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吉岡雅之, 橋本昌也,川崎敬一,村上舞子,鈴木正彦 東京慈恵会医科大学附属青戸病院神経内科

72 歳で歩行障害が出現した.75 歳でもの忘れが加わり,77 歳で尿失禁が出現し入院となった.

神経学的には,認知機能障害(MMSE 22),歩行障害,動作緩慢を主とした parkinsonism, 尿失禁 を認めた.髄液検査は異常なかった.MRI で両側側脳室,シルビウス裂の拡大,高位円蓋部のく も膜下腔と脳溝の狭小化を認めた.本例は「特発性正常圧水頭症(iNPH)の診断基準」を満たし,

probable iNPH と診断した.tap test 後に認知機能障害(MMSE 27),歩行障害と尿失禁が改善し た. tap test 前後の123IMP-SPECT 画像を比較すると,tap test 後に両側高位円蓋部の集積増加 の軽減と小脳と後頭葉の集積増加を認めた.これまで iNPH の tap test 前後での SPECT 画像を比 較した報告はなく,iNPH の病態を考える上で貴重と思われ報告した.

特発性正常圧水頭症の認知障害は前頭葉より生ず

金井光康1、山鹿隆義2、 櫻井篤3、笹口修男4

1)独立行政法人国立病院機構高崎総合医療センター神経内科、

2)同リハビリテーション科、4)同脳外科 3)はんな・さわらび療育園 神経内科

【目的】特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus: iNPH)の責任病巣 については、これまで様々な報告がなされている。今回、シャント術にて臨床症状の改善を確 認した症例(definite iNPH)を通して、本疾患の認知障害に特異的な血流低下部位を脳血流シン チグラフィー(SPECT)で確認する。

【対象および方法】頭部画像検査にて Evans index が 0.3 を超え、歩行障害、認知障害、頻尿 のいずれかをみる probable iNPH の患者に123I-IMP SPECT 検査を行った。脳血流は QSPECT を用 いた autoradiography (ARG)法にて定量値を求めた。特発性正常圧水頭症診療ガイドラインに 則り、髄液排除試験にて症状の改善をみた possible 例に対し、シャント術を脳神経外科にて施 行 し た 。 前 頭 葉 機 能 の 評 価 に Frontal Assessment Battery (FAB) 、 Trail Making Test-A (TMT-A) & -B (TMT-B)、Wisconsin Card Sorting Test (WCST)を併用した。

【結果】Possible iNPH の中で 4 例に手術を施行し、症状の改善を確認した。SPECT では、前頭 葉の血流低下と頭頂葉の相対的亢進がいずれの症例でも認められた。認知機能検査では、mini-mental state 試験(MMSE)に比し、FAB 得点の低下が目立った。治療後に MMSE 得点が変わらな かった症例で、FAB 得点の改善をみている。TMT-B や WCST は最後まで達成できない例があり、

有意差を確認できなかった。

【考察】前頭葉が iNPH における認知障害の責任部位であることを確認した。髄液排除試験を行 う際に、前頭葉機能を評価すべきと考える。

特発性正常圧水頭症における脳循環障害部位と症状との関連性 第2報

―統計解析による症状局在評価―

竹内東太郎1、卵木次郎1、八木伸一1、井上洋1、清水暢裕1、橋本幸治1、八木貴1、石黒太一1、 古井啓2、藤田達士3、清水庸夫1

1) 医療法人啓清会関東脳神経外科病院脳神経外科、2) 同神経内科、3) 同麻酔科

【目的】特発性正常圧水頭症(iNPH)における脳循環障害部位と症状局在との関連性を統計解析 により検討すること。

【対象・方法】対象はシャント治療後 1 年の時点で症状改善が認められた definite iNPH40 例(年 齢:61~85 歳、平均年齢:73.2 歳、男女比 18:22)である。対象全例の術前及び術後 1 年に123I-IMP SPECT を用いて ROI 設定による脳血流量パターン(全皮質部:cCBF、視床・基底核部:tbCBF)

の測定及び JNPH-GS-R による症状(歩行障害:G,認知障害:D,尿失禁:U)の判定を行い比 較検討した。

有意差判定は、危険率 5%以下における Fisher’s exact test の p 値判定により解析した。

【結果】術前脳血流量パターンは、cCBF 減少群 31 例、cCBF 非減少群(tbCBF 減少群)9 例であ った。cCBF 減少群ではDの重症度(JNPH-GS-R grade3-4)が有意に多く(p=0.021)、cCBF 非減 少群(tbCBF 減少群)ではGの重症度が有意に多かった(p=0.017)。術後 1 年の脳血流量パター ンは、cCBF 増加群 6 例、tbCBF 増加群 15 例、c&tbCBF 増加群 19 例であった。cCBF 増加群ではD の軽症度(JNPH-GS-R grade0-2)が多い傾向にあり(p=0.091)、tbCBF 増加群ではGの軽症度が 有意に多かった(p=0.003)。

