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熱電効果測定用サンプルB,C,D

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第 5 章 ホールバー型サンプル測定結果 26

5.2 熱電効果測定用サンプルB,C,D

サンプルAにおいては、温度勾配のつき方が自明ではなかった。サンプルBにおいては、CPW直 下にある加熱部から低温浴に向かって温度勾配がつくものと考えられる。サンプルBを用いて、温 度勾配∇Tに対して垂直、及び平行な熱起電力を測定することを目指した。直流測定により、高磁場 までの熱起電力を測定すると図5.8のようになった。500MHzの高周波を10dBmの強めのパワー でかけている。直流測定においては、比較的ノイズが大きかったため、大きめの温度勾配をつけて いる。

まず、ネルンスト電圧測定用端子のデータを見ていく。V(2-5)のデータでは、正負両側に振動し、

磁場に対して反対称的なネルンスト効果だと思われる起電力が観測された。低温浴に近いV(3-4)に おいては、B>0においては正、B<0においては負のピークが観測されている。それぞれの領域 での振る舞いは、理論から予測されるゼーベック効果に近い。

ゼーベック効果を測定するための端子の組み合わせで得られた結果は、理論から予想されるゼー ベック係数の磁場依存性とは大きく異なっている。V(2-3)におけるデータはネルンスト効果のよう な磁場依存性であるし、V(6-5)、V(5-4)におけるデータはどのような効果が見えているのか判断す ることが非常に難しい。

交流測定では、より低いパワーの高周波加熱で測定することができた。(図5.9) 30MHz、−30dBm の高周波を13HzのAMモード振幅変調で入力し、13Hzの信号をロックイン測定した。直流の場合 と同様の特徴の磁場依存性が観測された。

サンプルBにおいては電子拡散によるゼーベック効果を観測することはできなかった。温度勾配 は図上部から下部に向けてつくものと期待していたが、サンプルの不均一性や磁場の影響によって温 度分布が歪んだのではないかと考えられる。V(2-5)においては観測されているネルンスト効果が低 温浴に近いV(3-4)では理論どおりには観測されていないことから、より低温浴に近い場所で大きく 温度勾配が曲がっているのではないかと考えられる。

そこで、サンプルC,Dでは電圧測定用端子の配置を変えた。高温部に近い位置に端子1,2,5,6を配 置して、これらを用いてVxx,Vxyを正確に測定できるのではないかと考えた。また、低温側近くに 端子3,4を置き、低温浴近辺でのネルンスト電圧Vxyを探るほか、6つの端子の様々な組み合わせに よって、温度勾配のつき方について考察していく。サンプルCは熱電効果測定部分がサンプルBと 同じ横幅で、サンプルDは細くなっている。

サンプルC,Dにおける測定データを図5.10と 図5.11、図5.12に示した。サンプルCについては 30MHz、40dBmの高周波を13HzのAM(SC)変調でかけて26Hzの信号をロックイン測定した。

サンプルDについては直流については、−20dBmの加熱でのデータであるが、ノイズが大きく、精 度は低めである。振幅変調では30MHzの高周波を13HzのAM(SC)変調でかけて26Hzの信号を ロックイン測定した。−30dBmのデータが赤、青のグラフ、−40dBmのデータが黒で示されている。

ネルンスト電圧については、サンプルBと同様に高温部に近い端子ほど理論に近い振る舞いをして いる。低温浴に近い端子V(3-4)やV(2-5)においては、サンプルBと同様に、B>0においては正、

B<0においては負のピークが1/Bに周期的に現れている。

ゼーベック効果測定用の配置で得られた起電力は、理論通りの振る舞いでは無いものの、正負どち

第5章 ホールバー型サンプル測定結果 31

図 5.8: サンプルB 直流測定による熱電効果 高磁場領域

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図5.9: サンプルB 振幅変調測定による熱電効果 高磁場領域

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図 5.10: サンプルC 振幅変調測定による熱電効果 高磁場領域

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図 5.11: サンプルD 直流測定による熱電効果 高磁場領域

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図5.12: サンプルD 振幅変調測定による熱電効果 高磁場領域

第5章 ホールバー型サンプル測定結果 36 らか一方の磁場領域でのみゼーベック効果のような振る舞いを見せているものもある。サンプルC

のV(6-5)では、ネルンスト効果のように正負に振動する信号が得られている。ただし、磁場に対し

て対称な形をしている。その他の端子においては、図中左側の端子でとっている熱起電力においては 磁場正の領域、右側の端子でとっている熱起電力においては磁場負の領域において、大きめのピーク が見られる。高磁場領域での磁場に対する振る舞いはゼーベック効果に近い。

