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流域面積 141.7 km 2 流路延長 22.7 km

ドキュメント内 熊本大学大学院自然科学研究科 (ページ 52-70)

図 3.1 坪井川と壺川校区の位置

出典:国土地理院 壺川校区

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表 3.1 近年の坪井川における代表的な水害

西 暦 年 号 内 容

1953 昭和28年 白川,坪井川,井芹川が氾濫「6.26大水害」熊本市内水没,死者行方不明 563人,熊本市の最大日雨量411.9mm

1957 昭和32年 坪井川,井芹川氾濫「7.26台水害」熊本市内外含め死者183人,重軽傷者 63人,熊本市の最大日雨量480mm

1980 昭和55年 8月の集中豪雨(8.30出水)で約3,000戸が浸水被害を受け,11月には第 2次激甚災害対策特別緊急事業に着手

坪井川は,1953年(昭和28年)の「6.26大水害」により白川とともに,死者行方不明者5,633名と いう未曾有の被害を熊本市民にもたらした.1957年(昭和32年)も井芹川とともに氾濫し,死者183 名,重軽傷者63名の被害があった.壺川校区は,白川,井芹川に挟まれて地域の中心を坪井川が貫流 する低平地を含んでおり,地区の住民は水害に対する,恐怖,警戒心ともに強い地区である.

堀川 井芹川

坪井川計画流量

坪井川(改修事業)

現在の坪井川,遊水地を整備

図 3.2 坪井川の計画流量

出典:熊本県

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写真 3.1 熊本市壺川校区の水害状況(1980年8月30日)

出典:熊本県

3.2.2 ケーススタディの実践

(1)ケーススタディの実施に向けての準備

ケーススタディ(祭害リスクコミュニケーション)の候補地区の選定は,河川の流域において,河 川の整備は進んでいるが氾濫,浸水,あるいは,内水による被害が懸念されている都市部の河川流域 という基準により熊本市壺川校区とした.熊本市壺川校区は,二級河川坪井川の流域にある1km四方 程度の広さであり,洪水氾濫に対して安全な台地と,最大で40m程度の高低差がある低平地が共存す る校区である.過去に幾度も氾濫による被害を経験しており,避難行動訓練などに関する要望は高く,

熊本市においても水害教育の必要性が高い地区である.

壺川校区は,17の町内から組織されており,各々の町内には自治会長,その組織を纏められる形で 連合自治会長という組織形態である.今回のケーススタディ(災害リスクコミュニケーション)を行 なうにあたり,連合自治会長と自治会長に事前説明を行なった.事前の説明では,坪井川の河川整備 状況,河川整備に関する地域の問題点・課題について行い,対する方策として災害リスクコマネジメ ントが必要であり,その手法として災害リスクコミュニケーションがあることを丁寧に説明した.こ れに対して連合会長,自治会長からは,内水による被害から地域の住民は避難訓練を要望していると いう意見があった.当方からは,災害リスクマネジメントの一環として計画しているという説明を行 い,最終的には理解と協力得ることが出来た.説明には時間を要したが,これも一つの災害リスクコ ミュニケーションと考えており,地元住民の皆様の理解が得られたことは,ソーシャルキャピタル(社 会関係資本)が向上する契機となったものと考えている.

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(2)ケーススタディの実践

本研究での地域災害リスクマネジメントの定義は,“地域内で想定される災害リスクを可能な限り抽 出し,その対応策を予め検討実施するとともに,その結果を評価して事前対策の改善に結びつける一 連の行動指針”である.1)2)3)4)より具体的な定義は次の3項目としている.

① 常時災害を監視し,発生を的確に予測すること

② 予測される災害に対する対策を迅速かつ効果的に実施すること

③ 災害時に個人が的確な行動が取れるように,災害や対応行動の教育・訓練を計画・実施すること そこで,本研究の提案するPDCAサイクルに基づく地域災害リスクマネジメント手法は,以下の4 つのステップから構成される.

① ステップP(Plan):計画の立案

② ステップD(Do):計画の実施

③ ステップC(Check):データ分析

④ ステップA(Action):計画の修正・確認

図3.3に熊本市壺川校区での実践例を示す.地域災害リスクマネジメントの実践に関しては,前述 のようにPDCAの各ステップで地域住民の意見・感想等に応じて,次にステップのワークショップや リスクコミュニケーションの内容を変化させた.1~3巡目のPDCAサイクルにおける各ステップの 内容は以下のとおりである.

今回のケーススタディ(災害リスクコミュニケーション)は3巡目を迎えており,今までの内容と 成果などについて詳述する.3回実施したワークショップの校区住民の参加については,壺川校区全 17町内の自治会長や民生委員の方を中心に,各町内から2名程度の参加を連合会長に依頼した結果,

図 3.3 熊本市壺川校区で実践中の地域災害リスクマネジメントの具体例

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毎回平均で34名の参加があった.ワークショップでは,校区の住民が積極的に意見交換ができるよう,

ファシリテーターの先導により進行した.ファシリテーターは,九州連携会議の議長であり5年以上 のワークショップ運営に経験を有する岡 祐二氏が勤めた.ファシリテーターの主な役割は,①住民 参加との目的の共有②議論の円滑化の調整③時間管理④参加者とのまとめの共有⑤次回課題の提示の 5つである.PDCAサイクルの1巡目第1回は,2006年の1月24日に行なった.1巡目における内容 と参加者数を表3.2に示す.

