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第 2 章    余盛と未溶着を有する横突合せ溶接継手の疲労強度評価

2.3    疲労き裂進展解析を用いた疲労強度評価

2.3.3    疲労強度に対する諸因子の影響

  横 突 合 せ 溶 接 継 手 が ル ー ト 破 壊 す る 場 合 の 疲 労 強 度 に 対 す る 各 因 子 の 影 響 に つ い て , き 裂 進 展 解 析 を 行 う こ と に よ り 検 討 す る .各 パ ラ メ ー タ の 定 義 は ,図 -2.8に 示 す と お り で あ る . す な わ ち , 板 厚 T, 未 溶 着 長 さ 2a, 余 盛 厚 Sd, 余 盛 幅 Sw, 未 溶 着 長 さ の 偏 心 量 Ea, 余 盛 位 置 の 偏 心 量 Es, ギ ャ ッ プ 幅 g を パ ラ メ ー タ と し ,表 -2.5に 示 す . 板 厚 Tは 6,12,24,48mm と し , 未 溶 着 長 さ と 板 厚 の 比 2a/T を 0.1,0.2,0.3,0.4, 0.5,0.6,0.7,余 盛 厚 と 板 厚 の 比 Sd/T を 0,0.1,0.2,0.3,0.4,余 盛 幅 と 板 厚 の 比 Sw/T を 0.6,0.75,0.85,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0, 未 溶 着 長 さ の 偏 心 量 と 板 厚 の 比 Ea/Tを 0,0.05,0.1,0.15, 余 盛 位 置 の 偏 心 量 と 板 厚 の 比 Es/T を 0,0.05,0.1,0.15,0.2,

0.25,0.3, そ し て ギ ャ ッ プ 幅 と 板 厚 の 比 g/T を 0,0.02,0.04,0.06,0.08 と し た .表 -2.5の 赤 文 字 を 基 準 モ デ ル と す る .

こ こ で は , 主 板 の 公 称 応 力 範 囲 を 100N/mm2と し て ,2.3.1項 で 示 し た 方 法 で 疲 労 寿 命 を 求 め , さ ら に 疲 労 寿 命 が 応 力 範 囲 の 2.75 乗 に 反 比 例 す る こ と を 利 用 し て ,200 万 回 疲 労 強 度 を 求 め る . そ し て , 基 準 モ デ ル の 200万 回 疲 労 強 度 を 基 準 と し て , 各 パ ラ メ ー タ の 影 響 を 補 正 係 数 と し て 定 式 化 し , 各 パ ラ メ ー タ に 対 す る 補 正 係 数 を 基 準 モ デ ル の 疲 労 強 度 に 乗 じ る こ と に よ り 疲 労 強 度 評 価 式 を 構 築 す る .

図 -2.8  解 析 パ ラ メ ー タ の 定 義

ギャップ幅 g 

パラメータ 設定した数値

板厚

T(mm) 6.0、12.0、24.0、48.0

未溶着長さと板厚の比 2a/T

0.1、0.2、0.3、0.4、

0.5、0.6、0.7 余盛厚と板厚の比

Sd/T 0、0.1、0.2、0.3、0.4

余盛幅と板厚の比 Sw/T

0.6、0.75、0.85、1.0、

1.5、2.0、2.5、3.0 未溶着長さの偏心量と板厚

の比Ea/T 0、0.05、0.1、0.15 余盛位置の偏心量と板厚の

比Es/T

0、0.05、0.1、0.15、

0.2、0.25、0.3 ギャップ幅と板厚の比

g/T 0、0.02、0.04、0.06、0.08

表 -2.5  解 析 パ ラ メ ー タ

(1)  板 厚 の 影 響  

  疲 労 き 裂 進 展 解 析 よ り 求 め た200万 回 疲 労 強 度 と 板 厚 Tの 関 係 を図 -2.9(a)に 示 す . こ の 図 で は T を 6,12,24,48mmと 変 化 さ せ , そ の 他 の パ ラ メ ー タ を 一 定 ( 基 準 モ デ ル ) と し た 結 果 を 示 し て い る . な お , 図 の 縦 軸 と 横 軸 は 対 数 表 示 と し て い る . 疲 労 強 度 は 板 厚 T に 反 比 例 し て 低 下 し て い る .基 準 板 厚 24mmの 200 万 回 疲 労 強 度 で 除 し た 各 板 厚 モ デ ル の 無 次 元 疲 労 強 度 と 板 厚Tの 関 係 を図 -2.9(b)に 示 す .図 中 の 破 線 は , 最 小 2乗 法 に よ り 求 め た 回 帰 直 線 で あ る . 無 次 元 疲 労 強 度 と 板 厚 の 関 係 は , 次 式 で 与 え ら れ る .

420 . 1 log 301 .

