第2章 新立法法の主な内容 第1 『第一章 総則』関連
第2部 民法典契約編について
第1 債権総則・契約総則の体系的位置づけ
法律行為の内容につき,日本民法では民法総則,債権総則及び契約総則の三者間の関係 をどのように処理していますか。この問題について,これまで日本の法律界では論争等が 存在しましたか。さらに近年来,何か新しい議論や考え方等はありますでしょうか。
【背景事情】中華人民共和国民法総則(民法典総則)は2017年3月の全人代審議で可 決されました。民法総則では,法律行為の基本的内容について規定を置いているところ,
さらに中国民法典では債権総則編を規定せずに,債権の一般的規則を契約編において充実 させる可能性も高いのです。この点についてある意見は,民法総則が既に法律行為につい て規定している内容は,契約編において重複して規定しなくともよいと主張し,別な意見 は,契約制度の適用に関する明確性を強化すると同時に契約編自体の体系を完全なものと するため,契約の観点から法律行為に関する一定の内容を重複規定すべしとの主張もなさ れているところです。
第2 予約(契約)の規律
当事者が応募申込書,注文書及び予約購入書等への署名によって予約(契約)を締結し,
将来の一定期限内に本契約を締結することを約定した場合に,一方に契約の締結義務の不 履行があったとき,その者はいかなる民事責任を負担するのか。それは契約締結上の過失 責任か,又は違約責任か。継続履行すべき責任を負担するのか。賠償の範囲には,契約締 結後の履行利益を含むのか。この問題に対して,日本民法ではどのように規定し,実務上 では具体的にどう運用されているのか。以上についてご教示下さい。
【背景事情】中国民法典契約編において予約(契約)に関する規定を置くことが検討され ていますが,一方に契約締結義務の不履行があった場合に負担すべき責任及び賠償の範囲 について,いくつかの論争が存在しているところです。
第3 第三者のためにする契約
第三者のためにする契約は,契約の相対性原則を打ち破るものですが,日本民法では,
この契約についてどのように規定しており,実務上どのような問題が存在し,理論上いか なる論争が存在するのでしょうか。
【背景事情】中国契約法第64条では,契約の相対性原則が堅持されており, 「当事者が,
債務者が第三者に対して債務を履行する旨を定めた場合に,債務者が第三者に対して債務
を履行しない,又は履行した債務が契約の定めと合致しないときには,債務者は,債権者
に対して違約責任を負担しなければならない。 」と規定しています。民法典契約編において
は,契約の相対性原則を打ち破るべく,第三者のためにする契約の規定を置くことが検討
されているところ,この制度に具体的にどのような内容を規定すべきかにつき,さらに研
究を進めているところです。
第4 賃借人の利益保護
日本の法律では,賃借人の利益保護をどのように図っていますか。また賃貸人が賃貸物 件を売却する場合において,賃借人に優先購入権が認められるのか。賃借人の優先購入権 にはいかなる制限があるのかについてご教示下さい。さらに,「売買が賃貸借を破らない」
ルールについては,実務上どのような問題が発生していますか。賃貸人,賃借人及び物件 の購入者の三者間の利益のバランスは,どのように調整されているのでしょうか。
【背景事情】中国民法典契約編の起草過程では,賃借人の賃借の利益と優先購入権とをど の程度まで保護すべきかについて論争が存在しているところです。
※補足情報
1)中国契約法第13章「賃貸借」 (212条~236条)では,目的物について動産,不 動産を区別していません。確かに実務上重要なのは不動産のうち,住居家屋賃貸借にお ける賃借人保護問題ですが,本文ではそれに限らず,住居家屋以外の不動産(例えば車 庫等) ,動産の賃貸借に関する理論的な問題もご紹介いただければ幸いです。
2)中国契約法では
①第229条「賃貸借期間において賃貸物の所有権の変動が発生した場合,賃貸借契約 の効力に影響を与えないものとする。 」
②同第230条「賃貸人は賃貸建物を売却する場合,売却前の合理的期間内に賃借人に 通知しなければならず,賃借人は同等の条件による優先購入権を有するものとする。」
との規定を置いており,①が「売買が賃貸借を破らない」ルールに関する規定,②が賃 借人の優先購入権に関する規定です。
