技術概要とその取り組み
(7)(20)7.1 概 要
第1章で世界のガスタービンの開発歴史の概 要について述べたが,ここではわが国における 取組み,開発,実機適用に関する歩みの概要を 述べる。
わが国は,戦中および敗戦による産業停滞の 中でガスタービンに関しても欧米の技術開発の 流れから大きな遅れを取った。
そのような中でわが国のガスタービン開発上 記念すべきものとして,1948年(昭和23年)に 鉄道技術研究所が製造した2,000kWがあげられ るが,それは大戦中に高速艇のエンジン用とし て開発着手されたものが,戦後に完成したもの であり,また研究用としての域を出ないもので あった(2)。しかし,昭和30年ごろになると,欧 米におけるガスタービンの技術進展とその応用,
とりわけ発電用としての適用が国内でも注目さ れるようになった。ただし,大半は非常用ある いはピーク用としてのもので,その形式もガス タービン単体(オープンサイクル)で,連続運 転を目指した発電用コンバインドサイクルとし ての適用までにはいたらなかった。しかし,
1980年(昭和55年)ごろからガスタービンの単 機容量(出力)の増大,信頼性の向上などもあ いまって,コンバインドサイクルとしての適用 が行われるようになった。
以降,例えば産業用としてはJR東日本(当 時国鉄)川崎向け144MW(1981年運開)さらに 事 業 用 と し て は , 東 北 電 力 東 新 潟 3 号 系 列 1,090MW(1984年運開)あるいは東京電力富津 火力1,2号系列1,000MW(1985年,1988年運 開)等の運転成功を契機として,今日見られる ようなコンバインドプラント導入が相次ぐこと になったことは,第1章でも述べたところであ る。
さて,これらの設備の設計・製作に関する日 本のメーカの対応であるが,当初これらの設計
製作は,海外メーカからの技術提携よるもので あったが,その後国内メーカの技術力向上に伴 い,近年では自主技術で開発および実機製作を 行うメーカも出てきた。ここでは,大容量ガス タービンを手がける国内メーカ数社につきその ガスタービンの特徴と取組状況を五十音順にて 紹介する。紹介するのは,「川崎重工業-アル ストーム型」,「日立/東芝-GE型」,「富 士-シーメンス型」,および「三菱重工業型」
であるが,その内容は2004年11月発表(7)(対象 によっては2002年10月発表(20))の文献ベース によるものである。
7.2 「川崎重工業-アルストーム型」(7)(20) 川崎重工業は,アルストーム社との技術契約 により,大型を含むガスタービンの設計,製作 を行っている。したがって同ガスタービンは,
アルストーム社(Alstom)が開発した技術を基 にしているが,ガスタービンの基本構造として,
先ずロータは溶接製,燃焼器はアニュラー型に 加え,高環境適合形バーナ(EVバーナ)を採 用したものである。また,近年の高温化と高効 率化対策としてタービン入口温度の上昇ととも に二段燃焼再熱方式を採用している。その初号 機(GT24)は,アメリカのギルバート発電所 に納入(運転開始1995年)され,以降その相似 設計による大型機種(GT26)とともに,多く の実績が得られて来ている。図7-1に川重-ア
図7-1 川重-アルストーム型ガスタービン GT24/26断面図
(出典:加藤誠他,特集発電設備の設計と材料「V.
複合発電設備の設計と材料」,火力原子力発電Vol.53 No.10,2002.10,P1254)
ルストーム形ガスタービンの断面図を,表7-1 に基本性能例を示す(20)。
表7-1 川重-アルストーム型ガスタービンの 基本性能例
(出典:加藤誠他,特集発電設備の設計と材料「V.
