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「 環黄海経済圏」 と東北アジア国際分業 の新展開

第 4 章 国際分業構造 の転換 と

第 2 節 「 環黄海経済圏」 と東北アジア国際分業 の新展開

では国際分業 はどのような方向へ転換 されるべきなのか。問題 は、国際分業の進展が、専 ら大企業を 中心 とする産業構造の高度化を通 じて行われるために勢 い多国籍企業化 に繋が り、その結果産業組織の ダイナ ミズムや産業集積の活性化 には必ず しも結びっいてはいないというところにある。従 ってそうし

‑た結合を如何に達成す るかがわれわれの基本的な課題 とされなければな らない。

その点で」東北アジア国際分業が新 たな展開を開始 していることが注 目される。すなわちそれは 「環 黄海経済圏

の形成 と発展である。

‑ 1.

「環黄海経済圏

を牽引する北九州 ・山口地方

まず東北アジア分業が、かっての日本一国中心体制か ら次第 に日本 ・韓国 ・中国の三 ヶ国体制へ と 変貌を遂げていているということを指摘 しておかなければな らない。すなわち、東北 アジア貿易にお ける各国貿易の比重の変化をみると

、1 9 8 5 ‑8 6

年平均では日本の比重が

5 5 . 5 %

と圧倒的であったが、

8 9 ‑9 0

年平均では日本のそれは

4 1 . 6 %

に迄低下 しそお り、それに変わって韓国 (同 じく

1 3

.1%か ら

2

1.

6 %

へ) と中国 (同 じく

1 9 . 6 %

か ら

2 4 %

へ)のそれが大幅に上昇 しているのである (注

3)

。そ して、

こうした三国貿易体制を支えてい,るのが産業構造上の補完性っまり技術集約度や労働集約度の相違、に 基づ く産業構造上の相違である。つまり、(イ) 日本 は最 も技術集約度が高 く非労働集約 的な産業す なわち資本財産業や耐久消費財産業 に特化 し、(ロ)韓国は丁度その中間に当たる耐久消費財や技術 ・ 資本集約的中間財に特化 し、(‑)中国 (東北地区) は日本 とは逆に技術 ・資本集約的中間財、労働 集約的中間財 さらには非耐久消費財等 に特化 しているのである (図表

Ⅳ‑4‑1 [1]

参照)0

無論 こうした産業構造上の相違 に基ず く分業 は他方では技術集約度の相違 に基づ く分業をも意味す るので (図表

Ⅳ‑4‑1 [2]

参照)、それは付加価値 レベル別分業 にも繋がるのであるが、 ここで 重要なのは、それが単 に産業構造上の補完性 に基づ く分業であるだけではな く、産業集積地域間分業 で もあるということだ。すなわち、 日本 ・韓国 ・中国の三国間貿易を支えているのは日本の場合北九 州 ・山口地方の産業集積である 北九州 ・山口地方 と韓国及び中国 との貿易関係をみてみると、中国 との間では生産要素間分業を背景 に垂直分業的色彩が依然 として濃いが、韓国 との問では既に付加価 値 レベル別分業の度合いを強めてお り、それが三国間貿易を牽引 しているのだ (注

4)

0

例えば

、1 9 85

年か ら

9 0

年 にかけての北部九州 (福岡県 と大分県か らなる地域)及び山口県の対韓輸 出の品目別構成の推移をみてみると、従来 この地域の輸出を主導 してきた素材型重化学工業製品の典 型である鉄鋼のシェアは

1 9. 6%

か ら

1 2

.4%‑ と大幅に低下 しているのに対 して、加工型製品である電 気機械のそれは逆 に

1 8. 2%

か ら

2 5. 9%

へ と大幅に上昇 している そ して、 こうした対韓輸 出の高付加 価値化 は、輸出構造の高度化 に反映 されているだけではな く、同一産業、同一製品内で も進展 してい る。電気機器の場合、半導体等電子部品や

IC

の対韓輸出の増加率が電気機器全体のそれを大幅に上 回 ってお り、一般機械の場合 も、原動機や金属加工機械のそれが一般機械全体のそれを上回 っている

ことか らもそれは窺える。つまり対韓輸出においては、高付加価値製品のウエイ トが高 まるとともに 製品の付加価値率 自体 も上昇 しているのである。

対韓貿易における高付加価値化 は、単 に輸出だけではな く輸入 にも反映 され始めていることも見落 とせない。例えば、同 じく

8 5

年か ら

9 0

年 にかけての北部九州及び山口県の対韓輸入構成の推移をみる と、やはり電気機器のシェアが

1 4

.

