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 調査について

この調査は建物の存在状況を把握しようとした調査なので︑個別の

堂・社における聞き取り︑文書︑棟札︑実測︑改造痕跡などの調査を行

うには至っていない︒詳細な調査は後日を期したい︒写真の多くは黒田

指導により疋田誠二君︵当時大学院修士課程︶が撮影したものである︒

 切妻型の堂について

  切 妻 型 堂はこの調査では十棟を数えるに過ぎず︑その内の二棟は調 査

を始めたここ三年のうちに姿を消し︑今八棟となった︒04丹生神社

社務所は︑大改造を受け︑わずかに正面の面影を残すに過ぎないし︑03 丹 生神社神輿蔵は切妻の堂であったという確証はなく︑そうだとしても 大改造を受けている︒よって︑残された堂はかつてこの地域にあった食

堂の実態を伝えるものとして歴史的に非常に重要であり︑就中オコナイ

行事を残す堂は貴重である︒何らかの保存策あるいは援助策を講じる 必要があろう︒

 各堂についての解説は本文中で行ったので︑ここでは繰り返さない︒

母 屋 型 堂・社について  

1 形態的特色

  屋 根 が入母屋造で平入であること︑基壇の上に建つ場合が多いこと︑

正面一間通りが開放または建具による開放性が高いものが多いこと︑柱

頂部に虹梁型頭貫と台輪を回すものが多いことなどを指標として記載項

目を設けた︒また﹃滋賀県の近世社寺建築﹄で軸部の成が高いというの

は︑平面の規模に比べて柱が長いことを意味する︒基壇の存在とともに

普通の三間堂よりも背が高い感じの建物が多いが︑数値的に表すには

至っていない︒

2 調査範囲

 伊香郡︑東浅井郡︑および坂田郡の一部で確認した入母屋型の堂・社 七 十 二 棟を紹介する︒西浅井町︑山東町︑伊吹町︑長浜市がこの型の堂・

境界になると考えられ︑なお同型のものが存在する可能性はあるが︑

存在密度は希薄であり︑悉皆的調査は後日を期したい︒

3 建設年代

 年代判断は虹梁絵様などを中心とする外からの観察によるもので︑確 定的なものではない︒年代の明らかなものも含めて十八世紀中期十棟︑

十八世紀後期十四棟︑十九世紀前期九棟︑十九世紀中期十棟︑十九世紀

後期以後二十九棟となる︒十七世紀が空白であることからは︑現在の入

母 屋 型 堂・社におけるオコナイそのものがおそらく十八世紀に始まっ

ることが推定される︒早いものは十八世紀中期の建立であるが︑町

別にみると十棟のうち四棟が高月町に所在し︑他の町は一ないし二棟に

とどまる︒このことから︑入母屋型は高月町で発生したという推定が可

能であろう︒また再建にせよ創建にせよ︑近代になってからも多数の堂

が 建 られていることは︑近代に入ってオコナイはより一層盛んになっ

たことを示すであろう︒

4 拝殿に転化した事例

   

3 大水別神社拝殿   余呉町池原 3725 16 7

神前神社拝殿

八 幡神社拝殿

春日神社拝殿

今村神社拝殿湖北町今 高月町宇根 高月町布施 木之本町石道

  建造物としては耐用年限に達していないから︑別の理由で仏堂または 本 殿 であったことを中止したことになる︒その理由はやはり入母屋型の

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黒田龍二

[滋賀県湖北地方のオコナイとその建築1

堂・社は仏堂の形態であることによるのではないだろうか︒しかし︑近

代に入ってからも入母屋型の堂・社は造られているから︑集落によって

考え方は異なったのであろう︒

5 境内仏堂

 神社と境内仏堂の関係は︑岡本神社︑比伎多理神社の例で述べたよう

に単純ではない︒しかし︑明らかな境内仏堂の事例が二十四例に達して

ることは注目に値する︒単立の仏堂六例︑拝殿に転化したものがもと 仏堂だったとするとそれが五例で︑総計は半数に達する︒そして仏堂が 拝 殿になった可能性とともに︑仏堂がそのまま神社本殿になった可能性 があるから︑結果的には大半が仏堂であった可能性がある︒

