• 検索結果がありません。

沖縄県における過重な基地負担や基地負担についての格差の固定化につい

⑴ 原告が回答していないこと

御庁が、被告が取消理由に記載した「沖縄県における過重な基地負担や 基地負担についての格差の固定化」の指摘に対する主張をしないのかと釈 明したことに対する原告第一準備書面での応答は、被告にはその判断権が ないと主張するのみである。このことは、原告が、本件承認取消処分の違 法性の主張立証を放棄したものというほかない。

なお、原告が付け足しのように主張している新基地により米軍施設・区 域の面積が減少するとか、普天間飛行場の機能の一部のみが移転するなど により沖縄県全体からみた負担が軽減するとの主張が理由のないものであ ることは、被告第一準備書面116~198頁で示した基地の過重負担の指摘で 明らかにしたところである。

これら米軍基地面積が減少するとか、普天間飛行場の一部機能が県外に 移転したから負担軽減だというのは、これまでの政府の主張であるが、そ のこと自体「軽減」とは到底いえないものである。すなわち、在日米軍専 用施設の負担割合ということでいえば、仮に普天間飛行場が辺野古に移設 され、かつ嘉手納以南の返還合意施設の返還が実現したとしても、日本全 体の中での沖縄の負担割合は、73.8%からわずか0.7%しか減らない。また

、一部の機能を県外移転というが、既に配備されているオスプレイ24機が さらに増強されるおそれがあるのみならず、埋立計画においても、これま で普天間飛行場にはなかった271.8mもある岸壁による軍港機能が付与さ れ、強襲揚陸艦規模の艦船が停泊できるようになり、また、新たに弾薬装 填場も設置されることになっている。このとおり、一部の機能を県外に移 転したと述べるが逆に新たな機能が強化された最新鋭の基地となる。この

とおり、新たな基地建設によって沖縄における負担が「軽減」されるとい うことは到底いえない。

⑵ 職務執行命令訴訟最高裁判決の記述

原告がくり返し、職務執行命令訴訟最高裁判決を引いて「米軍施設及び 区域をどこに設置するかということについては…内閣ないし日米両政府に おいて決定すべきことであ」るというので(原告第一準備書面16~17頁)

、念のため、改めて同判決の射程について触れておく。

まず、職務執行命令訴訟において「国の政策的、技術的な裁量に委ねら れている」とされた事項は、駐留軍用地特措法によっていかなる土地を米 軍基地として使用認定するかにつき内閣総理大臣に権限が付与されていた ものであり、他方で、本件承認取消処分は公有水面埋立法に基づき公有水 面埋立の適否につき都道府県知事にその判断権限があるものであり、判断 権者も判断の対象も異なるのであるから、上記判決が本件に妥当すること にはならない。このことは、すでに被告第一準備書面108~110頁(「2 埋立承認取消における『国土利用上適正且合理的』の判断と審理の対象」

の項中)で指摘したとおりである。

付け加えれば、前回の職務執行命令訴訟では、所有地の米軍基地への提 供を拒否し、駐留軍用地特措法による強制使用認定がなされた土地所有者 ら(いわゆる「反戦地主」)が土地物件調書への署名を拒否し、かつ当該 土地にかかる市町村長も代理署名を拒否したために沖縄県知事が代理署名 を求められることになった案件すべてについて、当時の大田昌秀知事が代 理署名を拒否したものである。対象となった土地を含む米軍施設は、瀬名

波通信施設(旧ボーローポイント射爆場)、嘉手納弾薬庫地区、楚辺通信 所、トリイ通信施設、キャンプ・シールズ、嘉手納飛行場、那覇港湾施設 の合計7施設に及ぶ。当時大田知事は、これらの個別施設についてその必 要性や適正配置を問題にしたのではなく、長年にわたる沖縄県内における 米軍基地の過重負担を拒否したものであった。このため、最高裁判決は、

「駐留軍用地特措法の沖縄県における適用の可否」という一般性のある論 点に検討を加えた結果、原告が引用する部分に続き、次のように判示した のである。

「 右に述べたところからすると、沖縄県における駐留軍基地の実情 及びそれによって生じているとされる種々の問題を考慮しても、同県 内の土地を駐留軍の用に供することがすべて不適切で不合理であるこ とが明白であって、被上告人の適法な裁量判断の下に同県内の土地に 駐留軍用地特措法を適用することがすべて許されないとまでいうこと はできないから、同法の同県内での適用が憲法前文、九条、一三条、

一四条、二九条三項、九二条に違反するというに帰する論旨は採用す ることができない。」(下線は引用者)

すなわち、沖縄県内にもう米軍基地はいらない、という思いが法的に採 用されなかったというに過ぎない。

この先例と、被告が公有水面埋立法に基づき自ら有する権限において新 たな個別の米軍施設を用途とする公有水面埋立の要件を審査した本件とは

、自ずからその判断の対象も範囲もまったく異なるのである。

2 埋立の必要性の審査基準の審査について

関連したドキュメント