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8 ガスタービンの将来展望

8.4 燃料電池とガスタービンサイクル

燃料電池とガスタービンサイクルの組み合わ せも,夢のある将来技術として期待されている。

その場合の考え方は,高温型の燃料電池の反応 後の未反応燃料を含有した高温排ガスをガスタ ービン(燃焼器)に導き,その未燃成分と高温 排ガスの持つエネルギーをガスタービンで有効 に利用するものである。従って,その場合の燃 料電池としては,高温型の燃料電池である溶融 炭酸塩形(MCFC)と固体酸化物形(SOF C)の2種類が提案され,それぞれに対し研究 開発が行われている。

以下,それぞれの概要を示す。

(1) 溶融炭酸塩形(MCFC)とガスタービン の組合せ形(26)

MCFCとガスタービンの組合せ形(ハイブ リッド形)のフロー案を図8-5に示す。これに よれば,MCFC単独の(天然ガス利用)発電 効率(LHV基準)は,50~55%であるが,ガス タービンとの組合せで,発電効率は約5~10ポ イント上昇するとの試算が得られている。試算 例では,約7MWの比較的小規模の発電プラント で,発電効率(発電端,LHV)は60%(同送電

端,LHVで57%)が得られている。なお,同構 想は,IHIが1987年(昭和62年)より国家プ ロジェクト(ニューサンシャイン計画)により 300kW級の加圧発電システム研究を実施してき た成果を踏まえ事業化検討を行った中で発表さ れたものである。

(2) 固体酸化物形(SOFC)とガスタービン の組み合わせ形(27)(28)

SOFCとガスタービンの組合せの例を図8

-6に示す。試算結果によれば,700MW級の大規 模を想定した天然ガス焚き組み合わせ形発電プ ラントにおいて,全体発電出力に占めるSOF C出力は約70%,ガスタービン出力は20%,蒸 気タービン出力は10%の構成となっており,同 構成に基づく全体の発電効率(送電端,LHV)

は,71.2%と試算されている。なお,その開発 を目指して,三菱重工業が2004年度のNEDO 受託研究テーマ「円筒型SOFC高効率コンバ インドシステムの開発」にて200kW級発電シス テムの研究開発を実施中であるが,上記数値は その中で将来の構想として試算されたものであ る。

図8-5 MCFCとガスタービン組合せ複合発電システムフロー案

(出典:伊藤和彦他,溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)ハイブリッドシステム,日本ガスタービン学 会誌Vol.31, No.3, 2003.5)

燃料電池モジュール

カソード アノード リサイクルブロワ

燃料 改質室

加熱室

燃焼器

温水回収

排熱回収ボイラ 蒸気 排気

水処理装置

空気 燃料 燃焼器

GT

回収水

図8-6 SOFCとガスタービン組合せ複合発 電システムフロー案

(出典:久留長生,SOFC複合発電システムの開発 と将来展望,日本ガスタービン学会誌Vol.35.

No.2, 2007.3)

あ と が き

今我々の生活にとって,飛行機の利用はもは や日常の交通手段と化しているが,しかし誰も が飛行機に乗るときには,あの大きな機体が多 くの人間と重い荷物を乗せて大空へ飛び立つこ とに少なからず感動を覚えるのではないだろう か。その大きな力(原動力)を受け持っている のがガスタービンに他ならない。

また,飛行機に比べたらそれほど華やかではな いにしても,現在LNG火力発電は,全体の発電 電力に対し(年間発電電力量ベース,2006年度推 定実績)約26%と,原子力(約30%)に次いで主 要電源として利用されているが,そのLNG火力 の最近の主要構成システムはコンバインドサイク ルであり,その原動力もガスタービンが中心とな っている。このように,今やガスタービンの威力 に現代はすっかり,お世話になってきているとい っても過言ではないであろう。

そのようにお馴染みのガスタービンではあり ながら,本誌執筆のために今回改めて関連資料,

情報を収集し,読みこんでいくにつれ,ガスタ ービンの働きと魅力を再発見する思いであった。

その理由は4点に集約されるようである。

その第1は,ガスタービンの普及が着実に進 展してきたことである。

上述のように今日広く使われるように普及し てきた背景には,性能,経済性および運転性の 全てが,実用機として信頼に足ることが実証さ れ評価されてきたことに他ならない。しかし一 般に,新しい技術の導入当初は初期トラブルは つき物であり,それぞれ特に早い時期に同技術 を採用した発電所においては,何らかの問題や トラブルが発生したことがあるのではないかと 推定されるが,関係者特にユーザの運転・保守 上の改良・改善等の努力により信頼するに足る 技術として完成してきたことは想像するに難く ないことであろう。

