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泌尿器感染症 To do or not to do

兵庫医科大学医学部泌尿器科

東郷 容和,嶋谷 公宏,長澤 誠司 山田 祐介,橋本 貴彦,鈴木 透 呉 秀賢,兼松 明弘,野島 道生 山本 新吾

尿路感染症は一般的に,基礎疾患を有さず感染を引き起 こす単純性尿路感染症(以下,単純性)と,基礎疾患を有 しているもしくは尿路にカテーテルが留置されているが故 に感染を引き起こす複雑性尿路感染症(以下,複雑性)に 分けられる.複雑性は単純性と比較し,重症化する可能性 が高く,治療に難渋するケースは少なくない.

複雑性膀胱炎の原因菌は単純性と比べて大腸菌の頻度が 低く,グラム陽性菌の頻度が高い.治療としてキノロン系 抗菌薬が推奨されているが,大腸菌におけるキノロン系抗 菌薬感受性は単純性で約 90%,複雑性において約 70% で あることを認識して抗菌薬を選択すべきである.

尿路結石に伴う閉塞性腎盂腎炎とは,尿管結石嵌頓など による尿の停滞から感染を引き起こす重篤な疾患である.

尿路閉塞が感染の原因と考えられる場合には,尿路ドレ ナージの時期を逸さず,適切な抗菌薬治療を使用し,em-pirical therapy として広域スペクトラムな抗菌薬を躊躇せ ずに使用することが重要である.

気腫性腎盂腎炎とは,腎実質と周囲組織の重篤な急性壊 死性感染で,腎実質内や腎周囲にガスを産生する疾患であ り,糖尿病を 90% 以上に合併するとされる.確定診断は CT 等による腎内のガス像で,その広がりによって重症度 が分類されている.重症度が進むにつれ死亡率が増加する ために,ドレナージや腎摘のタイミングを逸さないことが 重要である.

カテーテル関連尿路感染症とは,カテーテル尿もしくは カテーテル抜去後 48 時間以内に行われた尿培養にて≧105 CFU!mL の細菌尿を認めることである.カテーテル留置 症例の無症候性細菌尿に対しての抗菌薬投与は,耐性菌増 加を助長させるために控えるべきである.しかし,有熱性 の尿路感染症の際には,抗菌薬投与前には各種培養検査を 行い,empirical therapy として広域スペクトラムな抗菌 薬を選択し,感受性結果に基づいて de-escalation を行う ことが重要である.

モーニングセッション

症例から考える耐性菌感染症の診療

Division of Infectious Diseases, University of Pittsburgh School of Medicine

土井 洋平 薬剤耐性菌による感染症は,有効かつ安全な抗菌薬の選 択肢が限られる上,良質な臨床データも少ないため,感受 性,相乗効果,薬物動態などの非臨床データを加味しなが ら総合的に治療法を組み立てる必要がある.

本セミナーでは,米国の医療現場で遭遇した薬剤耐性菌 感染症例を取り上げ,治療に当たってどのような選択肢が 考えられたか,そして実際の治療がどのように行われたか を検討する.また,その判断にあたり参考となる文献も紹 介する.

ワークショップ 薬剤耐性菌の制御

1.共同研究報告 薬剤耐性大腸菌の分子疫学解析

【目的】国内の多施設から収集した大腸菌のクローン分布 とその耐性機序を調査することにより,本邦における薬剤 耐性大腸菌のクローン性増殖の実態を明らかにする.

【方法】多施設前向き横断的研究.研究参加の同意が得ら れた国内の 10 施設から,2014 年 12 月(1 カ月間)に臨床 分離された大腸菌を収集する.MIC 法による薬剤感受性 試験,耐性遺伝子検査,multilocus sequence typing によ るクローン解析を行い,薬剤耐性菌とクローンの関連につ いて検討を行う.

【結果】ワークショップ会場にてポスター掲示を行う.ま た,4 月 16 日・17 日の両日にワークショップ会場にて報 告セッションを予定している.

薬剤耐性大腸菌の分子疫学解析共同研究者一覧 上田 恒平(市立豊中病院臨床検査部)

大井 幸昌(大阪医科大学附属病院感染対策室・総合内 科)

小森 敏明(京都府立医科大学臨床検査部)

笹野 正明(岡崎市民病院医療技術局臨床検査微生物検 査室)

清水 恒広(京都市立病院感染症内科)

林 彰彦(京都市立病院臨床検査技術科)

東山 智宣(大阪医科大学附属病院中央検査部)

樋口 武史(京都大学医学部附属病院検査部)

藤田 直久(京都府立医科大学臨床検査部)

茂籠 邦彦(彦根市立病院検査部)

藪 重宣(三菱京都病院中央検査科)

山田 幸司(京都府立医科大学臨床検査部)

山本 剛(西神戸医療センター臨床検査技術部)

渡辺 晴美(京都桂病院検査科)

2.一家に一枚 薬剤耐性分類と耐性菌検査(改訂第 2 版)

2010 年に発行された「一家に一枚 薬剤耐性分類と耐 性菌検査法」を 5 年ぶりに改訂いたします.主な改訂点は 新知見の加筆と正誤修正ですが,耐性機構の分類を一部変 更してより見やすくなっています.

