第5章 スーラの⾊彩理論に基づく点描画⾵画像⽣成法
5.2 点描画⾵画像⽣成法
5.2.2 点描ハーフトーニング法
少ない⾊数で良好な視覚混合を実現するために,ハーフトーニングのアプローチを 採⽤する.ハーフトーニングの代表的な⼿法に誤差拡散法 [63] があるが,通常,格
⼦状に並んだ画素に対して適⽤される.しかしながら,点描画では点はランダム,か つ,画⾯全体に均等に配置される.そこで,Poisson Disk Sampling [65] の⾼速化⼿法 である,Boundary Sampling [66] の空間的データ構造を利⽤し,ランダムに配置され た点の近傍の点へ誤差を拡散させる点描ハーフトーニング法を提案する.
Boundary Sampling
以下のStep1 〜 6に⽰すBoundary Samplingアルゴリズムにより,空間に点をラン ダムかつ偏りなく配置する.
Step1: 半径rの円をランダムに配置する.
Step2: Step1で配置した円の中⼼の座標値を候補点リスト{Sk}に格納する.
Step3: 候補点リスト{Sk}から点Si ∈{Sk}をランダムに取り出す.
Step4: Step3で取り出した点Siの中⼼から半径2rの円の円周上に,点Sjを配置する.
この時,点Sjを配置可能な点Siの中⼼から半径2rの円弧の集合をavailable bound-aryと呼ぶ.図5.6 (a) にavailable boundaryの例を⽰す.点Siを中⼼とする半径2r の円のうち,実線部の円弧がavailable boundaryである.
Step5: 点Siのavailable boundary上に点を配置することができなくなるまで,Step4を
繰り返す.配置した点は候補点リスト{Sk}に格納する.
Step6: 候補点リスト{Sk}が空になるまで,Step3 〜 Step5を繰り返す.
(a) available boundaryへの点の配置 (b) 近傍の点への誤差拡散 (m = 4)
図5.6 Boundary Samplingの空間的データ構造
Fig.5.6 A spatial data structure of boundary sampling
誤差拡散法
Boundary Samplingでランダム,かつ,均等に配置された点の位置に,短いストロー
クを模したテクスチャを描画することで,点描画を⽣成する.スーラは 11 ⾊の原⾊
を使って作品を描いている.したがって,⼊⼒画像の⾊でテクスチャを描画するので はなく,ある程度の⾊数 (例えば,11⾊) に減⾊する必要がある.少ない⾊数で⼊⼒
画像の濃淡を表現するために,Boundary Sampling で配置した点に誤差拡散法を適⽤
する.HSL⾊空間において,⾊相 (H),彩度 (Sa),明度 (L) の各チャネルで量⼦化を
⾏い,Halo画像との差分を誤差とする.
Boundary Samplingで配置された,任意の点Siの中⼼から半径2rの円周上の点の集
合{Sm}に誤差を拡散させる.mはSiの円周上に配置された点の数である.
まず,点Siの中⼼の座標の⾊を量⼦化する.ここでは,HSL⾊空間のH,Sa,Lの 各チャネルを量⼦化することを考える.量⼦化した⾊相の集合を{Hn},彩度の集合を
{San},明度の集合を{Ln}とし,円 Siの中⼼の座標の⼊⼒画像の⾊相を Hinput,彩度を
Sinput,明度をLinputとする.H,Sa,Lの値をそれぞれ均等にnH,nSa,nL等分した値で
量⼦化する.彩度nSaと明度nLは24とし,⾊相の数nHはパラメータとして扱う.量
⼦化する⾊相の集合{Hn},彩度の集合{San},明度の集合{Ln}と⼊⼒画像とのユークリ ッド距離が最⼩の値で点Siの⾊相,彩度,明度を更新する.このとき,置き換えた後 の誤差を次式で求める.
(5.4)
次に,誤差をabailable boundary上の点{Sm}に拡散する (図5.6 (b)).
(5.5)
ここで,DLはラプラス分布の確率密度関数の逆関数であり次式で求める.
∅ln2 if 0.5
∅ln2 1 otherwise (5.6)
ここで,μは期待値,φは分散,Uは範囲 [0, 1] の⼀様乱数を表す.ここでは,μ =
0,φ = 6とする.⽂献 [49] よりスーラの点描画の⾊使いがラプラス分布に近いとい
う調査結果が報告されている.これを反映させるために,⾊相のみラプラス分布に基 づき誤差eHを−2/π ≦ eH ≦ 2/πの範囲で増幅して拡散させる.
点描ハーフトーニング法の効果
点描ハーフトーニング法が視覚混合を実現できていることを検証するために,予備 実験を⾏った.図5.7に,⾊相環 (図5.7 (a)) を⼊⼒として点描ハーフトーニング法を 適⽤した結果を⽰す.ここでは,⾊相の数nHを11 (図5.7 (b)) から72 (同図 (e))まで 段階的に変更した.図5.7 より,視覚混合により少ない⾊数でも,⾊相環のグラデー ションが再現できていることがわかる.
(a)⼊⼒画像 (b) nH = 11 (c) nH = 24 (d) nH = 15 (e) nH = 72
図5.7 異なる⾊相数による点描ハーフトーニング法の結果
Fig.5.7 Results of the pointillistic halftoning method by using different number of hues