複合発電設備の設計と材料」,火力原子力発 電Vol.53 No.10,2002.10,P1254)
なお,アルストーム社の二段燃焼再熱方式の 実機適用は,1940年代から1970年代にかけて20 数台納入しているが,上記形式(GT26)から はじめてアニュラ方式が採用されている。
以上を含め同社方式の構造上の特徴を整理す ると次の通りである(20)。
1)二段燃焼再熱方式を採用。
2)ガスタービンの出力軸は,低温軸(コール ドエンドドライブ),排気は軸流排気とした。
3)圧縮機は22段の軸流圧縮(圧縮比は30)を 採用。入口3段の静翼を可変ピッチ方式とし て吸気流量の60%までを自由に変更可能とし た。これにより,ガスタービン負荷40%程度 までの部分負荷効率とともに,ガスタービン 排出NOx濃度の改善も図っている。
4)2段の燃焼器の内,高圧燃焼器は,30個の アニュラー型燃焼器(EVバーナ)を用いて 予混合燃焼を行い,NOx低減を図っている。
また,低圧燃焼器は,24個の同様なアニュラ ー型燃焼器(SEVバーナ)を用いて,高温
燃焼器排ガスおよび高温空気(1,000℃級)
利用の低NOx燃焼を行う。
5)タービンは,高圧および低圧とも空気冷却 と適切な材料選定を行い信頼性を確保してい る。
例えば,高圧タービンの静翼,動翼とも1段 目は,シャワーヘッド冷却,対流冷却,および インピンジメント冷却を採用し,材料は,静翼 は1方向凝固翼(DS材)とセラミックコーテ ィング(TBC)の組合せ,動翼は単結晶翼
(SC材)の使用などである。
7.3 日立/東芝-GE型(7)(20)
GE社技術の場合,特に冷却技術は航空機用 エンジンの経験が生かされている。同形式の最 新鋭形式は,1,100℃級ガスタービンをベース として高温化および出力増加を狙った設計で,
高温部品の耐熱合金の開発,新冷却技術の採用 が基本となっている。国内では既に同方式によ る1,100℃級のガスタービンを使ったコンバイ ンドプラントの多くの実績(総出力5,040MW)
(20)を踏まえ,その後1,300℃級採用によるコン バインドプラントもかなりの数が建設され,順 調に運転(総出力約17,000MW)(20)がなされて いる。さらに,1,500℃級採用ガスタービンの 計画も行われている。
本形式によるガスタービンの特徴として次の 点が挙げられている(7)。
1)ガスタービンの出力軸は,熱伸びの少ない 圧縮機側の軸端とし,排気側は排気損失が少 ない点で有利な軸流排気,またボイラは横置 き自然循環型を採用している。
2 ) 圧 縮 機 翼 列 は , 高 温 度 適 用 の 場 合 も , 1,100℃級ガスタービン圧縮機のスケールア ップであるが,高温化に際しては出力増に伴 う入口部の拡大,圧縮機段数の増加(例,18 段)で対応している。
3)タービンは,軸流3段の動静翼から構成さ れる。静翼では1~3段が冷却翼,動翼では 1~2段が冷却翼,3段は無冷却翼となって
いる。なお,冷却に伴う翼構造および材料選 定に特別の配慮がなされている。
例えば,静翼(第1段)は,精密鋳造で内部 はインピンジメント冷却,翼前面はシャワーヘ ッド冷却,翼面はフィルム冷却等であり,また 材料は,熱疲労に優れたCo基超合金(FSX-
414)を採用している。また,動翼(第1段)
には,内部冷却にリターンフロー,材料にNi基 超合金(GTD-111)使用の一方向凝固翼を 採用している。それと同時に,タービン第1,
2段動翼には翼表面および翼内部に遮熱コーテ ィングが施している等である。
燃焼器は,希薄予混合燃焼方式によるドライ 低NOx燃焼器を採用し,高温燃焼(温度上昇に よる容量増加)に対応して,燃焼器本数を増加 している(7)。
図7-2に,GE-9E型(1,100℃級)ガス タ ー ビ ン , 図 7- 3に G E - 9 H 型 ( 1,500℃
級)ガスタービンの断面図を示す(20)。(注,
なおGE系では,FあるいはFA型と称して 1,300℃級ガスタービンが実用化されているが,
ここでは紙面の都合上省略する。)
同形式の基本性能例(50HZ用)を表7-2に示 す。
7.4 富士-シーメンス型(7)(20)
シーメンス社(ドイツ)は,大戦後から電力 用に特化したガスタービンの開発を行った。そ の基礎となったのが航空機エンジンであり,ガ スタービン本体構造はその思想(V型ガスター ビンと称す)を継承し,さらに,圧縮機とター ビン翼列には,プラット・アンド・ホイットニ ー社(Pratt & Whitney,PWA)社の航空機 エンジンからの技術導入による技術が組み合わ されている。図7-4に典型的なV型ガスタービ ンの断面図を示す(7)。1,300℃級として,VX 4.3型(初号機1990年運開),1,400℃級として VX4.3A型が開発されている。次に,富士-
シーメンス型の特徴を概説する。
図7-2 GE-9E型1,100℃級ガスタービン 断面図
(出典:加藤誠他,特集発電設備の設計と材料「V.
