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環境社会配慮(初期環境評価の支援)

ドキュメント内 モンゴル国バガヌール・シベオボ炭鉱 (ページ 33-37)

第 6 章 CCT モデル発電所の検討

6.3 環境社会配慮(初期環境評価の支援)

モデル発電所計画について、プレFS 調査の実施に合わせて、初期環境調査・評価を実施した ので、以下に、その結果の最重要項目を要約した。

(1) 重要な関連計画(国土空間管理計画)

インドネシアの環境影響評価は、地方政府が管轄する。大規模設備の立地に関しては、管轄地 方政府の上位計画、特に国土空間管理計画(Spatial Plan)との整合性が重要になる。ボジョネガ ラを管轄するバンテン州とセラン県の当該計画は、本計画候補地について、次のような方針を示 している。

(a) バンテン州の国土空間管理計画

 国の国土空間管理計画(National Spatial Plan)と中期開発計画(2009-2014)がインドネ シア全土から指定した5つの経済特区(KEK)のひとつが、計画候補地のあるBojonegara 経済特区で、バンテン州の国土空間管理計画でも2011年に承認している。

 沿岸部と河川境界のグリーンベルト帯の保全を重視している。

(b) セラン県の国土空間管理計画

 計画候補地のあるBojonegara経済特区は、セラン県の国土空間管理計画も2011年に承認 した。

 州の計画と同様、沿岸部と河川境界は重要な保全対象となっている。

 計画候補地のあるKramatwatu とBojonegara郡は工業地帯になっており、PLN が所有す る計画候補地はジャバベカ工業団地管理会社が管理する工業団地用途地である。

(2) 環境社会影響

(a) 土地利用・地域の国土空間管理計画(Spatial Plan)の規定

本計画は、国、州、県のそれぞれの行政単位が示す上位計画としての国土空間管理計画におい て、土地利用目的に合致する。

(b) 貧困層 ・先住民族・少数民族

候補地周辺には、先住民、少数民族は居住していない。候補地周辺には、スラム化した集落は 見られない。

(c) 自然保護区、保全区域

海岸線(満潮位)より100から200m幅の陸地、敷地南側を流れる川北岸から50-75 m幅の河 岸部は、グリーンベルトとして、護岸・魚類資源保護・汚染浄化能力維持などの目的で保全す ることが求められている。国土空間管理計画では半島西側山間部の現在のプランテーション区 域を、保護林として保全する計画が見られる(候補地は半島東の沿岸部)。候補地が面するバ ンテン湾の沖合は、州の国土空間管理計画が海洋保全区域に指定している。一方、県の当該計 画は、同海域を保全区域に指定していない。

(d) 文化遺産

候補地境界から北に2 km強に、サントリ丘(Bukit Santri)と呼ばれるイスラム教徒の宗教遺 跡があり、遠隔地からも参拝者が訪れる。

(e) 影響を受けやすい自然、生物・生態系への影響

候補地の海岸線沿い、南側を東へ流下する河川河口部あたりに、マングローブが生育する。候 補地沖合約1.7kmのところに、約9ヘクタールのサンゴ礁がある。更に、北東40度方向7km 沖合にはパンジャン島(Pulau Panjang)があり、この島の周辺は地元の漁業にとって優れた漁 場となっており、海藻養殖場でもある。河川沿いと海岸線のグリーンベルトの保全とサンゴ礁 の保全を検討する必要がある。

(f) 地形、海況、地質、低質

プロジェクトの敷地面積は約170ヘクタールで、盛土による土地造成に、土石調達量が大きく なる。プロジェクト実施段階では、土砂の調達先の選定プロセスで、注意が払われる必要があ る。候補地は、なだらかにカーブした湾奥部に面し、非常に遠浅になっている。約2.5から3.5 キロの揚炭桟橋・突堤が想定されるので、浚渫等を伴う場合は海況にも影響する。

(g) 埋立て、浚渫、地盤沈下等の問題

候補地の広い範囲が低湿地で、満潮時に水没する部分も多いため、埋立てが必要になる。石炭 運搬用の突堤建設に伴う浚渫の必要性は、現段階では不確定。FS調査で、浚渫が必要になっ た場合は、海況への影響、浚渫土の処理、近傍のサンゴ礁などへの影響を検討する必要が生じ る。

(h) 大気汚染

本計画で想定される USC を採用した発電所の場合、従来型(SC)と比べると、CO2の排出量 は従来型より低減されるが、SO2、NOx、ばいじんの影響は免れないので、環境法規の排ガス 基準の遵守に加え、できるだけ環境に負荷を与えない排ガス抑制策が求められる。

(i) 水質汚染(汚濁)

海の地形、海況から、外洋に面した場所と比較すると、温排水が拡散しにくいことが考えられ る。サンゴ礁等にストレスを与えないよう、FS 調査で放水口設計時に温排水の拡散シミュレ ーションを実施することを要望する。

(j) 石炭の運搬・保管、石炭灰の管理

粉塵の飛散防止システムが重要である。石炭灰の灰捨場(Ash Pond)は、浸出液による地下水 や公共水域の汚染を防止するため、適切な対策が取られる必要がある。

(k) 騒音・振動・悪臭等

敷地境界での環境基準の遵守が重要で、法規上も求められる敷地境界での環境モニタリング と標準的な防音・消音機器の採用、敷地境界での防音壁などが標準的な対策として、想定さ れる。

