1.はじめに
1.1 活動の背景と目的
第1期及び第2期の先進安全自動車(ASV)推進計画においては、自律検知型 の運転支援システムを中心に検討し、その一方で路車間通信を利用する路車協調の 運転支援技術(路側情報利用型運転支援システム)についてインフラと連携した検 討に着手し実証実験を開始した。
そして第3期ASV推進計画からは次世代の安全技術として車車間通信を利用す る運転支援技術(情報交換型運転支援システム)の開発に着手し、まずは事故分析 に基づいてシステムの役割やあり方を検討した結果より「通信利用型運転支援シス テムコンセプト仕様書」をとりまとめ、システムが支援する場面ごとにシステム機 能の検証を行い、システム開発を進めていく際に検討が必要な課題を洗い出した。
第4期ASV推進計画においては、ASV活動を「IT新改革戦略」に同期させる ため、事故実態に立脚したASV総合安全戦略を策定し、“対象物が見える状況で は自立検知型により支援を行い、見えない状況では通信利用型により支援を行う”
という基本的な考え方に基づいて“通信利用型運転支援システムの実用化に向けた 基本設計”をテーマの一つに掲げ活動を行った。
コンセプト仕様書から「通信利用型運転支援システム定義書」を策定して「IT S推進協議会」の実証実験に参画し、最終的に「通信利用型実用化システム基本設 計書」をとりまとめた。
第5期先進安全自動車(ASV)推進計画では、これまでに実用化が進められて きた自律検知型安全運転支援システムの更なる高度化を促進すること及び次世代の 通信利用型安全運転支援システムの開発を促進することを活動目的として、「運転 支援設計分科会」と「通信利用技術分科会」を設置した。
「通信利用技術分科会」の下には、平成 25 年に東京で開催されたITS世界会議 におけるデモ対応を目的とした「デモ対応TF」、歩行者事故について事故形態の 分析と通信利用型のシステムで対応できるシステムの技術要件の検討を行う「歩行 者事故分析・対策検討WG」及び次世代の通信利用型運転支援システムに関する検 討を行う「次世代通信利用型システム検討WG」を設置した。
本書が報告する「次世代通信利用型システム検討WG」では、2020 年代前半にお ける情報交換(車車間通信)型運転支援システムを見据えた検討を行い、第4期A SVにて策定した「通信利用型運転支援システム実用化基本設計書」の改訂版策定 を主な成果目標として活動した。
- 2 - 1.2 検討項目と活動計画
本WGでは具体的な検討内容として以下の5項目について推進することとした。
①ASV4で検討した通信利用型安全運転支援システムの更なる熟成 ②上記以外の安全/安心につながる支援機能の選定
③国際的に応用可能な協調システムを目指したシステム基準づくり ④システム価値を明確にするための多様な視点からの効果評価の実施 ⑤実用化へ向けてのシナリオや普及方策の検討
次世代通信利用型システム検討WGの活動計画を図1-1 に示す
図1-1 WGの活動計画
2.基本設計書の改訂
第4期ASV推進計画において作成した「通信利用型実用化システム基本設計書」
を基に、国土交通省は平成23年3月に情報交換型運転支援システムの実用化に資 する目的で「通信利用型運転支援システムのガイドライン」を発行した。
本WGにおいては、上記ガイドラインをベースに、
1)検討済み支援機能の更なる熟成
2)安全/安心への寄与が期待できる支援機能の追加検討 3)実用化する上での留意事項の追加検討
を行うことを基本方針として、通信利用型運転支援システムの基本設計書としてA SVで培った知見の集約とすべく改訂作業を推進した
本WGの当初計画においては、2)として次世代において追加検討すべき支援機 能についても基本設計書に包含予定であったが、既に実用化に向けて開発が進んで いる支援機能に対し、追加を検討した支援機能はASVにおける検証レベルに違い があるため、基本設計書には記載せず本報告書の次章で述べることとする。
2.1 改訂の目的
ガイドラインは、ASV以外の活動が具体的検討を進めている「路側情報利用型 運転支援(路車)システム」はその検討主体に任せるものとし、「情報交換型運転 支援(車車)システム」に絞って記述された。
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本WGでは、第5期ASVは通信利用のみに基づく運転支援システム開発の区切 りと位置付け、対象システムの範囲をガイドラインと整合すると同時に、用語の統 一をはかったり、あいまいな表記を分かり易く明確にしたり、第4期以降に技術検 討が進んだ部分については最新情報に書き換えるなどして、「通信利用型運転支援 システムの基本設計書」として改訂を行った。
