8
> と
結果、一部のタイプ1あるいは2のNaチャネル毒は市販され、貴重なNaチャネル試薬 として世界中の研究室で有効利用されている。タイプ3の毒も有効利用の可能性があるが、
例が少ないためか単離後の詳細な研究は行われていない。本研究により、PaTX型の毒は イソギンチャクのNaチャネル毒として1つのファミリーを形成することが示された。さ らに、Er lの前駆体構造が明らかになったことで、構造活性相関の解明を目的とした遺伝子工 学的手法による発現実験にも道が拓けた。イソギンチヤクのPaTXファミリーの有効利用に向
けた研究が今後進展することを期待したい。
第6章
ミナミウメボシイソギンチヤクのペプチド毒のcDNAクローニング ミナミウメボシイソギンチャクハρeπ70η a e邸ん aea(Fig,6−1)はイマイソギンチャク亜目(Nynantheae)ウメボシイソギンチャク科(Actlnidae)に属し、東海地方から広く 暖海、特にサンゴ礁の浅海に分布している。体壁の直径は2−5cm、色彩は暗赤色のものか
ら褐色のものまである。周ロ筋および足盤筋の発達が悪いため、刺激しても口を完全に閉 じることはなく、また足盤を簡単にはがすことができる。
筆者の所属する研究室では、ミナミウメボシイソギンチャクの粗抽出液からサワガニに 対する毒性を指標に3成分のペプチド毒AETX l−1 が単離されている(Shloml ef飢,1997)。
AETX l(LD502.2μglkg)はそのアミノ酸配列の特徴から、タイプ1のNaチャネル毒と判 断された。一方、サワガニに非常に強い致死活性を示すAETX li(LD500.53μg/kg)とAETX l (LD500、28μg/kg)はお互いにきわめて高い相同性を示したが、既知のイソギンチャク のペプチド毒とは構造的にまったく異なる新規ペプチド毒であった。このようにミナミウ メボシイソギンチャクのペプチド毒は、いずれもサワガニに対する毒性が非常に強いので、
構造活性相関を調べるのに十分な活性を維持したまま、大腸菌で発現できると考えられた。
そこで本章では、今後の構造活性相関の解明に向けた大腸菌での発現実験に資することを 目的としてAETXl一 1のcDNAクローニングを行った。
実験方法
塾
2003年6月に神奈川県長者ヶ崎で採集したミナミウメボシイソギンチャク数個体を試 料とした。生きたまま賓の目状に切り取り、液体窒素で凍結後、実験に使用するまで一80。C で冷凍保存した。cDNAクローニング法
凍結試料約1gからTR匿zd試薬(lnvitrogen)を用いてtotal RNAを抽出した。第2章で 述べたように、3 RACEは3 RACE System for Rapid Ampll価cation of cDNA Endsキット
(lnvitrogen)を用いてtotal RNA(5μg)から合成した1st strand cDNAに対して、AETX l−lllのアミノ酸配列をもとに設計したdegenerateプライマー(AETX lでは5 一CIC CITGYY TIT GYG CIA AYW SIG G−3と5 。GGI CCl AAY ACl MGl GGl AAY GAY YT−3 、AETX llと
lllでは5 一GARTGYTGYCClWSl GGlAAR CA−3と5 一GYGARG GlGGlTTYGTlCAYT
AYT G−3 )でそれぞれ行った。PCR増幅はEx肱qポリメラーゼ(狛kara)を用いて、条 件は940C5min;94。C30sec、55。C30sec、72。Clminを35サイクル172。C5minとした。5}RACEでは、5 RACESystemforRapidAmp哺catlonofcDNAEnds(lnvltrogen)キット とgene−speci侮cプライマー(AETX lでは5 一CGACCA私G CCC TAC CATG−3 、AETX ll とIllでは5 一GCCTTCCAGCAGTAGCArG−3 )を用いて重otalRNA(5μg)から1ststrand cDNAを合成し、gene−speci額cプライマー(AETX lでは5 一GCAGCCAAACAC CCAGAC
A−3 と5 一ATC CCA TTT AAG TCA TτC CCC−3 、AETX llとlllでは5 一TCC CAA AAC CGA
GAA川rCCG−3 と5 一CTC痴rGTACCTATCGTTCGG−3 )を用いるPCRに供した。PCR
一108一
Fig. 6‑1 .
