第 5 章 結論
5.2 今後の課題
注型絶縁物の劣化診断において、更なる改善が要求される点を今後の課題として列挙する。
<課題 1:熱劣化評価>
光反射率による熱劣化度評価は間接的手法であり、事前に光反射率と熱劣化度のデータベ ースを準備する必要がある。表面分析等により直接的に表面劣化度(酸化度)を現地計測す る技術を確立して、未知の注型材料についても熱劣化評価を可能にすることが課題である。
質量減少量により材料自体の寿命を評価することはできたが、寿命状態の材料を使用する ことで絶縁機器全体としての耐クラック性がどの程度低下するかは明らかではない。材料の 熱劣化現象と機器の耐クラック性の関係を明らかにして、耐クラック性という観点で熱劣化 の寿命判定値を最適化することが課題である。
<課題 2:部分放電劣化評価>
同一部分放電モードにおいても、雰囲気湿度や印加電圧や絶縁材料や試料寸法によって部 分放電特性が変化する可能性がある。今回取得した部分放電特性の適用限界を明らかにして、
各種条件が変化した場合にも部分放電モードを識別可能にすることが課題である。
実験室環境にて部分放電信号とノイズ信号を弁別できたが、実フィールドにて長い伝搬経 路を経た部分放電信号や複雑化したノイズ信号も弁別可能にすることが課題である。
<課題 3:汚損劣化評価>
表面抵抗から部分放電電圧を推定する計算式には湿度の変数が設定されており、湿度によ り部分放電電圧が変化するメカニズムを解明して、そのメカニズムを反映した新たな汚損沿 面の部分放電電圧計算式を作成することが課題である。
任意湿度の表面抵抗を現地計測するセンサにおいて、複雑な形状の絶縁物でも高湿度表面 抵抗を測定することができるセンサを開発することが課題である。
<課題 4:注型絶縁物の劣化監視手法>
高頻度開閉を行う電気機器に関しては、今回評価対象外とした疲労劣化による故障事例も 報告されており、注型絶縁物の疲労劣化評価技術を開発することが課題である。
各種劣化モードの進展度および発生可否を評価することは可能にしたが、劣化状態と故障 リスクの関係が不明である。劣化状態から故障リスクを算定する技術を確立して、経済的な 観点で最適な設備保全提案を実施可能にすることが課題である。
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研究業績
1. 本研究に関する学術論文
(1) 華表宏隆, 高野哲美, 占部昇, 渡辺賢治:「モールド変圧器の光学式エポキシ樹脂劣化診断 技術」, 電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌), Vol.132, No.11, pp.972-977(2012)
(2) 華表宏隆, 早瀬悠二, 山城啓輔, 松本聡:「部分放電電流の減衰振動波形を用いたノイズ弁 別手法」, 電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌), Vol.138, No.2, pp.64-70(2018)
2. 本研究に関する国際会議(査読付)
(1) H. Torii, N. Urabe, K. Watanabe and T. Takano:“On-site diagnostic method for the degradation of cast resin transformer using optical reflectance”, International Symposium on High Voltage Engineering(19th ISH, Pilsen, Czech Republic), No.236, pp.1-6(2015)
(2) H. Torii, S. Matsumoto:“A study on the pressure dependence of wedge air-gap discharge voltage in Insulated coating Conductors”, South east asian technical university consortium symposium (10thSEATUC, Tokyo, Japan), No.OS10-06, pp.1-4(2016)
3. 本研究に関する国内学会発表
(1) 華表宏隆, 渋谷義一, 梅津潔:「インパルスによる巻線試験」, 電気学会全国大会, No.2, pp.91-92(2005)
(2) 華表宏隆, 渋谷義一, 梅津潔:「インパルスによる巻線の絶縁試験」, 誘電・絶縁材料研究 会, Vol.DEI-05, No.115-123, pp.35-40(2005)
(3) 華表宏隆, 渋谷義一, 梅津潔:「MOSFETによるインパルス巻線試験」, 電気学会全国大会, No.2, pp.38-39(2006)
