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測定結果

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第 6 章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 40

6.3 測定結果

2番端子が通電がない状態であったため、4番端子と3端子を用いて、コルビノリングの外側と内 側での電位差を測定した。高周波によって電子のみを加熱するため、特に低いパワーでの測定では、

電子拡散によるコルビノ型の熱起電力が測定できるものと期待される。まず、直流で高周波のパワー を変えながら熱電効果を測定してみると、図6.3のようになった

磁場反転に対して対称なデータとなっている。試料は対称性を持つように設計されており、想定ど うりに測定できているものと考えられる。高周波のパワーを上げるほど大きな信号がでており、熱起 電力が観測されているものと考えられる。高磁場までのデータを取ると、磁場に対して対称な熱電効 果が観測された。(6.4)

高磁場においても、磁場の正負に対して対称なデータが得られた。サンプルの上部に、円形の対 称性が一部壊れている部分があるが、それによる影響は非常に少ない物と考えられる。電圧測定部 から見た上部にある高周波ラインの出入り口の位置(角度)は、磁場の正負に対して対称ではなく、

その影響は磁場に非対称に出るものと考えられるためである。比較的高い磁場領域でも、振動が観測 されている。加熱の仕方に応じて、振動の特徴が変わっている。高いパワーの高周波で過熱を行った データでは、マイナス向きのピークの存在が目立っている。低いパワーの高周波で過熱を行ったデー タでは、正負両側に振れる形の振動が見られる。高いパワーのデータと低いパワーのデータを並べて 比較するとわかりやすい。図(6.5),(6.6)に示した。

20dBmの測定においては、先行実験におけるデータに近いような、片側にのみに振れる山型の

ピークが目立つ。一つの可能性として、温度が比較的高くなったことによりフォノンドラッグによる 寄与がのっているのではないかと考えられる。十分低い温度領域においては、電子-フォノン相互作

第6章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 43

-300 -200 -100 0 100

V (outside-inside) (uV)

-0.5 0.0 0.5

B (T)

red -10dBm orange -20dBm green -30dBm blue -40dBm in 500MHz

図6.3: コルビノ型熱電効果 直流測定 低磁場

-1000 -500 0 500 1000

Vrr(outside-inside) (uV)

-10 -5 0 5 10

B (T) orange -20dBm green -30dBm blue -40dBm 500MHz

図6.4: コルビノ型熱電効果 直流測定 高磁場

第6章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 44

-1000 -500 0 500 1000

Vrr(outside-inside) (uV)

-10 -5 0 5 10

B (T)

図6.5: コルビノ型熱電効果 直流測定 20dBm

400

300

200

100

Vrr(outside-inside) (uV) 0

-10 -5 0 5 10

B (T)

図6.6: コルビノ型熱電効果 直流測定 40dBm 用が弱いため、電子系にのみ温度差がつくと考えられる。しかし、強いパワーで加熱することによ り電子温度が高くなると、電子-フォノン相互作用によって格子系にも温度差が発生する可能性があ る。その場合、フォノンドラッグによる熱起電力も合わせて観測されることとなる。フォノンドラッ グの寄与は本来、εxx= 0であり、コルビノ型での熱起電力は0になるはずである。試料の不均一 性や円形対称性の不完全性などにより、温度勾配が傾くなどの理由によってフォノンドラッグにおけ る εxy成分が観測されているのではないかと考えられる。

それに対して、−40dBmの低いパワーの測定では、高い温度におけるデータで目立っていたピー クは確認できず、理論[8]におけるコルビノ型の熱起電力に近い形の電圧が観測された。

コルビノ型のサンプルにおいても、振幅変調による熱電効果測定を行った。(図6.7,6.8,6.9)

直流の場合と同じ特徴が見られる。

小さめの温度差での測定結果は、理論的に予想されるコルビノ型熱起電力とよく一致する形状の グラフがえられている。1/Bに対して周期的な形で、急激な符号反転とゆったりとした符号反転を交 互に繰り返すによって正負両側に振動している。磁場位置や符号が理論と一致しているのかどうかに ついて議論していく必要がある。

6.10図より、端子5−4間で測定した抵抗から求めた電気伝導率 σrrと熱起電力を比較すること で振動と磁場の関係を考察する。コルビノ型リングの外側と内側の端子を用いての2端子抵抗測定を 行った。なお、抵抗は0.001Vrms、13Hzの交流電源に10MΩの抵抗を接続することによって0.1nA の定電流に変換し、サンプル内での電圧降下をロックイン技術で測定している。抵抗より、導線部分 の抵抗359.4Ωを引いた上で、コルビノリングの外径R(=1mm),内径r(=0.3mm)を用いて次のよ うに電気伝導率に変換した[3]。

σrr = 1 Rrr

× 1 2πlnR

r (6.4)

