• 検索結果がありません。

環境の構成と保育の展開

ドキュメント内 幼稚園教育要領解説 (ページ 152-166)

第1章 総説

第3節 環境の構成と保育の展開

環境の構成において重要なことは,その環境を具体的なねらいや内容 にふさわしいものとなるようにすることである。ある具体的なねらいを 目指して指導を進めるためには,幼児の生活する姿に即して,その時期 にどのような経験を積み重ねることが必要かを明確にし,そのための状 況をものや人,場や時間,教師の動きなどと関連付けてつくり出してい くことが必要となる。その際,以下に示す環境の構成の意味を踏まえて,

幼児が自ら発達に必要な経験を積み重ねていくことができるような環境 をつくり出すことが大切である。

(1) 状況をつくる

幼児の活動への意欲や主体的な活動の展開はどのような環境において も自然に生じるというわけではない。まず,環境全体が緊張や不安を感 じさせるような雰囲気では,活動意欲は抑制されてしまう。幼児が安心 して周囲の環境にかかわれるような雰囲気が大切である。その上で,幼 児の中に興味や関心がわいてきて,かかわらずにはいられないように,

そして,自ら次々と活動を展開していくことができるように,配慮され,

構成された環境が必要である。例えば,製作活動をしようと思っても,

それに必要な素材や用具が容易に使えるように用意されていなければ,

十分に活動を展開することはできない。また,いかにものが豊富にあっ たとしても,幼児がものとものの間に何のつながりも見いだせなかった り,これまでの自分の生活経験の中に位置付けられなかったりすれば,

やはり,主体的な活動を展開することはできない。幼児が主体的に環境 にかかわり,豊かな体験をしていくことができるためには,それが可能 であるような適切な環境を教師が構成しなければならない。その際必要 なことは,幼児の発達だけでなく,幼児の興味や関心の対象,意欲の程

度,気分の状態,これまでの経験などを考慮することである。

このように,環境を通して教育を行うためには,幼児が興味や関心を もってかかわることができる環境条件を整えることが必要であるが,そ れだけでは十分ではない。幼児が環境にかかわることにより,その発達 に必要な経験をし,望ましい発達を実現していくようになることが必要 である。ただ単に幼児が好き勝手に遊んでいるだけでは,必ずしも発達 にとって重要な価値ある体験をするとは限らない。例えば,幼児が楽し んでいるからといって,いたずらに生き物を痛め付けたり,殺したりす ることがよい体験だとはいえない。すなわち,幼稚園は幼児が発達に必 要な経験をすることができるように配慮された環境でなければならない のである。それは,幼稚園教育が意図的な教育である以上,教師の責任 にかかわる事柄である。教師は,一人一人の幼児の中に今何をはぐくみ たいのか,一人一人の幼児がどのような体験を必要としているのかを明 確にし,幼児がどのような活動の中でどのような体験をしているのかを 考慮しながら,教師としての願いを環境の中に盛り込んでいかなければ ならない。幼児の主体的な活動を通しての発達は,教師が,幼児の周り にある様々なものの教育的価値を考慮しながら,綿密に配慮し,構成し た環境の下で促されるのである。

環境を考えるに当たって,遊具や用具,素材など物的環境をどうする かは大切な問題である。しかし,幼児の活動に影響を与えている環境の 要素は物だけではない。その場にいる友達や教師,そのときの自然事象 や社会事象,空間的条件や時間的条件,さらには,その場の雰囲気など も幼児の主体的活動や体験の質に影響を与えている。

例えば,幼児数人が園庭で探検ごっこをし,小道具を作って「明日続 きをしよう」と約束して今日になったとしよう。今日の保育室での製作 は,昨日友達とした約束,この後仲間と探検ごっこをするという期待,

天気がよくて早く外に行きたいという気持ちの高まり,先に作った友達

このような様々な事柄が相互に関連して,幼児にとって意味のある一 つの状況を形成しており,その状況の下で,主体的な活動が展開するの である。すなわち,環境を構成するということは,物的,人的,自然的,

社会的など,様々な環境条件を相互に関連させながら,幼児が主体的に 活動を行い,発達に必要な経験を積んでいくことができるような状況を つくり出すことなのである。

(2) 幼児の活動に沿って環境を構成する

教師は,幼児が自ら環境にかかわり,豊かな体験をしていくことがで きるように環境を構成するのであるが,その際,教師は,幼児の活動に 沿って環境を構成する必要がある。このためには,教師は幼児の視点に 立って環境の構成を考えなければならない。一人一人の幼児が今何に関 心をもっており,何を実現しようとしているのか,活動に取り組む中で 苦労しているところはあるのか,その困難はその幼児にとって乗り越え られそうなものなのか,あるいはこの後どんなことに興味が広がってい きそうなのかなど,幼児の内面の動きや活動への取り組み方,その取組 の中で育ちつつあるものを理解することが大切である。

