• 検索結果がありません。

現代の親子が抱える健康課題からみた保健指導の重点ポイント

ドキュメント内 乳幼児期の健康診査(カラー)4-1-2 (ページ 62-79)

第 5 章  全数把握の必要性

6.2  現代の親子が抱える健康課題からみた保健指導の重点ポイント

 前項では、乳幼児健診における標準的な保健指導に関する基本的事項について述べた。本項では、昨 今の親子が抱える健康課題を鑑み、特に支援体制の強化が必要な事項として、「妊娠期からの継続的支 援のしくみづくりの強化」「子ども虐待予防の視点からの保健指導・支援」「育てにくさを感じる親に 寄り添う支援」を取り上げる。

 1) 妊娠期からの継続的支援のしくみづくりの強化

 妊娠期から出産期には、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病等妊娠に伴う合併症の予防や対応、貧血、便 秘、妊娠悪阻等のマイナートラブルへの対応といった支援が重要である。また、妊娠早期からの継続し た心理的支援が周産期の女性の心理的安定と子どもに対するアタッチメント形成の促進につながる。

一方で、低出生体重児の割合が減少しない状況を鑑みても、妊娠中の食生活に関する支援が子どもの生 命の維持、発育・発達に欠かせない。妊娠期の体重増加量は、妊娠前の体重や健康状態により異なるが、

妊婦が心理的安定を保ち、健康を維持するための望ましい食生活が営めるよう、バランスの良い食事を 整える知識や技術、食事を楽しめる具体的な支援が重要である。そのためには、管理栄養士・栄養士、保 健師、助産師等が協力し、生活支援を行うことが重要となる。

 しかし、医療機関の管理栄養士・栄養士、助産師、看護師等は退院後の母子に継続して関わること、特 に出産した医療機関で受診する例が多い 1 か月児健診以降も関わり続けることは難しい。施設基盤に ついて、保健センター、保健所、医療機関、助産所、地方公共団体、地区組織等すべての関係機関の役割を 明確にして、各々が有機的に連携できるよう、各地域での組織的な体系を整備することが必要である

(図 6.3 参照)。また、産褥早期の母子、特に退院後のサポートの不足が予測される者や育児不安が強い 母親、精神疾患等の合併などは、自治体との連携などによる継続的支援の必要性があり、特定妊婦とし て支援していく体制の強化が重要である。最近では、産後ケアを事業化し、妊娠中から産褥早期のケア を充実させ、子育て期につながる支援をしている自治体も増えつつある。

 さらに、妊娠期では、例えば就労中の妊婦や専門職の支援に対して拒否的な妊婦など直接的なアプ ローチが難しい場合もある。虐待予防のために、継続的に母子の支援を行う助産師と保健師の連携の一 つの方法として、医療機関の助産師が妊娠期の出来るだけ早期から母親と保健師をつなぎ、信頼関係を 築くことができるよう取り組むことが望ましい。さらに支援に対して拒否的な母親に対しては、授乳支 援などの外来受診の理由をつくり、医師や助産師が、保健師の支援を拒否する母親と支援者との関係を つなぎとめるなどの工夫が行われている。今後は、医師、保健師、助産師のみならず、多職種連携による 継続的支援のための仕組みづくりが、より一層求められる。切れ目ない継続的な支援の実現のために は、関係職種間での相互理解と相互活用を基盤として、例えば養育支援訪問事業のような既存事業を軸 として展開するなど、「多職種・多機関連携による継続的支援のための仕組みづくり」が、今後ますます 必要とされる。

−1− −2− −3− −4− −5− −6− −7−

−8− −9− −10− −11− −12− −13− −14− −15− −16− −17−

−18− −19− −20− −21− −22− −23− −24− −25− −26−

−27− −28− −29− −30− −31− −32− −33− −34− −35− −36−

−37− −38− −39− −40− −41− −42− −43− −44− −45− −46−

−47− −48− −49− −50− −51− −52− −53− −54− −55− −56−

−57− −58− −59− −60− −61− −62− −63− −64− −65− −66−

−67− −68− −69− −70− −71− −72− −73− −74− −75− −76−

−77− −78− −79− −80− −81− −82− −83− −84− −85− −86−

−87− −88− −89− −90− −91− −92− −93− −94− −95− −96−

6.1 保健指導の基本的な考え方

 1) 乳幼児健診における保健指導の目的

 乳幼児健診は、子どもの発育・発達の節目に行う。子育ての不安が一番高い時期は、子どもが生後 1

〜 2 か月の時期とされているが、子育ての悩みはその内容を変えて存在し続けるものである。発育・発 達の節目にその時々の小さな不安をタイムリーに解消していくために、乳幼児健診を活かすことが重 要である。

