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環境影響評価について

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 178-192)

7.1 環境影響評価に関する基本的な考え方

主要な建設材料であるコンクリートは,多量の資源を消費するとともに,コンクリート 構造物の建設により環境に様々な影響を及ぼす。一方,セメント原料や混和材として他の 産業分野の副産物や廃棄物を多量に使用し,最終処分場の延命化に寄与している。よって,

原材料の製造段階,コンクリート構造物の計画,設計,製造,施工,ならびに維持管理の 各段階における環境性に配慮することは社会的に非常に重要である。2017 年制定コンクリ ート標準示方書では環境性を要求性能の一つとして位置付けており,地球環境,地域環境,

作業環境等に対する適合性,景観等の社会環境に対する適合性について配慮する必要があ るとしているものの,安全性や耐久性のように具体的な性能照査の枠組みは示されていな い。しかし,昨今では環境側面に関連する法規類や参考となる情報が充実してきているこ とから,簡便な方法であっても環境性について検討することは意義深い。

環境性として検討すべき項目は多岐にわたるが,高炉スラグ微粉末を用いたコンクリー トでは,ポルトランドセメントの使用量が削減され,CO2 排出量や資源・エネルギー使用 量を削減できる上に,鉄鋼産業から排出される副産物を大量に消費できるなどの利点があ る。例えば,高炉セメント B種を用いた場合,セメント 1t あたりの CO2排出量は約 40%

削減されることが知られているが,高炉スラグ微粉末を混和材としてそれよりも高い置換 率で結合材に用いた場合では,さらに削減率は高くなる。

環境負荷低減効果を示すためには,対策の前後(例えば,高炉スラグ微粉末を用いる場 合と用いない場合)における条件を定量的に比較,評価することが望ましいが,概略値や 簡便な方法を用いて評価を行わなければならない場合もある。いずれの場合においても,

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原単位(インベントリデータ)などの基礎的情報は,公的機関などから公表される信頼性 の高い情報を用いて検討する必要がある。

コンクリート構造物の環境性に関する基本的な考え方については,2012 年制定コンクリ ート標準示方書[基本原則編]5 章「コンクリート構造物の環境性」および改訂資料に基 本的な考え方が述べられている。また,具体的な検討にあたっては,コンクリートライブ ラリー125「コンクリート構造物の環境性能照査指針(試案)」や,コンクリート技術シリ

ーズ 96「環境調和型コンクリート材料学の創造に関する研究委員会報告書」,コンクリー

トライブラリー134「コンクリート構造物の補修・解体・再利用における CO2 削減を目指 して」などを参考にすることができる。さらに,2017年 3月には JIS Q 13315-1「コンクリ ート及びコンクリート構造物に関する環境マネジメント-第 1部:一般原則」およびJIS Q

13315-2「コンクリート及びコンクリート構造物に関する環境マネジメント-第 2部:シス

テム境界及びインベントリデータ」が規格化されているので利用することが望ましい。環 境性に関する関連資料一覧を表-7.1に示す。

表-7.1 環境性に関する関連資料

資料名 発刊年 備 考

コンクリート標準示方書[基本原則編]5 章「コンク

リート構造物の環境性」および改訂資料 2012年 土木学会 コンクリートライブラリー125「コンクリート構造物の

環境性能照査指針(試案)」 2005年 土木学会 コンクリート技術シリーズ96「環境調和型コンクリー

ト材料学の創造に関する研究委員会報告書」 2011年 土木学会 コンクリートライブラリー134「コンクリート構造物の

補修・解体・再利用におけるCO2削減を目指して」 2012年 土木学会 JIS Q 13315-1「コンクリート及びコンクリート構造物

に関する環境マネジメント-第1部:一般原則」 2017年 - JIS Q 13315-2「コンクリート及びコンクリート構造物

に関する環境マネジメント-第2部:システム境界及 びインベントリデータ」

2017年 -

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7.2 高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの CO2削減量