幼児の行っている活動は,一人一人にとって固有の意味をもっている。

段ボールで家を作って遊んでいる場合でも,外装や内装など家を作るこ と自体を楽しんでいる幼児もいれば,お家ごっことして,友達や教師と のやり取りを楽しんでいる幼児もいる。この場合,一見一緒に同じ遊び をしているようでも,その活動の意味は異なっているといえる。したが って,体験の内容も違ってくる。前者の幼児の場合,教師は家を作って いくための素材や用具の準備をすることを考える必要があるだろう。一 方,後者の幼児に対しては,ごっこ遊びとして展開していくための配慮 をする必要があるだろう。

また,幼児はものとかかわることを通して,そのもののもつ性質に応

じてかかわり方を変えなければならないことを学んでいく。そのことを 学んでいく過程において,ものへのかかわり方は幼児一人一人によって 異なっている。例えば,クッキーを作ろうと粘土を薄く延ばしていく幼 児もいれば,ひも状にしたり,ちぎったりする幼児もいる。同じものに 対してでも,どのようにかかわるかにより必要となる用具も異なり,環 境の構成を変える必要もある。

幼児一人一人の活動の意味や取り組み方,環境へのかかわり方などを 正しく把握するためには,ものの性質をよく知った上で,幼児の活動に いつでも参加しようとする姿勢をもち,幼児の内面の動きに目を向け続 けていることが必要である。その上で,教師は,幼児の発達や興味関心 に応じつつ,発達に必要な経験を満たす可能性をもつ環境を構成しなけ ればならない。

幼児の活動に沿って環境を構成することは,教師が環境をすべて準備 し,お膳立てをしてしまうことではない。このような状況で幼児が活動 をした場合,やり遂げたという充実感や満足感を必ずしも十分に感じら れないこともあるであろう。また,困難な状況を自分で考え,切り開く 力が育たなくなってしまうこともあるであろう。例えば,色水遊びに関 心をもったからといって,教師があらかじめ何種類もの色水を作ってお いたのでは,色水遊びの楽しさを半減させてしまうであろう。幼児が自 分たちでいろいろな素材を集め,工夫しながら,どんな色ができるか期 待しながら遊ぶところに楽しさがあり,そのことにより充実感や満足感 も高まるのである。幼児が自分たちの遊びのイメージに合った状況を自 分たちで考え,つくり出し,遊びを展開していくことで,望ましい発達 が実現していく場合もあるということである。

幼児が何らかの活動をしているときには,その活動をしていることに よって絶えず状況は変わっていく。例えば,2~3人の幼児が大型積み 木を積んで家を作り始めたとする。家ができることでその前の状況とは

を用意しようということになり,小さな積み木をもってくるかもしれな い。それにより,また,状況が変わる。さらに,家があることに気付い た他の幼児たちが集まってきて,仲間に加わるかもしれず,そばで別の 家を作り出すかもしれない。それによってさらに状況が変わることにな る。このように,幼児は遊ぶことによりその遊びの状況を変え,状況を 変えつつ遊びを展開させていく。教師は幼児の遊びにかかわるとき,幼 児の遊びのイメージや意図が実現するようにアドバイスしたり,手助け したりして幼児が発達に必要な経験を得られるような状況をつくり出す ことが大切である。

このように,教師は幼児の活動の流れに即して,幼児が実現したいこ とをとらえ,幼児の思いやイメージを生かしながら環境を構成していく ことが大切である。このようにして,幼児自身が自ら学び,自ら考える 力の基礎をはぐくむことができ,主体性を育てることができるのである。

2 保育の展開

(1) 幼児の生活する姿と指導

幼児の活動に沿った保育の展開に当たっては,幼児の主体性と指導の 計画性を関連付けることが重要である。この意味で,生活,計画,保育 実践,反省や評価,計画の修正,保育実践という循環の過程が大切であ る。保育を展開する際には,まず日々の幼児の生活する姿を十分にとら え,それに基づいて指導計画を立てることが求められる。すなわち,幼 児は何に関心を抱いているのか,また,何に意欲的に取り組んでいるの か,あるいは取り組もうとしているのか,何に行き詰まっているのかな どの状況をとらえ,さらに,次の時期の幼児の生活を見通して指導計画 を立てることが必要である。幼児が今取り組んでいることを十分できる ようにすることや新たな活動を生み出せるようにすることなど,これま での生活の流れや幼児の意識の流れを考慮して指導計画を作成すること

ドキュメント内 幼稚園教育要領解説 (ページ 152-166)

関連したドキュメント