 乳幼児健診における保健指導の目的は、親子の顕在的および潜在的健康課題を明確化し、その健康課 題の解決に向けて親子が主体的に取り組むことができるよう支援することである。

 2) 本手引きにおける「標準的保健指導」

 本手引きは、全国どこでも一定水準の乳幼児健診によるサービスを受けられるようにするための指 針である。

 本章では、全国どこでも、どの健診従事者が実施しても、全ての親子に必要な支援が行き届くために 最小限必要な保健指導を「乳幼児健康診査における標準的な保健指導」と定義し、全ての健診実施主体 および健診従事者が共通認識しておくことが必要な基本的な考え方について記す。

 3) 乳幼児健診時の保健指導における多職種連携の必要性

 乳幼児健診では、医師・歯科医師、保健師、助産師、看護師、管理栄養士・栄養士、歯科衛生士をはじめ、

母子保健に関与する職種のすべてが協力し、乳幼児または母性をめぐる健康課題に対して、多方面から 情報を収集してアセスメントおよびその共有を行い、各職種が連携して総合的な指導や助言を行うこ とが必要である。ただし、多職種が関わるため、親子に対して必要な保健指導を一貫した方針のもとに 実施するためには、職種間の連携が不可欠である。

 職種間の連携のためにはお互いの役割について認識を共有しておくことが重要である。医師・歯科 医師は疾病の有無や標準的な発育・発達の経過をたどっているかについての診断を行う。また、管理栄 養士・栄養士は栄養面を中心として健康な食生活に必要な具体的な保健指導、さらに食を通しての親 子のアタッチメント形成の促進や生活の質の向上に関する支援を担っている。また、歯科衛生士はう蝕 や口腔に関わる習癖等の健康課題に対して親子の生活の中でいかに予防・改善するか具体的支援を行 う。保健師は疾病に関する知識や地域特性に関する情報、健診対象者の妊娠期からの継続的情報等をも ちながら生活全般において親子を支援する医療職である。その特性を活かし、健診実施中の保健指導だ けでなく、健診前およびその後のフォローアップ等において対象となる親子に必要な支援が行き届い ているか、必要なサービスにつながっているかのケース・マネジメントを行う。看護師は主に発育・発 達測定や診察の介助に携わりながらその場面での親子の様子を把握する。助産師は妊娠期から最初の 乳幼児健診に至るまでの保健指導を担う職種として、継続的支援の必要性を判断し保健師等へつなぐ など、妊娠期からの継続的支援に欠かせない存在となっている。他にも、心理発達の精査を行う心理職 や子育て支援の役割を担う保育士、健診の運営に欠かせない事務職員など、健診には多種多様な職種 や、自治体によっては民生・児童委員など住民も関わっており、すべての健診従事者との連携が重要で ある。

 乳幼児健診が実施されている間、各職種によって発育・発達、疾病、栄養、歯科、生活習慣、親の状況な ど様々な視点でのスクリーニングが行われている。その各スクリーニング結果を統合し健康課題を明

確化すること、さらにその健康課題に対する各職種の専門性を活かした保健指導や継続的支援へのつ なぎが行われている。このように親子のニーズに沿って各専門職が多角的アプローチを行うことによ り、スムーズな支援介入へつなげることも可能となる。例えば、発達の遅れが懸念されるが親が認めた くない状態であり発達に関する保健師の保健指導には拒否的な場合でも、偏食で困っている等の支援 ニーズがある場合には、管理栄養士・栄養士の栄養指導からアプローチすることで関係性の構築につ ながることもある。なお連携の際には、多職種間で情報と支援の方向性を共有することが重要である。

 4) 乳幼児健診における保健指導の特徴  (1) 対象者の特徴

① 現代の親子を取り巻く健康課題

 子どもが生まれながらにして持つ、「育っていく力」を十分発揮できるようにするためには、親が子ど もの「育っていく力」を信頼して見守ることが重要である。しかし、核家族化、地域における人間関係の 希薄化などにより、妊産婦や子どもに接する機会のないまま妊娠や出産を経験し、親になる者が増えて いる。そのため、親自身による子どもの発達・発育過程の知識や経験不足と、子どもの心身の状態や発 達・発育の偏り、疾病によるものが相まって「育てにくさ」を感じる原因となっていることがある。これ らを踏まえて、親自身の気質の特徴やその背景を個別に捉えた上で、問題の所在を見極め、支援に携わ ることが必要である。

② 対象者の多様性

 健診の対象は、その地域に住む対象年齢の子どもとその親という共通項はあるが、その家族の状況や 家庭の形態は多様化している。かつては少数派だった共働き世帯が増加し、外国人世帯も増加してい る。また、祖父母や親族の他、里親や乳児院等、主な養育者が母親以外である場合や、ひとり親家庭等、