(4) 華表宏隆, 須崎哲哉, 渋谷義一, 梅津潔:「インパルス印加による巻線の部分放電検出方 法」, 放電/開閉保護/高電圧合同研究会, Vol.ED-07, No.1.3-12, pp.12-18(2007)
(5) 華表宏隆, 高野哲美:「H/N2混合気体中短ギャップのインパルスフラッシオーバ特性」, 放 電学会年次大会 Vol.53, No.P-7, pp.92(2010)
(6) 華表宏隆, 高野哲美, 占部昇, 渡辺賢治:「モールド変圧器の光学式エポキシ樹脂劣化診断 技術」, 放電/開閉保護/高電圧合同研究会, Vol.ED-12, No.16-28, pp.37-42(2012)
(7) 華表宏隆, 占部昇, 高野哲美:「高湿度下の絶縁特性測定による余寿命診断技術の開発」,電 気学会全国大会, No.4-205, pp.345-346(2015)
(8) 華表宏隆, 占部昇, 松本聡:「高湿度下の絶縁特性測定による余寿命診断技術の開発」,電気 学会基礎・材料・共通部門大会, No.335, pp.8-6-5 – 8-6-6(2016)
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4. 本研究に関する特許
(1) 発明者:華表宏隆, 高野哲美, 占部昇
名称:絶縁特性測定装置、及びそれを用いた絶縁特性の測定方法、並びに、余寿命 診断方法
公開番号:2016-151466 (2) 発明者:華表宏隆
名称:絶縁特性測定装置、及びそれを用いた絶縁特性の測定方法、並びに、余寿命 診断方法
公開番号:2017-106750 (3) 発明者:華表宏隆
名称:放電監視装置及び放電監視方法 登録番号:6320596
(4) 発明者:華表宏隆
名称:絶縁特性測定装置及び絶縁特性測定装置の固定方法 出願番号:2017-153853
(5) 発明者:華表宏隆
名称:絶縁物の劣化診断方法及び劣化診断装置 出願番号:2017-238703
(6) 発明者:華表宏隆
名称:特徴量取得装置、放電監視システム、放電監視装置、及び放電監視方法 出願番号:2018-015023
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謝辞
本論文の執筆にあたり、懇切丁寧なご指導と的確なご助言を賜りました芝浦工業大学大学院 理工学研究科 地域環境システム専攻 松本 聡教授に心より感謝の意を表します。先生には、
社会人である筆者を研究室に温かく迎え入れて頂いた上、遅々として進まない研究活動に対し ても、優しいお心遣いにより最新の研究論文や新しい研究視点をご提案頂き、博士論文という形 で研究成果をまとめることができました。本当にありがとうございました。
また、副査を務めて頂いた東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 熊田 亜紀子教 授、芝浦工業大学大学院 理工学研究科 機能制御システム専攻 本間 哲哉教授、芝浦工業大 学大学院 理工学研究科 地域環境システム専攻 西川 宏之教授、芝浦工業大学大学院 理工 学研究科 地域環境システム専攻 藤田 吾郎教授には大変お世話になりました。先生方からは、
論文構成から実験細部にわたって様々な御指導と御助言を賜り、学術的な視点で研究成果を見 直すことができました。厚く御礼申し上げます。
芝浦工業大学の渋谷 義一名誉教授には、筆者の学部生および修士学生時代から絶縁研究のイ ロハを教えて頂き、今日に至るまで温かいご指導を賜りました。先生の実験結果に対して真摯に 向き合い、常にディスカッションを欠かさない研究姿勢を目標に研究活動を続けてまいりまし た。改めて、心より感謝申し上げます。
なお、本研究の着手にあたり、勤務先である富士電機株式会社より芝浦工業大学大学院博士 課程への進学の機会を頂きました。進学を全面的に支援してくださり、常に温かい叱咤激励を頂 いた富士電機株式会社 技術開発本部 エネルギー研究センター 外山 健太郎センター長、恩 地 俊行部長、山城 啓輔マネージャーに深く感謝申し上げます。
本研究の実行において、本研究の基礎理論および実験設備の土台を築き、惜しみなく絶縁技 術をご教示頂いた富士電機株式会社 電気エネルギー研究部 高野 哲美氏に深く感謝申し上げ ます。高野氏には、絶縁分野を超えた幅広い知見と常に新しいアイデアを実現させる実行力で、
本研究を大きく発展させて頂きました。
本研究の絶縁試験において、自動計測および汚損実験にご協力頂いた富士電機株式会社 電 気エネルギー研究部 早瀬 悠二氏に深く感謝申し上げます。早瀬氏には、計測技術を教えて頂 くとともに、最も身近な博士学位保有者として研究活動の参考にさせて頂きました。
本研究の熱劣化評価において、モールド変圧器の樹脂試料および製品情報をご提供頂いた富 士電機株式会社 千葉工場 渡辺 賢治課長(元モルトラ課長)、森谷 廣氏(元モルトラ部長)
に深く感謝申し上げます。モルトラ課の方々のご協力により、本研究をここまで継続することが できました。