(1)ロンドン
(ア)Greater London Authority
●様々な改修事例
ロンドンのウエストエンドは、劇場街として世界的にも特異なポジションを確立・維持 しており、1913 年制定の建築に関する法律規制により、建物の外観を守ることが義務付 けられた。そのため街の雰囲気が保たれる一方、改修においては様々な制約が発生する。
改修においては、外観を維持しながらも内部設備には最新の技術設備を導入し、新しい舞 台表現の要請に応える努力を、各劇場が行っている。
●多目的な活用事例
劇場の多様な利用に対しては抵抗する意見もあるが、常に情報をオープンにして同じテ ーブルで議論をしながら、持続的に解決することが大切だろう。“SHOCK=驚き”があっ て、アートやムーブメントと言うものが生まれるので“SHOCK”は全く悪いことではない。
●ダイバーシティへの対応事例(ハード)
ロンドンの劇場は、全て「“誰でも”歓迎する」という基本方針のもと運営されており、
身体障害者や要介護者へのバリアフリーが求められている。しかし、特に古い劇場では、
エレベーター設置が制限される場合もあり、施設面で解決できないことも多い。これを補 うため、多くの劇場が運営サービスでの対応を行っている。劇場個別での対応が難しい場 合にも、Society of London Theatre が、複数のメニューで劇場をサポートしている。
●その他(ハード)
古い劇場のリノベーションの後に、新規オープンにあわせて世界的なアーティストの公 演を実施することにより、短期間で認知度を向上させる施策などが見受けられる。
●利用者サービス向上の事例
ロンドンの一般的なショーはチケット代が非常に高いため、一般の人々が広く楽しむに はハードルが高い。これを解消するため、定期的に 10 ポンド程度で入場できる公演の実施 を促す支援を行い、劇場全体を一般公開する日にも、一定頻度で安い料金設定を行うこと を促している。
●その他(ソフト)
Web サイト「Theatre.London」は、今後対象範囲を広げ、広域ロンドンや英国国内全 体の情報を網羅一元化し、大ロンドン域内、英国国内に複数存在する劇場加盟団体をサポ ートしていきたいと考えている。
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●実演芸術の事例
新たな施設の建設により、孤立してしまう傾向がある地域住民に向けた、施設と融合さ せるための活動を、一定程度義務付ける場合もある。
オリンピックの成果として、毎年夏に東地区のオリンピックパークで「ウェストエンド・
ライブ」を開催している。1 万人の市民が来場し、文化を自分のものとして身近に感じる機 会となっている。
ロンドンでは大型のショーから小規模のショーまで、幅広いライブコンテンツが連日展 開されており、都市の魅力として、広く消費者に訴求していく政策戦略を推進している。
特にメディアの活用は、行政が深くコミットできる戦術である。
●地域における企業等との連携事例
広域ロンドンに複合施設を建設する場合、地域によっては公益機能の併設が義務化され ることもある。新しい建築物を開発するときには、劇場やホールを入れたり、地域への貢 献を考えた施設が導入されている。これにより、劇場設置ニーズに対する一定の供給が維 持されている。
(イ)London & Partners
●行政支援の事例
London & Partners は、ロンドン市の海外向けプロモーション業務を担う非営利組織で あり、ロンドン市から多くの補助金を受けて、行政と民間とのパートナーシップで運営さ れている。最も重要なのは、資金を提供している提携企業との継続的な協議である。London
& Partners はミッションが明確で、娯楽や観光だけでなく、留学生や企業を誘致すること も主なミッションとしており、様々な提携企業がもっているニーズに対応することも重要 である。提携企業との意見調整は難しいが、2011 年の発足当初からこのプロジェクトを 実施するために最も重要な課題を共有している。提携企業は約 400 組織、継続的なコミュ ニケーションにより、良好な関係を保っている。
●その他(ソフト)
海外向けにロンドンのプロモーションを行い、文化に特化し複数の劇場や屋外イベント を行う「London Autumn Season」を 3 年にわたり連続で実施。
2016 年 6 月に開設した Web サイト「Theatre. London」は「London.com」の姉妹版 としてスタート、ロンドンの劇場コンテンツを提供している。この開設の理由は、ロンド ンを訪れる観光客の大きな目的が観劇にあるため、これに対応すること、加えて中心地に 特化しないよう、対象を拡散しようと意識している。国内やロンドン市民向けのサイトで もあり、まったく劇場に行かない、もしくは若者を劇場に呼び込むための目的もある。文 化コンテンツは「フランスやイタリアなどと比較すると“歴史”がないが、かわりに徹底
