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機械・金属業とプラスチック加工業のケース

ドキュメント内 中小企業の環境経営 senshuasiasme M08 s (ページ 94-104)

1.研究の背景と本論文の目的

日本の製造業において、全企業数のうち中小企業 の占める割合は約99%であり、付加価値の割合では 約55%を占めている1)。近年、大企業を中心に環境 経営が進んでいるが、中小企業の環境経営も重要な 課題である。

中小企業に対する政策は主に産業政策であるが、

産業公害問題や地球環境問題への対策も講じられて きた2)。平成10年版の中小企業白書には、平成9年度 に実施された経営実態調査をもとに、環境保全側面 での今後の支援策が提示されている。平成11年版以 降では、中小企業施策として環境・エネルギー問題 への対策として、補助金や情報提供などが挙げられ ている。また、それを受けて、最近の地方自治体で は、中小企業への環境保全側面の支援が増えつつあ る。しかし、環境保全に関する対策に関して、中小 企業の認知や利用が十分でないことが指摘されてい る3)

他方、環境政策は、1993年の環境基本法から新た な体系に移行して以来、それまでの公害対策を中心 とする時代とは、内容が大きく変化している。中小 企業にとっては、自社に関わる法規制や条例の把握 が難しいという現状がある4)

このような中で、中小企業の環境対応に影響を及 ぼしているのは、大企業による取引先への環境配慮 要求である。本研究では、機械・金属業およびプラ スチック加工業の中小企業に対して、ヒアリング調 査とアンケート調査を実施した。在間(2005a,b,

2007)は、それらの調査を通して、中小企業が受け ている環境配慮要求の実態、環境配慮要求が中小企 業の環境活動に与える影響、中小企業の環境経営推 進のための経営資源の課題と情報サポートの課題に ついて整理している。

本論文の目的は、アンケート調査データの統計解 析から、環境配慮要求に加えて、中小企業の形態や 経済性、直面する市場環境など、中小企業の内部と 外部の両者の要因から、中小企業の環境経営を推進 する条件を明らかにすることである。以下、第2節 では本研究の既存研究との相違を述べ、第3節では アンケート調査の概要を示す。第4節では分析モデ ルを提示し、第5節では分析結果をまとめる。第6 節は結果から中小企業の環境経営推進の条件を考察 する。第7節は総括である。

2.本調査研究の特徴

これまでに実施された日本の中小企業の環境経営 に関する調査分析には、まず、環境マネジメントシ ステムの国際標準規格ISO14001認証取得による影 響や課題を分析した、中小企業研究センター(編)

(2002)、遠藤(2006)、(財)広域関東圏産業活性化 センター(2005)がある。また、(財)機械振興協 会経済研究所(2000)は、環境ビジネス参入の現状 と課題を分析しているが、調査対象が1000名以下の 企業であり、回答企業の特性が明らかにされていな いので、必ずしも中小企業の特徴とは言えない面が ある。また、例えば、大阪府(2000)では、中小企

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業と大企業の環境への取り組みの相違を示してい る。

本研究とこれらの研究の相違点は、取引先からの 環境配慮要求について具体的内容とその実態を把握 していること、環境活動の内容を指標化しているこ と、中小企業の事業形態や競争環境、情報サポート との関連も含めていることがある。これらの点から、

より詳細な環境性と経済性の分析が可能になること が特徴である。

中小企業の競争力と環境性に関する調査分析とし ては、例えば、Hichens, et al (2003)では、両者 の間には明確な関係が示されていない。

3.アンケート調査の概要と環境経営の定義

本研究では、400社の中小企業に対して、面接方 式によるアンケート調査を実施した。調査地域・対 象は表1のとおりである。調査期間は2006年6月か ら7月である。本研究では、調査地域や対象が広範 囲にわたるため、調査対象の抽出、訪問・記入、デ ータ入力については調査会社(有限会社ブレーン・

ネットワーク)に委託した。調査票は、表2に示す 7つのパートで12ページの質問項目を作成した。

本研究では、アンケートの具体的な環境活動に関 する質問項目について、選択肢をもとに点数付けを 行い、表3に示すように、具体的な個別の環境活動 指標を作成している5)。また、アンケート調査での、