2.2 改訂の概要
2.2.1 全体(基本設計書のカバー範囲見直し)
ASV 以外の活動で検討されている項目、例えば路側情報利用型運転支援(路車)
システムについては記述を削除し、情報交換型運転支援(車車)システムに絞った 基本設計書とした。また、具体的検討がASV以外の活動に引き継がれた項目につ いても本書からは記述を削除した。
例えばメッセージセットとディクショナリーを含む通信方式の具体的な検討は、
ITS 情報通信システム推進会議(ITS Forum)において実験用ガイドラインとして 策定され、ARIB標準や ITS Connect推進協議会の実用化仕様につながっている。
位置評定の技術は、準天頂衛星やマルチ GNSS 等の活用により、より高精度な位置 評定を実現する技術開発が、実際に技術を提供するサプライヤも巻き込んだ活動と して推進されている。
通信利用に対するセキュリティの検討は、ITS Forum のガイドライン等を参照し ながら総務省は「700MHz 帯安全運転支援システムのセキュリティ要求事項」及び
「700MHz 帯安全運転支援システム構築のためのセキュリティガイドライン」を定
め、実用化を促進している。
そして、第4期から第5期に活動が推移したことによる時制の不一致を修正した。
2.2.2 用語や記述の統一
支援レベルやレベルに応じた情報提示・反応時間については、記述が分散し分か り難かったため、基本設計書 2.2 及び 2.4 に考え方を含めて集約した。
基本設計書 2.3 支援方法における ①支援方法、②支援の適用、③機能の例 は、項目 に対する記述内容を再整理した。
優先車両への支援については、支援対象車両が優先側を走行している際の動作に ついて、「動作を既定しない」という意図から動作記述が無かったが、「記述が無 い」=「禁止されている」といった誤認識にならないように明記した。また、優先
/非優先はシステムにとって必ずしも明確で無い場合を考慮し、支援方法は1当/
2当ではなく情報対象車両/支援対象車両の振る舞いとしての記述とした。
複数システムにおける支援機能の組合せ・使い分けの考え方は複数章に分散して いたのを基本設計書 2.6 に集約すると共に、第5期ASV 運転支援検討WGの検討 結果(運転支援システムの複合化に関する検討結果である「優先度の考え方」を反 映した。具体的には、従来の「危険性」に基づく表記を、運転支援検討WGの検討
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結果に沿って「重大性・緊急性・遭遇度」の基づく表記に修正した。
機能、支援、支援機能、アプリケーション、システム、等の用語の使用において 統一性の欠ける記述が散見されたため、
機能:支援機能を実現する構成要素
支援:情報提供や注意喚起等のドライバーへの働きかけ
支援機能、アプリケーション:基となる情報の入手~支援要否・方法等の判断~
ドライバーへの支援からなる一連の動作 システム:支援機能を実現する実装系
という考え方に基づいて記述を統一した。
2.3 最新検討結果の反映
基本設計書 3.5、3.6 通信技術に関する部分については、注釈内容等を ITS Forum における最新検討状況を反映して書き換えた。
基本設計書 3.7.1 の留意事項に、フェールセーフに関する考え方を追加した。
第4期ASVの成果としては別資料となっていた「インフラ協調による安全運転 支援システムに係るHMIの配慮事項について」を巻末資料とした。
2.4 改訂版「通信利用型安全運転支援システムの基本設計書」
本WG活動により改訂された基本設計書は、資料編4-1 として添付した。
3.追加支援機能の検討
第4期までのASV推進計画においては、通信の利用が事故の削減に寄与するで あろう支援機能の中から、事故削減効果が高く且つ技術的にも 2010年代後半に実用 化可能と考えられる支援機能に絞って実用化に向けた検討を実施した。
車載通信機能が一旦普及すればその応用範囲は広く、早期実用化を目指した支援 機能以外にも、技術進化によって実現可能となり支援機能や、事故が発生しそうな 場面での直接的な支援ではないが事前の情報提供がそのような場面の発生を抑制し、
安心でスムーズな運転に寄与するであろう支援機能なども考えられる。
本WGでは、それらの機能に再度着目し、支援機能の概要、支援対象車両・情報 対象車両の条件、期待する安全・安心効果、実用化のための課題を整理した。
3.1 第4期ASVで実用化を見送った支援機能
第4期ASV推進計画では、車両同士の情報交換を利用することで事故削減に効果 のある運転支援を行う機能として、表3-1 の12の支援機能が抽出された。