(1)複合陸域生産システム部
平成23年度にフィールドセンターの4つの研究室およ び平成20年10月に設置された寄附講座(家畜福祉学)に 在籍した学生は,学部4年生8名,大学院博士課程前期2 年の課程12名,同後期3年の課程8名の合計28名であった。
また,実習教育(5学系の学部3年生,学部1年生,大学 院生,のべ46日)を行うと共に,複合陸域システム部利 用研究(54課題)をサポートした。文部科学省に認定され た教育関係共同利用拠点として,レディメード型,オーダー メイド型,ギャザリング型の各プログラムに他大学から34 名(72人・日)の参加があった。
生産活動については以下のとおり実施した。
農作物生産の概況としては,水稲(ひとめぼれ,ゆきむ すび(低アミロース米),蔵の華(酒造米))を5.89haに作 付した。一昨年度から栽培方法を慣行栽培主体から減農薬・
減化学肥料栽培を主体にした栽培(4.66ha)に切り替え,
比較研究用として一部に有機栽培区(0.73ha)および慣行
栽培区(0.5ha)を設けた。収量は460kg/10aで平年より低
く(平年収量479kg),おもに雑草の発生が影響していると 考えられた。次に畑作物としては,バレイショは面積38a で化学肥料を用いず堆肥と鶏糞肥料で栽培を行い,総収穫
量は9507kgであった。ゴボウおよびニンジンそれぞれ7.5a,
ナガイモ0.72a,種子用ナガイモ0.12a,ツクネイモ0.24a
を3号輪作圃場において栽培した。ニンジンの総収穫量は
586kg,ゴボウは495.8kgであった。ナガイモの粗収量は
1329.9kgで22年 度 よ り 大 幅 に 減 収 し た。 ツ ク ネ イ モ は
175.1kgと平年より大幅に減少した。今年度より試験的に
栽培をはじめた姫神芋は,総収量は194.7kgであった。果 樹としては,ウメ(2号圃場)の全収穫量は528kgで平年 並みであり,売払い収量は264kgであった。ブルーベリー の総粗収量は,総収穫量が402kgであり,そのうち約48kg を生売り販売に,残りの約300kgを冷凍保存してジャム生 産に使用した。また,今年度は平年収量の72%であった。
ルバーブは96kg収穫し,751個のジャムを生産した。
林木・林産物生産の概況としては,素材生産は針葉樹 200m3,シイタケ原木18m3であった。切り捨て間伐は7.16ha,
除伐は0.13haで実施された。きのこ生産は,生シイタケ
59.5kg,乾燥シイタケ301.1kgを生産した。10月以降は東 京電力福島第一原子力発電所事故による放射性セシウムの 汚染のためシイタケの販売を自粛した
飼料作物の生産の概況としては,デントコーンを総面積 6.80 haに 作 付 け し, 総 収 量 は215tで10a当 り の 収 量 は
3,314kgとなった。昨年度に続きツキノワグマによる食害
防止のため全圃場に電牧柵(3段張り)を設置し,圃場周 辺の草刈も徹底して行った。それに加え,見回りの強化と
爆竹を使用して食害防止対策を行った。食害を完全に食い 止めることはできなかったが,前年度以上の効果をあげる ことができた。また,粗飼料(ロールサイレージ,乾草)
の生産には38.3 haを使用し,乾物で171.7t,生草換算で2,2t の収量を確保した。採草放牧兼用地および放牧地は15.9 ha で,余剰草の収量は乾物で26.9 t,生草換算で134.7 t,反 収は乾物で360kg/10 a,生草換算で1.8t /10 aであった。
放牧地利用の概況としては,緬羊用放牧地として4.42 ha,
乳牛の放牧地として3.00 haを使用し,採草放牧兼用地と して4.90 haに乳牛を放牧した。また14号の1圃場(1.5 ha)を乳牛の放牧地として利用し,A棟前圃場(0.7 ha) を乳用育成牛および緬羊の放牧地として利用した。余剰草 は貯蔵用に回した。
家畜生産の概況としては,ホルスタイン種は夏期に牛舎 周辺の圃場で放牧を行ない,11月より舎飼いにもどした。
肉用種のうち繁殖牛(親子),育成牛および肥育素牛は,5
~10月に北山放牧地(大尺(3牧区)・六角(4牧区)),
桂清水および田代,碁盤沢牧区(2牧区))に放牧した。年 度始めの飼育頭数は黒毛和種98頭,日本短角種72頭,ホ ルスタイン種29頭,緬羊39頭であった。生産,出荷,死亡,
管理替え等で,年度末にはそれぞれ98頭,88頭,31頭,
39頭となった。乳用牛の平均産次数は2.4産で22年度よ り0.2産上昇,平均搾乳頭数は14.9頭で前年より4.6頭下 回った。総産乳量は76,229kgと前年より25,364kg減少した。