0 T

t (6≦T≦48mm) (2.2)

こ の 式 は , 疲 労 強 度 が 板 厚 の 0.301乗 に 反 比 例 す る こ と を 意 味 し て お り , こ の 低 下 度 は 横 突 合 せ 継 手 が 止 端 破 壊 す る 場 合 の 板 厚 効 果 10)と 同 程 度 で あ る .

(2)  未 溶 着 長 さ の 影 響  

  無 次 元 疲 労 強 度 と 2a/T の 関 係 を図 -2.10 に 示 す .図 中 の 破 線 は 最 小 2 乗 法 に よ り 求 め た 2次 の 回 帰 曲 線 で あ る .2a/T が 大 き く な る に し た が っ て ,無 次 元 疲 労 強 度 は 減 少 し て い る . こ の 関 係 を 2 次 式 で 表 す と , 以 下 の よ う に な る .

370 . 2 ) / 2 ( 052 . 4 ) / 2 ( 500 .

2 2

2a a T a T (0.1≦2a/T≦0.7) (2.3)

4 5 6 7 8 910 20 30 40 50 60 0.5

1

板厚T(mm) (b) 無次元疲労強度 1.5

εT=−0.301・logT+1.420

図 -2.9  疲 労 強 度 と 板 厚 の 関 係

4 6 8 10 20 40 60

20 30 40 50 60

200(N/mm2 )

板厚T(mm) (a) 200万回疲労強度

(3)  未 溶 着 部 の 偏 心 の 影 響  

  未 溶 着 の 偏 心 量Eaと 板 厚 Tの 比 Ea/T=0を 基 準 と し て 求 め た 無 次 元 疲 労 強 度 と Ea/T の 関 係 を図 -2.11に 示 す. Ea/T の 値 が 大 き く な る に し た が っ て ,無 次 元 疲 労 強 度 は 低 く な っ て い る . こ の 関 係 を 1次 式 で 表 す と , 以 下 の よ う に な る .

001 . 1 ) / ( 564 .

0 Ea T

Ea (0≦Ea/T≦0.15) (2.4)

0 0.2 0.4 0.6 0.8

1 2

未溶着長さ/板厚 (2a/T) T=48

T=24 T=12 T=6

0.5 1.5 2.5

ε2a=2.500(2a/T)2

−4.052(2a/T)+2.370

図 -2.10 疲 労 強 度 と 未 溶 着 長 さ の 関 係

0 0.1 0.2

0.5 1 1.5

未溶着部の偏心量/板厚 (Ea/T) T=6 T=12 T=24 T=48

εEa=-0.564(Ea/T)+1.001

図 -2.11疲 労 強 度 と 未 溶 着 偏 心 量 の 関 係

(4)  余 盛 厚 の 影 響  

余 盛 厚 Sdと 板 厚 Tの 比 Sd/T =0.2を 基 準 と し て , 無 次 元 疲 労 強 度 と Sd/T の 関 係 を 求 め た 結 果 を図 -2.12に 示 す .Sd/T が 大 き く な る に し た が っ て , 無 次 元 疲 労 強 度 が 高 く な っ て い る .た だ し ,Sd/Tの 値 が あ る 程 度 大 き く な る と ,疲 労 強 度 の 上 昇 が 鈍 く な る 傾 向 に あ る . こ れ は , 余 盛 が あ る 程 度 以 上 大 き く な る と , 余 盛 で 分 担 す る 応 力 が 飽 和 す る た め で あ る . こ れ は , 面 内 ガ セ ッ ト や 面 外 ガ セ ッ ト の 高 さ が そ の 幅 に 比 べ て あ る 程 度 以 上 大 き く な る と , 溶 接 止 端 の 応 力 集 中 が 飽 和 す る の と 同 じ メ カ ニ ズ ム で あ る . 無 次 元 疲 労 強 度 と Sd/T の 関 係 を 2次 式 で 表 す と , 以 下 の よ う に な る .

803 . 0 ) / ( 431 . 1 ) / ( 012 .

2 Sd T 2 Sd T

Sd (0≦Sd/T≦0.4) (2.5)

0 0.2 0.4

0.8 1 1.2 1.4

T=48T=24 T=12T=6

余盛厚/板厚 (Sd/T)

εSd=-2.012(Sd/T)2

+1.431(Sd/T)+0.803

図 -2.12 疲 労 強 度 と 余 盛 厚 の 関 係

0 1 2 3 4

0.8 1 1.2 1.4

T=48T=24 T=12T=6

余盛幅/板厚 (Sw/T)

εSw=-0.093(Sw/T)2

+0.524(Sw/T)+0.629

図 -2.13 疲 労 強 度 と 余 盛 幅 の 関 係

(5)  余 盛 幅 の 影 響  

  無 次 元 疲 労 強 度 と Sw/Tの 関 係 を図 -2.13に 示 す . Sw/T の 値 が 大 き く な る に し た が っ て ,無 次 元 疲 労 強 度 も 高 く な っ て い る .た だ し ,Sw/T の 値 が あ る 程 度 大 き く な る と , 疲 労 強 度 の 上 昇 は 鈍 く な る 傾 向 に あ る . こ の 関 係 を 2次 式 で 表 す と , 以 下 の よ う に な る . な お , 疲 労 強 度 の 上 昇 が 鈍 く な る メ カ ニ ズ ム は , 余 盛 厚 の 影 響 と 同 じ で あ る .