【結語】脳皮質部は iNPH の症状局在に関与していると思われるが、特に歩行障害では視床・基 底核部(脳室周辺)の局在関与も示唆される。

特発性正常圧水頭症と皮質下血管性認知症における MRI 所見の比較

織田雅也1,伊藤 聖1,日地正典1,中村 毅2,宮地隆史2,丸山博文3,和泉唯信1 1)医療法人微風会三次神経内科クリニック花の里

2)広島大学脳神経内科

3)広島大学原爆放射線医科学研究所

【目的】

特発性正常圧水頭症(iNPH)は脳脊髄液の循環動態異常が主病態であるが,動脈硬化もその成因 に関与すると考えられている.動脈硬化そのものが病因である皮質下血管性認知症(SVaD)は臨 床像が iNPH と類似し,両者の合併もしばしばみられる.今回,iNPH と SVaD における動脈硬化 の内容について比較するため,MRI 所見の比較検討を行った.

【方法】

iNPH 診療ガイドラインの possible iNPH 以上の基準を満たした iNPH 20 例(女性 12 例,男性 8 例,年齢 70~89 歳,平均年齢 79.1±5.3 歳)と,Erkinjuntti らの提唱する基準を満たした SVaD 27 例(女性 11 例,男性 16 例,年齢 63~91 歳,平均年齢 79.5±6.0 歳)を対象とし,MRI にお ける大脳白質・基底核の変化,および T2*強調像での微小出血の所見の比較を行った.

【結果】

大脳白質の信号変化の程度は,SVaD 群において有意に高度であった.基底核変化は SVaD 群の 26 例(96.3%),iNPH 群の 12 例(60.0%)に認め,SVaD 群において有意に高頻度で,程度もより高 度であった.また,微小出血を認める頻度は SVaD 群で 23 例(85.2%),iNPH 群で 7 例(35.0%)

と,SVaD 群において有意に高頻度であった.

【結論】

iNPH に比べ,SVaD においては虚血性変化の程度が強く,微小出血を伴う頻度が高い.

水頭症脳における CSF Hydrodynamics の変化 MRI Time-SLIP 法による観察

後藤忠輝、二宮 敬、山田晋也

1)東海大学大磯病院脳神経外科、2)新和会八千代病院リハビリテーション科

iNPH の症状は脳脊髄液(CSF)シャント術で改善されることからその病因として CSF の循環障 害が存在していることには異論はなく、病態の解明と診断には CSF 循環動態(hydrodynamics)の 把握が重要である。CSF 循環を観察する方法として従来法とは全く異なるアプローチによって CSF hydrodynamics を可視化するために MRI time spatial labeling inversion pulse(time-SLIP)

法 CSF bulk Flow Imaging を開発し、正常脳及び水頭症状態での CSF hydrodynamics とその 変化を観察してきた。本法は、CSF を内因性の造影剤として使用することができるところに最大 の特徴があり生理的環境下を乱さず人での髄液の hydrodynamics の観察が可能となり、過去知 られていない髄液の流れが描出され本研究班において報告してきた。正常脳では、脳室内で CSF は側脳室、第三脳室、第四脳室の間でモンロー孔、中脳水道、マジェンディー孔、ルシュカ孔を それぞれボトルネックとして活発な CSF の交換がおこなわれていることが観察された。第三脳室、

第四脳室内では CSF は turbulence flow の様相を呈し CSF はよく攪拌されるが、側脳室内での CSF は、モンロー孔周辺をのぞきゆっくりとした convection type の slow flow を認めるにとど まることが観察された。くも膜下腔での CSF flow の特徴としては、脳底槽、橋前槽から脊髄腹 側に向かう強い pulsatile flow である。CSF Flow は、シルビルス裂まで pulsatile flow とし て認められるが、シルビウス裂から大脳円蓋部に連続するような流れは認められず、大脳円蓋部 においても CSF は stand still の状態で同部位に CSF の流れは認められなかった。一方、水頭 症脳における CSF Hydrodynamics の変化として、モンロー孔を介しての側脳室、第三脳室間の CSF 交換の消失が特徴的に見られる。シャントをすることによってこの髄液の拍動流は再現する。

さらに水頭症状態では中脳水道の CSF Flow は速くなることが観察された。今回は、この水頭症 の時にとらえられる CSF Hydrodynamics の変化がどの程度、水頭症脳に特異的であるのかの検討 をおこなった。対象には水頭症の存在を臨床的に容易に確定できうる、Secondary hydrocephalus 群(クモ膜下出血後)での水頭症例、非水頭症例における検討をおこなった。さらに、特に高齢 者においては正常脳であっても加齢に伴い脳萎縮が進みその形態は変化する。そこで非水頭症脳 においてどの程度の正常脳で見られる CSF hydrodynamics が保たれるのかを合わせて検討した。

