資料 V 最高検察庁『取調べの録音・録画の試行の検証について』
1 検証の対象
検証 の対象 は
,平
成18年
8月 か ら平成19年 12月
まで (以下 「検証対象期 間Jとい う。
)に ,全
国で実施 され た合計170件
の取調べ の録音・録画であ り,詳
細 は, 以下の とお りで ある。 なお,一
人の被告人 について,録
音・ 録画 を複数回実施 した事 件 が4件
あ り,実
施 回数 は174回
に上 るが,被
告人の数を基準 と して件数 を数 えてい る 。
(1)罪
種別件数罪種別では
,殺
人等(63件 ),強
盗殺人・致傷等(45件 ),強
姦致傷等 (15件 ),現
住建造物等放火等(14件 ),傷
害致死(11件 ),強
制わいせつ致傷 (9件
),強
盗強姦(8件 ),そ
の他(5件)と
なつてお り (表1,注 1),受
理件数 が比較的多い重大事件 を中心に試行がな されていることが分か る。
【表1】 罪種別件数
強制わいせつ 攻傷19
傷害致死:1
【 表
2】地検月
1件数
札瀬調妨:7
【注1】「殺人等」には,殺人未遂及び殺 人・ 現住建造物等放火 を含む。
「強盗殺人・ 致傷等」には,強盗 殺 人未 遂及 び強盗傷人 を含 む。
「強姦致傷等」には,集団強姦致 傷 を含む。
「現住建造物等放火等」には,同
未遂 を含む。
0 助
︱ 引
︱ 刷
【 表
31月別件数
10
5 0
‖93 綺91 1115 ‖91 ‖91 闘98 H90 ‖910H■1: ‖912 肺
② 地模馴件数
地検別 では
,東
京地検(67件 ),名
古屋地検(19件 ),大
阪地検(15件
),高松地検
(10件 ),札
幌地検(7件 ),横
浜地検 1(6件),そ
の他合計(46件
)となってい る (表 2)。 実施 した地検 の数 は
,機
材 を設置 していない庁 も合 わせ て30庁
である。481月鯛伸数
月別 で は
,東
京 地検以外 に も機材 を設置 して試 行 の範 囲 を全 国に拡大 した平成19年
3月 か ら少 しずつ増加 し,同
年10月
か らは,試
行件数 が急増 してい る (表 3)。2
試行 した取ロベの録音・ 録画の方法 と試行轄果の概要(1)試
行 した取調べの録音 0録画の方法ア
試行対象事件
試行対象事件 については
,裁
判員裁判 にお け る任 意性 の効果 的・ 効 率的立証 手段 として活用す る とい う録 音・録画の 目的か ら,勾
留 中の被疑者 が1自 白 して い る裁判員裁判対象事件―の うち
,担
当検 察官 にお いて,録
音・ 録画が相 当 と認 めた ものにつ き,最
高検察庁 と協議 の上で決定 した。試行 の対象 となつた事件 は
,事
実の全部又 は一部 を当初 否認 してい た事件 で 犯人性 が問題 とな り得 る事件,殺
意や共謀等の 主観 的要件 の有無,過
剰 防衛 の 成 否や被 害者 の承諾 の有無 な どが1問題 とな り得 る事件等,一
般 に任意性 が争 わ れやす い事件 が比較 的多 い。 また,少
年事件,責
任 能力 が問題 になる可能性 が ある事件,死
刑 や無期懲役刑 が相 当の重大殺傷事件 な どの任意性 が争 われやす い事件について も試行が行われた。なお
,組
織犯罪等,録
音・ 録画を行 うこ とに よ り取調 べ の真相解 明機能 が害 され た り,関
係 者 の保護や協力確 保 に支 障 を生 じるおそれ等 が ある事件 につい ては,試
行 され ていない。イ
録音・録画の手続
取調べ の録音・録画 は
,自
由の任意性 立証 のための証拠収集 の一環 として行 うものであるこ とか ら,被
疑者 の 自白後,担
当検 察官 にお いて,当
該事件 の特 徴や被疑者 の供 述状況 に応 じて録音・ 録 画が相 当 と判 断 した時期 と場 面におい て録音・ 録画 している。録音・ 録画 に当たつては
,被
疑者 にあ らか じめ録音・録 画 を実施す ることを 告知す ることと し,さ
らに,録
音・ 録画 の開始 時 と終 了時 にそれぞれ録音・ 録 画 を開始す る旨及び終了す る 旨を被疑者 に告│ヂる場面 も,録音・ 録 画 してい る。なお
,被
疑者 が録音・録画 を拒絶 した場合 は,実
施 しない こ ととして い る とこ ろ,検
証対象期 間中,取
調べ の録 音・ 録画 を被 疑者が拒絶 した こ とか ら実施 し なかつた事例 が1件報告 され ている。取調 べの録音・ 録 画 を開始 した場合 は
,任
意性 に関 して争 い とな り得 る事項 を中心 に1被疑者 か ら自発1的な供述を 得る 姿勢で取調べ に臨み,被
疑者 に供述 を 尽 くさせ るこ と―に意 を用 い,検
察官 の都合 で一方的に録 音・ 録 画を終 了 しないこ と
,ま
た,最
後 に,被
1疑者 に言 い足 りない点 がな いか を確認す るな ど して, 自由に供述す る機会 を与えた上で,1録音・ 録画を終了す ることとしてい る。ウ