様々な家庭の背景を持つ子どもが対象であることを十分に認識する必要がある。さらに、地域にはアレ ルギー疾患等の様々な健康課題を持つ子どもが生活している。また健康関連情報も溢れており、正しい 情報を探索して選択していく必要があるが、現代の情報過多社会では非常に難しいことであり、親の中 には過度な不安を抱く者がいることも考えられる。そのため、画一的な指導の実施などの支援者の対応 によっては否定的な印象のみを与え、健康課題等がより潜在化してしまう可能性もある。今までの経過 等、親の話をよく聞き、支援者として情報提供を行うとともに、親が好ましい自己決定ができるよう支 援を行う必要がある。そして対象者の多様性を踏まえた個別性の高い支援につなげることが重要であ る。

 (2) 成長発達の過程に応じた支援

 子どもは一人ひとり異なる資質や特性を有しており、その成長には個人差がある一方、子どもの発達 過程やその順序性には、共通する特徴がある。成長・発達段階に応じた好ましい生活や活動を十分に経 験することを通して、子どもの継続性のある望ましい成長発達が期待される。子どもは周囲との相互作 用を通じて成長発達することから、これらの発達段階に応じて、親が抱える育児に関する心配事も変化 し、周囲に求められる育児環境のポイントも異なってくる。乳幼児健診では、これらの成長発達のプロ セスを見通した予防的・継続的な支援を行うことが大変重要である。また、予防的・継続的支援におい ては、これまでの子どもの成長発達の経過や、親および家庭の背景などを踏まえた支援の視点も必要で ある。

 5) 乳幼児健診における保健指導実施のプロセスと留意点

 乳幼児健診における保健指導の際には、親子の生活全体について多角的視点を持ってアセスメント し、支援やフォローアップについて総合的に判断することが求められる。そのためには生活全般におい て「親子の困りごとやニーズ(潜在的なものも含む)」をアセスメントし、継続的支援の必要性を見極め る技術が重要である。

 (1) 保健指導のプロセス

 図 6.1 に保健指導のプロセスを例示した。健診の流れに沿って具体的に説明する。

 7) 乳幼児健診を軸とした継続的支援

 (1) 親子への継続的支援 〜妊娠期からの一貫した情報把握と支援体制〜

 それぞれの親子に対して、妊娠の経過や出産時の状況、これまでの子どもの発育・発達の経過等につ いて縦断的に把握した上で、保健指導にあたることを基本とすべきである。そのためには健診の場でこ れまでの経過を縦断的に確認できることが必要である。多くの自治体では「母子カード」などを活用し ているが、最近では電子カルテを導入している自治体もある。各自治体の実情に合わせた方法を選択す るのがよいが、一貫した支援となるような工夫が必要である。特に一部の健診を個別健診としている場 合は、母子保健担当者が縦断的な把握を行い、必要時に委託医療機関と連携を行い、一貫した支援につ なげることが大切である。

 

 (2) フォローアップが必要な場合の継続的支援

 乳幼児健診における総合的判断の結果、その後の経過を把握し、必要な支援を行うとともにその結果 の確認を行う必要がある場合(フォローアップが必要な場合)は、経過観察健診・二次検診等の活用の 他、その内容に応じて様々な機関との連携や支援の継続が必要である。

 フォローアップにあたっては、まず保健師等のフォローアップ担当者が、親子の状況をアセスメント した上で、その親子に必要な個別支援を行うことが継続的支援の基盤となる。個別支援の中で、必要に 応じて親子教室などの集団的支援を効果的に組み合わせていく。そして、定期的にフォローアップ結果 を評価し、支援計画を修正しながら継続的な支援を行う。

 また、特に発達障害は多くの身体疾患の早期発見と異なり、1 回のスクリーニングのみで専門機関へ 紹介することは困難なことが多い。一定期間のアセスメントと親への心理的支援を行いながら、診断に つなげることや福祉等による支援の要否を判断していく必要がある。したがって、スクリーニング後の フォローアップ体制をシステムとして構築しなければならない。フォローアップ体制は、母子保健、医 療、福祉の連携のもとで行う必要がある(第4章 幼児期の発達障害に対する地域支援システム p.48 参 照)。

 発達障害が強く疑われ、医療や障害児福祉による支援が必要と判断される場合は,医療機関、児童発 達支援センター、児童発達支援事業所など、子どもの状況に合わせた機関へ紹介していく。子どもに発 達障害の特性があるものの、医療や障害児福祉につなぐべき状態かどうか判断がすぐにつかない場合 や、医療や障害児福祉につなげることに対する親の動機づけが未形成の場合には、母子保健のフォロー アップ機能を主軸に据えておく。