セメント製造時における CO2 の排出は,焼成工程において以下の式(7.1)に示す,石 灰石(CaCO3)の熱分解や焼成の際の燃料の燃焼に起因している。

CaCO3→CaO+CO2↑ (7.1)

高炉セメント B種,改良型の高炉セメントC種および普通ポルトランドセメントのセメ ント 1t当たりの CO2排出量の計算例[7.1]を表-7.2に示す。高炉スラグ微粉末をセメン トの一部として置換することで,セメント製造時の石灰石・エネルギーの消費が少なくな るため,石灰石の熱分解や燃料の燃焼に起因する CO2 の排出量を削減することができる。

普通ポルトランドセメントに対し,高炉セメント B種では 330kg/t のCO2を削減すること ができ,改良型の高炉セメント C種では500kg/t程度で,高炉セメント B種と比較しても 1.5倍程度の削減が見込まれる。高炉セメント(B種)の2017 年度の生産高が1082万t で あったことから,以下の式(7.2)のとおり,普通ポルトランドセメントに対して 360万t の CO2の削減が見込まれる。

▲330kg/t×1082 万t(2017年度高炉セメント生産高)≒▲360万t (7.2)

表-7.2 セメント 1t 当たりの CO2排出量の一例

CO2排出源

CO2排出量(kg/t) CO2削減量(kg/t)

①普通ポル トランドセ メント

②高炉 セメント

B

③改良型の 高炉セメン C

高炉B 改良高炉C 普通ポルト比

①-②

普通ポルト比

①-③

高炉 B

②-③ 石灰石

起源 479.8 268.7 167.9 211.1 311.9 100.8

化石エネルギ

ー起源 288.3 168.7 100.9 119.6 187.4 67.8

計 768.1 437.4 268.8 330.7 499.3 168.6

(セメント協会 HP 2018年 2月LCIデータをもとに作成)

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7.3 高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの環境負荷低減率の算定 7.3.1 改良型の高炉セメント C 種のエネルギー原単位の試算

高炉スラグ微粉末粉砕時およびセメントの混合等にかかるエネルギー原単位を表-7.3 に示す。表中の値は,セメントメーカが保有する実績値としている。併せて,普通ポルト ランドセメントの製造エネルギーを示す。セメント製造時のエネルギーについては,セメ ント協会資料[7.2]により開示されたデータである。

高炉セメント B種および改良型の高炉セメントC種のエネルギー原単位を,以下の表-

7.4に示す。なお,高炉セメント B種は高炉スラグ微粉末の分量が42%とし,改良型の高 炉セメント C 種は分量が 65%として算出した結果である。改良型の高炉セメント C 種で は,普通ポルトランドセメントに比べ環境負荷低減率(省エネ率)で 56%,高炉セメント B種と比較しても33%の環境負荷低減効果が認められる。

表-7.3 製造過程におけるエネルギー原単位

項 目 エネルギー原

単位(MJ/t) 備 考

①高炉スラグの粉砕エネルギー 240 セメントメーカ実績

②高炉スラグ微粉末の混合エネルギー 147 セメントメーカ実績

③普通ポルトランドセメントの製造エネルギー 3480 セメント協会資料

表-7.4 高炉スラグ製造時および混合時のエネルギー原単位 項 目

エネルギー原 単位(MJ/t

省エネルギー量(MJ/t)

備 考 普通ポルト比 高炉B

普通ポルトランドセメント 3480

高炉セメントB 2266

1214 (省エネ率

35%)

③×0.58+①×0.42+②

改良型の高炉セメントC 1521

1959 (省エネ率

56%)

745 (省エネ率

33%)

③×0.35+①×0.65+②

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7.3.2 改良型の高炉セメント C 種の市場規模の試算および環境負荷低減効果

