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1 調査概要

(1)調査目的

海外において先進的な取組を行っていると思われるホール・劇場、自治体関連 組織、チケッティングエージェンシー等に対し、対面のインタビュー調査を実施 した。施設開発・大規模改修、経営・運営などの実態や課題、対応状況などを把 握し、先行事例として東京におけるホール・劇場等の今後のあり方への参考とす る。

(2)調査対象都市の選定理由

調査対象の海外主要 3 都市として、「ロンドン」「ニューヨーク」「パリ」を選定 した。

これらの 3 都市は世界主要都市の中でも、経済力をはじめ、芸術・文化の成熟 度が高く、観光を含めて経済と文化による相乗効果を大きく発揮していると考え られる。ホール・劇場が数多く存在し、様々な公演が日常的に開催され、自国民 はもとより、世界中から多くの鑑賞者を広く集めている。それを可能にしている のは、長い年月の中で培われてきた創作者、表現者たちのたゆまぬ努力であり、

常に厳しい競争にさらされながら、新たな作品を生み出し続けてきている。何世 代にもわたってホール・劇場に足を運び、鑑賞を日常的に行う生活習慣の中で養 ってきた感性と作品に対する評価目線をもって、公演を厳しく評価しつつ、日々 の歓びとして享受している。そのような鑑賞態度が、これら 3 都市のホール・劇 場で生まれる作品の品質を一層研ぎ澄ましており、世界に通用する公演として強 い吸引力を持つに至らしめている。

東京のホール・劇場は現在、施設の老朽化をはじめとする、様々な課題に直面 している。これらの 3 都市は、長い歴史を持つ文化活動において同様の課題に直 面、対応してきたこと、また大都市特有の課題にも対応していることが想定され、

数々の先行事例を保有し、多くのことを学ぶ必要があると考えた。

またこれら 3 都市は、古くから多くの移民を受け入れてきた歴史もあり、様々 なコミュニティで都市が構成される複合都市である。少子高齢化が急激に進展す る東京において、訪日外国人が今後継続的に増加することは間違いなく、外国人、

障害者、高齢者、幼児、親と子供など、誰もがホール・劇場等に容易にアクセス しやすい環境の整備、ダイバーシティ社会の実現に向けた取組など、社会的な背 景を前提としつつ、ホール・劇場のハード・ソフト両面の取組についても多くの ことが学べると期待された。

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(3)調査対象 3 都市の特徴と、調査対象組織等

個別の調査実施にあたり、対象とした海外主要 3 都市「ロンドン」「ニューヨー ク」「パリ」のそれぞれの文化的な背景、経緯や特徴をあらためて確認し、東京と の違いを把握する。

ロンドンは古くから公共機関が中心となって文化芸術を広く振興し、市民はも ちろんのこと、国内・海外に対して、積極的に文化情報を配信している。また民 間企業の商業活動も活発で、ウエストエンドなどは、鑑賞を目的とする人々を世 界中から集めている。

ニューヨークはブロードウェイに代表されるように、民間企業の活動が中心で ある。商業活動を行う民間企業に加えて、民間を母体としながらも非営利組織と して社会的な使命を担い、公共機関の支援を受けつつ活動を行っている様々な組 織が存在する。

パリはニューヨークとは対照的に、国や市が主導する施設や公演が非常に多い。

大規模な複合施設の開発や長い歴史を持つ施設の運営をはじめ、公演制作・運営 に至るまで、オペラ、バレエ、クラシックコンサートなどを中心に公共機関が積 極的に推進している。民間企業の活動としては、ナイトエンタテインメントなど がみられる。

これら 3 都市に共通する特徴は、いずれも専門のホールや劇場を多く保有し、

そこで様々なジャンルの公演が、個別に開催されてきていることである。多くの 移民の受け入れによる市民の多様化や、ポップス系音楽の人気などにより、各施 設の多目的化が近年は進行してきたが、東京のホールや劇場は、もともと専門劇 場としてではなく多目的な用途のために開発されてきたことと比較すると、施設 の置かれている背景は大きく異なる。

このような各都市の特徴を踏まえて、先行事例の把握が期待できる調査対象を 抽出した。それらにインタビュー調査の依頼を行い、今回承諾を得ることができ た組織に対して訪問調査を実施した。調査対象は、ホール・劇場、行政機関・関 連組織、販売エージェント等の組織や専門家などである。

総合力 文化・交流

第1位 London London

第2位 New York New York

第3位 Tokyo Paris

第4位 Paris Singapore

第5位 Singapore Tokyo

(参考:森記念財団「世界の都市総合力ランキング 2016」より)