 (3) 母子保健事業に関わる関係機関の連携

 乳幼児健診のみならず、予防接種や各種教室などの母子保健事業で多くの親子と直接会い、様々な情 報を得る機会が多い。必要に応じて関係機関と情報共有・連携することでさらに質の高いサービスの 提供につながる。

 「健やか親子21(第2次)」について 検討会報告書でも、「情報の共有・還元の仕組みを含めた母子 保健事業間の有機的な連携体制の強化が課題」とされている。福祉部門など親子に関わる機関は民間も 含めて多種多様であるため、地域の実情に合わせて普段からの関係づくりと連携体制の強化が重要で ある。

 (4) 地域の資源へのつなぎ

 少子化の進展、核家族化、地域のつながりの希薄化等により、親子の孤立が課題となって久しく、各地

域で様々な努力がなされているが、虐待死やその予備群の事例は後を絶たない。個人、家族で解決でき る問題の範疇を超えており、地域全体で子育てを支える仕組みづくりがますます重要となっている。そ の視点で乳幼児健診の役割として期待されることは、既に孤立している親子だけでなく孤立予備群を 把握し、活用可能な地域の資源につないで孤立を予防することである。また、なるべく多くの地域の資 源を日頃から把握しておくことが必要であり、そのためには地域に出て様々な関係者との関係づくり をしておくことが重要である。行政ができる子育て支援には限りがあるため、地域住民・関係機関との 協働が不可欠である。

6.2 現代の親子が抱える健康課題からみた保健指導の重点ポイント

 前項では、乳幼児健診における標準的な保健指導に関する基本的事項について述べた。本項では、昨 今の親子が抱える健康課題を鑑み、特に支援体制の強化が必要な事項として、「妊娠期からの継続的支 援のしくみづくりの強化」「子ども虐待予防の視点からの保健指導・支援」「育てにくさを感じる親に 寄り添う支援」を取り上げる。

 1) 妊娠期からの継続的支援のしくみづくりの強化

 妊娠期から出産期には、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病等妊娠に伴う合併症の予防や対応、貧血、便 秘、妊娠悪阻等のマイナートラブルへの対応といった支援が重要である。また、妊娠早期からの継続し た心理的支援が周産期の女性の心理的安定と子どもに対するアタッチメント形成の促進につながる。

一方で、低出生体重児の割合が減少しない状況を鑑みても、妊娠中の食生活に関する支援が子どもの生 命の維持、発育・発達に欠かせない。妊娠期の体重増加量は、妊娠前の体重や健康状態により異なるが、

妊婦が心理的安定を保ち、健康を維持するための望ましい食生活が営めるよう、バランスの良い食事を 整える知識や技術、食事を楽しめる具体的な支援が重要である。そのためには、管理栄養士・栄養士、保 健師、助産師等が協力し、生活支援を行うことが重要となる。

 しかし、医療機関の管理栄養士・栄養士、助産師、看護師等は退院後の母子に継続して関わること、特 に出産した医療機関で受診する例が多い 1 か月児健診以降も関わり続けることは難しい。施設基盤に ついて、保健センター、保健所、医療機関、助産所、地方公共団体、地区組織等すべての関係機関の役割を 明確にして、各々が有機的に連携できるよう、各地域での組織的な体系を整備することが必要である

(図 6.3 参照)。また、産褥早期の母子、特に退院後のサポートの不足が予測される者や育児不安が強い 母親、精神疾患等の合併などは、自治体との連携などによる継続的支援の必要性があり、特定妊婦とし て支援していく体制の強化が重要である。最近では、産後ケアを事業化し、妊娠中から産褥早期のケア を充実させ、子育て期につながる支援をしている自治体も増えつつある。

 さらに、妊娠期では、例えば就労中の妊婦や専門職の支援に対して拒否的な妊婦など直接的なアプ ローチが難しい場合もある。虐待予防のために、継続的に母子の支援を行う助産師と保健師の連携の一 つの方法として、医療機関の助産師が妊娠期の出来るだけ早期から母親と保健師をつなぎ、信頼関係を 築くことができるよう取り組むことが望ましい。さらに支援に対して拒否的な母親に対しては、授乳支 援などの外来受診の理由をつくり、医師や助産師が、保健師の支援を拒否する母親と支援者との関係を つなぎとめるなどの工夫が行われている。今後は、医師、保健師、助産師のみならず、多職種連携による 継続的支援のための仕組みづくりが、より一層求められる。切れ目ない継続的な支援の実現のために は、関係職種間での相互理解と相互活用を基盤として、例えば養育支援訪問事業のような既存事業を軸 として展開するなど、「多職種・多機関連携による継続的支援のための仕組みづくり」が、今後ますます 必要とされる。

ドキュメント内 乳幼児期の健康診査(カラー)4-1-2 (ページ 62-79)