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樹路濃度と硬化速度

フ ェ ノール樹脂接着剤の硬化速度と樹脂濃度との関係 に ついての正確な知見は, 実用上重要であるばかり でな く, フ ェ ノール樹脂の縮合反応機構を推定する上でも大

事な要素となる。 前述のように, 従来の研究ではモデル 化合物を用い, ごく低濃度(フ ェ ノール核濃度o . 04- 0 . 1

mol/l) で行 っ ている例が多く 47-50) 実際の フ ェ ノール 樹脂の使用濃度(約2 - 3 m 0 1 /1) とかなり違うため, 反応 速度への影響が変わ っ てくる可能性がある。 また速度論 的な考察では, 反応系中の物質の濃度変化を測定し, 濃 度に関する一次および二次の積分速度式に適合するかど うかという こ とで議論しているものがほとんどである。

こ の場合, 反応度に関して測定範囲が適当でないと,

次, 二次のいずれにも従うような結果にな っ たり, 研究 者の主観でいずれか一方の式に合うと見なされてし まう 危険性もある 70-73)。

反応次数を調べるのに最も確実な道は, 反応物の初濃 度を変えて速度を測定し, 濃度と反応速度の関係を調べ

F円unJ』

る ことである。

本研究では, アルカリ抽出に よるゲル部率を反応率の

指標とみなし, 一定のゲル部率に達するに要する時間を

決定する ことに よ っ て反応次数を推定し た。 縮合度の影

響を除くために, 反応出発物とし てメチ ロ ール化の段階

で反応をとどめた フ ェ ノール樹脂を用いた。 なお測定す

る フ ェ ノール樹脂の濃度は, フ ェ ノール核あたりlmol/l

から6mol/lと実用領域を含ん だ広い範囲に わた っ て調べ

。た

また本研究では次の点に も留意し た。

通常ホルマリ ン はホルム アルデヒ ドの重合を抑制する

ため多量のメタノールを含ん でいる。 し たが っ て, フ ェ

ノールとホルマリ ン から調製されたメチ ロ ール化 フ ェ ノ

ールを水で希釈すると, その溶媒組成が変化する。 溶媒

組成の変化は反応速度に影響を及ぼすので, これを避け

なければならない。 そ こでメチ ロ ール化 フ ェ ノール溶液

を減圧濃縮する ことに よ りメタノールを取り除いた。 」ーヨ?

れを水で希釈する ことで, 反応体組成比は一定で濃度の

みが異なる樹脂液を調製する ことができ る。

さらに実用に近い状態の フ ェ ノール樹脂を用い て, 硬

- 26

-化速度と粘度の樹脂濃度依存性を調べた。

2 . 1 実験方法

2 . 1 . 1 メチ ロ ール化 フ ェ ノール樹脂溶液の調製と

硬化速度測定

フ ェ ノール(1.2mol), 37%ホル ム アルデヒ ド水溶液 ( 2.16molまた は2. 6 4 m 0 1) , そし て30%水酸化ナト リウ ム 水溶液(0.3mol)を混合し . 3 0分間で60 OC まで昇温し, そ の後60分反応させメチ ロ ール化した。 こ の溶液を ロ ータ リーエパポレ ーターを用い て減圧濃縮し, 濃縮液の一定 量ずつをイオ ン交換水で希釈し . 6種類の濃度の異なる試 料を調製した。 それぞれの試料をガラス製ア ン プルに封

入し . 1 2 0 ocに保 っ た油浴中に 浸し て硬化させた。 所定時 間反応後, ア ン プルを直ちに氷浴に投入し て急冷し, 反

応を停止させた。

既述のような抽出操作を行い, ゲル部量を測定し てゲ ル部率の経時変化を求めた。

司lnJIH

2 . 1 . 2 フ ェ ノール樹脂の調製と ゲル化時間の測定

実用に近い フ ェ ノール樹脂は, ホルム アルデヒ ド/ フ ェ ノールモル比2 . 0 . 水酸化ナト リウ ム/ フ ェ ノールモル 比o . 3 5の仕込み比で混合し, 9 5 oc で5 0分反応させて調製 した。 この樹脂を減圧濃縮し, 通常のものよりやや濃度 を高くした。 これの一定量ずつをイオ ン交換水で希釈し て . 濃度の異なる試料を調製した。 各試料を1m 1ずっとり ガラ ス ア ン プルに封入し . 1 1 0 oc の油浴に 浸して約1 0秒毎 に ア ン プルを転倒させながら硬化させた。 ア ン プルを投 入してから樹脂液の流動が停止するま でに要する時間を ゲル化時間とした。

