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準天頂衛星を用いた精密測量作業マニュアル(案)の検討

ドキュメント内 衛星測位シミュレータの開発 (ページ 31-53)

2.1 GPS 衛星の補完効果に関する精密測量作業マニュアル(案)の検討 2.1.1 はじめに

我が国が開発した準天頂衛星システム(QZSS)は、常に最低1機の衛星が全国の天頂付 近に配置し、GPSと互換な測位信号を送信することによる測位可能性の向上とGPS衛星 に対する測位補正情報を配信することによる精度向上を図るものである。この準天頂衛 星システムは、我が国の独自技術により進められている。

準天頂衛星に関する研究開発は、文部科学省、総務省、経済産業省、国土交通省の 4 省が中心となって取り組んでおり、その中で国土地理院を含む国土交通省関係4研究機 関(電子航法研究所、国土技術政策総合研究所、国土地理院、交通安全環境研究所)で は、準天頂衛星による高精度測位補正技術の研究開発を担当している。国土地理院は、

国土交通省総合技術開発プロジェクト「準天頂衛星による高精度測位補正に関する技術 開発」に参画し、測量向けの応用として、①準天頂衛星測位・通信システムの精密測量 への応用技術の開発、②次世代電子基準点に関する研究開発、の2つの課題に取り組ん でいる。

上記課題のうち①においては、準天頂衛星等の次世代衛星システムを用いた精密測量 の応用技術について数値模擬実験を行い、それによる測量精度評価を通じて、衛星の打 ち上げ前に測量作業規程(案)をとりまとめることを目標としている。そのため我々は、

次世代衛星測位システムが登場する前に数値模擬実験により測量精度の予測評価を行う ため、これらの衛星測位システムによる観測を計算機上で模擬的に再現するソフトウェ ア「衛星測位システム・シミュレータ」(Satellite Positioning System Simulator:以下

「SPSS」という。)の開発を行うとともに、SPSSが精密測量への応用に使用可能な性能 となるように、伝搬遅延モデルの高精度化や衛星電波の遮蔽効果の精密化等の高度化の 研究を行い、ソフトウェアの改良を行ってきた。

今回の技術開発は、既開発のSPSSを用いて数値模擬実験を行い、それによる測量精度 評価を通じて測量作業規程(案)をとりまとめることを目標とする。そのため、まず現 実的な測量を再現するための誤差付与の手法について調査した。次に数値模擬手法によ り測量精度の予測評価を行い測量作業規程(案)を作成するために、数値模擬実験を行 うべき条件や適切な評価手法等について検討し、数値模擬実験の作業指針として取りま とめた。それをうけてスタティック法による基準点測量における準天頂衛星の補完効果 に関する評価を行い、その評価結果を踏まえ、「国土交通省公共測量作業規程における基 準点測量のスタティック法についての運用基準(案)」(以下「運用基準(案)」という。) として、準天頂衛星システムを併用した場合の観測の運用基準について取りまとめた。

この資料は、本技術開発で行う数値模擬実験について、基本的な考え方やそれに基づ いて行った評価の概要を説明資料としてとりまとめたものである。

2.1.2 技術開発の基本方針

本技術開発全体の目標は、準天頂衛星等の次世代衛星システムを用いた精密測量の応 用技術について数値模擬実験を行い、それによる測量精度評価を通じて、衛星の打ち上 げ前に測量作業規程(案)をとりまとめることである。

本技術開発でいう作業規程(案)とは、特に基準点測量のスタティック法について、

準天頂衛星とGPSを併用した場合の補完効果の観点から、準天頂衛星と GPSを併用し た場合の運用基準についてとりまとめたものである。実際の作業規程は、準天頂衛星シ ステムが正式運用された後に、実観測における測位実験結果の評価をもとにして策定さ れるべきものであるが、本作業規程(案)は、そのような評価を行う際の調査計画の策 定や、評価作業を効率的に実施するために活用されるものを期待するものである。

数値模擬実験に際しては、観測状況として対流圏の状態および電離層の状態、および 遮蔽条件を考慮し、幅広い条件下において測位衛星観測をできるだけ再現した数値模擬 実験を行う手法の開発を行う。そのため、実際のGPS観測データとの比較を通じて、多 様な観測状況下において、できるだけ実測に近い測量条件による観測データを再現する ための適切な誤差付与の手法について検討を行った。対流圏の状態および電離層の状態 について、完全に実観測を表現することは困難であるが、大局的な遅延量をモデルで与 え、表現できない部分については白色雑音で与え、その振幅を実測データから推定する、