本学術集会のワークショップではポスター掲示と解説を 行い,併せて第二版ポスターを配布いたします.

ワークショップ実務委員(一家一枚を含む)

飯沼 由嗣(金沢医科大学臨床感染症学)

金橋 徹(京都大学医学部附属病院検査部)

小松 方(天理医療大学医療学部臨床検査学科)

田中美智男(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学)

豊川 真弘(大阪大学医学部附属病院臨床検査部)

長尾 美紀(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学)

野口 太郎(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学)

山本 正樹(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学)

松村 康史(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学)

委員会報告

日本化学療法学会・日本感染症学会・日本臨床微生物学 会―三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス事業―

信楽園病院 三学会合同抗菌薬感受性サーベイラ ンス実務委員会調整委員

青木 信樹 三学会合同のサーベイランス事業は昨年,発足 10 周年 を迎え,三学会の総会でその成果と今後の構想について報 告しました.本事業は当初,呼吸器感染症 1 領域の調査で したが,現在では尿路感染症[単純性膀胱炎,複雑性尿路 感染症,尿道炎(淋菌・クラミジア)],手術部位感染(SSI),

耳鼻咽喉科領域感染症,皮膚科領域感染症,歯科・口腔外 科領域感染症の 6 領域までに拡大して 2〜4 年の間隔で調 査を実施し,2017 年にはさらに小児科領域感染症が加わ ります.本事業の基本姿勢の 1 つである「わが国における 各種感染症患者から分離された原因菌について,わが国の 標準的な抗菌薬感受性サーベイランスを継続的に調査し,

公表すること」に従い活動を続けています.また,成績を 公表し,わが国における感染症治療の適正化の一助とす る.」については,国内外の学会発表,JIC への論文掲載 に加え,本年 6 月より本事業のホームページが独立し,さ らに多くの情報を医療従事者や関係者に提供できるように なりますので,是非,ご利用願います.

さて,今回の委員会報告は,2013 年に実施した皮膚科 領域感染症と歯科・口腔外科領域の成績がまとまりました ので報告します.

1.皮膚科領域感染症

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス実務委員

(領域責任者)1),帝京大学医学部皮膚科2)

渡辺 晋一1)2)

本領域のわが国における大規模な全国サーベイランスは 初めてである.2013 年 1 月〜12 月に全国 41 施設を受診し た成人および小児の皮膚軟部組織感染症(表在性皮膚感染 症,深在性皮膚軟部組織感染症,炎症性粉瘤など)患者の 浸出液または膿汁より分離されたStaphylococcus aureus,

Coagulase-negativeStaphylococcus(CNS),Streptococcus pyogenesの主な原因菌 3 菌種に限定し,各種抗菌薬の感 受性を測定した.感受性測定は北里大学抗感染症薬研究セ ン タ ー で Clinical and Laboratory Standards Institute

(CLSI)に準じた微量液体希釈法により測定した.今回,

全国から送付された臨床分離株および検体から分離・同定 されたS. aureus 583 株,Coagulase-negative Staphylococ-cus (CNS)241 株,S. pyogenes 41 株について抗菌薬 34 薬剤の感受性を測定し,患者背景別に分離菌の分布や感受 性を集計したのでその結果を報告する.

2.歯科・口腔外科領域感染症

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス実務委員

(領域責任者)1),東海大学医学部外科学系口腔外 科2)

金子 明寛1)2)

2013 年 1 月〜6 月に全国 39 施設を受診した歯周組織炎

(歯槽骨炎,歯槽骨膜炎,歯周囲膿瘍),歯冠周囲炎(智歯 周囲炎),顎炎(顎骨骨髄炎,顎骨骨炎,顎骨周囲炎),顎 骨周辺の蜂巣炎患者の閉塞膿瘍から分離された原因菌のう ちStreptococcus spp.,嫌気性グラム陽性球菌,Prevotella spp.,Fusobacterium spp.,Porphyromonas spp.の 5 菌 種 に限定し各種抗菌薬の感受性を測定した.感受性測定は北 里大学抗感染症薬研究センターで CLSI に準じた寒天平板 希釈法により一括測定された.今回,全国から送付された 246 検 体 か ら 分 離・同 定 さ れ たStreptococcus spp. 206 株,嫌気性グラム陽性球菌 196 株,Prevotella spp. 289 株,

Fusobacterium spp. 129 株, Porphyromonas spp. 49 株 について抗菌薬 30 薬剤の感受性を測定し,患者背景別に 分離菌の分布や感受性を集計したので,その結果を報告す る.

3.追加報告 ホームページの独立と公開について 三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス実務委 員1),大日本住友製薬株式会社メディカルアフェ アーズ部2)

若村友太郎1)2)

これまでに集積された価値ある貴重なデータを広く公開 して有効活用頂くことを目的に,本事業専用のホームペー ジを各学会から独立して立ち上げる運びとなったことか ら,委員会報告ではホームページの独立と公開に至った経 緯,ホームページの概要,公開スケジュール等について紹 介を行った.

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