2 . 1 . 3 樹脂濃度の測定

樹脂の濃度は フ ェ ノール核濃度( [p] ) として表し た。

フ ェ ノール濃度測定は次のように行 っ た。

測定する樹脂液の1m 1を正確に とり . イ オ ン交換水を加 えて1 0 0 0倍に希釈する。 その際, 希釈液の アルカリ濃度 がO.5mol/lになるように5mol/l水酸化ナトリウム溶液を

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-加える。 uv吸収ス ペクトルを用い, 280nmから300n m付近 に存在する フ ェ ノールの吸収ピークを測定する。 このと

きのピークの吸光度と波長から検量線7 4 )を用いて . フ ェ ノール濃度を算出し た。

2 . 2 結果と考察

2 . 2 . 1 樹脂濃度と硬化速度の関係

一般に化学反応の速度は反応体濃度の関数とし て表さ れ, 次数は反応速度の反応体濃度依存性であり, これは 反応機構を理解する上で非常に有益な情報となる。

フ ェ ノール樹脂の硬化過程は多官能性付加縮合であり,

同時多発的に起こ る複雑な反応をいく種類も含ん でい る。

これまでに提案されてい る分子間の結合 に関する反応の 型だけでも 7つ以上に及ぶ(Scheme 1 (P. 10))。 さらに 官能基の種類とそれぞれの反応性の違い が反応速度の表 現を複雑なものにし てい る。 例えば, フ ェ ノール核上に ある三つの反応位(フ ェ ノール性水酸基に対し てオルト 位に二つ, パラ位に一つ)の反応性は, 他の反応位の置

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換状態によ っ て変化する 8 )。 メチ ロ ール基の場合も同様

の ことがいえる。 したが っ て もしすべての分子種を異

なる反応性をも っ反応体と考えるならば, 反応の数は莫

大なものとなる。 この ことを式で表現すると全硬化反応

速度 R は次のようになる。

-fム 丹ノ“

今/同 町ノ臼 ( (

a'ι­n -lJ np ,.E'EEL・84 m

AA --& n ‘目『EB--dnD ,aEE--‘ 41・m 、,aEZEdAA

--a・

,ESE-Eh-DHU

aEE・ = -­ Z LMA ­

nn nn

こ こでR 1は個々 の反応速度,k 1は速度定数,[A],[B],

[ A' ] , [B' ] • . . . は反応体濃度 ,m1.n1.. ..m 1.n 1.・・・は そ れぞれ, [ A] . [B] .・・・[A' ] • [B' ] ,・・・に 関する反応の次数

を表す。 すなわち, 全体の硬化反応速度は個々 に発生す

るあらゆる反応の速度の総和と考えられる。

反応系として樹脂を用いる場合, 通常の方法で反応時

間に対する反応体の濃度変化を測定する こ とにより個々

の反応の速度を求め, 速度定数や反応次数を決定するの

は実際的に 不可能である。 したが っ て , フ ェ ノール樹脂

の硬化反応に 通常の速度表現を適用する こ とはできない。

しかし, 別の見方から反応次数を決定する方法がある。

一 30

-一般に反応次数はある一定の反応率ま で反応するに要

する時間を測定する ことにより決定できる。 反応率をXA

で表したとき一次および n次反応は つぎのように表せる。

( n = 1 ) dXA/dt

1 n ( 1 -X A ) n

k(l-XA)

-kt

( 2 - 3 A )

( 2 -3 B )

( 1-xA)n-1 (n-l)kCAon-1t

( 2 -4 A ) (2-4B) ( n学 1) dXA/dt kCAOn-1 (l-XA) n

こ こでCAOは初濃度, kは速度定数, nは次数である。

定の反応率に 達するに要する時間tXAは初濃度CA 0と次の

関係にある 1 5 )

XA一定, CAo変化のとき

(tXA) 1/ (tXA) 2 = {(CAO) 2/ (CAO) 1 }n-1 (すべての n )