 6 他1日吉神社本殿︵びわ町香花寺︶

 この規模の切妻屋根の仏堂は皆無に近く︑この建物は形式的には神社 本 殿に分類されるだろう︒しかしここにはオコナイもあり︑屋根形態の 他 入 母 屋 型 の堂・社と全く同じであるから︑入母屋造型の堂・社の仲

間として捉えなければならない︒

7 他2〜4は︑形態的には入母屋型の堂・社と同じであるが︑オコ

ナイが確認できない事例である︒これらにもオコナイがあったかも知れ

ないが︑一般的な堂がこの形で建てられていても不思議ではない︒

8 小規模堂宇

 67春日神社本殿︵浅井町西主計︶と68北野神社薬師堂︵浅井町野村︶

とは︑ともに小規模で形式も良く似ていて一般的仏堂に近く︑ここでい

う入母屋型に入れない方がよいかもしれない︒しかし問題は一方が仏堂

で一方が神社本殿であるところにある︒これはもとは両方仏堂であって︑

一方はそれを本殿とし︑一方は仏堂のまま横に神社本殿を建てたのでは

ないだろうか︒

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国立歴史民俗博物館研究報告

  第98集2003年3月

所    在 規    模

(正面×側面) 年    代

34 日吉神社薬師堂 小今77 3×2 19世紀後期

35兵主神社本殿 高田203 3×2 19世紀後期

36熊野神社本殿 速見170 3×3 18世紀中期

37今村神社拝殿 今209 3×3 19世紀中期

38八幡神社本殿 五坪92 3×2 19世紀中期

39 田中神社観音堂 田中107 3×2 19世紀中期

40比伎多理神社本殿 今西586 3×3 文化元年(1804)

41 比伎多理神社観音堂 今西586

3×3

明治26年(1893)

42観音堂

津里760 3×3 18世紀後期

東浅井郡びわ町

43住吉神社本殿 稲葉286 1×1 18世紀中期

44 八幡神社本殿 富田383 3×3 18世紀後期

45 弓削神社観音堂礼堂 弓削168 3×3 18世紀後期

46 日吉神社境内仏堂 下八木451 3×2 19世紀後期

47五社神社本殿 早崎865 3×2 大正頃

48錦織神社本殿 錦織243 3×2 18世紀後期

49新居神社本殿 新居43 3×2 18世紀後期

母 50千手院観音堂 川道458 3×3 安永元年(1772)

51 日吉神社本殿 大浜289 3×2 19世紀前期

屋 52南浜神社本殿 南浜1160 3×3 18世紀中期

型 53八幡神社本殿 南浜502 3×3 19世紀中期

54 八幡神社本殿 曽根71 3×3 19世紀前期

東浅井郡虎姫町

堂 55稲荷神社本殿 唐国836 1×2 19世紀後期

56八幡神社本殿 大寺836 3×2 18世紀中期

57 日前神社薬師堂 五村328 3×2 19世紀後期

社 58宮部神社観音堂 宮部852 3×3 19世紀後期

東浅井郡浅井町

59八幡神社本殿 竜安寺276 1×2 大正頃

60 大己貴神社阿弥陀堂 黒部174 3×2 19世紀後期

61北野神社本殿 北野108 3×2 19世紀後期

62 日吉神社薬師堂 瓜生603 3×3 大正頃

63天神社本殿 平塚104 3×2 18世紀後期

64 八幡神社本殿 当目104 3×2 大正頃

65薬師堂

北ノ郷292 3×3 19世紀後期

66神明神社本殿 小野寺231 3×3 19世紀後期

67春日神社本殿 西主計330 1×2 19世紀後期

68北野神社薬師堂 野村421 1×2 19世紀中期

69観音堂

今荘 3×2 19世紀中期

坂田郡山東町

70 八幡神社薬師堂 朝日 3×3 19世紀前期

71薬師堂

天満字林 3×2 18世紀後期

72観音堂

天満字本庄 3×3 18世紀後期

他1 日吉神社本殿 びわ町香花寺463

3x3

19世紀前期

他2 川島地蔵堂 びわ町川道 3×2 安政4年(1857)