(l) 住民移転

候補地の敷地境界にあたる南側河川沿いの100軒強の住居に暮らす住民。彼らは、厳密には 敷地外に暮らしているが、現状の生活と生計を維持するための住民対話と支援策は、検討さ れなければならない。一方、計画候補地はPLNが土地を所有しており、ジャバベカ工業団地 管理会社が管理しているが、現在同敷地内で稲作・畑作を営む農民、養殖池を営む漁民が、

60人弱いる。彼らの立ち退きについても、配慮が必要である。

(m) 水利用

冷却水は海水が利用される。その他の用水使用(工業用水、純水、上水)については、FS調 査で詳細検討する予定である。深井戸が選択された場合には、地域の水資源量・水利用に影 響があるかどうか、FS調査時に検討する必要がある。

(n) 地域経済、産業活動、地域資源、社会インフラ、サービスなどへの影響

FSおよびEIA調査では、石炭運搬船、揚炭桟橋・突堤の計画時に、漁船航行、湾内交通に対 する影響を検討する必要がある。

(o) 被害と便益の偏在

地元に対しては、生活環境(大気・水環境)、生態環境(沿岸部や海域の植生、生態)や一次 資源(漁業資源)の確保のための対策費を検討する必要がある。

(3) 影響の緩和策

前項の影響を回避または最小化するために、現段階で想定できる必要な緩和策を表 6.2 に整理 した。FS調査段階で想定されるEIA調査では、具体的な緩和策の検討のための詳細なアセスメン トが、全項目について必要である。

表 6.2 本計画による環境社会影響の緩和策(初期環境評価による概念的整理)

項 目 緩 和 策

自然保護区・保全 区域

敷地境界グリーンベルトの確保

半島内陸部の保護林計画地の保全 文化遺産 Bukit Santri宗教遺跡の保護 自然・生態系への

影響

河川沿いと海岸線のマングローブ林とグリーンベルトの保全

サンゴ礁の保全

地形、地質 採石・採土事業に係るAMDAL承認と環境許可を取得した合法的な採掘業者からの盛土 材の調達

盛土用土砂の運搬 埋立て、浚渫、地

盤沈下等

埋立て・土地造成による地盤沈下防止と土砂流出防止

大気汚染 排ガス対策:最大着地濃度シミュレーション(SO2、NOx、ばいじん)の実施

排ガス対策:火力発電所排ガス基準(環境省規定No.21/2008)の遵守と環境保全 水質汚染 排水処理対策:火力発電所排水基準(環境省規定No.8/2009)の遵守と環境保全 石炭の運搬・保管、

石炭灰の管理

粉塵の飛散防止

灰捨場浸出液の流出防止

騒音・振動 計画候補地(建設予定地)の敷地境界での騒音・振動シミュレーション 住民移転 南側河川沿いの住民移転計画の策定

計画候補地内で農業、養殖業を営む人のコンサルテーションと立退き計画策定 被害と便益の偏在 地域環境整備費のための支援金の検討と実施

出典:調査団作成

(4) 環境影響のEIA事項(現段階で事象の発生が不明なもの)

負の影響の前提となる事象の発生と予測される影響を確定するために、FS/EIA時に必要となる 調査確認とアセスメント事項を表 6.3に整理した。影響が同定できた場合は、EIA 調査内で必要 な緩和策を新たに講ずることが必要である。

表 6.3 前表事項に加えFS/EIA調査時に実施すべき調査確認とアセスメント事項 調査確認・アセスメントの対象 確認とアセスメントの内容 実施時期 州と県の国土空間管理計画を管轄する部

署と海洋保全区域の確認

保全区域設定の目的と揚炭桟橋と突堤、

温排水の影響等

FS/EIA調査時

石炭運搬用の揚炭桟橋・突堤建設に伴う浚 渫の必要性の確認

海況・海洋底への影響、浚渫土の処理、近 傍のサンゴ礁、マングローブなどへの影響

FS/EIA調査時

温排水の拡散シミュレーションの実施 近傍のサンゴ礁、ベントス(底生生物) 浮遊期を持つ生物を含む対象海域の海洋生 物などへの影響

FS/EIA調査時

計画候補地および周辺海域の保護すべき 動植物と生態系の分布

動植物リストの作成、希少種・固有種と保 護すべき生態系の存在の有無、保護すべき対 象が同定された場合の保護策の策定

FS/EIA調査時

環境省有害廃棄物管理課あてレターと特 別許可確認

石炭灰の灰捨場の設置位置確認 FS/EIA調査時

(早期段階に)

施設用水の利用

(深井戸が選択された場合)

地域の水資源量・水利用への影響 FS/EIA調査時

石炭運搬船、揚炭桟橋・突堤の計画時の確

パンジャン島周辺を初めとする海域での 漁業活動と海上交通への影響

FS/EIA調査時

出典:調査団作成

(5) 本調査後の環境社会配慮プロセス

インドネシア側実施機関が本計画事業化の検討に入りフィージビリティ(FS)調査に進んだ場 合、実施機関はインドネシアの環境法に基づき、AMDAL を実施することになる。その際の手続 きの流れを再度示すと、次図のようになる。

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