しかし,いずれも原則的で簡単な内容にとどまっており,実務上の問題を解決するに は不十分な状況です(特に,契約法230条には,賃借人の優先購入権の行使期限, 「同 等の条件」の意義等の事項が明記されていないことから実務上多くの紛争が発生)。
この点,優先購入権に関して,最高人民法院「城鎮家屋賃貸借契約紛争事件の具体的 法律応用に関する若干問題に関する解釈」では契約法230条に関する解釈規定が数条 置かれていますが,学説の中には,当該司法解釈を新しい民法典規定に吸収するだけで なく,さらに賃借人保護を徹底すべしとの意見と,悪意(害意)ある賃借人による優先 購入権の濫用的な事例の存在等を理由として優先購入権行使を制限すべしとの意見も 主張されているところです。
賃借人の優先購入権については,上述の最高人民法院司法解釈の他にドイツ民法57
7条,中国台湾地区民法426条の2,同460条の1,中国台湾地区土地法104条
に関連規定あり。
日韓の司法協力・不動産登記特別講演セミナー
国際協力部教官 大 西 宏 道
第1 はじめに
法務省法務総合研究所では,公益財団法人国際民商事法センターとの共催により,20 17年11月20日(月) ,東京都昭島市の国際法務総合センター国際棟の国際会議場にお いて,日韓の司法協力・不動産登記特別講演セミナーを開催した。
法務省法務総合研究所では,アジアの国々に対する法制度整備支援を行うほか,諸外国 との司法協力活動を行っており,その一つが日韓パートナーシップ共同研究である。同共 同研究は,我が国の法務省,法務局及び裁判所の職員並びに韓国の法院の職員により構成 される日韓の研究員が両国の民事法制の制度上及び実務上の問題点の検討及び比較研究を 共同で行うことを通じて,相互に知識を深め,各制度の発展及び実務の改善に役立てると ともに,両国間のパートナーシップを醸成することを目的として,法務省法務総合研究所 及び公益財団法人国際民商事法センターが,大韓民国(以下「韓国」という。)の大法院法 院公務員教育院と協力して,実施しているものである
1。
長年実施してきた同共同研究について,その意義及び成果を改めて示すことにより,我 が国の司法協力活動を更に発展させることができる。また,法務省法務総合研究所が実施 しているアジアの国々に対する法制度整備支援活動において,不動産登記制度が重要な分 野となってきており, 不動産登記制度の整備に対する支援を効果的に実施するに当たって,
諸外国の登記制度の比較研究が必要となっている。
そこで,今回で第18回目となる日韓パートナーシップ共同研究の日本セッションの一 環として,韓国から法院公務員教育院長を招き,日韓の司法協力及び不動産登記の経験及 び今後について,報告,議論等する公開セミナーを開催することとした。
第2 セミナーの概要
2(別紙プログラム参照)
セミナーにおいては,法務省法務総合研究所の森永太郎国際協力部長により,日韓パー トナーシップ共同研究の概要について説明がされた後,法院公務員教育院の具演謨(グ・
ヨンモ)院長
3により,韓日登記官等相互研修
4の意義及び韓国における不動産登記制度の最
1
韓国の法院とは,我が国の裁判所に相当し,大法院とは,我が国の最高裁判所に相当する韓国の機関 である。また,法院公務員教育院とは,韓国の法院の職員の研修を実施する,我が国の裁判所職員総合 研修所に相当する機関である。
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セミナーの講演録は,公益財団法人国際民商事法センターの発刊する「
ICCLC NEWS」及び同センタ ーのウェブサイト上に掲載されるので,参照されたい。
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グ・ヨンモ院長は,ソウル大学法科大学卒業し,ソウル大学大学院で不動産登記の分野で法学博士号 を取得した上,ソウル中央地方法院登記課長,法院行政処司法登記局の事務官,課長,審議官,法院公 務員教育院教授(不動産登記実務担当) ,法院行政処人事運営審議官,法院図書館事務局長を歴任してい る。
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