回答数は 385 名で、畜種別では乳用牛(の診療・衛生指導に従事する獣医師)が 255 名(66%)、肉用牛 が 259 名(67%)、豚が 91 名(24%)、鶏が 34 名(9%)、その他が 35 名(9%)であった(複数選択可 であることから重複がある)。
各項目の認知度は、日本の薬剤耐性(AMR)対策アクションプランは約 5 割で、畜種別で見ると豚、鶏、
その他が高く 6 割以上であった。畜産分野における抗菌剤の責任ある慎重使用の徹底に関する基本的な考え 方を農林水産省で取りまとめた「畜産物生産における動物用抗菌性物質製剤の慎重使用に関する基本的な考 え方」(http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/koukinzai.html#prudent_use)は約 8 割であった。
また、「適切な診断に基づいて抗菌剤の使用を真に必要な場合に限定する等を日頃の診療で心がけている」
のは約9割で、全畜種で高く、「抗菌剤を使用する機会を減らす目的で使用衛生管理の改善やワクチンによ る感染症予防を指導したことがある」のは約 9 割で、畜種別では豚及び鶏で高かった。「日々の診療におい て、抗菌剤の使用に当たり、薬剤感受性試験を実施している」のは約 7 割半ばで、畜種別では豚で高く、
「抗菌剤を用いた治療に置いて、飼料にどのような抗菌性飼料添加物が混ぜられているか意識している」の は約 6 割で、畜種別では豚、鶏、その他で高かった。
前年度調査へ参加していた臨床獣医師の約3割が、今年度の調査に参加した。前回調査と比較して「日本 の薬剤耐性対策アクションプランの認知」7.3%上昇していた。その他の項目は±5%以内の変動で大きな変 動は認められなかった。産業動物臨床獣医師の認識をさらに高めていくために、抗菌剤治療ガイドブックや 動画等慎重使用のために作成したツールを用い、講習会等の場でより積極的に啓発活動を行っていく必要が ある。
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表 122 産業動物臨床獣医師の各項目の認知度等(%)
全体 乳用牛 肉用牛 豚 鶏 その他
2017 n=534
2018 n=385
2017 n=362
2018 n=255
2017 n=346
2018 n=259
2017 n=131
2018 n=91
2017 n=57
2018 n=34
2017 n=47
2018 n=35
日本の薬剤耐性対策アクションプラン 44.4 51.7 34.8 44.7 35.3 45.2 61.1 60.4 64.9 70.6 66 74.3 畜産物生産における動物用抗菌性物質製剤
の慎重使用に関する基本的な考え方
77 80.3 73.2 80 76 78.8 87.8 82.4 91.2 85.3 78.7 80 適切な診断に基づいて抗菌剤の使用を真に
必要な場合に限定する、そして、使用する 必要がある場合は、有効な抗菌剤を適切に 選ぶとともに、必要最小限の使用量とする ことを日頃の診療で心がけている
90.8 91.9 89 90.2 90.5 91.1 95.4 96.7 98.2 100 93.6 94.3
抗菌剤を使用する機会を減らす目的で使用 衛生管理の改善やワクチンによる感染症予 防を指導したことがある
87.8 88.1 86.5 87.1 87.3 88.8 96.2 95.6 100 94.1 76.6 68.6
日々の診療において、抗菌剤の使用に当た り、薬剤感受性試験を実施している
66.3 76.1 69.3 81.5 65.6 71.8 75.6 80.2 61.4 67.6 61.7 74.3 抗菌剤を用いた治療において、飼料にどの
ような抗菌性飼料添加物が混ぜられている か意識している
58.4 61 50.3 51 56.1 56.4 74.8 78 84.2 79.4 66 74.3
引用文献
1. 大曲貴夫ら.“厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業) 平成 28 年度分担研
究報告書 医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究(H28-新興行-一般-003) 国民の薬剤耐性に関 する意識についての研究”.2017
2. 大曲貴夫ら.“厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業) 平成 28 年度分担研
究報告書 医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究(H28-新興行-一般-003) 国民の薬剤耐性に関 する意識についての研究”.2018
3. 中浜力.一次医療機関におけるAMR活動の検証.シンポジウム「AMR対策アクションプランの検証」2019. 第
93 回日本感染症学会総会 (名古屋)
4. 中浜力. “外来経口抗菌薬の使用の現状” 臨床と微生物 2017 年 44 巻 4 号
5. 具芳明ら. “厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)平成 29 年度分担研究報
告書 地域連携に基づいた医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究(H28-新興行政-一般-004) 外来 における抗菌薬適正使用を推進、支援する手法に関する研究”.
