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汚損状態における部分放電電圧の推定技術

第 4 章 汚損劣化とその現地計測技術

4.4 汚損劣化の現地計測技術

4.4.1 汚損状態における部分放電電圧の推定技術

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図 4-18 より、電極間抵抗値と部分放電電圧にはほとんど相関がみられない。汚損沿面の電極 間抵抗は、汚損部の表面抵抗と未汚損部の表面抵抗の和である。この汚損部と未汚損部の表面抵 抗率の差が 103~107倍もあるため、数 mm 程度でも未汚損部が残存していれば、汚損レベルが変 化しても電極間抵抗は殆ど低下しない。すなわち、電極間のメガー測定では汚損レベルを十分に 評価できていない可能性があり、絶縁抵抗値が十分に高くても部分放電が発生しないことは保 証できない。

次に、汚損部と未汚損部の抵抗比と部分放電電圧の関係を図 4-19 に示す。

図 4-19 抵抗比(未汚損部/汚損部)と部分放電電圧の関係(電極間距離 L=90mm)

図 4-19 より、抵抗比の上昇に伴い部分放電電圧は低下していき、その低下傾向は飽和する傾 向にあることがわかった。飽和状態(抵抗比が一定値以上)になれば、ほぼ全ての電圧を未汚損 部で分担することになるため、未汚損幅 g だけで部分放電電圧が決定される。未汚損幅と電極間 距離が一定であれば、部分放電電圧は抵抗比と湿度に依存することがわかった。抵抗比だけでな く湿度にも依存する原因は、電極間の表面抵抗が低下すること、汚損堆積部が湿潤して汚損分布 が均一化されること、が影響していると推察した。電極間の表面抵抗が低下することは、材料内 部の固有容量成分が電位分担に影響しにくくなることを示しており、未汚損幅に分担する電位 が大きくなる。電極間の汚損分布が均一化することは、汚損面内に局所的な高抵抗帯が残存しに くくなることを示しており、未汚損幅に分担する電位差が大きくなる。

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上記検討結果から、汚損沿面の等価回路モデルは図 4-20 に示す抵抗分担回路に近似できると 考えた。

V:印加電圧

RL:低抵抗部 の抵抗値 g:高抵抗部ギャップ

L:沿面距離

VH:高抵抗部電位差

RH:高抵抗部   の抵抗値

ρL:低抵抗部の 表面抵抗率

ρ

H

:高抵抗部の 表面抵抗率

図 4-20 汚損沿面の等価回路モデル

この等価回路は、高抵抗部の抵抗値RHと低抵抗部の抵抗値RLの直列回路である。各抵抗値は、

RH=高抵抗部の表面抵抗率ρH×高抵抗部ギャップ長 g、RL=低抵抗部の表面抵抗率ρL×(沿面距 離 L-高抵抗部ギャップ長 g)、で求める。この絶縁物に電圧Vを印加することで、抵抗比分担 で高抵抗部に電位差VHが発生する。この高抵抗部に発生する電位差VHは、下記式(4.2)で求め られる。

(4.2)

式(4.2)の係数 m は、湿度に依存して 0.1~1.0 の値を持つ変数とした。湿度が高くなるこ とで、汚損面の抵抗分布は均一となり、抵抗値が下がることで等価回路も固有容量の影響が無視 できる完全な抵抗場に近づくと考えて、m 値は湿度が高いほど 1 に近づくと仮定した。ここで、

高抵抗部の分担電圧と印加電圧の比(VH/V)を電圧分担率αと定義しておく。

高抵抗部で放電が生じる電位差の推定には、パッシェン則の近似式[4-4]を用いた。パッシェ ン則とは、雰囲気圧力×ギャップ長と放電電圧の関係を示す実験則である。このパッシェン則で、

雰囲気圧力 P のギャップ長 g を放電させるのに必要な電位差VH-Foを求める近似式(4.3)を作成 した。

f

(4.3)

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式(4.3)の A,B,C,D は、P×g の値によって設定した定数である。パッシェンカーブは極小値 を持つ曲線であり、極小値左側と極小値近傍と極小値右側の 3 つに区分けして、それぞれ異なる 定数を設定している。ここで参考として、雰囲気圧力を大気圧に固定した条件で、ギャップ長 g と放電電圧の関係グラフを図 4-21 に示し、大気圧雰囲気下でのパッシェン曲線に関する補足説 明を行う。

(ギャップ長0.1mm以下の範囲) (ギャップ長0~50mmの範囲)

図 4-21 大気圧雰囲気におけるギャップ長と放電電圧の関係

図 4-21 より、ギャップ長 g が 0.007mm 以上においては、ギャップ長が短いほど放電に必要な 電圧は小さくなる。この極小値となるギャップ長をパッシェンミニマムギャップと呼び、この左 側領域はギャップ長が短くなるほど放電電圧は上昇していく。ただし、パッシェン曲線左側領域 における実測データは、基本的に雰囲気圧力を下げて取得したものである。最近の研究では、大 気圧雰囲気下ではパッシェン曲線左側領域でギャップ長を短くしても放電電圧は上昇せず、一 定値もしくは徐々に低下していく傾向を示すことが分かっている[4-5]

ここで部分放電電圧 VFoとは、高抵抗部の電位差 VHがパッシェン放電電圧と一致するときの 印加電圧であり、式(4.2)と式(4.3)の連立式を解くことで部分放電の推定式(4.4)が得ら れる。

1

(4.4)

この式(4.4)で求めた部分放電電圧の計算値と実測値の関係を図 4-22 に示す。

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図 4-22 高抵抗部への電圧分担率と部分放電電圧の関係

図 4-22 は、横軸を高抵抗部の電圧分担率α、縦軸を部分放電電圧として、計算結果を点線、

実測結果をプロットで表示した。電圧分担率αの上昇に伴い、部分放電電圧が低下していく傾向 は、計算値と実測値でよく一致している。ただし電圧分担率α=70~90%では誤差も生じており、

誤差が大きいのは汚損レベルが高くて湿度が低い条件である。この条件では、汚損面に局所的な 高抵抗帯が残存しているために、汚損沿面の表面抵抗値が JIS 標準電極で測定した値よりも大 きくなったと推察する。よって、計算に用いた表面抵抗値が実試料よりも低いために、部分放電 電圧も過小評価したと考える。実運用上で問題となるのは最悪環境(高湿度状態)での部分放電 電圧であり、この計算誤差については許容できると判断して、計算式(4.4)で汚損沿面の部分 放電電圧を表面抵抗比と湿度条件から算出することとした。

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