S Ih 7 1 7 ・' l4 ・j :If r i7 Anemonia efythraea
(4 v I i77tr4 Fj li7. 2001 J: LJ)
は3 RACEと同じ条件で行った。また塩基配列分析はサブクローニング後、ジデオキシ法 に基づいたCy5ThermoSequenase Dye梅rminatorKit(Amersham Biosclence)に従って 反応させ、Long−Read rbwer DNAシークエンサー(Amersham Bioscience)により解析 した。最後に、3 RACEと5 RACEで決定した塩基配列をもとに設計した5 末端側と3 末 端側プライマー(AETX Iでは5 一CAτTCA ACA TCA AGC AGT GCA−3 と5 一GCT GGT 鷲r CAG TTT T了A TTG AA−3 、AETX と1 では5 一CAG AGT GTr TCA ACT Gτr TGC−3
と5 一GCTnATCC GGCτrrACTTAAT−3 )でRT−PCRを行い、全塩基配列を確認した。
結果
N末端アミノ酸配列分析とペプチド毒の酵素分解物のアミノ酸配列分析によって、すで に決定しているAETX lの全アミノ酸配列をFig.6−2に示した。AETX Hま、既知のイソギ ンチャク毒と比べてタイプ1のNaチャネル毒に属すると判断された。
AETX lをコードするcDNAの全塩基配列(402bp)は、3 RACE法と5 RACE法によ ってFig.6−3のように決定した。3 非翻訳領域にはポりA付加シグナル(AATAAA)とポ
リA鎖が確認できたが、開始メチオニンの手前の5 非翻訳領域には停止コドンが含まれて いなかった。AETX lの前駆体は74残基から成っていた。SignaIPV3.0(Centerfor Biological SequenceAnalysis、Denmark)で解析したところ、開始メチオニン以降19残基目までが シグナルペプチドであると推定された。シグナルペプチドと成熟ペプチドの間には10残 基からなるプロパート部が存在していた。AETX lの成熟ペプチドの演繹アミノ酸配列は、
既知の全アミノ酸配列と比べて2残基の違いが認められた。すなわち、3残基目のProが 演繹アミノ酸配列ではAlaに、46残基目のGluが演繹アミノ酸配列ではArgに変異してい
た。
AETX llとHlの塩基配列と前駆体構造
N末端アミノ酸配列分析とペプチド毒の酵素分解物のアミノ酸配列分析によって、すで に決定しているAETX Ilとll1の全アミノ酸配列をFig.6−4に示した。AETX とi の配列 をデータベースで検索した結果、ブラジル産のクモ鮪oηeα醇aηり艀eηfθrの神経毒Tx1
(Diniz ef飢,1990)と最も高い相同性を示したが、それでも相同性は約36%程度でしか なかった。
AETX llをコードするcDNAの全塩基配列(538bp)は、3 RACE法と5 RACE法によ ってFig.6−5のように決定した。開始メチオニンの手前の5 非翻訳領域には停止コドン
(τAA)が含まれていた。3 非翻訳領域にはポリA付加シグナル(AAτAAA)はなかった が、ポリA鎖を確認できた。AETX llの前駆体は86残基からなり、既知の全アミノ酸配 列が含まれていた。SignaIP V3、0で解析したところ、開始メチオニン以降20残基目まで がシグナルペプチドであると推定された。シグナルペプチドと成熟ペプチドの間には7残 基からなるプロパート部が存在していた。
一方、AETX l をコードするcDNAの全塩基配列(559bp)は、3 RACE法と5 RACE 法によってFig.6−6のように決定した。AETX と同様に、開始メチオニンの手前の5 非
一110一
寺o
σ
專>
Σ
iii蒙ii
画 o
霧
liii鍵iii
膿
iii翻
藝
の
瑳
懸
×← 田く
:∠と:∠と∠