第2点は,技術開発の進歩の速さである。

本技術は,特に技術開発および実用化の速さ

が注目される。例えば,従来形火力発電技術と コンバインドサイクルにおいて発電効率の進展 度を比較した場合,従来形火力は戦後急速に効 率が上昇した時期があったが,その後の歩みは,

遅々としたものであり,例えば1960年ごろに効 率(発電端,HHV基準)で約40%に達した後,

約42%に上昇するのに実に約30年(年間上昇率

(絶対値ベース)は0.06%)もかかっている。

ところが,コンバインドサイクルは,その本格 的実用化は随分遅れたが,わが国で大型適用の 初号機とされる東北電力の東新潟3号系列の場 合(1984年運転)開始時点で既に同効率は約 44%であったが,最近の高効率プラント(ガス タービン温度1,500℃級)では,約54%であり,

これは,20年間で約10%上昇(年間上昇率(絶 対値ベース)は0.5%)で,効率に関する限り 従来形より一桁大きい上昇速度を示している

(第1章参照)。

その第3は,技術そのものの持つ魅力であり,

奥深さである。ガスタービン技術の課題は第5 章でも述べたように,高温化のための「冷却技 術」および「材料技術」に加え低NOx燃焼等の

「燃焼技術」および更なる「信頼性向上技術」

も挙げられる。それらの研究開発の推進には,

基礎から応用技術までの科学技術の総合力が必 要とされ,またとどまるところを知らぬ進展が なされている。そのため研究・技術陣において は,競争に遅れをとらぬために常に必死の努力 が続けられている様子である。まさしく科学技 術立国であるわが国の科学技術のレベルとその 維持向上が問われる場ともなっていると思われ る。

その第4は,このガスタービンの研究開発に 関連した成果発表あるいは情報交換の場が定着 しかなり有効に活用されていることである。戦 後,機械工学関係,特に原動機分野における規 格化,標準化,あるいは研究成果発表の場とし ては,米国ASME(アメリカ機械学会)が世 界をリードしてきたが,同学会傘下のASME 国際ガスタービン会議も既に2005年にて第50回

( ASME TURBO EXPO50 , 於 米 国 ネ バ ダ 州 リ ノ 市)を数えるほど充実した活動を続けている。

日本でも日本機械学会の傘下にガスタービン学 会が約30年前に設立され活発な活動が行われて いる。なお,日本ガスタービン学会主催の国際 会議をIGTC(International Gas Turbine Congress)と称し,4年に1回開催されている が,更にその中間年に近年では近隣国の韓国,

中国の関連学会と共同でアジアガスタービン会 議も開催されるなど,国内外の関連大学,産業 界が主導して本技術の情報交換と啓蒙が活発に 図られるようになってきている。なお,2007年 のIGTCは,東京で12月に開催されることに なっている。

さて,そのような魅力を秘め現在非常に活発 な動きを見せているガスタービンであるが将来 はどうであろうか。その将来の方向を陸用に限 定してみるときに,更なる高効率化,高性能化 の動きとしては,本文中にも述べた1,700℃級 ガスタービン,AHATサイクル,石炭とガス タービンと組合せた石炭ガス化発電(IGC C),あるいは燃料電池(SOFC)との組み 合わせである超高効率複合発電,さらに水素時 代が到来したときの水素燃焼タービン,更に遠 い将来には宇宙における太陽熱利用のガスター ビン閉サイクル発電等,超長期的な技術課題が 数多く提案されている。まだまだ,将来発展の 余地は十分ありそうである。

以上のように魅力あるガスタービンの世界を 本誌のような小冊子で,紹介するのは至難の業 であるが,ガスタービンの特徴,動向あるいは 課題を探る一つのヒントになれば幸いである。

最後に、本書中の図表に関しその使用を許諾 いただいた関係先、特に(社)日本ガスタービン 学会、(社)火力原子力発電技術協会、(社)電気 学会、および(財)東京大学出版会に深甚なる謝 意を表します。また、内容に関し内外からコメ ントあるいはレビューを頂いた。特に一部の電 力およびメーカ関係者には、誌面を借りて衷心 より御礼申し上げます。

