アフェットゥオーソ イ短調 4/4 拍 子)の展開部が「アンダンテ」とな っていることである。そこでは楽章 冒頭から繰り返される有名な「クラ ラの動機(ハ ‒ ロ ‒ イ ‒ イ)」が響 くが、他の部分とは異なるテンポと 性格なので、短い緩徐楽章の挿入と も聞こえる。彼はここで、同じ変 イ長調で書かれた、クララの作品 7 第 2 楽章を当然意識していただろう。
第 2 楽章「間奏曲」(アンダンティ
ーノ・グラチオーソ ヘ長調 2/4 拍子)
の末尾には再び「クララの動機」が 聞こえ、これが第 3 楽章(アレグ ロ・ヴィヴァーチェ イ長調 3/4 拍子)
を導き、この華やかな楽章が全体を 締めくくる。 (小岩信治)
ローベルト・シューマンの代表作 のひとつで、ピアノ協奏曲の歴史に おいてフランツ・リストの 2 作品と ともに 19 世紀前半の展開を総括す る重要な作品である。
このジャンルの代表作が完成する までのシューマンの道のりは、交響 曲の場合と同様に長かった。すでに 1827 年からピアノ協奏曲を試作し ていたが、同年生まれのフレデリッ ク・フランソワ・ショパンが 1830 年 までに 2 曲完成したのに対して、シ ューマンの「研究」はさらに続く。
1833 年からはクララ・ヴィークがピ アノ協奏曲に取り組む。未来の妻の
《ピアノ協奏曲》(作品 7)は 1835 年 に初演され、1837 年に出版に至るが、
このイ短調(!)の作品にシューマ ンは助言し続けた。1836 年からは、
自ら 1834 年に創刊した『音楽新報』
誌で同時代のピアノ協奏曲の批評を 展開。そして 1841 年、のちに作品 54 の第 1 楽章になったと考えられる
《幻想曲》が成立、これが 1845 年に 3 楽章構成に拡大されて《ピアノ協
シューマン
ピアノ協奏曲 イ短調 作品 54
Robert Schumann
1810-1856作曲年代:1841 年、1845 年、改訂 1853 年 初演:1845 年 12 月 4 日、ドレスデン、フェル ディナント・ヒラー指揮、クララ・シューマン のピアノ・ソロ
楽器編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネ ット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トランペッ ト 2、ティンパニ 1、弦楽、ピアノ・ソロ
Philharmony April 2015
ー開始”(ブルックナーの交響曲の 特徴である弦のトレモロによる開 始)から、ホルン独奏の第 1 主題が 登場。「中世のリンツの教会の塔か ら朝を知らせるラッパが吹かれる」。
夜が明けるようにクレシェンドした 後、“ブルックナー・リズム”(ブル ックナーが好んで用いた 2 連符+
3 連符のリズム)の副楽想が登場す る。「目覚めた町の門が開かれ、馬 に乗った騎士たちが野外へと駆け出 す」。2 つの旋律が同時に歌われる第 2 主題は、ブルックナーが生まれ故 郷の上部オーストリアでよく聴いた
「チチチッ」というヤマガラの鳴き 声に由来している。ホルンとテュー バなどが力強くブルックナー・リズ ムを吹き下ろすと、それが第 3 主題 である。ティンパニによる最弱音の トレモロからおもむろ始まる展開部 は、まさに「ロマンチック」。堂々 たる金管のコラールで締めくくられ る。再びティンパニが最弱音で奏す るトレモロを合図に第 1 主題が登 場すると、そこからが再現部。コー ダ(結尾部)も第 1 主題を素材とし、
長いクレシェンドで楽章を感動的に 締めくくる。
第 2 楽章 は 2 つの主題によるソ ナタ形式。第 1 主題はチェロが奏で る寂寥たる楽想で、コラール風の間 ブルックナーの《交響曲第 4 番》
は様々な改訂作業を経た後、1881 年、
ハンス・リヒター指揮のウィーン・フ ィルハーモニー管弦楽団によって初 演され大成功を収めた。その練習終 了後の逸話は、ブルックナーの素朴 な人柄を伝える微笑ましいものであ る。リヒター自身の話を引用しよう。
「交響曲が終わるとブルックナー は私のところにやってきた。彼は感 激と幸せで輝かんばかりだった。す ると彼が、私の手になにかを押しつ けたのを感じた。『これを取って下 さい』と彼は言った。『そして私の 健康のためにビールを一杯飲んで下 さい』」。リヒターはこの銀貨を、純 真な巨匠の思い出のために、時計の 鎖に付けて持ち歩いたという。
ブルックナーの最初の成功作とな った《交響曲第 4 番》の特徴は、彼 自身が付けた「ロマンチック」とい う副題が雄弁に語っている。そこに は自然への憧れ、「遠い昔」への郷 愁、神秘的幻想などが込められてお り、時代を超えて、私たちをそうし た世界へと誘ってくれる。作曲者自 身が語ったという言葉を引用しつつ、