6. 具芳明、藤友結実子、添田博、中浜力、長谷川直樹、前﨑繁文、前田真之、松本哲哉、宮入烈、大曲貴夫.全国の
診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査.日本化学療法学会雑誌 2019: 67(3); 295-307.
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今後の展望
本報告書は、昨年に引き続き、ワンヘルスの視点から、我が国におけるヒト、動物、農業、食品及び環境 の各分野の薬剤耐性菌の状況並びにヒト及び動物の抗菌薬の使用量(又は販売量)に関する情報を一つに集 約して掲載した。本報告書を踏まえて、多分野間の連携・協力が進むことによって AMR 対策の更なる前進が 期待されるとともに、今後も先進的な調査への取組を続けることが、世界の AMR 対策をリードする上でも重 要と考えられる。本報告書の一部は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016–2020」発表後のデータ を含んでおり、2017 年に引き続き、2018 年の全抗菌薬使用量および、経口セファロスポリン薬、経口マク ロライド薬、経口フルオロキノロン薬を含む経口抗菌薬の使用量においては、2013 年のデータと比較して減 少傾向にあるが、2020 年の目標値を達成するためには、さらなる AMR 対策の普及が必要である。 具体的に は、抗微生物薬の手引き等を参考とし、急性気道感染症を中心に不必要な抗菌薬処方を減少させる必要があ る。また、地域毎の耐性菌情報が整いつつあるため、処方抗菌薬の種類についても、地域の状況を参考にし た選択が望まれる。さらに、抗菌薬適正使用を進める上で、国民および医療従事者に対して様々な手法を用 いた教育啓発活動を継続していく必要がある。
また、動物においては、販売量から推計した使用量において 2013 年と比較して 2017 年では、主にマクロ ライド系(水産動物用のエリスロマイシンや家畜用の 16 員環のマクロライド)と家畜用のペニシリン系薬の 増加が認められていることが、その増加の原因と考えられる疾病の制御等の対策が必要である。2020 年の目 標値としている大腸菌の薬剤耐性率については、ヒトの医療で重要な第3世代セファロスポリン及びフルオ ロキノロン系に対する耐性率は低い水準に保たれている。一方、テトラサイクリンに対する耐性率は 2014 年 と比較して 2015 年には減少しているが、2015 年以降減少が停滞していることから 2020 年の目標値を達成す るためには、生産者、獣医師の行動変容を促し、更なる抗菌剤の慎重使用の徹底等が必要である。
本報告書においては、2018 年度に引き続き、ヒト、動物、農業における抗菌薬の使用量(又は販売量)の 比較が可能となり、各分野で使用されている抗菌薬の系統毎の使用量の違いが示されたこと、疾病にり患し た愛玩動物の薬剤耐性率が報告されたこと、食品分野の薬剤耐性菌や環境における薬剤耐性菌の動向データ が充実したことなど大きな進展が見られ、来年以降も各分野の動向調査において進展が期待される。さらに、
今後は、薬剤耐性対策アクションプランの取組に掲げられた、ヒト、動物、食品等における薬剤耐性に関す る動向調査・監視に関するデータ連携等の取組により、日本における薬剤耐性対策に貢献していくことが期 待される。