人間の行動を連続する時間軸に沿ってみたときに,オブジェクトの 組み合わせ と 順 列 という2つのパターンがあると先程述べた.しかし,この2つのパターンを表現するだ けでは,システムとして十分ではない.
図3.4を例に考えてみる.図3.4は筆者が研究室にいる時の日常的な行動パターンの一部 を表している.
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図 3.4: イベントによってコンテクストが分岐する例
図3.4では,オブジェクトの検出イベントの並びから,コンテクストが5つに分岐してい る.この例を,組み合わせだけで表現するには全てのパターンを記述する必要がある.人間 のまわりにあるオブジェクトは数えきれない程存在するため,全てのイベントパターンを個 別に保持するのは現実的ではない.図3.4に示したように,ある別々のコンテクストであっ ても,それを構成するイベント群を見たときに重複する部分が存在することは多々あると考 えられ,これらを統合して表現するルールセットの記述を検討する必要がある.
オブジェクト固有のコンテクスト表現
前節で述べたように,オブジェクトを利用した複合コンテクストの利用にあたって,時間 軸に沿った複数のイベントからコンテクストに変換できること,およびオブジェクトの粒度 の違いに対応したコンテクスト表現ができる必要がある.
時間連続性を考慮したコンテクスト表現
まず,時間連続性の問題に対するアプローチを述べる.人間が行動を起こすにあたって,
オブジェクトを検出する.この検出パターンについて,実時間性の観点から見た時に,図3.5 に示すように 順列 と 組み合わせ , 分岐 で表現できると考えられる.
図3.5: イベントのルールセット
そして,これらのルールセットを組み合わせることで,人間の行動を疑似的にツリー構造 に見立てることができる.すなわち,ツリーの階層が上から下へというベクトルによって順 列を表現し,組み合わせはツリーのある一階層に,分岐はツリーの枝分かれにそれぞれマッ ピングすることで表現する.
オブジェクトのメタ情報粒度を考慮したコンテクスト表現
前節において,インスタンスレベルのみでコンテクストを定義することの問題について述 べた.この問題を解決するために,オブジェクトレベルとインスタンスレベル両方を用いて コンテクスト情報を定義できる必要がある.本研究では,EPCネットワークのある環境を想 定しており,センサイベント情報に含まれるEPCを検索キーとして,検出したオブジェク トの名前を取得し,データベースに登録することでオブジェクトレベルでの管理を実現する.
3.5 まとめ
本章では,まず最初に本研究の前提とするEPCネットワークについて概説し,利用モデ ルを,データキャリア型RFIDシステムとネットワーク型RFIDシステム双方の観点から比 較検討した.そして,実空間上のオブジェクトを識別することが,コンテクスト情報となり 得ることを説明した.最後に,第2章で挙げた問題を解決するために,アプリケーション開
発の基盤となるミドルウェアの提案を行い,機能要件について整理を行った.
次章では,複数コンテクストを容易に扱うためのミドルウェアについて具体的な設計を 行う.
設計
本章では,第3章で整理した機能要件に基づき,複合コンテクスト管理ミドルウェアの設 計について述べる.