全楽章を見てみよう。
第 1 楽章は 3 つの主題に基づい た大規模なソナタ形式で構成されて いる。朝霧を思わせる “ブルックナ
ブルックナー
交響曲 第 4 番 変ホ長調「ロマンチック」
Anton Bruckner
1824-1896Program B
奏のあと、総休止を経てヴィオラが 開始する第 2 主題のラメントと対応 している。展開部では新しい楽想の 導入もあって盛り上がるが、再現部 からは再び寂寥感が支配し、金管に よる第 1 主題の咆哮もかえって孤独 な心象風景をえぐり出すのみだ。シ ューベルトの影響から出発しながら、
ブルックナーはまさに彼のみが描き 得る世界に到達している。
第3楽章はスケルツォである。「狩 の情景」である主要部では、ブルッ クナー・リズムによるホルンの響き が、そうした情景をみごとにあらわ している。中間部のトリオについて ブルックナーは「狩の昼休みにおけ る踊りの旋律」と自筆譜に記入して いる。
第 4 楽章は、ふたたび 3 つの主題 による壮大なソナタ形式。弦のトレ モロによる 42 小節の序奏が長いク レシェンドをやり遂げると、全オー ケストラの斉奏による第 1 主題の登 場である。さらに第 1 楽章の第 1 主
題が金管で奏され、いったん静まる と、第 2 主題部が始まる。これはハ 長調の主楽想と、フルートとクラリ ネットによる第 2 楽想、さらにそれ に続くヴァイオリンによるト長調の 第 3 楽想の 3 素材からなり、まこと に多彩である。その平和は突然、全 オーケストラの強奏で破られる。そ れが第 3 主題である。展開部では 第 2 主題部の第 2 楽想がコラール的 に扱われたり、その主楽想が転回形
(上下逆の音型)で用いられたりと、
巧みな作曲技法が凝らされている。
再現部は、第 1 主題によっていきな り開始されるが、第 3 主題は用いら れず、序奏のホルンの動機の転回形 によるコーダに入り、長い盛り上が りを見せたのち、第 1 楽章の第 1 主 題を高らかに奏しながら、《交響曲
「ロマンチック」》の幕が下ろされる。
ブルックナーはこの素晴らしいコー ダを「ロマン主義の白鳥の歌」と呼 んでいる。
(樋口隆一)
作曲年代:1874 年 11 月 22 日(第 1 稿)完成、
その後、1878 〜 1880 年にかけて改訂を重ね る
初演:1881 年 2 月 20 日、ウィーンにて、ハン ス・リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニ
ー管弦楽団によって
楽器編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネ ット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペッ ト 3、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパ ニ 1、弦楽
* 今回の使用楽譜は 1878/80 稿に基づくハース版だが、指揮者が他の版を参照するな どして、独自に手を加えている。
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Program C
1806th Subscription Concert / NHK Hall 17th (Fri.) Apr, 7:00pm
18th (Sat.) Apr, 3:00pm 第 1806 回 NHKホール
4/17[金]開演 7:00pm 4/18[土]開演 3:00pm
[指揮] ウラディーミル・フェドセーエフ
[conductor] Vladimir Fedoseyev
ラフマニノフ ヴォカリーズ(7ʼ)
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲 第 2 番 ハ短調 作品 18
(35ʼ)
Ⅰ モデラート
Ⅱ アダージョ・ソステヌート
Ⅲ アレグロ・スケルツァンド
Sergei Rakhmaninov (1873-1943) Vocalise
Sergei Rakhmaninov
Piano Concerto No.2 c minor op.18
Ⅰ Moderato
Ⅱ Adagio sostenuto
Ⅲ Allegro scherzando
[concertmaster]
Fuminori Shinozaki
[コンサートマスター]
篠崎史紀
Nikolai Rimsky-Korsakov (1844-1908)
“Schéhérazade”, sym. suite op.35
Ⅰ La mer et le vaisseau de Sindbad
Ⅱ Le récit du prince Kalendar
