1.1. 序論
1.1.3.2. 温度コントロール装置
長時間観察におけるドリフト (顕微鏡の熱変化による視野全体のズレ)を抑えるために、顕 微鏡のステージ上の温度を一定に保つ装置を用いた (図 24)。ステージ上の対物レンズおよ びガラスチャンバーを覆うサーモプレートに、循環恒温槽 (Julabo F12-ED)から一定温度
(±0.3℃)の温水を循環させることで温度を調整した。その結果、長時間(~ 60分間)の観察にお
いて、ドリフトは~100 nm前後に抑えることができた (図21)。
67 図21. 温度コントロールによるドリフト抑制
温度コントロールにより長時間(~ 60分間)の観察において、ドリフトは~100 nm前後に抑えることが できる。
1.1.3.3. KOH 処理カバーガラスの作製
運動観察に用いるガラスを作製した。ガラスはKOHで表面を洗浄した。以下、その手順を 大まかに記す。
a. カバーガラス (Matsunami 32 × 24 mm, Thickness No.1, #C)を陶器製のガラスホルダー にセットし、5 N KOHに浸し、一晩、静置した。
b. ガラスホルダーをKOH溶液から取り出し、200 mlビーカーのMilliQに浸し、超音波洗 浄器 (Yamato #2510J-DHT)を用いて、10分間ソニケーションを掛けた。
c. ビーカーのMilliQを交換し、10回出し入れし、ガラスをすすぐ。この操作を10回繰り 返した。
d. ガラスホルダーからカバーガラスを取り出し、ホコリがつかないように乾燥させた。
68 1.1.3.4. ガラスチャンバーの作製および観察
KOH処理したガラスを用いて、ガラスチャンバーを作製した。以下に、その手順を大まか に記す。
a. KOH処理カバーガラスに両面テープ (ニチバン #NW-25)を約3 mm間隔をあけて貼
り、その上に未処理カバーガラス18 × 18 mm, Thickness No.1 (マツナミ #C218181)を 接着することでガラスチャンバーを作製した (図22)。流路の容量は約5 μlとなった。
図22. ガラスチャンバー
カバーガラス (32 × 24 mm)とカバーガラス(18 × 18 mm)の間に約3 mmの流路が形成されている。
b. ビオチン化BSAのガラス面上への吸着
MB (20 mM PIPES-KOH (pH 7.4), 25 mM K-Acetate, 1 mM MgCl2, 4 mM EGTA)により 5 mg/mlに調製したビオチン化BSA (Sigma #A8549) 5 μlを流し入れ5分間静置し、
ガラス面上をビオチン化BSAで覆った。
c. 洗浄: MB 20 μlを流し入れ、余分なビオチン化BSAを除去した。
d. ビオチン化BSAへのストレプトアビジン結合
69
MBにより希釈した5 mg/ml ストレプトアビジン (Wako #194-17863) 10 μlを流し入 れ5分間静置し、ビオチン化BSAにストレプトアビジンを特異的に結合させた。
e. 単量体キメラキネシンのガラス面上への固定
1 μMに調整したモータータンパク質溶液 20 μlを流し入れ3分間静置し、未反応で残っ ているストレプトアビジンを除去すると共に、AviTagを持つモーターをストレプトアビ ジンとビオチン化BSAを介してガラス面上に固定した。
f. 極性微小管とNcdモーターとの結合
BRB80により1/ 200に希釈した極性微小管溶液 20 μlを流し入れ3分間静置し、極性
微小管をNcdモーターに結合させた。
微小管溶液
組成 使用量 ストック 備考
BRB80 94 μl 室温
0.5 mg/ml BSA 5 μl 10 mg/ml
20 μM Taxol 1 μl 2 mM
ATP ~0.5 μl 96 mM
Rhodamine-labeled MT 2 μl cfg, 50 μl懸濁 (50 μM Taxol)
g. Assayバッファー30 μlを流しいれた。
70 Assayバッファー
組成 使用量 ストック 備考
MB 50 μl 2×
MQ 31 μl
600 mM KCl 20 μl 1 M
0.5 mg/ml BSA 5 μl 10 mg/ml
20 μM Taxol 1 μl 2 mM
1 mM DTT 1 μl 0.1 M
50 U/ml Glucose Oxidase 1 μl 5,000 U/ml
0.2% Catalase 1 μl 20% Catalase: グリセロール: D.W. =
2: 5: 3 0.3 mg/ml Creatine kinase 1 μl 30 mg/ml 要事調製 5 mM Creatine phosphate 1 μl 500 mM
3 mM ATP 3 μl 96 mM
4.5 mg/ml Glucose 3 μl 150 mg/ml
h. 蛍光顕微鏡観察
蛍光顕微鏡を用い、x-rhodamine (微小管)の観察に632.8nmのフィルターセットを使用 した。十分な滑り運動が観察できるように、滑り速度に応じて露光時間1 ~15秒の間と 観察時間5~60分間でキャプチャソフト(Andor Solis)によりビデオ画像を取得した。