の 他3 薬師堂 虎姫町大井316 3×3 19世紀後期

他 他4 子安観音堂 長浜市下之郷

安福寺 3×2 19世紀中期

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[滋賀県湖北地方のオコナイとその建築]……黒田龍二

滋賀県湖北地方のオコナイ関連堂・社調査一覧表

所    在 規    模

(正面×側面) 年    代

伊香郡余呉町

01八幡神社阿弥陀堂 鷲見270

3×4

不明 現存せず

02 八幡神社薬師堂(源昌寺) 上丹生2247

3×7

宝永5年(1708)

切 03丹生神社御輿蔵 上丹生378

3×7

明治34年(1901)

04丹生神社社務所 下丹生1087

3×2

享保6年(1721)

型 05八幡神社阿弥陀堂 椿坂132−1 5×12 19世紀中期 伊香郡木之本町

06八幡神社薬師堂 金居原1319

3×6

18世紀後期

堂 07 八幡神社福王寺薬師堂 杉野中

3×5

17世紀前期

08 八幡神社正福寺阿弥陀堂 杉野上

5×5

19世紀中期

09 白山神社石道寺阿弥陀堂 杉野向

3×5

17世紀後期 現存せず

010医王寺地蔵堂 大見

3×6

19世紀前期

伊香郡余呉町

1八幡神社本殿 椿坂132−1

3×2

19世紀中期

2八幡神社本殿 東野57

3×2

19世紀後期

3大水別神社拝殿 池原603

3×2

19世紀前期

伊香郡木之本町

4八幡神社観音堂 音羽274

3×2

19世紀後期

5佐波加刀神社薬師堂 河合1277

3×3

19世紀後期

6八幡神社地蔵堂 小山62

3×4

19世紀後期

7神前神社拝殿 石道984

3×3

19世紀中期

8東光寺薬師堂 千田

3×3

寛延3年(1750)

伊香郡高月町

9 高野神社満願寺薬師堂 高野297

3×3

18世紀後期

10 日吉神社本殿 井ノロ122

3×3

元文3年(1738)

11観音寺観音堂 雨森

3x3

19世紀後期

母 12 白山神社阿弥陀堂 保延寺282

3×3

19世紀中期

13白山神社薬師堂 持寺126

3×2

19世紀後期

14地蔵堂

洞戸

3×2

19世紀後期

型 15 走落神社極楽寺地蔵堂 馬上

3×3

18世紀後期

16八幡神社拝殿 布施250

3×3

19世紀前期

17 赤見神社磯野寺観音堂 磯野530

3×3

18世紀中期

18光明寺観音堂 東物部

3×3

19世紀前期

19八幡神社地蔵堂 西物部425

3×2

18世紀中期

20責比多神社本殿 東柳野1192

3×3

19世紀後期

社 21大表神社境内仏堂 東柳野中48

3×3

18世紀中期

22大浴神社本殿 重則1188

3x3

19世紀前期

23 薬師堂 西野

3×3

大正15年

24 日吉神社浄光寺観音堂 落川

3×2

大正頃

25春日神社拝殿 宇根

3×3

19世紀後期

26乃伎多神社薬師堂 東阿閉1094

3×2

18世紀後期

東浅井郡湖北町

27 日吉神社薬師堂 下山田1927

3×3

18世紀中期

28 日吉神社釈迦堂 二俣田192 1×2 19世紀中期

29 岡本神社本殿 丁野192

3×3

19世紀後期

30 岡本神社観音堂 丁野192

3×3

18世紀後期

31 日吉神社本殿 河毛1271

3×3

明治4年

32青名神社本殿 青名2481

3×2

19世紀前期

33春日神社本殿 賀4634

3×3

18世紀後期

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ドキュメント内 滋賀県湖北地方のオコナイとその建築 (ページ 35-39)

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