補論 1 :企業が独占であるケース
5.4 政策効果の比較
本節では、2つの政策目標、2つの政策手段を考え、効果の比較を行う。2つの政策目標 とは、均衡における中古品輸出量EX∗の増加(政策目標1)と、均衡におけるリサイクル 残余物の輸出量RW∗の減少(政策目標2)であり、2つの政策手段とは、使用済み財への 補助金sdの引き上げ(政策手段1)と、リサイクル資源への課税trの引き上げ(政策手 段2)である。また、以下では、リサイクル業者による使用済み財の購入費用(
pdw+sd) と運搬費用ψとを足し合わせたもの、すなわち(
pdw +sd)
+ψをKw、企業によるリサイ クル資源の購入費用(prr−tr)をKrとおく。
5.4.1 均衡における中古品輸出量EX∗の増加(目標1)の比較
まず、均衡における中古品輸出量EX∗の増加(政策目標1)について、使用済み財へ の補助金sdの引き上げ(政策手段1)による効果と、リサイクル資源への課税trの引き
上げ(政策手段2)による効果との比較を行うと、以下のようになる50。
¯¯¯¯∂EX∗
∂sd ⊕
¯¯¯¯ −¯¯
¯¯∂EX∗
∂tr ⊕
¯¯¯¯= (1
β )
+ ( 1
ε−1 )
· wD∗
KwKr(Kw−Kr).
∴¯¯
¯¯∂EX∗
∂sd
¯¯¯¯ >¯¯
¯¯∂EX∗
∂tr
¯¯¯¯ if Kw ≤Kr. (81)
ただし、Kw =(
pdw +sd)
+ψ, Kr =prr−trである。
(81)式より、リサイクル業者による使用済み財の購入費用+運搬費用Kwが、企業に よるリサイクル資源の購入費用Kr以下であるならば、常に、使用済み財への補助金sd の引き上げ(政策手段1)による効果のほうが大きくなることが言える。
5.4.2 均衡におけるリサイクル残余物の輸出量RW∗の減少(目標2)の比較
次に、均衡におけるリサイクル残余物の輸出量RW∗の減少(政策目標2)について、
使用済み財への補助金sdの引き上げ(政策手段1)による効果と、リサイクル資源への 課税trの引き上げ(政策手段2)による効果との比較を行うと、以下のようになる51。
¯¯¯¯∂RW∗
∂sd ⊖
¯¯¯¯−¯¯
¯¯∂RW∗
∂tr ⊖
¯¯¯¯=
( 1−τ τ +ρ−1
)
· r∗D Kr +
( ε ε−1
)
· r∗S
KwKr (Kw−Kr).
∴¯¯
¯¯∂RW∗
∂sd
¯¯¯¯<¯¯
¯¯∂RW∗
∂tr
¯¯¯¯ if Kw ≥Kr. (82) ただし、Kw =(
pdw +sd)
+ψ, Kr =prr−trである。
(82)式より、リサイクル業者による使用済み財の購入費用+運搬費用Kwが、企業に よるリサイクル資源の購入費用Kr以上であるならば、常に、リサイクル資源への課税tr の引き上げ(政策手段2)による効果のほうが大きくなることが言える。
ここで、 前節の比較静学分析の結果得られた(77)〜(80)式、および本節の(81)(82) 式より、政策目標と政策手段についてまとめると、【表4】のようになる。
50計算の詳細は、数学付録5-2を参照。
51計算の詳細は、数学付録5-2を参照。
【表4】政策目標・政策手段のまとめ
(政策手段1) 使用済み財 (政策手段2) リサイクル への補助金sdの引き上げ 資源への課税trの引き上げ
(政策目標1) Kw≤Krならば、 常に、
中古品輸出量EX∗の増加 ◎ ○
(政策目標2)リサイクル Kw≥Krならば、 常に、
残余物の輸出量RW∗の減少 ○ ◎
【表4】より、政策手段1と2のどちらを使っても、政策目標1も2も達成可能である ことがわかる。ただし、政策手段がもたらす「政策効果の大きさ」には違いがある。こ こで、「政策効果が大きい」とは、税と補助金を同じだけ引き上げたとき、より大きく政 策目標を達成することが可能であることを意味する。【表4】では、「◎」のほうが「○」
よりも、「政策効果」が大きいことを示している。つまり、リサイクル業者による使用済 み財の購入費用+運搬費用Kwが、企業によるリサイクル資源の購入費用Kr以下である ならば、常に、使用済み財への補助金sdの引き上げ(政策手段1)による政策効果のほ うが大きくなる一方、KwがKr以上であるならば、常に、リサイクル資源への課税trの 引き上げ(政策手段2)による効果のほうが大きくなる。
ここで、政策目標1に関して、リサイクル資源への課税trの引き上げ(政策手段2) による効果のほうが大きくなるケースを考えてみる。そのための必要条件は、リサイク ル業者の費用のほうが、企業の費用よりも大きいこと(Kw > Kr)である。その他の可 能性としては、家計による使用済み財の運搬費用が極めて高い(βが極めて大きい)こと や、リサイクル資源の生産性が極めて高い(εが極めて大きい(1に近い))ことが考え られる。一方、政策目標2に関して、使用済み財への補助金sdの引き上げ(政策手段1)
による効果のほうが大きくなるケースを考えてみる。そのための必要条件は、リサイク ル業者の費用のほうが、企業の費用よりも小さいこと(Kw < Kr)である。その他の可 能性としては、財の生産性が極めて低い(τおよびρが極めて小さい)ことや、リサイク ル資源の生産性が極めて高い(εが極めて大きい)ことが考えられる。以上のことから、
使用済み財の購入(運搬作業を含む)が、リサイクル資源の購入と比べて相対的に容易
(Kw < Kr)ならば使用済み財への補助金sdのほうが、相対的に困難(Kw > Kr)なら ばリサイクル資源への課税trのほうが、政策効果が大きくなる可能性が高い、と言える。