( 2 - 5 )

一次反応の場合, ある反応率に 達するに要する時間は

初濃度に無関係で一定となり, 二次反応のときは初濃度

'EA 内ぺU

に比例 する ことになる。

フ ェ ノール樹脂系では多くの反応体が存在 するので,

それぞれの初濃度を決定 するわけにはいかない。 しかし,

同じ フ ェ ノール樹脂を希釈 する こ とによ っ て調製された

反応系であれば反応体の初濃度は樹脂濃度に比例 する。

したが っ て式( 2 - 2 ) は次のように変形できる。

R 1 = k 1 (α c)m1(ß c)ni..・(α 'c)m'1(ß 'c)n'1...

( 2 - 6 )

こ こ でCは樹脂濃度を α . 0 . --- α , . ß ' . . . . は各 々Cに対

する(A] (B]. . .. (A' ]. (B' ] . . . の比を表 す。

フ ェ ノール樹脂系に おけるゲルの生成速度は系中の分

子間結合生成反応速度の線形関数であると考えられる。

したが っ て, 全体の反応の次数を決定 するのに, ゲル部

が一定レ ベルに 達 するに要 する時間は適当なパラメータ

である。

F i g. 3にゲル部率 50%に 達 するに要 する時間の逆数と

樹脂濃度の関係を示 す。

F/Pモル比1 . 8と2 . 2のどちらの場合も ,樹脂濃度と硬化

円/M町、υ

1 .8 ーー 一 2.2

FjP

一 4

3 2

"..ー『、

,吋 しJ<lJ (./')

、-。的パド

、\

的 ()戸

×

r-ー

6 5

(moljl)

3 4

[pJ

2

resin concentrations and the Relationships between

3.

Fig.

required for the gel reciprocals of the times

reach 50χ.

fractions to

in terms of Resin concentration expressed

、EEEE4DL rE,.,‘

Legend:

tso: Time required for the gel phenolic nuclei.

1200 C.

Curing temperature:

fractions to reach 50χ.

0.35.

NaOH/P molar ratio:

33 Notes:

速度は比例関係とな っ た。 この関係は二次反応の場合に 当てはまることから, ゲル生成の全反応は樹脂濃度に関 し て二次であり, 結局, 通常の フ ェ ノール樹脂に みられ る フ ェ ノール, ホル ム アルデヒ ド, および ア ル カリの組

成比をも っメチ ロ ール化 フ ェ ノールの硬化の主要な反応 は二次反応であるとい える。

守 のことは . Scheme 1 (p. 10)の反応型のうち反応(d)の キ ノ ン メチドが関与する経路は主要なものではない とい うことを意味する。

なぜなら, この機構は, Jones49)がト リメチ ロ ール フ ェ ノールの縮合反応速度に つい て研究し, アル カリ条件 下での縮合反応速度がトリメチ ロ ール フ ェ ノール濃度に 関して一次であるとして, これを説明するために律速段 階としてキ ノ ン メチドの生成とい う段階を提唱したもの

だからである。

Scheme 1のうち反応( d )を除く他の反応はSN 2 (求核的 二分子置換)機構により進行すると考えられてい る 8 )。

し たが っ て これらの反応のうちのどれかあるい は全部 が フ ェ ノール樹脂の硬化反応の主要なものであると思わ

れる。

』斗ゐ円、u

2 . 2 . 2 実用 フ ェ ノール樹脂接着剤の硬化速度と 粘度の濃度依存性

実用されている フ ェ ノール樹脂に近い もので, ゲル化

速度に及ぼす樹脂濃度の影響を調べてみた。

結果をFig. 4に 示す。 縦軸にはゲル化時間の逆数をと

っ ているが, こ の速度は樹脂濃度と ほぼ直線関係にある。

ただし こ の直線は原点を通らないので比例関係ではない。

おそらく系中のメタノールや縮合度などが影響している

のであろう。

一方, 樹脂液粘度は樹脂濃度と指数関数的関係にあり,

ある濃度以上では濃度の増加とともに急激に増加する。

樹脂濃度をあげれば硬化を速める こ と ができ, また樹

脂の過剰浸透を抑制する こ とにもなり, 接着強度の増加

が期待できる。 し かし液状樹脂としては粘度の点で問題

があり, 限界がある。

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