第二章 棒状液晶性化合物による慢性骨髄性白血病細胞株 K562 へのアポトー
3.1. K562 細胞増殖抑制作用
3.1.1 液晶性化合物による細胞増殖抑制作用
慢性骨髄性白血病細胞株K562を用いて、分子末端にヒドロキシ基を有する棒状液晶性化合 物 (表 1-1)のうち8と18を除く16 種類についてK562細胞の増殖に及ぼす影響を調べた。
表 1-1 に示した化合物は、ベンゼン環、ピリミジン環、ピリジン環あるいは縮合環をコア構 造として持っている。液晶性化合物を添加せずに培養して得られた細胞数を1として、それに 対する細胞生存率を求めた。液晶性化合物はあらかじめ DMSOに溶解させておき、それを培 地に添加し、最終濃度が10 Mとなるようにした。結果を図2-4および表2-1に示す。図2
-4 にみられる*印は、統計処理を行い、コントロールの細胞数に対して、液晶性化合物を添 加した際の細胞数に有意な差があると認められたものである。また、表2-1 には、細胞増殖 抑制率を示した。
図2-4 棒状液晶化合物を培地中10 Mとなるように添加したときの
K562細胞増殖に及ぼす影響
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表 2-2 棒状液晶性化合物を培地中10 Mとなるように添加したとき のK562細胞のコントロールに対する細胞増殖抑制率
Compound Molecular structure Suppressive activity
1
N N
C8H17 COOH 8%
2 C8H17 COOH 10%
3
N N
C8H17 OH 12%
4
N N
C4H9O OH 75%
5 N
N
C4H9O OH
F
14%
6
N N
C8H17 OH 15%
7
N
C8H17O OH 21%
9 C8H17O COOH 6 %
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表 2-2 棒状液晶性化合物を培地中10 Mとなるように添加したとき のK562細胞のコントロールに対する細胞増殖抑制率
K562の細胞増殖を最も抑制したのは4で、液晶性化合物を添加していないコントロールに
対して、75%の細胞増殖抑制作用を示した。4 に続いて、強い細胞増殖抑制作用を示したのは
13と17で、その抑制率はそれぞれ49%および67%であった。強力な細胞増殖抑制作用を示し た4と17の構造は、コア部分に1つのピリミジン環を含む3つの芳香環を有しており、10は 側方置換基として二つのフッ素を含む3つの芳香環を有していた。さらにこれらは分子末端に ヒドロキシル基をもっていた。
Compound Molecular structure Suppressive activity
10 C10H21O OH 7 %
11 C5H11 N OH 13 %
12 N
N C10H21O
F F
OH 33 %
13 C6H13O
F F
OH 49 %
14 C8H17O COO C7H15 8 %
15 C9H19 CN 20%
16 C8H17O OH 9 %
17 C6H13O
N N
OH 67%
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図2-5 化合物4と17の細胞増殖抑制作用の濃度依存性
三つの芳香環を有する化合物4、12、13、そして17は、二つの芳香環を有する化合物1-3、
6、7、そして16 に比べ、高い抑制作用を示す傾向が見られた。縮合した構造で抑制作用がみ
られないものの、芳香環を3つ含むような剛直なコア構造で抑制作用がみられており、抑制作 用とコア構造との関連が示唆される。また、化合物4にフッ素が置換した5では、抑制作用が 消失した。フッ素は高い電気陰性度を有し、小さな原子サイズであることから興味深い特性を 有している。本研究ではフッ素を含むことで抑制作用が消失したが、フッ素が、分子構造や抑 制作用にどのような影響を及ぼしたかは不明である。
3.1.2 細胞抑制作用の濃度依存性
培地中のサンプル濃度10 Mで顕著な細胞増殖抑制作用を示した4と17について、培地 中のサンプル濃度を変化させて、24時間培養したときの細胞増殖抑制率を調べた。サンプル濃
度を1 M 、5 M、 10 M、 30 M 、50 Mとしたときの生細胞数をプロットした。図2
-5に示した結果より、30 Mで、7と9はいずれもK562細胞をほぼ死滅させた。4と17の 細胞増殖抑制率は濃度に依存して高くなることが分かった。そして、4と17のIC50値はそれ
ぞれ7.2 Mおよび9 Mとなった。4と17の細胞増殖抑制作用の濃度依存性に大きな差異は
見られなかった。
42 3.1.3 細胞抑制作用の時間依存性
細胞増殖抑制率が最も高かった4のIC50値が7.2 Mであったことから、7 Mを基準 として、7 Mおよび14 Mの時の4と17の細胞増殖抑制作用の時間依存性について調 べた。結果を図2-6に示す。4と17はそれぞれ抑制効果が異なるものの、いずれも時間 依存的に細胞増殖を抑制していることが分かった。さらに、ここで得られた結果と、前述 の結果である4が17よりも強い細胞毒性を示すことには整合性がある。また、48時間後 の4と17の抑制効果を比べると、経過時間と死滅する細胞数とに相関がある。また、時 間が経過しても、抑制効果の順位は変動しないとわかった。
0 24 48 72
0.0 0.5 1.0
Time (hr)
Compound 7 7M Compound 7 14M Compound 9 7M Compound 9 14M
Suppressive activity
図2-6 細胞増殖抑制作用の時間依存性
4: 14 M 4: 7 M
17: 14 M 17: 7 M
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