロジェクトに参加した。FC の耐久性は,実証 1,200時間(3万6千マイル)が実証され,推定では1,900時間(5万7千マイル)が可 能と見積もられる。総走行距離は110万マイルに達し,総稼働時間は5,200時間以上と なった。FC効率は53-58%である。
44,000kg以上の水素が製造・充填された。また,2カ所の水素ステーションは70MPa に対応している。
(5) 今後の計画
今後,以下のような技術実証を行っていく予定である。
◆ 第1世代,第2世代FCVの実証および運用を続ける。
◆ FC耐久性2,000時間の確認や,水素コスト$3/ggeが成り立つかどうかの確認も行 う。
◆ ハワイにパワーパークを建設して運営を行う。
◆ ラーニングデモンストレーションの第2フェーズの計画を発展させる。