高磁場での熱起電力の振動現象に注目すると、急激な正負転換は量子ホール領域で起きている。ま た、その間で緩やかな正負転換が起きている。これは理論論文の予想[8]と一致する。

次に、信号の符号を確認する。測定では、理論論文[8]における想定と同様、円形サンプルの外側 が高温部、内側が低温部となっている。コルビノ型試料の同心円の中心を中心座標とする極座標で 考えるとき、動径ベクトル方向に正の温度勾配∇Tがついている。この環境下で電位差をV(外側)

V(内側)と測っているので、この章で提示した測定データの正負は、論文[8]と同じ向きである。そ

こで、測定された信号の符号を確認してみる。量子ホール領域での急な符号反転部分で、磁場の大き い(小さい)側は負(正)、の熱起電力が発生している。これは、1つのランダウ準位が完全に埋まっ ている状態から、少しフェルミ面が下がった(上がった)ような状況である。6.1図における横軸は 化学ポテンシャルであるから、ランダウ準位に対するフェルミ面の位置関係の変化の仕方は逆向き になることに注意が必要である。6.1図において、εが整数nになる部分が下からn番目のランダウ 準位が完全に埋まっている状態で、εが小さく(大きく)なるとフェルミ面が下がった(上がった)

状況になる。これらのことを考慮に入れて測定データの符号を確認すると、理論的な予想と一致して いることがわかる。視覚的にわかりやすくするため、測定結果を横軸1/Bとしてグラフ化し、比較 すると図6.11のようになる。

符号、磁場の大きさに対する振動の仕方、グラフの形状の持つ特徴が理論と一致している。コルビ ノ型における電子拡散の寄与による熱起電力を実験によって確認できた。

第6章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 46

図6.7: コルビノ型 振幅変調測定による熱電効果 高磁場領域 横軸磁場B (T)

第6章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 47

図6.8: コルビノ型熱電効果 振幅変調測定 比較1

40

20

0

-20

Vrr(outside-inside) (uV)

-10 -5 0 5 10

B (T) blue -40dBm purple -50dBm black -60dBm 30MHz

図6.9: コルビノ型熱電効果 振幅変調測定 比較2

第6章 コルビノ型熱電効果測定サンプル 48

40

30

20

10

0

conductivity (µS)

-6 -4 -2 0 2 4 6

B (T)

400

300

200

100

0

Vrr (µV)

図6.10: コルビノ型熱電効果 伝導度との比較

図6.11: コルビノ型熱電効果 符号の確認

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7 章 まとめと今後の展望

最後に、本研究の総括を行う。本研究の目的は 1. 高周波加熱による手法で、熱電効果の測定を行うこと

2. ホールバー型試料において、熱電効果測定を行い、熱起電力Vxx、Vxyを測定すること 3. コルビノ型試料において、熱電効果測定を行い、コルビノ型熱起電力Vrrを測定すること であった。

1. サンプルAにおいて高周波加熱による熱電効果測定に成功した。電子系の特定の部分だけを選択 的に加熱することができるため、熱電効果測定における新たな手法の1つとなると期待される。この 手法の利点は、電子のみを加熱できる点、高周波導波路を自由に配置することで狙った位置だけを加 熱することができるため、様々な形状の試料に応用できる点などである。欠点としては、電流加熱法 と同様、加熱のパワーが磁場依存性を持つことがあげられる。

2. サンプルB,C,Dにおいて、高周波加熱法を用いてホールバー型試料における熱電効果の対角成分

及び非対角成分の測定に挑戦した。非対角成分については、理論に近い形のデータを得ることができ たが、温度分布の歪みなどにより、対角成分は非常に限定的なデータしか得られなかった。測定結果 を通じて、磁場下での電子系の温度の歪み方などについて議論することができた。

3. コルビノ型サンプルにおいて、先行論文の理論的予想と一致する熱起電力の磁場依存性を観測す ることができた。GaAs/AlGaAsコルビノ型試料において、電子拡散による熱起電力を初めて観測し た。従来のヒーター加熱法など、格子系ごと加熱する方法では、電子拡散の寄与のみを観測すること は難しい。また、電流加熱の場合、コルビノリングの内、外どちらか一方だけを加熱することが非常 に難しい。そのため、本研究で用いた高周波導波路を円弧上に配するサンプル設計により熱起電力を 測定することができた意義は大きいものと考えられる。

最も大きな今後の課題は、サンプルB,C,Dにおいて目指した電子拡散の寄与によるゼーベック効 果の観測を行うことであると考えられる。本研究における考察を元にして、さらに適した試料形状を 実現できるのではないかと期待される。

コルビノ型サンプルにおいて、コルビノ型の熱起電力を観測することができた。フィリング5/2の 分数量子ホール効果が観測される試料において同様の測定を行うことで、5/2状態の明細を模索する 測定が行えると期待される。

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