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(ア) ロンドン

・特徴

政府が社会の創造的な力を引き出す芸術文化政策等に力を入れており、クリエ イティブ産業の成長をリードしている。特にウエストエンドを中心としたミュー ジカル、音楽、ファッション、デザインなど、多岐にわたる分野において、文化 政策を推進している。ロンドン市は文化支援に非常に積極的で「芸術と文化は文 明社会の基礎をなす特徴であり、政府は市民の共通の利益のため、これに投資し、

支援する責任がある」と考える。一方、世論調査の結果も、ロンドンの住人が、

その文化を非常に大事にしていることを示している。

ロンドンは、20 世紀に激動の時代を過ごしてきた。2 つの世界大戦(うち第二 次大戦では繰り返し空爆を経験)、大英帝国の消滅、大量移民の受け入れ、世界金 融の中心地としての隆盛を経て大きく変容し、その重要な都市戦略のひとつに文 化を位置づけ、積極的な振興を図ってきた。

もともとロンドンは芸術文化活動が盛んであり、シェイクスピア時代以来、演 劇界で最も重要な都市として機能してきた。そして文学や演劇に加え、音楽、ダ ンス、美術など、その他様々な芸術形式の一大中心地となり、主要な博物館や美 術館は世界有数の来客数を誇る。ショービジネスの世界で大きな役割を果たして いるミュージカルにおいては、ウエストエンドでの発表と上演を前提にした独創 的な作品が、ロンドンにおいていくつも生み出されてきて、それがニューヨーク のブロードウェイに広まることで、世界的なショーとしての確立を見てきた。ロ ックやパンクなどの音楽に関しても挑戦的、前衛的な試みや作品が多い。ロンド ンの多くのクリエイター達は、ニューヨークと自らを比較して、市場でニューヨ ークは大きく強い情報発信力を持つが、ロンドンは創作力に溢れて、常に新しい 作品を生み出し続けていると自負している。

ロンドンが、アートやカルチャーで成功できた理由は、大ロンドン庁による「文 化の街」という、明確な定義づけがあったからとの意見がある。明確な方向性に 基づいて、常に具体的にどのように展開すべきかを継続的に協議、検討する場が あり、その結果を具体的な活動に結び付けてきている。ロンドンでは、自らはパ リほどの文化の歴史や資産の蓄積を持ちえていないと感じている人が多い。しか し、そのロンドンが文化を世界に発信し、多くの人々を強く引きつけることがで きるのは、ロンドンの持つ創造力と、明確な方向性に基づいた協議のしくみのた めだと考えられている。

※参考「World Cities Culture Report 2014」(Mayor of London)

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・調査対象組織 区分

所有と 運営

ホール・劇場、

組織 概要

ア 行政機 関・関連

組織

行政 組織

Greater London Authority

行政機関。イングランドのグレーター・ロンドンにおいて最上 位に位置する地方自治体であり、ロンドン市長、その権力を監 視する 25 名のロンドン議会議員から構成される。2000 年に 設置された。

イ 行政機 関・関連

組織

官民 連携 組織

London&Part ners

非営利組織。ロンドン市の海外向けプロモーション業務を担 う。2011 年 4 月に設置され、行政と民間とのパートナーシ ップで運営している。ロンドン市から多くの補助金を受けてい る。

ウ 行政機 関・関連

組織

公共 機関

City of London Information Centre

公共機関。観光情報センターであり、Barbican Centre など 毎年多くの人が訪れる文化施設と協力して、様々な教育プログ ラムの提供をサポートしている。

ホー ル・劇場

公共施

Alexandra Palace

ロンドンの北側に位置する複合施設。施設は 1873 年に開設 され、火災を経て、劇場、コンサートホール、美術館、博物館、

講義室、図書館、パーティルームが設けられる。大規模でサプ ライズ性の高いイベントが行われることで有名である。

ホー ル・劇場

公共 施設

Southbank Centre

総合芸術施設。3 つの建物から構成されたヨーロッパ最大規模 の芸術施設。ホールでは毎年、音楽、ダンス、文学などの 1,000 を超える有料プログラムが催されるほか、ロビーでの無料プロ グラムや教育イベントも実施し、年間 300 万人以上が来場す る。

ホー ル・劇場

民間 施設

Kings Place Theatre

民間施設。2 つのホールを有する多目的施設。7 階にはオフィ ス空間があり、他は音楽及び視覚芸術空間を提供する。2008 年に建設され、公演・展示・教育サービスの提供の為、多様な 施設を含んでいる。

ホー ル・劇場

公共 施設

Barbican Centre

複合施設。ロンドン市内の自治体である City of London が運 営主体。ロンドン市内東部の再開発地域に設けられた、ヨーロ ッパ最大級の複合文化施設。3 つのホール、3 つの映画館、ギ ャラリー等の芸術文化施設から構成されている。

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