複合発電設備の設計と材料」,火力原子力発 電Vol.53 No.10,2002.10,P1251)
図7-3 GE-9H型1,500℃級ガスタービン 断面図
(出典:加藤誠他,特集発電設備の設計と材料「V.
複合発電設備の設計と材料」,火力原子力発 電Vol.53 No.10,2002.10,P1251)
表 7 - 2 G E 型 ガ ス タ ー ビ ン の 基 本 性 能 例
(50HZ)
形 式 MS9001E MS9001FA MS9001H 発 電 端 出 力 (kW) 116,900 255,600 490,000※ 発 電 端 効 率 (%LHV) 32 36.9 60※
排 ガ ス 温 度 (℃) 529 602 -
圧 力 比 12.1 17 23.2
空 気 流 量 (kg/s) 401 627 686
圧 縮 機 (段数) 17 18 18
タ ー ビ ン (段数) 3 3 4
燃 焼 器 (個数) 14 18 14
(注)※の出力および効率はコンバインドサイクルでの値を示す。
( 出 典 : 文 献 (20) を も と に Gas Turbine World 2006 Handbook他を参考に修正)
1)タービン全体の基本構造は,V型ガスター ビンの思想にもとづき,2軸受け支持方式,
水平2分割ケーシング,タービンは軸流排気 方式が採用されている。
図7-4 富士-シーメンスV型ガスタービン
(V84.3/V94.3)の断面図
(出典:入門講座「タービン・発電機及び熱交換器」
Ⅳ.ガスタービンの性能と構造,火力原子力 発電Vol.55 No.11,2004.11,P1250)
2)燃焼器は,ハイブリッド(HBR)型燃焼 器と称し,24個のバーナをアニュラー形大型 燃焼室の円周上に配置した形式を採用。気体 および液体燃料にも対応可能で,低負荷領域 では拡散燃焼,高負荷領域では予混合燃焼運 転として切り替え使用される。同燃焼器の例 を図7-5に示す。
図7-5 HBR燃焼室外形図
(出典:入門講座「タービン・発電機及び熱交換器」
Ⅳ.ガスタービンの性能と構造,火力原子力 発電Vol.55 No.11,2004.11,P1251)
3)タービンは,4段で構成されている。冷却 は,第4段以外は空冷翼であり,それぞれの 部分に応じた冷却方式と材料が採用されてい る。例えば,第1段静翼の冷却は,対流,イ
ンピンジメント・フィルム冷却の組合せ,第 1段動翼は,リターンフロー式対流・フィル ム冷却の組合せである。また材料面では,第 1,2段動翼にはNi基合金の単結晶翼(SC 翼),第1~3段動静翼には遮蔽コーティン グ(TBC)を採用しているなどである。
7.5 三菱重工型(20)(7)
戦後,三菱重工業は米国のウエスチング社
(Westinghouse)との技術提携により,設計・
製作していたが,その後同社との契約を終結し,
現在は自社技術により,開発,設計・製作を行 っている。前述の国内事業用の初号機となる東 新 潟 3 号 系 列 の 1,150 ℃ 級 ガ ス タ ー ビ ン ( D 型)の製作に引き続き,1,350℃級(F型),
さ ら に 回 収 型 蒸 気 冷 却 燃 焼 を 特 徴 と し た 1,500℃級(G型)ガスタービンを開発してい る。三菱の設計は,D型が基本となって後継機 へ踏襲されている。G型ガスタービン(M501 G)の基本構造と最新技術を図7-6に示す(20)。 その特徴は,
1)ガスタービン本体構造としては,まずロー タは2軸受け支持構造としている。さらにロ ータは組立てディスク式が採用され,圧縮機 側はディスクをボルト結合,タービン側は,
カービックカップリングと称される歯継手を 使っている。また,車室は水平2分割方式で,
組立て保守が容易な構造となっている。
2)圧縮機は,大容量化に伴う大風量,高圧,
高効率化に対応するため,空力学的面からの 適正形状の検討(例,多重円弧翼,拡散制御 翼等),および起動時の旋回失速,サージン グ防止のため中間段での抽気導入,可変式の 入口案内翼を採用している。
3)燃焼器は,マルチキャン形ドライ低NOx燃 焼器を採用。中心に配したパイロットノズル の周囲にメインノズル(G型で8個)を配し,
予混合火炎の安定燃焼を図っている。冷却方 式は,空気冷却を基本とするが,1,500℃級 の高温化になると同燃焼温度の向上と同時に