という方法で、それぞれの擾乱状態を適切に表現できるようにした。また、遮蔽条件に ついては、地形遮蔽については数値標高モデル、地物遮蔽については数値表面高モデル を用い、現実的な遮蔽を表現した。次に、実際に数値模擬実験を行い、生成された模擬 観測データを汎用のGPS解析ソフトウェアで解析して基線解を推定し、基線の各成分に ついて数値模擬実験で与えた真値との差を求めた。(以後、「予測測量誤差」という。)さ らに、準天頂衛星の有無による予測測量誤差の違いを準天頂衛星の補完効果としてとり まとめるとともに、DOP値、基線解の標準偏差などの指標が、確実に制限内の解を得る ための観測の運用基準として設定可能かを検討した。また現行の規程で運用基準として 採用されている最低高度角制限が、準天頂衛星を併用した観測の際に緩和できるかどう かについても検討した。数値模擬実験に関して、観測条件の設計や評価手法の概要につ

いて2.1.4に、準天頂衛星の補完効果の評価およびその作業規程(案)としてのとりまと

めを2.1.5にまとめる。

2.1.3 観測データを再現するための信号設計 2.1.3.1. 基本的な考え方

一般的に実測のGPS観測は、以下のモデルで表現されると仮定する。

(1)衛星―受信機間の幾何学的距離 (2)衛星搭載原子時計誤差

(4)電離層モデルで与えることができる電離層遅延量 (5)受信機時計誤差

(6)対流圏遅延量、電離層遅延量のうち(3)、(4)で表現できないもの (7)受信機計測誤差

(8)マルチパス等の受信環境に起因する誤差

SPSS では上記(1)、(3)、(4)がモデル化されており、(2)及び(5)について は時間履歴データとして取り込むことができる。この(1)~(5)までを用いてSPSS で観測データを生成し、これを基準擬似 GPS 観測データとする。(6)に相当する誤差 を基準擬似 GPS観測データに付加することで、実測GPS観測データの測位解を再現す る擬似データを生成することとする。

(6)に相当する誤差については便宜的に白色雑音として与えることとし、その振幅 は、基準擬似GPS観測データと実測 GPS観測データとの差から推定することとした。

以下に推定の手法と結果について記載する。

なお、(7)の誤差は干渉測位方式においては一般的に非常に小さいので今回は無視し た。また、(8)については、受信環境の悪い場所では大きな寄与を持つものの、場所ご とに大きく変わるものであること、また、モデル化が難しいものであることから、今回 は取り扱わないこととする。

2.1.3.2. 対流圏遅延量および電離層遅延量の特徴

地球大気のなかでGPSの電波伝搬に顕著な影響を及ぼすのは電離層と対流圏である。

これらが電波伝搬に及ぼす影響は、系統的な遅延と白色雑音的ゆらぎで記述される。

電離層による遅延とゆらぎの絶対量は、観測周波数の二乗に逆比例する性質がある。

そして擬似距離に対して電波は群速度(信号速度)で伝搬し遅延(delay)が発生するが、

搬送波位相に対しては電波は位相速度で伝搬し負の遅延(advance)が発生する。

電離層による遅延量は、擬似距離と搬送波で正負が反対であるが絶対値は実質的に同 一であって、その大きさは電離層活動状態、すなわち太陽活動、地域、季節、昼夜によ って大きく変化する。日本付近では太陽活動極大期の昼間、天頂方向でL1帯では15 m くらいの衛星距離誤差(搬送波では短縮、擬似距離では延び)、太陽活動極小期の深夜は

0.2 m前後の誤差がある。また、根源的には太陽活動に起因する電離層の突発変動のため、

急激な遅延変化がある。

対流圏による遅延とゆらぎは、実質的に周波数依存性はない。また群速度と位相速度 が一致するため、擬似距離、搬送波位相とも正の遅延となる。

対流圏による遅延は天頂方向で約2.3 m程度であって、このうち2 m前後が乾燥空気、

残りが水蒸気による。水蒸気成分は日本付近では最小0.05 m、最大0.4 m程度である。

変動はおもに気象現象との関連が強く、日周変化と季節変化が主なものである。強い前 線通過などのため、急変化はあるものの、衛星斜距離上で量的には電離層ほど激しいも

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