表 3.2 災害リスクコミュニケーションの内容と参加者数(1巡目) 回 時期・場所 検 討 内 容 参 加 者 1 2006年1月24日

19時~21時 壺川公民館

(第1回WS)

・白川ハザードマップの見方

・校区独自の水害・避難経路マップの作成

住民 33 行政 1 NPO 1 大学 14 2 2006年2月26日

10時~12時

壺川地域コミュニティセンター

(第2回WS)

・大学が実施した壺川校区内の氾濫解析シミ ュレーションの説明

・校区独自の水害・避難経路マップの修正・

追加

住民 34 行政 2 NPO 1 大学 19 3 2006年6月4日

10時~12時

壺川地域コミュニティセンター

(第3回WS)

・想定シナリオを用いた災害図上訓練の実施 住民 35

(世帯数52)

(大人 55)

(子供 31) 行政 4 NPO 1 大学 30 4 2006年10月9日

10時~12時 天候:晴れ 避難場所

壺川地域コミュニティセンター

・想定シナリオを用いた避難行動実験(社会 実験)

住民 86 行政 8

NPO 1

大学 46

5

2006年11月19日 10時~14時 壺川小学校体育館

(第4回WS)

・社会実験の報告会 住民 59 行政 8 NPO 1 大学 23

52 1)1巡目のPDCAサイクル

1-① ステップP:対象校区での水害避難経路の作成(第1,2回WS)

1-② ステップD:マイハザードマップを用いた災害図上訓練の実施(第3回WS) 1-③ ステップC:水害避難訓練の計画と実施

1-④ ステップA:水害避難訓練時の避難行動データ分析の報告会(第4回WS)

第1回のワークショップでは,災害リスクコミュニケーションの説明,白川ハザードマップの見方 の説明,校区独自の水害避難経路マップづくりを行なった.白川は熊本市内を流れる一級河川であり,

約400年前の加藤清正により分離されるまでは熊本城付近で坪井川と合流していたため,坪井川にも 大きな影響を与えていた.表3.3に示す 1953 年の大水害は,白川の洪水氾濫が坪井川に影響した ものである.熊本市は,白川の洪水ハザードマップを2005年6月に作成し,市内全世帯に配布してい る.水害避難経路マップづくりでは,居住の町内を次の4グループに分けて現在の避難場所,避難経 路を地図に記入した.グループは,①京町地区(京町本町,京町2丁目)②壺川地区(京町1丁目,

壺川1丁目)③坪井地区(坪井1丁目,坪井5丁目,内坪井)④寺原地区(壺川校区,その他)に分 類した.さらに,普段危険に感じる場所や水害時の経験などを避難経路マップに書き込むことで,過 去に浸水した地域や斜面崩壊した場所の確認ができた.今回の避難経路マップの一部は,山田・柿本

5)に掲載されている.(Plan)

第2回のワークショップでは,壺川校区内でのより詳細な氾濫水の動きを理解していただくため,

大学で作成した氾濫シミュレーションの結果について説明した.計算条件としては,坪井川上流域の 累積雨量を 1,000mm,坪井川流域の過去の流出解析結果を分析して,700m3/s の出水量とした.氾濫 条件は破堤ではなく越水を想定した.今回の計算に用いた累積雨量や坪井川流量は,既往降水量や基 本高水流量を大きく上回るものであるが,2005年に宮崎を直撃した台風14号では1,200mmを越える 豪雨が2日間で記録されて大きな被害を与えている.今後,地球温暖化が進めば局地的な大雨の確率 が増えることも予想されており,今回は想定範囲内の降水リスクと考えて計算を行なった.洪水氾濫 計算手法の詳細は岩佐・他,山田・他と同様である.図3.6は氾濫シミュレーション結果の一例で ある.熊本市が作成した白川洪水ハザードマップでは,壺川校区の避難場所は壺川小学校に指定され ているが,このシミュレーションから,氾濫開始の2分後には壺川小学校に氾濫水が到達しているこ とがわかる.ワークショップでは,これらの結果を見ていただき,第1回のワークショップで作成し た独自の水害避難経路マップについて,氾濫水の挙動を考慮して再検討を行なった.今回のワークシ ョップでは,参加した住民から,壺川校区の浸水形態は坪井川が氾濫する前に,京町台地に降った雨 が一気に低平地に流れ込む内水氾濫が問題であることが指摘された.低平地にはポンプ排水施設が数 箇所設置してあるものの,降雨強度50mm/h 以上の降雨が数時間継続すると,高台からの雨水が一気 に低平地に流れ込みポンプの処理能力を超えると内水氾濫が生じる.実際にワークショップを実践し ている2006年6月26日,7月23日には内水氾濫が生じた.2006年の内水氾濫は規模が大きかったた め,2006年10月の社会実験の想定シナリオに用いた.(Plan)

ドキュメント内 熊本大学大学院自然科学研究科 (ページ 52-70)

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