4

%か ら

1 5. 9%

へ と僅かではあれ上昇 している点が注 目され る。 そ れは、例えば電気産業のような高度産業 において も、高付加価値製品では日本側が依然 として強い競 争力を保持 しているが、反面標準的な電子製品や汎用品では韓国側が 日本 に匹敵す るかあるいはそれ を上回る競争力を獲得 し始めているということを意味 している。

このように北九州 ・山口地方 と韓国 との問では、既 に付加価値 レベル別分業が形成されつつあるが、

韓国 としてはこうした対 日貿易高度化を対中国貿易の拡大 と高度化の牽引力 として活用 しているとい うことが重要である。同国の対中国貿易をみると、

1 9 9 7

年か らスター トし

8 0

年代後半 には大幅に増大 し

、8 5

年の

1 1 . 6

億 ドルか ら

9 0

年 には

3 8. 5

億 ドルへ と僅か

5

年間に

3. 3

倍 も拡大 しているのであるが (注

5)

、注 目すべ きはその商品構成の高度化である。すなわち、中国か らの輸入で は繊維製品が ほぼ

4

割、農水産物 ・食糧 と鉱物性生産物がそれぞれ

2

割を占め大半が軽工業品及び一次産品であるのに対

して、中国への輸出は繊維品が4割弱を占めると同時に機械 ・電子 ・電気等の高度製品が3割近 くを 占めるに至 っているのである。

か くして北九州 ・山口地方 は、 自らの産業構造の高度化及び高付加価値化を通 じて日本 ・韓国 ・中 国三国貿易の高度化を主導 しているのだが、それは国家間の貿易発展 に寄与 しているだけではな く、

北九州 ・山口地方の産業集積が黄海を取 り巻 く地域 における産業集積地域間分業の発展及びそれを基 盤 として形成 される地方経済圏すなわち 「環黄海経済圏」 (注6)の形成 ・発展 に・も貢献 していると いうことが重要である。

2.

「環黄海経済国」 と北九州産業集積の活性化

しか もここで見逃 してほな らないのは、北九州 ・山口地方が中小企業の比重が極 めて大 きい産業組 織を有 している集積地域であるということだ。例えば福岡県の場合、サービス業を中心 に第三次産業 の比率が高 く (第三次産業比率 は全国が

6 7%

[うちサー ビス業 は

1 7

.

1%]<1 9 9 3

年度> に対 して同県 のそれは

7 5. 1 %

[同

1 8. 7%] <1 9 9 4

年度>)従 って製造業のそれが相対 的に低 い とはいえ (製造業比 率 は全国が

2 4. 8%<1 9 9 3

年度> に対 して同県 は

1 7. 6%<1 9 9 4

年度>)、製造業 の役割 には依然 として 無視 Lがたいものがあ り且つそこでは中小企業 (事業所規模 :従業者数

4

〜2 9 9

人、

1 9 9 5

年) の割 合が事業所数ベースで

9 8. 9%

、従業員ベースで

71 . 1 %

、製造品出荷額等で

5 1 . 5%

と他 の地域同様大 き

いのである。

このように考えるな らば、北九州 ・山口地方がその発展を牽引す る国際分業の下での高付加価値化

‑8 8

はそれが産業構造 ・産業組織 ・産業集積 と結 びっ くことによって単なる多国籍企業内分業 に堕す るこ とな く産業構造の高度化 とともに産業組織のダイナ ミズムの保持 さらには産業集積の活性化 にもそれ な りに繋′が っているものと考え られるのである (注7)0

