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4  推定手法の検討結果

4.1  機器故障率

4.1.6  火災発生頻度の階層ベイズ手法(EPRI 手法)による一般故障率推定

EPRIの火災発生頻度評価手法[19]では(以下、EPRI手法)、階層ベイズ手法に おいて一般故障率を個別発電所推定結果の重ね合わせで求めており、これによ って、平均値、分散、平均故障件数が個別発電所のデータと整合するような一 般故障率となっている。EPRI手法では、(μ,σ)の事後分布から一般故障率をサン プルするわけではないので、個別故障率の計算が収束している限り外れ値が出 ず、平均値の計算も安定する。

EPRI手法は、すべての発電所を等価に扱って故障率をサンプルするが、ここ では発電所ごとの運転時間の長短を考慮して、故障率をサンプルする方法も考 える。

<各発電所を等価に扱う場合>

(注) 各発電所の個別故障率分布から、等しく故障率をサンプルして一般故障率を算出する。

<発電時間の重みをかけて扱う場合>

(注) 運転時間が長ければその発電所の個別故障率はほかの発電所より信頼できるとみなし、

各発電所の故障率分布から、その運転時間割合に比例した数の故障率をサンプルして、

一般故障率を算出する。

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4.17 は、ある機器について、超母数(μ,σ)の事前分布をμ〜正規分布、σ 〜

Half-Cauchy 分布として EPRI 手法で計算した一般故障率分布と、超事前分布を

一様分布とした 26 ヵ年手法で計算した一般故障率分布を比較したものである。

26 ヵ年手法で一般故障率の外れ値(ここには示していないが)が生じているも のの、分布の主要部分(例えば 5%-95%の範囲の分布)は比較的安定しており、

EPRI手法でもこの26ヶ年手法の分布をほぼ再現できている。

4.17  一般機器故障確率分布の結果比較

また、図 4.18 は両手法による一般故障率の累積平均をプロットしたもので、

EPRI手法は(個別故障率が収束しているので)一般故障率の平均値は収束する。

このとき、その平均値は共役事前分布やJeffreys無情報事前分布と同じ程度の値 となった。

4.18  EPRI手法の収束性の確認

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なお、WAICを用いてEPRI手法の適切さを比較することはできないことから、

別途事前分布の適切さを判断する必要がある。Half-Cauchy分布と正規分布の組 合せを超事前分布として、平均値の収束性(Running Average)及び事後分布の 収束性の指標であるGelman Plotの例を図4.19と図4.20に示す。図4.19は、蓄 電池機能喪失(故障0件、延供用時間4.6×107h)の時間故障率の例、図4.20は、

ファン・ブロアー起動失敗(故障1件、延デマンド数6.6×104d)のデマンド故障 確率の例である

4.19  蓄電池機能喪失の一般時間故障率の収束性

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4.20  ファン・ブロアー起動失敗の一般デマンド故障確率の収束性

Gelman Plotは、複数チェーンによるモンテカルロ計算において、チェーン間

の分散と各チェーン内の分散との比に相当する量(shrink factorという)をサン プル数に対してプロットしたもので、計算が収束していればこの量が1となり、

慣習上 1.1以下となれば収束とみなすことが多い。図 4.19、図 4.20 の何れも十 分に収束していることが確認できる。

以上により、Half-Cauchy分布と正規分布の組合せを超事前分布に採用した場 合でも、一般故障率をよく推定できると考えられる。

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