正常の対照群はこれまでボランティアを使用しての検討であったため、疾病対象群と比べると年 齢分布が若年であった。非水頭症対象群を、臨床的に水頭症を伴わない脳疾患(脳梗塞、脳出血、

外傷、クモ膜下出血後)合併症例に広げ、加齢に伴い正常脳髄液の hydrodynamics がどのよう に変化するかを中脳水道、モンロー孔における髄液の流れに注目し検討をおこなった。

特発性正常圧水頭症患者 特発性正常圧水頭症患者 特発性正常圧水頭症患者

特発性正常圧水頭症患者と と と と脳出血 脳出血 脳出血 脳出血• •• •脳梗塞患者 脳梗塞患者 脳梗塞患者 脳梗塞患者の の の間 の 間 間に 間 に に に見 見 見 見られた られた られた られた 拡散

拡散 拡散

拡散テンソル テンソル テンソル テンソル法 法 法 MRI 法 MRI MRI MRI 所見 所見 所見 所見の の の の差異 差異 差異 差異

小山哲男1、三宅裕治2

1)西宮協立脳神経外科病院リハビリテーション科、2)同脳神経外科

【背景背景背景背景とととと目的目的目的目的】】】拡散テンソル法(DTI)MRI は神経線維の評価を可能とする新しい画像診断であ】 り、近年様々な神経疾患にて臨床応用されはじめている。本研究の目的は、iNPH 患者の DTI の 画像的特徴を、脳出血(ICH)および脳梗塞(INF)患者の非病巣側半球との比較において明ら かとすることである。

【【

【【対象対象対象対象】】】】2010 年 6 月〜10 月に、当院にて精査または加療した iNPH 患者および 3 週間以上の入 院加療を要した ICH および INF 患者を対象とした。iNPH 群は、歩行障害、認知障害、あるいは 失禁より本症が疑われ、MRI T1-weight 画像にて脳室拡大、High parietal sulci の狭小化が見 られ、腰椎穿刺にて脳脊髄圧が正常範囲にあることが示された症例とした(特発性正常圧水頭 症診療ガイドライン 2004 の Possible NPH に相当)。対照群とする ICH および INF 症例は、初回 発症、発症前の日常生活動作が自立、かつ 60 歳以上の症例とした。

【【

【【方法方法方法方法】】】】iNPH 群では外来初診より 2-4 週間後、ICH 群および INF 群では発症から約 2 週間後に DTI を撮像した。画像解析にて神経線維の異方向性の強さを示す Fractional Anisotropy(FA)

値を算出し、FA brain map を作成した。さらに患者間の比較のため、患者ごとの FA brain map を解剖学的標準脳(JHU ICBM-81, Mori el al., Neuroimage, 2008)に変換した。解剖学的標 準脳に基づいて、解析の関心領域(ROI)を以下に設定した:1) Anterior thalamic radiation

(前視床放線)、2) Corticospinal tract(皮質脊髄路)、3) Forceps major(大鉗子)、4) Forceps minor(小鉗子)、5) Inferior longitudinal fasciculus(下縦束)、 6) Superior longitudinal fasciculus(上縦束)。それぞれの患者において各 ROI の Voxel あたりの FA 値の平均を求めた。

ここで iNPH 症例では両側半球の平均値、ICH 群および INF 群では健側半球のデータを採用した。

これらのデータを用いて、iNPH、ICH、INF の 3 群で、2 群間の統計的比較を繰り返し行った(t test, p < 0.05)。

【結果結果結果結果】】】】患者は iNPH 群 5 名(73.8±6.1 歳;平均値±標準偏差)、INF 群 10 名(73.2±8.4 歳)、

ICH 群 10 名(70.8±7.5 歳)であり、統計的有意な差異は見られなかった。また合併症等にも 大きな差異は見られなかった。下図は各 ROI における疾患群ごとの FA 値を示している。前視床 放線と小鉗子において、iNPH 群の FA 値は ICH 群、INF 群の双方よりも統計的有意に低値であっ た。大鉗子、上縦束において iNPH 群の FA 値は ICH 群より統計的有意に低地であった。これら は INF 群よりも低値であったが統計的有意には至らなかった。その一方、下縦束と錐体路では、

3 群間のいずれにも統計的に有意な差異は見られなかった。いずれの ROI においても、ICH 群と INF 群の 2 群間に統計的有意な差異は見られなかった。

【考察考察考察考察】】】】DTI による FA 値を用いた評価は、INF 群や ICH 群の健側半球に比較して、iNPH 群にお いて前頭前野領域の前視床放線と小鉗子で低値であり、これらの領域での神経障害が示唆され た。今回、INF 群および ICH 群は初発患者かつ発症まで日常生活に支障がなかった症例を対象と している。その一方、iNPH 群は歩行障害、認知症、失禁等の症状を示している。3 群間で合併 症や年齢の背景が同様であったことから、前頭前野領域の神経障害と iNPH の関連を示唆してい る。これらの所見より DTI が本疾患の早期診断に役立つ可能性が示唆される。

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