補論 1 :企業が独占であるケース
4.3 比較静学分析
F1(p∗x, p∗r)≡H·[
θ−p∗x−tx−πH]
−M· [( pv
τp∗x
)τ+ρ( τp∗r ρpv
)ρ]τ+ρ−11
= 0, (58) F2(p∗w, p∗r)≡N ·
(p∗w +ψ εp∗r
)ε−11
−H·
(p∗w+sH+πH β
)
= 0, (59)
F3(p∗x, p∗w, p∗r)≡M· [( pv
τp∗x
) (τp∗r ρpv
)1−τ]τ+ρ−11
−N ·
(p∗w+ψ εp∗r
) ε
ε−1 = 0. (60)
策手段1)と、家計廃棄物wSの合法処理に対する補助金sH(政策手段2)の2つを考え る40。
まず、家計に対する政府政策の1つめ、財xDの購入に対する課税txについては、以 下の命題が成立する。
命題 6. 財の購入に対する課税を引き上げた場合、バージン資源購入量とリサイクル 資源の需要量が減少する。したがって、財の購入への課税という1つの政策だけでは、2 つの政策目標(バージン資源購入量の減少と、リサイクル資源需要量の増加)を同時に 達成することは不可能である。
【証明】 (61)式で表される比較静学方程式に、クラメールの公式を適用して解くこ とにより、以下の式が得られる41。
dp∗x
dtx <0, dp∗r
dtx <0. (63)
また、(57)式および(55)式を、それぞれ、財の価格pxおよびリサイクル資源の価格 prで偏微分することにより、以下の結果が得られる。
∂v∗
∂px >0, ∂v∗
∂pr <0, (64)
∂rD∗
∂px >0, ∂r∗D
∂pr <0. (65)
(63)式と(64)式から(66)式を、(63)式と(65)式から(67)式を、それぞれ導出するこ とができる。
dv∗
dtx = ∂v∗
∂px⊕ dp∗x
dtx⊖+ ∂v∗
∂pr⊖ dp∗r
dtx⊖<0, (66)
drD∗
dtx = ∂rD∗
∂px⊕
dp∗x
dtx⊖+∂r∗D
∂pr⊖
dp∗r
dtx⊖<0. (67)
(証明終)
命題6では、家計に対する政府政策として、財xD の購入に対する課税txを用いた ケースを考えている。この課税を引き上げた場合、バージン資源購入量の減少という1つ
40本章の第1節でも記したように、本研究では、家計に対する課税政策と、補助金政策を個別に検証し ている。41命題6の計算の詳細については、数学付録4-3を参照。
めの目標を達成することができるものの、2つめの目標であるリサイクル資源需要量の増 加を達成することはできない。リサイクル資源の需要量を増加させるためには、課税の 額を軽減しなければならないのである。つまり、財の購入への課税政策だけでは、2つの 政策目標を同時に達成することはできないことになる。
また、家計に対する政府政策の2つめ、家計廃棄物wSの合法処理に対する補助金sH については、以下の命題が成立する。
命題 7. 財に関する需要の価格弾力性が非弾力的(弾力性<1)なときに限り、家計 廃棄物の合法処理に対する補助金を引き上げた場合、バージン資源購入量が減少すると 同時に、リサイクル資源の需要量は増加する。したがって、財市場が非弾力的なケース では、家計廃棄物の合法処理への補助金という1つの政策だけを用いたとしても、2つの 政策目標(バージン資源購入量の減少と、リサイクル資源需要量の増加)を同時に達成 することが可能となる。
【証明】 (61)式で表される比較静学方程式に、クラメールの公式を適用して解くこ とにより、以下の式が得られる42。
dp∗x
dsH <0, dp∗r
dsH <0. (68)
ここで、(68)式と、命題6でも利用した(64)式を用いることにより、(69)式を得るこ とができる。同様に、(68)式と、命題6で用いた(65)式から、(70)式を導出することが できる。
dv∗
dsH = ∂v∗
∂px⊕
dp∗x
dsH⊖+ ∂v∗
∂pr⊖
dp∗r
dsH⊖ R0 if ¯¯
¯¯∂x∗D/∂px x∗D/px
¯¯¯¯ R1, (69) drD∗
dsH = ∂rD∗
∂px⊕ dp∗x
dsH⊖+∂rD∗
∂pr⊖ dp∗r
dsH⊖ >0. (70)
(証明終)
命題7では、家計に対する政府政策として、廃棄物wSの合法処理に対する補助金sH を用いたケースを考えている。この補助金を引き上げた場合、バージン資源購入量の減 少という1つめの目標を達成できるかどうかは、財xDに関する需要の価格弾力性の大き さに依存して決まる。弾力性が1よりも大きく弾力的であるならば、バージン資源購入 量は増加し、この1つめの目標を達成することはできない。しかし、弾力性が1よりも
42命題7の計算の詳細については、数学付録4-4を参照。
小さく非弾力的であるならば、バージン資源購入量は減少し、目標を達成することが可 能となる。一方、2つめの目標であるリサイクル資源需要量の増加を達成できるかどうか は、弾力性の大きさとは無関係である。補助金sHを引き上げた場合には、リサイクル資 源需要量は増加することになり、この2つめの目標は、常に達成可能ということになる。
以上より、非弾力的な財市場においては(すなわち、財に関する需要の価格弾力性が小 さく非弾力的である場合には)、家計廃棄物の合法処理への補助金政策を用いることによ り、バージン資源購入量の減少と、リサイクル資源需要量の増加という2つの政策目標 を、同時に達成することが可能ということになる。
これらの結果をまとめると、【表3】のようになる。
【表3】命題6および命題7のまとめ
(家計への政策手段1) (家計への政策手段2) 家計廃棄物の合法処理wSに
財xDの購入に対する 対する補助金sHの引き上げ 課税txの引き上げ 財xDに関する需要の価格弾力性
弾力的 非弾力的
(弾力性>1) (弾力性<1)
(政策目標1)
バージン資源 ○ × ○
購入量v∗の減少
(政策目標2)
リサイクル資源 × ○
需要量rD∗ の増加