肉用牛については,まき牛による受精と一部については人 工授精を行い,受胎率は黒毛和種で79.1%,日本短角種で 64.9%であった。子牛育成率は黒毛和種で103.1%,日本 短角種は86.4%であった。平成23年度に出荷した31頭の うち,黒毛和種26頭の肥育期間,出荷体重,出荷月齢は それぞれ19.4ヵ月,694.7kg,34.5ヵ月齢であった。日本 短角種と和牛交雑種は,飼料自給率を高めることを目的と した飼養方法で飼養した。枝肉格付けは黒毛和種でA5が 1頭,A4が4頭,A3が11頭,A2が10頭となった。日本 短角種と和牛交雑種はA2が1頭,B2が4頭となった。
コンポスト生産として,各畜舎から搬出した厩肥と,ルー ズバーンから出た糞尿を使用してコンポスト化した。本年 度の作物への施用量は290tであった。
家畜生産・飼料作物生産は,放射性セシウムの汚染によ り,乳用牛の放牧中止,牛乳出荷自粛,一部の自給牧草の 利用中止,購入飼料の増大等の大きな影響を受けた。シイ タケ原木も汚染され,生産の継続は難しい状況となった。
一方,農産物(水稲,畑作物,果樹)の放射能性セシウム 濃度はいずれも暫定基準値よりもきわめて低く,検出限界 以下のものがほとんどであり,生産に大きな影響はでな かった。
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表1-1 平成23年度附属複合生態フィールド教育研究センター 複合陸域生産システム部利用研究実績
研 究 課 題 研究代表者所属・職・氏名 研究概要,家畜供試計画,用地・施設等利用計画 1.中山間地における減化
学 肥 料・ 減 農 薬 水 稲 生 産
環境農林科・齋藤 雅典・
伊藤 豊彰・田島 亮介
有機質肥料を用いた減化学肥料・減農薬の水稲栽培を行い,中山間地における収量性,品質を検討す るとともに,作業由来環境負荷を検討する。1,3,4号水田 周年
2.水稲品種比較試験 環境農林科・田島 亮介 東北・北海道の主要または特徴ある品種を中心に展示栽培を行い,学生実習に活用する。
4号水田 周年
3.水稲ポット苗による中 山間地における水稲生 産
環境農林科 水稲ポット苗による寒冷地の安定多収技術を改善する。1,4号水田 周年
4.水田におけるカメムシ 類の生態調査と斑点米 を削減する栽培体系の 確立
環境農林科・伊藤 豊彰 中山間地水田におけるカメムシ類の同定と生態調査を行い,斑点米を削減する栽培法および防除法を 検討する。1,3,4号水田 周年
5.ポリシリカ鉄浄水発生 土およびケイ酸資材を 用いた環境保全型水稲 生産
伊藤 豊彰・對馬 啓太・
宇野 亨
ポリシリカ鉄浄水発生土を用いて,水稲へのケイ酸供給による安定多収と酸化鉄供給による水田から のメタン放出抑制を両立させるための技術を開発する。1号水田 周年
6.冬 期 湛 水・ 有 機 栽 培 水 田 に お け る 水 稲 の 生 育, メ タ ン 放 出 量 お よ び水田生物
伊藤 豊彰・秋田 和則・
宇野 亨
有機栽培や冬期湛水が水稲の生育収量・メタン放出およびイトミミズ類など水田生物に与える影響を 明らかにする。4号水田 周年
7.有機栽培水田における 水稲の生育,根系発達
齋藤 雅典・田島 亮介・
増子 晶彦・齋藤 雅典
有機栽培が水稲の生育収量・根系の発生・枯死,土壌炭素サイクルに与える影響を明らかにする。1号 水田 周年
8.家畜ふんコンポストを 用いた畑作物の低農薬・
無化学肥料栽培
環境農林科・齋藤 雅典・
伊藤 豊彰・田島 亮介
家畜ふんコンポストによる畑作物(ジャガイモ等)の低農薬栽培を行い,収量性や品質を検討する。3 号畑 4~8月
9.中山間地へのツクネイ モの導入
環境農林科 中山間地の休耕田の有効活用を図るために,水田でのツクネイモ栽培法を検討する。
4号水田 周年
10.アシドロコンポストの 作 物 生 産 性, 雑 草 発 生 に対する影響
伊藤 豊彰・山本 岳彦・
宍戸 修・齋藤 雅典・
宇野 亨
アシドロコンポストの養分供給特性や畑作物の収量に与える影響,および畑作圃場における雑草抑制 機能に関する効果を明らかにする。21号畑 周年
11.品 種 多 様 性 や 土 壌 診 断 を活用したデントコー ンの安定高生産
環境基盤整備科・伊藤 豊 彰・田島 亮介・齋藤 雅 典
土壌診断に基づく施肥,有機物施用および多様な品種混合によるデントコーンの安定 高生産技術の開発を行う。 2,3号畑 5月~10月
12.土壌生物機能を活用し たリン資源の有効利用 技術の開発