第 . 3 節 「 東北 ア ジア産業集積地域 ネ ッ トワー ク」 の意義

1.東北アジア国際分業の発展 と新潟県

われわれは、 こうした国際分業の新たな展開がまさに東北 アジアの一角において形成 されっつある ということに注 目しなければな らない。従 ってそれを新潟県を も対象 とする環 日本海分業 にも波及 さ せる必要があるが、環黄海経済圏の成功 は、環 日本海分筆 をこの地域の産業構造高度化 ・産業組織活 性化 ・産業集積地域 ダイナ ミズムに結び付 けることに成功するな らばその可能性が 日本海地域 にも存 在するということを示唆 している。 さらに、そこに近い将来 における発展可能性を持っ北方地方を も 加えることによって東北 アジア国際分業 (注8)を発展 させ得 るな らば、それは東北 アジアにおける 産業集積地域活性化のための枠組みづ くりに大 きく貢献することになるだろう。その意味で 日本海沿 岸地方屈指の産業集積地域を擁す る新潟県が東北 アジア国際分業の発展を主導することが期待 される

のである。

2.

「東北アジア産業集積地域ネ ッ トワーク」 と産業集積地域

そこで東北アジア国際分業の発展が何故産業集積地域の活性化 に結びつ くのか ということを明 らか にしておかなければな らない。それは、重層的地域構造 という特質を有する東北 アジアにおいては、

国債分業が、「自然経済圏」(注

9)

との関わ り合いだけではな く、「\地域共同体」(注

1 0 )

の基盤 とし ての役割をも担 っているのであるが、そうした役割を通 じて形成 される共同市場 と生産要素間分業 と いう需要 ・供給両面のネ ットワークか らなる 「東北アジア産業集積地域 ネットワーク」が産業集積地 域の活性化に対 して重要な役割を果た し得 る‑ という点に係わ っている。以下で この点を解明 してみ

よう。

(1)東北 アジア国際分業の特質 と産業集積地域 ネットワーク (》共同市場の形成

まず需要サイ ドの共同市場か らみてみよう 東北 アジア地域の特質である重層性 は国際分業関係 にも反映 している。東北 アジアは発展段階が異なる国 ・地域か ら構成 されてお り水平分業が直ちに 成立 し得 る訳ではない。 また生産要素の賦存状況が異なっているために比較生産費 に基づ く分業だ けで も済まされない。従 って国際分業 自体 も重層的な性格を帯 びざるをえないのである 問題 は、

こうした重層性を背景 とす るこの地域の非同質性が 「共同体」が本来その基盤 とす る 「共同市場」

の形成を阻んでいるということだ。 これに対 して、 ヨーロッパ共同体 (EU)の場合 は西 ヨーロッ パ諸国における相対的に高い同質性 に基づ いて 「共同市場」の形成か ら出発す ることがで きたの であり、その点で東北 アジアはヨーロッパの場合 とは異なった条件下 にあるということを見落 とし てはな らない。 この地域では既 に述べたように (本章<注

1 0 >

参照)「地域協力」 が果 たす役割 が それだけ大 きいということになる。だが ここで留意 しなければな らないのは、 にもかかわ らず 「共 同市場」形成の条件が醸成 されつつあるという点だ。 この地域 における国際分業が 日本中心の一極

体制か ら日韓中の三国を中心 とする三極体制へ と移行 しつつあるということは、 「三国共同市場」

形成の可能性が次第 に強 まりつつあるということを示唆 している。何故な らば三極体制‑の移行は、

韓国が 日本へまた中国が韓国へ とキャッチア ップす る過程で もあ り、それは自ずか ら三国間の平準 化を促進 し同質性を高 めるということを意味 しているか らだ。 しか も平準化 ・同質化の背景をなす 貿易構造の水平分業化 自体が貿易の拡大すなわち市場の拡大効果を発捧す るということも見落 とせ ない。 (例えば、先 に指摘 した北九州 ・山口地方の対韓貿易 は両者の貿易構造 の水平分業化 に比例 して