広い磁場領域でゼーベック効果による起電力を測定することは出来なかったが、得られたデータか ら温度勾配の歪み方などを推察していく。まず、ネルンスト効果の測定結果に注目する。加熱側に近 い端子では、ネルンスト効果と思われる起電力を測定することができた。低温浴に近づくにつれて データの形は理論的な予想と離れていき、高磁場ではゼーベック効果のような振る舞いが確認され た。低温浴に近い側で特に、温度勾配が歪んでいるのではないかと考えられる。確認されているゼー ベック効果-likeな信号が磁場の正負に対して反対称になっていることから、温度勾配の歪みは磁場 によるもので、歪む向きが磁場に依存して変化しているのではないかと考えられる。

ゼーベック効果の測定結果を見ると、正負どちらか一方の磁場領域においてのみ高磁場で大きな 熱起電力が観測されている。熱流がサンプルの左右の端に偏るような形で伝わっているのではないか と考えられる。

磁場の向きを確認するため、信号の正負に注意を払いながらホール測定を行った(サンプルD)。

ホール抵抗Rxy(Ω)である。(電流I(6端子→10端子)、電圧測定V(5端子2端子))

磁場正(B>0)では図の紙面下向き、負(B<0)では紙面上向きに磁場がかかっていることが 確認できた。

4000

2000

0

-2000

-4000

Rxy(5-2) Acos (ohm)

3 2

1 0

-1 -2

-3

B (T)

図5.13: サンプルD ホール抵抗

磁場の向きを考慮にいれて測定された起電力から温度勾配のつき方を推測すると、図5.14のよう になる。図は磁場正のときで、負のときには熱流が逆向きに歪んでいくものと考えられる。高温部か ら熱流が運ばれる際に、磁場によって流れが歪められ、今回のような測定結果が得られたものと考え

第5章 ホールバー型サンプル測定結果 37 られる。

図5.14のように温度勾配が歪んだ場合に、サンプルC,Dにおける熱起電力がどのように説明され るのか述べていく。サンプルCにおいて、V(1-6)ではネルンスト-likeな熱起電力が得られており、

端子1と6の間では、熱流の歪みが小さく上下方向に流れているものとかんがえられる。V(3-4)に おいてはゼーベック-likeな信号が得られており、端子3と4の間では、熱流が大きく歪んで、熱流 が流れる方向が横方向に変わってきているものと考えられる。サンプルDにおいては、V(2-5)にお いてすでに熱流が歪んでいるような測定結果になっていることから、サンプルの幅と同程度まで高温 部から離れたところで、熱流が大きく曲がってしまうものと推測される。

サンプルDにおける振幅変調測定のデータを見ながら、ゼーベック効果測定用の端子で得られた データを考えて見る。図5.14のようにB>0において左回りに熱流の歪みが発生する場合を考える。

図中右側においては、熱流がゼーベック効果測定用端子に対して平行に流れるが、左側では熱流の向 きが大きく歪んでしまう。このとき、試料の左側でゼーベック効果を測定しようとすると、温度分布 の歪みによって実際にはネルンスト効果が観測されることになるものと考えられる。実際のデータを みると、B>0の領域において、右側の端子でとられたV(6-5)、V(5-4)においてはゼーベック-like な振動が見られ、左側でとられたV(1-2)、V(2-3)においては、特に0 T<B<3 T程度の領域で、

正負両側に振動するネルンスト-likeな振動が観測された。

B<0の領域においては、図5.14と逆向きに熱流が歪む。実際に、図5.12において、磁場正と逆 に、右側の端子でとられたV(6-5)、V(5-4)においては熱流の歪みによりネルンスト-likeな振動が見 られ、左側でとられたV(1-2)、V(2-3)においては、ゼーベック-likeな振動が観測された。

高磁場において、正確にゼーベック係数を測定するための試料構造として、高周波加熱によるコル ビノ型の熱電素子を考えた。動径方向に温度差をつけ、コルビノ型試料の内、外の電位差を測定する ことで、Sxxを測定できるのではないかと考え、試料を製作した。磁場や不純物などによる影響で熱 流や起電力の向きが歪んだ場合でも、試料の持つ円系の対称性によって各場所における温度勾配や静 電ポテンシャルの歪みはキャンセルしあう形になるのではないかと考えられる。試料作製後、先行研 究などから動径方向の熱起電力Srr はホールバー型におけるゼーベック係数Sxxとは異なるものが 観測されることが分かったが、電子拡散による熱起電力Srrの測定は未だ行われておらず、実験によ る検証が強く期待されていることから、そのまま測定を行った。次章において、コルビノ型における 熱電効果の理論、先行実験、測定結果について論ずる。

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