企業の属性や形態、経済的側面や市場環境側面に関 する指標を、表4に示す。

本研究では、環境経営を、「環境理念や環境憲章 を組織に位置づけ、企業活動に環境配慮を組み込み、

環境性と経済性を向上させるために、コンプライア

ンスに加えて、自主的活動を実施していること」と 定義する6)

企業の環境保全には、①工場など事業プロセス での環境配慮、②製品・サービスでの環境配慮、③ 経営資源を生かした社会貢献の3つの領域がある。

表3に示す環境指標の環境経営推進における意味 を、表5に示す。分析では、各項目の点数が高いほ ど、また、表5の下の項目へいくほど、環境経営が 進んでいることを意味する。

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表1 調査地域とサンプル数 2006年度

機械・金属

2006年度 プラスチック

東京都 101 101

大阪市 100 100

合計 201 201

表2 調査票の概要

・企業の属性・形態

・経済性・競争力・市場環境など経済活動

・環境活動の内容

・取引先からの環境配慮要求

・環境情報サポート

・環境活動に関する支払い意思額(WTP)

・環境関連の認証取得

各項目の環境活動の現状については、在間(2007)

を参照されたい。以下の分析では、表3での環境総 合指標を用いる。

4.分析モデル

分析するモデルを図1に示す。

在間(2005b, 2007)で示したように、取引先か らの環境配慮要求や、環境マネジメントシステムの 認証取得、情報利用が、中小企業の環境活動推進の 要因となっていると考えられる。環境パフォーマン スと、環境配慮要求要因、経済性要因、制度要因、

および、情報的要因の関わりを分析する。経済性の

指標は、表4の年商を用いる。

環境配慮要求は、在間(2005a)に示唆されるよ うに、規模、企業形態、取引先との関係、市場環境 に影響されると考えられる。また、経済パフォーマ ンスは、企業規模、企業の競争力、中小企業のタイ プ、製品や原材料の市場環境により影響を受ける。

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表5 環境指標の環境経営における意味

図1 環境性と経済性に関する分析モデル

これらのことから、環境配慮要求の程度、経済パフ ォーマンスを被説明変数とし、規模、形態や競争力 などの企業内部の要因と、製品や原材料の市場環境 要因との関わりの分析を行う。

図1のモデルは、企業の形態、規模や競争力とい った企業内部の要因、および、製品市場や原材料市 場の競争環境といった市場環境要因が、環境配慮要 求の大きさや経済パフォーマンスに影響を及ぼし、

環境パフォーマンスは、それらと環境マネジメント システム認証取得、および、情報利用が影響を及ぼ す、ということを示している。環境配慮要求は、6 つの調査項目について「ある」の回答の合計を、強 さの指標として用いる。

4−1.環境配慮要求が大きい要因の仮説

環境配慮要求が大きい企業の内部要因として、企 業規模・自社ブランド比率・納品社数・輸出(直接、

間接)を考える。

市場環境要因としては、製品市場競争環境の厳し さが考えられる。在間(2005a)で指摘されている が、中小企業は納入製品のコスト低下要求と合わせ て環境配慮要求を受けている。ここでは、製品価格 の低下の有無を考慮する。

4−2.経済パフォーマンスを高める要因の仮説 経済パフォーマンスは、表4の年商の自然対数を 用いる。

経済パフォーマンスを高める企業の内部要因とし て、企業規模・従業員平均年齢・自社ブランド比 率・輸出(直接、間接)・最大納入先販売額の全売 上に占める比率・開発費用の全費用に占める比率・

強みがあること(コスト、品質、納期、販売力、情 報力)を考える。

企業規模(従業員数)、従業員平均年齢は、企業 の属性要因である。自社ブランド比率、最大納入先 販売額の全売上に占める比率は、取引形態の要因で ある。開発費用の全費用に占める比率、強みは、競 争力要因、輸出の有無は輸出要因として、以下で分 析する。

市場環境要因として、製品販売価格の低下の有無、

原材料購入価格の上昇の有無を考慮する。

4−3.環境パフォーマンスを高める要因の仮説 環境パフォーマンス向上の要因として、上述のよ うに、経済パフォーマンス、環境配慮要求の強さ、

E M S認証取得の有無、取引先・中小企業関連団 体・認証機関・自治体からの情報サポートの有無の 4つの要因を検討する。

5.分析結果

5−1.環境配慮要求の強さの要因分析

多項プロビットモデルの回帰分析結果を表6に示 す。

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表6 推定結果:環境配慮要求の強さの要因

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