1 9 8 0

年か ら

8 9

年 にかけての

1 0

年間に

1 2 8 . 3 %

増大 しているが、同地方 の貿易全体が同期間 に逆 に

5 . 9 %

減少 した ことと比べればそれが如何に大 きな市場拡大効果 を生 んだか ば容易 に理解で きよ う。 さらに九州地域全体 について も、水平分業化 と市場拡大 との間に密接な関係が存在するという いうことは前出図表

Ⅳ‑4‑6

における

[ 3]

[ 2]

との比較か らも明 らかであろ う。) 従 って

「東北 アジア共同市場」 も日韓中三国が中心 となってそれを推進するな らば十分実現 の可能性があ るということを指摘 しておかなければな らない (荏ll)0

I

さらに、「東北 アジア共同市場」構想 は同 じく前述 した文脈 (本章<注

1 0 >

参照) か ら 「東 ア ジ ア共同市場」構想 にも繋がるのだ ということも指摘 しておかなければな らない。東 アジアで進展 し ている域内相互依存関係深化 は、東 アジア諸国の同質化を促 しているが、それは 「東アジア共同市 場」形成の条件が次第 に整 いっあるということを意味 している。従 って、東 アジアにおいて も有力 な地位を占める日韓中三国が中心 となって推進する 「東北 アジア共同市場」 は 「東アジア共同市場」

の形成 にとって も重要 な意義を持っ ものであると言えよう。 (上述 したように [本章第

2

節 および

<注

7 >

参照]、九州地域 は一方で環黄海分業の発展を牽引 しなが ら他方で はそれを対束 アジア分 業の発展 に結びっけることに成功 しているが、そのことは東北 アジアにおける 「共同市場」形成が 東 アジアのそれにも大 きく関わっているということを示唆 している。)

(塾生産要素間分業

国際分業構造 における重層性 に関 して もう一つの注 目点 は、それが東北 アジア国際分業 に対 して

「生産要素間分業」 という性格を付与することである。「生産要素間分業」 とは異なる生産要素 の間 で分業が行われるというとを指 しているが (注

1 2 )

、その ことは国際的な産業集積地域間ネットワー ク形成の可能性を示 してお り、従 って東北 アジアにおいて もそ うしたネットワークすなわち 「東北 アジア生産要素間分業 ネッ トワーク」が形成 される可能性があるということを示唆 している。

ところで 「生産要素間分業」 と産業集積地域 との関係をどのように説明す るのか という問題 につ いては、産業集積地域の競争力を決定する理論である 「ダイヤモ ンド」理論がさし当 り一つの手掛 か りをわれわれに提供 して くれる。「ダイヤモ ンド」理論 とは、 (イ)要素条件、 (ロ) 企業戦略、

構造およびライバル関係、 (‑)需要条件、(ニ)関連、支援産業‑ という四つの要素か らなる四者 関係すなわち 「ダイヤモ ンド」関係におけ/る相互作用および 「ダイヤモ ンド」 自体の高度化 によっ て産業集積地域の競争力が決定 されるとす るものであるが (注

1 3 )

、 ここでの文脈 において重要 な のは 「要素条件」である。「要素条件」 とは、(イ)人的資源 (労働力、熟練度、 コス ト等)i(ロ) 物的資源 (原燃料、土地、水等)、(‑)知的資源 (大学、研究機関等)、 (ニ)資本資源 (資本、資 金等)、(ホ) インフラス トラクチュア一等であるが (注14)、「生産要素間分業」 とこの 「要素条件」

との結びっ き方如何が集積地域の競争力に影響を与えるか らだ。すなわち、代替的要素間分業 は負 の相互作用を通 じて ダイヤモ ン ドを レベルダウンさせるし、補完的要素間分業の場合には逆 に正の 相互作用を通 じてそれを レベルアップさせ るのである (前述 した 「規模の経済性」論 との関連 で

‑9 0‑

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