改良型の高炉セメント C種を大手・準大手ゼネコンで使用することを想定した際の市場 規模を試算したものを以下の表-7.5 に示す。この推定では,大手ゼネコン 5 社と準大手 10 社が改良型の高炉セメントC種の技術を取り入れ,それぞれの手持ちの現場に適用する ことを想定している。その他の条件については,表中に示すとおりである。土木分野にお いては,17 万t程度の適用が見込まれる。

今後,大手・準大手ゼネコンで適用実績を積み,技術が成熟していくことで汎用的なセ メントとして使用されていくものと予想される。改良型の高炉セメント C種の将来的な市 場規模を表-7.6 に示す。将来的にはコンクリート全体として 100 万 t 程度の使用が見込 まれる。

表-7.5 大手・準大手ゼネコンでの市場規模

指 標 数 値 根 拠

①土木分野(大手)でのコンクリート使用量 57万 m3 2009年大手ゼネコン実績

②大手5社・準大手10社の年間セメント使用量

(土木) 140万t ①×(0.8×5+0.3×10)×

0.35t/m3(平均セメント量)

⑤改良型の高炉セメントC種の適用予想量

(土木) 17万t

②×0.4(適用可能部材率,

マ ス コ ン , 海 洋 コ ン 等 ) × 0.3(適用率)

表-7.6 改良型の高炉セメント C 種の将来的な市場規模

指 標 数 値 根 拠

①全国のコンクリート生産量 1億847 万 m3

2005~2009年実績の平均値

(全生工業組合連合会公表 データより)

②土木用コンクリートの使用量 2169 万 m3

①×0.2(土木,建築のうち,

土木での割合)

③改良型の高炉セメントC種の適用予想量

(土木) 91万t

②×0.4(適用可能部材率,

マスコン,海洋コン等)×

0.3(適用率)×0.35t/m3(平 均セメント量)

- 160 - 7.3.3 CO2削減効果および環境負荷低減効果

7.2 および 7.3(1),(2)で示した CO2削減量およびエネルギー原単位,将来的な市場 規模から算定した環境負荷低減効果について表-7.7 に示す。表中では,大手・準大手ゼ ネコンにおいて積極的に利用・展開を図る技術展開期と,改良型の高炉セメント C種が汎 用的なセメントとして全国の生コン工場で利用できるようになることを想定した,技術成 熟期に分けて表記した。表-7.5 に示した市場規模のうち,改良型の高炉セメント C種は 普通ポルトランドセメントと高炉セメント B種を3:1 の割合で使用されることを前提とし て算出した。この比率は現在における普通ポルトランドセメントと高炉セメントの市場比 率をベースとしている。

以下の算定式において,改良の高炉セメントC種の土木用コンクリートの適用に関して,

技術展開期では CO2の削減量で 7.3万 t,環境負荷低減効果としては原油ベースで 0.73 万 kL/年の効果が見込まれる。将来的には,汎用セメントとして全国の生コン工場で利用でき ることを想定すると,CO2の削減量で35万t,原油ベースで 3.7万kL/年の環境負荷低減効 果が見込まれる。

表-7.7 CO2削減量および環境負荷低減効果

指 標 技術展開期 技術成熟期

普通ポルト比 高炉B比 普通ポルト比 高炉B比

① 改 良 型 の 高 炉 セ メ ン ト C 種 の

CO2削減量 499kg/t 169kg/t 499kg/t 169kg/t

②改良型の高炉セメントC種の環

境負荷低減効果量 1959MJ/t 745MJ/t 1959MJ/t 745MJ/t

③市場規模(普通ポルト:高炉 B=3:1) 13万t 4万t 60万t 31万 t

④CO2削減量 6.5万t 0.7万 t 30万t 5万 t 計 7.2万 t 計 35万 t

⑤環境負荷低減効果

25万 GJ 3万 GJ 118万 GJ 23万GJ 計 28万GJ 計 141万GJ 0.73万kL/年 3.7万kL/年

※原油 1L=38.2MJ

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