143 的に“文化”のクオリティで勝負する」姿勢を持つ。
(ウ)City of London Information Centre
●ダイバーシティへの対応事例(ハード)
金融街は古い建物が多く、ほとんどが歴史的な建造物であり、エレベーターを勝手に取 り付ける等の改修工事はできないため、身体障害者への対応が難しい。
●新規顧客開拓の事例
文化の街と言われるロンドンだが、世界から評価されるコンサート専用ホールは持って いない。そこで、City に世界レベルのホールを作ろうと計画しており、その初期段階とし て 250 万£の調査を実施している。最初に顧客を誘致することはそれほど難しくはないと 思われるが、リピーターを作る事はとても難しい。それをバックアップするのが、プログ ラムや新しい商品である。「来たい」という期待感を持たせ続けなければならない。観光客 受け入れ体制を考慮する上では、ユーザーがコンテンツを作り出している時代である。ユ ーザーから高い評価をもらえるよう、スタッフのトレーニングを日々繰り返している。
●ダイバーシティへの対応事例(ソフト)
恵まれていない学校や家庭に文化プログラムを提供、エリア内の該当施設に迎える。
発信情報はデジタル化しており、印字を大きくする等、工夫をして視覚障害者が見やす いように対応。地図上のコースを決めて、本当にバリアフリーになっているかどうか検証 する役割も担っている。
●その他(ソフト)
ロンドン全体としては、24 時間対応のニーズはあるが、金融街では、24 時間対応の需 要はない。
(エ)Alexandra Palace
●様々な改修事例
1873 年に開設され、火災を経て、劇場、コンサートホール、美術館、博物館、講義室、
図書館、パーティルームが設けられた。改修による一部閉鎖中も、ウェブサイトや仮囲い に、工事進捗や完成後イメージをアップして、市民や利用者の期待値を高め、良好な関係 を維持してきた。イベント企画営業チームも、完成後の誘致に向けて先行営業を進め、ユ ーザーとのコミュニケーションを継続することで、良好な関係を維持している。
●多目的な活用事例
「人々のための Palace」という施設コンセプトと、多用途の受け入れによる収入の確保
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という両方の観点から、多目的でのホール利用を積極的に推進している。可動椅子による フラットなスペースの創出が可能で、ビリヤードの大会が開催され、BBC での放送も実施 される。
●ダイバーシティへの対応事例(ハード)
改修プロジェクトの中に、バリアフリーの設計が含まれている。劇場は、バルコニーや 客席への車いすのアクセス利便性を考えた設計とし、スタジオやパーク自体も、バリアフ リーの設計対象になっている。身体障害者のみならず、知覚障害者や一般の市民向けに、
利便性の高い施設として利用してもらえるように工夫を行っている。
●その他(ハード)
マーケティングチームが組織されており、リニューアルオープンから速やかに稼働する よう、継続的に営業活動を行っている。一部改修閉鎖中でも、年間 280 万人の来場者があ るので、今後より増やしていくように努めている。
●新規顧客開拓の事例
今後は観光地として、Southbank(ロンドン中心部にある複数ホールと飲食店が併設さ れた施設)に類するポジションを目指している。これまでは、特定のイベントを目的とし た来場者が多かったが、今後は長時間の滞在が楽しめるように、隣接地へのホテル建設誘 致を計画しており、ホール、イベントスペース、パブ(併設されている英国風レストラン)、
公園が一体となって連携を取り、人流を増やして顧客獲得を図る計画である。
●その他(ソフト)
維持管理費の一部を行政からの補助金で賄うが、それ以外は自主財源である。英国では、
全体的に公的な財政支援は少ないため、自主的な収入確保と経営効率が求められる。
(オ)Southbank Centre
●様々な改修事例
3 つの建物から構成された、ヨーロッパ最大規模の複合芸術施設である。改修費用は宝く じ基金からの助成と、一部を銀行からの借入で調達。Arts Counsil と、文化スポーツ省か らの支援があるほか、理事である不動産専門家の定期的なチェックを受けている。一部改 修時には、来場者が大きく減ったものの、稼働施設での公演集中開催、HP への最新の改修 進捗情報アップ、オフサイトイベント開催により、来場者層の拡大を図ることができた。
●多目的な活用事例
ロンドンオリンピックでは、選手団の娯楽向けに利用された。4 年前から、どの国の選手 団を招待するか、とても慎重に検討した。そこには、オリンピック後、海外のどの国との 関係を強化するか、どうビジネス的な収益を増やしていくか等の目線も含まれていた。