629 . 0 ) / ( 524 . 0 ) / ( 093 .

0 Sw T 2 Sw T

Sw (0.6≦Sw/T≦3.0) (2.6)

(6)  余 盛 位 置 の 偏 心 の 影 響  

  余 盛 位 置 の 偏 心 量 Es と 板 厚 Tの 比 Ea/T=0を 基 準 と し た 無 次 元 疲 労 強 度 と Es/Tの 関 係 を図 -2.14に 示 す .Es/T の 値 が 大 き く な る に し た が っ て , 無 次 元 疲 労 強 度 は ほ ぼ 直 線 的 に 低 下 し て い る . こ の 関 係 は , 以 下 の 式 で 与 え ら れ る .

007 . 1 ) / ( 344 .

0 Es T

Es (0≦Es/T≦0.3) (2.7)

(7)  ギ ャ ッ プ 幅 の 影 響  

  疲 労 き 裂 進 展 解 析 よ り 求 め た 200万 回 疲 労 強 度 と ギ ャ ッ プ 幅 g と 板 厚 Tの 比 g/T と の 関 係 を図 -2.15に 示 す .こ こ で は g/Tの 値 を 0,0.02,0.04,0.06 お よ び 0.08と 変 化 さ せ , 板 厚 を 6,12,24 お よ び 48mmと し , 未 溶 着 長 さ と 板 厚 の 比 2a/T=0.5, 余 盛 厚 Sd/T=0.2, 余 盛 幅 Sw/T=0.85, 未 溶 着 長 さ の 偏 心 量 Ea=0, 余 盛 位 置 の 偏 心 量 は Es=0

0 0.2 0.4

0.6 0.8 1 1.2

余盛位置の偏心量/板厚 (Es/T) T=24 T=12 T=6 T=48

εEs=−0.344(Es/T)+1.007

図 -2.14 疲 労 強 度 と 未 溶 着 偏 心 量 の 関 係

を 一 定 と し た 場 合 の 結 果 を 示 し て い る . 板 が 厚 い 場 合 に は ,g/T が 大 き く な る に し た が っ て , 若 干 で は あ る が , 疲 労 強 度 が 高 く な っ て い る .

図 -2.16に , き 裂 長 さ に 伴 う 応 力 拡 大 係 数 の 変 化 を 示 す . ギ ャ ッ プ 幅 が 広 い ほ ど き 裂 が 短 い 間 の 応 力 拡 大 係 数 範 囲 が 小 さ く な っ て い る . こ れ が , 疲 労 強 度 に 対 す る ギ ャ ッ プ の 影 響 の 原 因 で あ る . 円 孔 か ら 発 生 す る き 裂 の 応 力 拡 大 係 数 に つ い て も 同 様 の 結 果 が 示 さ れ て い る .

g/T=0を 基 準 と し た 無 次 元 疲 労 強 度 と g/T の 関 係 を図 -2.17 に 示 す .図 中 の 破 線 は 最 小 2乗 法 に よ り 求 め た 回 帰 直 線 で あ る . こ の 式 は 以 下 の よ う に 与 え ら れ る .

998 . 0 ) / ( 412 .

0 g T

g (0≦g/T≦0.08) (2.8)

図 -2.15 200 万 回 疲 労 強 度 と ギ ャ ッ プ 幅 の 関 係

0 0.05 0.1

30 40 50

ギャップ幅/板厚 (g/T) 200 (N/mm2 )

T=6 T=12

T=24 T=48

図 -2.16 ギ ャ ッ プ 幅 が 応 力 拡 大 係 数 範 囲 に 及 ぼ す 影 響

0 0.4 0.8 1.2

300 350 400 450 500 550 600

g=0.00T g=0.02T g=0.04T g=0.06T g=0.08T T=24mm

き裂長さ a (mm) ΔK (N/mm3/2 )

以 上 の よ う に , ギ ャ ッ プ が あ る と き 裂 が 小 さ い 間 の 応 力 拡 大 係 数 範 囲 が 小 さ く な る も の の , ギ ャ ッ プ 幅 が 疲 労 強 度 に 及 ぼ す 影 響 は 小 さ い .