齋藤 雅典・東 純子・
清水 利規・宇野 亨・
田島 亮介・伊藤 豊彰
菌根菌等の土壌微生物の機能を活用してリン資源有効利用技術の検討を行う。
21号畑 周年,3号ハウス(5月-12月)
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研 究 課 題 研究者(代表者) 概 要
13.リン酸資源保全を目的 とした水田土壌の可給 態リン酸適正値の策定
伊藤 豊彰・後藤 尭行・
宇野 亨
水田土壌の可給態リン酸の動態を解析し,わが国の多様な水田土壌の適正値を包括的に策定する。 4 号水田,3号ハウス,周年
14.水田土壌のメタン放出 能, リ ン 酸 供 給 能 に お よ ぼ すPSI浄 水 発 生 土 の効果
伊藤 豊彰・加茂 弘大・
宇野 亨
PSI浄水発生土に多量に含まれる酸化鉄が,水田土壌における温室効果ガス(メタン)発生とリン酸供 給能におよぼす効果を調査する。 4号水田,3号ハウス,周年
15.ブルーベリーの生育収 量・ 品 質 に 及 ぼ す 有 機 質肥料の効果
環境農林科・齋藤 雅典 ブルーベリーの生育収量に及ぼす有機質肥料の効果を化学肥料と比較して検討する。3号 周年
16.日中両国の超多収水稲 品種の窒素利用効率と 収量性に関する比較研 究
齋 藤 雅 典・ ニ エ リ シ ャ オ・田島 亮介・伊藤 豊 彰・宇野 亨
日中両国の多収性水稲品種の収量性と窒素利用特性を比較する。 1号水田
17.ススキ型草地における 植生遷移機構の解明
板野 志郎(畜産草地研究 所)・佐藤 衆介・小倉振 一郎・吉原 佑
わが国の気候帯に対応した草地植生の動態を解明し,永続的な草地の生産と保護を確立するための基 礎資料を得る。東北地区のススキ型草地として,農場内の北山地地区大尺の元IBP半自然草地試験区 及び隣接する放牧試験区を調査対象草地とした。草地内に,刈取区(4 ha),放牧区(6.5 ha),放任区(4 ha)を設け,常置コドラート法による植生の変化と,移動コドラート法による一次生産量の指標とし て出穂期現存量を調査する。
調査時期:5月,9月 北山地区大尺約14 ha(IBP小屋を作業場として使用)
※ 10~11月に,刈取区斜面上部2 haのススキ等を刈取る。
18.多様な植生下における 放牧牛の採餌メカニズ ムの解明
小倉振一郎・田中 繁史・
環境福祉畜産科
放牧牛の選択採食の実態とそれに関与する要因について,植物の空間分布とバイトサイズの点から解 明する。 肉牛舎およびルーズバン,黒毛和種繁殖雌牛,ホルスタイン乾乳牛
19.家畜糞尿コンポストの 草地への施用が牧草生 産性に及ぼす効果
環境基盤整備科・小倉振一 郎・田中 繁史・佐藤 衆 介
大量に生産される畜産コンポストを採草地に施用し,植生,牧草収量と品質および土壌性状を評価す る。 8号,9ノ2号
20.草地における夏枯れの 省力的植生回復法の検 討
環境基盤整備科・環境福祉 畜産科・小倉振一郎・田中 繁史・佐藤 衆介
前年に夏枯れ被害を受けた採草地および放牧地を用いて,草地管理法の違いによる播種牧草の発芽・
定着状況を調査する。 7号,11号,13ノ1号,14ノ2号および21ノ2号
21.ウシの健康監視システ ムに関する研究
佐藤 衆介・親川千紗子・
田中 繁史 RFIDタグ装着による位置情報の把握やLPS投与による病態再現から,病畜の早期発見法を開発する。
肥育牛,数頭,新牛舎
22.放 牧 が 乳 牛 の 健 康・ 福 祉性に及ぼす影響
佐藤 衆介・小倉振一郎・
田中 繁史・親川千紗子
放牧飼養が乳牛の健康と福祉レベルに及ぼす効果及びその向上を目指した飼養管理技術研究を目的と する。搾乳牛群,14ノ1号,21-1・2号,乳牛舎
23.家畜の個体行動特性(個 性)とそれに対応した 飼育環境の要件
佐藤 衆介・親川千紗子・
田中 繁史
遺伝子型と神経伝達物質との関係並びにストレスに対する生理的・行動的反応性との関係を調査し,
個性を形作る生得的基盤を明らかにする。 黒毛和種肉用牛全頭
24.放牧地における生物多 様性が草地畜産の持続 性並びに生産性に及ぼ す影響
小倉振一郎・吉原 佑・
田中 繁史・水野 速人・
佐藤 衆介
生物多様性の異なる3種の山地放牧地における植物の多様性と生産性,ならびに家畜の生産性と健康 性を評価する。 北山放牧地,肉用牛
25.草地における生物多様 性と生産性との関係
佐藤 衆介・吉原 佑・
岡田 美耶
採草地や放牧地の生物多様性と生産性との関係を調査し,それらのトレードオフ関係を明らかにする。
北山放牧地,耕地内採草地