Ⅲ Le jeune prince et la jeune princesse
Ⅳ Fête à Bagdad. La mer. Le vaisseau se brise contre un rocher présentant l’aspect d’un guerrier d’airain. Conclusion
リムスキー・コルサコフ
交響組曲「シェエラザード」作品 35
(46ʼ)
Ⅰ 海とシンドバッドの船
Ⅱ カレンダー王子の物語
Ⅲ 若い王子と王女
Ⅳ バグダッドの祭り 海 船は青銅の騎士 のある岩で難破 終曲
[piano]
Anna Vinnitskaya
[ピアノ]
アンナ・ヴィニツカヤ
休憩 Intermission
Program C
Soloist
Anna Vinnitskaya
ピアノ アンナ・ヴィニツカヤ
たし、2009 年の来日公演はNHK で放送された。これまでにロイヤ ル・フィルハーモニー管弦楽団、北 ドイツ放送交響楽団、スイス・ロマ ンド管弦楽団等の楽団、シャルル・
デュトワ、ウラディーミル・フェド セーエフ、ピエタリ・インキネンら 著名指揮者と共演。
母校のハンブルク音楽大学の教授 に 26 歳という若さで就任した。ラ ヴェルのピアノ作品集など 3 枚のア ルバムが高く評価されている。
N響とは今回が初共演。
(飯田有抄/音楽ライター)
1983 年、ピアニストの両親のも とロシアのノヴォロシースクに生ま れる。母親の手ほどきにより 6 歳 からピアノを始め、セルゲイ・ラフ マニノフ音楽院高等部、ハンブルク 音楽大学にて学んだ。国内外のコン クールで優勝経験を重ね、2007 年 エリーザベト王妃国際音楽コンクー ルでは圧倒的な評価を得て優勝。翌 2008 年、ラン・ランなどが過去に受 賞したバーンスタイン賞を受賞した。
ドイツを拠点に欧米、南米、アジ ア各国で公演を行う。2007 年には トッパンホールで東京デビューを果
©Gela Megrelidze
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の成功を受けてラフマニノフは 1919 年にさらにオーケストラ単独版へと 編曲した。現在では原曲のソプラノ 独唱やオーケストラ以外にも様々な 独奏楽器によって広く演奏される。
なお、歌詞を伴わないヴォカリー ズの作曲は、詩から意味を解放しよ うとしていた当時の芸術潮流である ロシア象徴主義の志向に呼応してい たと指摘されることもある。ラフマ ニノフ以外にストラヴィンスキーや グリエール、メトネルらも優れたヴ ォカリーズ作品を 20 世紀前半に残 しており、ロシア声楽史の観点から も興味深い。
曲は連続する和音による伴奏で始 まり、憂いを含む旋律が流れ始める。
これはラフマニノフが好んだグレゴ リオ聖歌《怒りの日》の引用と言う者 もいる。この伴奏と旋律が動く中で、
時折対旋律が絡んでいく様は、バロ ックの声楽曲を思い起こさせる。静 かな哀調が基調となるが、抑制され つつも深い激情を秘めた世界を通過 し、曲は冒頭と同じ連続する和音と 共に静かに消えていく。 (高橋健一郎)
ラフマニノフの代表曲のひとつ
《ヴォカリーズ》は、もともとは《ソ プラノとピアノのための歌曲集》
(作品 34)の最終曲である。ヴォカ リーズとは歌詞を伴わずに母音だけ で歌う歌唱法を意味する。
作曲時期については文献によって 混乱が見られるが、最終的に 1915 年 9 月に原曲の決定稿ができたとさ れ、曲はアントニーナ・ネジダーノ ヴァに献呈された。ラフマニノフは この名ソプラノ歌手に絶大な信頼を 寄せていた。「この作品には歌詞が なくて残念」と言うネジダーノヴァ に対し、ラフマニノフは「あなたは 他の人が言葉で表現するよりもずっ とうまく、豊かに、声と歌ですべて を表現できるではないですか。それ なのになぜ歌詞が必要なのです」と 答えたという。作曲の途中でラフマ ニノフは何度も彼女に相談し、2 人 で演奏しながら細部を詰めたと言わ れ、曲にはかなりネジダーノヴァの 助言が反映されている。
1916 年 2 月の初演はソプラノ+オ ーケストラ伴奏版で行われたが、そ
ラフマニノフ
ヴォカリーズ
Sergei Rakhmaninov
1873-1943作曲年代:原曲のソプラノとピアノ伴奏版は 1915 年 10 月 4 日(旧ロシア暦 9 月 21 日)(決 定稿)、オーケストラ版は 1919 年
初演:ソプラノ+オーケストラ版は 1916 年 2 月 7 日(旧ロシア暦 1 月 25 日)、ネジダーノ
ヴァ独唱、クーセヴィツキー指揮、モスクワ にて。オーケストラ版は不明
楽器編成:フルート 2、オーボエ 2、イングリ ッシュ・ホルン 1、クラリネット 2、ファゴッ ト 2、ホルン 2、弦楽