参 考 資 料

1 平成19年度電力供給計画の概要,経済産業 省資源エネルギー庁,平成19年3月

2 大地昭生,火力発電の変遷-大容量化と高 効 率 化 へ の 挑 戦 , ( 社 ) 日 本 学 術 士 会 H P

(2001年8月月例資料),2001.8

3 特集火力発電所の熱効率向上「3.ガスタ ー ビ ン 」 火 力 原 子 力 発 電 Vol.54 No.10 , 2003.10

4 「電源開発の概要」(昭和63年度~平成17 年度),経済産業省資源エネルギー庁電力・

ガス事業部編

5 斉藤孝基他,新版エネルギー変換,東京大 学出版会,2006年3月

6 電気学会編 火力発電総論「8.ガスター ビン発電設備」,オーム社,2002年

7 入門講座「タービン・発電機及び熱交換 器」Ⅳ.ガスタービンの性能と構造,火力原 子力発電Vol.55 No.11,2004.11

8 電気学会編 火力発電総論「12.ガスター ビンコンバインドサイクルの計画・運転・保 守」,オーム社,2002年

9 入門講座「タービン・発電機及び熱交換 器」1.概説,火力原子力発電Vol.55 No.4,

2004.4

10 塚越敬三他,大型発電用ガスタービンの最 新 技 術 動 向 , 三 菱 重 工 技 報 Vol.42 No.3 , 2005.10

11 小森豊明他,BFG焚ガスタービンコンバ インドサイクルプラント,日本ガスタービン 学会誌Vol.34 No.5,2006.9

12 太田一広,石炭ガス化複合発電,日本ガス タービン学会誌Vol.34, No.5,2006.9 13 電中研レビュー(44号),石炭ガス化複合

発電の実現に向けて-実証機開発の支援と将 来への研究展開,2001.10

14 佐藤幹夫,燃料多様化,日本ガスタービン 学会誌Vol.35, No.2,2007.3

15 塚越敬三他,最新の産業用ガスタービンの

冷却技術,日本ガスタービン学会誌,Vol.35 No.3,2007.5

16 石井潤治,ガスタービンの最新補修・寿命 延 伸 技 術 , 火 力 原 子 力 発 電 Vol.53 No.7 , 2002.7

17 入門講座「発電設備の予防保全と余寿命診 断技術-Ⅱ火力発電設備の予防保全と余寿命 診断技術」,3.1.コンバインドサイクル発電 設備/ガスタービン本体,火力原子力発電 Vol.51 No.11,2000.11

18 佃 嘉章他,東新潟4号系列1,450℃級ガ スタービン複合発電設備の運転実績,火力原 子力発電Vol.51 No.6,2000.6

19 菅原道雄他,東新潟火力3,4号系列の運 転 ・ 保 守 実 績 , 日 本 ガ ス タ ー ビ ン 学 会 誌 Vol.29 No.1,2001.1

20 加藤誠他,特集発電設備の設計と材料「V.

複合発電設備の設計と材料」,火力原子力発 電Vol.53 No.10,2002.10

21 塚越敬三,川田裕,次世代高温・高効率ガ スタービンの技術動向,配管技術,2006.6 22 川地和彦,「第6節新しい動き,1高温ガ

スタービン」,エネルギー新技術体系,日本 伝熱学会,エヌ・ティー・エス,1996 23 竹矢一雄,「第6節新しい動き,2複合サ

イクル」,エネルギー新技術体系,日本伝熱 学会,エヌ・ティー・エス,1996

24 片桐幸徳,AHAT発電設備の制御,日本 ガ ス タ ー ビ ン 学 会 誌 , Vol.35, No.1

(2007.1)

25 NEDOホームページ

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/pamphle ts/sekitan/cct2006.pdf

26 伊藤和彦他,溶融炭酸塩形燃料電池(MC FC)ハイブリッドシステム,日本ガスター ビン学会誌Vol.31, No.3(2003.5)

27 加幡達雄,固体酸化物方燃料電池(SOF C)複合発電システム,日本ガスタービン学 会誌Vol.31, No.3(2003.5)

28 久留長生,SOFC複合発電システムの開

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