録音・ 録画 し.た
DVDの
作成 と管理録音・ 録画│は
,取
調室 にカ メラ2‐台を設置 し,
うち1台に よ り被疑者 を,他
の1台に よ り取調室全体 をそれぞれ撮影 す ると とも―に
,マ
イークで音声 を収録す②
ることによつて実施 している。 これ ら
2台
のカメラによる映像は,一
つの映像 に合体され,そ
の左下部分に,録
音・録画時刻が1秒単位で表示 される。 このよ うに処理 された音声及び映像がそのままDVDに
記録 される。また,こ
れ らの映像処理及び
DVDへ
の記録は,録
音・録画開始の操作後は,人
の手によるの ではなく,機
械的・ 自動的に行われ るように装置が設計されている。そして,録音 e録画の実施 と同時に作成‐される
DVDに
ついては,録
音・録画を実施 し た年月 日等所定の事項を記載 した「録音・録画状況等報告書」と一体 として管 理 し,証
拠開示 との関係では,刑
事訴訟法第316条
の15第
1項第 7号 の 「供 述録取書等」に該当するものとして対応 している。DVDに
録音・録画さ―れる音声及び映像については,上
記のとお り改変が困難 となる措置を講 じて記録 している上,DVDに
ついては,い
かなる理:由があって も後 日そこに記録 された音声及び映像を編集することは一切せずに,録
音・録画 の実施時に作成されたままの状態で厳重に保管 している。試行惜果の概要
ア
録音・録画の実施時期
勾留開始後の何 日目に録音・録画を実施 しているかを見ると
,勾
留16日
か ら20日
目までの間に実施 されたものが149回 (86%)と
圧倒的に多 く,以下
, 11日
目から15日
目(19回 ),6日
目から10日
目(5回
), 1日 目 から5日 目(1回 )と
なってお り (表4),証
拠収集が進んだ捜査の終盤に実施している例が多いが
,事
件によっては柔軟に対応 している事案 もあることが う かがえる。【表4】 実施時期
島 駆
硼 獅
匈留13日から
5日目11
句罰1日目から 15日目111
勾溜16日目から 20日目 碕
=
1回の録音・ 録画時間
1回の録音・ 録 画の時間を見 る と,
8回 (51%)と
最 も多 く,以
下, 2
【表5】 1回の実施時間
20分以上 40錦購511
20分
以 上40分
未満 であ った ものが80分
未満が71回 (41%),40分
以上1時
間未満 が11回 , 1時
間以上が4回
となってい る (表 5)。 また,試
行件数 の増カロとともに1回当た りの実施 時間 は短 くなってい く傾 向にあ り,検
証対象 期 間の最後 のころは, 20分
か ら30分
程度 であらた ものが多かった。ウ
録音・ 録画の対象 とされ た場面
個々の試行 によ り様 々であるが
,概
ね二つの類型 に分かれた。その1は
,既
に作成 し,証
拠調べ請求 を予定 してい る自白調書を被疑者 に示す な どして特定 した上で,自
由の動機・経過,取
調べの状況,当
該 自白調書の作成 過程,同
調書 に録取 され ている 自白内容等について質問 し,被
疑者が応 答す る場 面 を録音・ 録画す る もの (レビュー方式)で
ある。.
その
2は ,被
疑者 の供述 を録取 した検察官調書についてj被
疑者が読み聞かせを受 け
,閲
読す る場面及び これ らに│よ り内容 を確認 して署名す る場面を録音・ 録 画 し,引
き続き,同
調書 を中心 として,自
由の動機・ 経過,取
調べの状況,自
白 内容等 について質問 し,被
疑者 が応答す る場面 を録音・ 録画す るもの (読み聞か せ・ レビュー組合せ方式)で
ある。いずれ の方式 で も
,当
初否認 していたのであれ ばそ の理 由や,自
白の動機・経過
,自
由した過程 で任意性 に疑い を生 じさせ るよ うな取調べがな され なかっ たか否 か に関す る発 間を行 つてい る上,最
後 に,事
件全 体 について,あ
るいは取調べや調書作成 について
,自
由に発 言す る機会 を与 えるな ど,任
意性等 をめ ぐる事情 が被疑者の供述 によって網羅的に明 らかにされ るように工夫 している。3 DVDの
証拠編示状況検証 対象期 間 中
,DVDの
証拠 開示 がな された件数 は合計22件
(その うち1件
は
,検
証対象期 間中に開示請求 があ り,同
期 間経過後 に開示 されている。)で ,そ
のうち
2件
は,検
察官 が当該DVDを
証拠調 べ請求 した ことか らこれ に伴い刑事訴訟 法第316条
の14に
基 づ き開示 した もの,残
‐り2o件
は,弁
護人か らの同法第3
16条
の15に
基づ く証拠開示請求 によるものである。他 の
152件
は,検
察官 か ら証拠調べ請求 の予定が な く,弁
護人 か らの証拠 開示 の請求も ない ことか ら,開
示が な され ていない も│のであ る。 これ らの事件 で弁護人 の証拠 開示請求がな され ていないのは,被
告人 が 自白の任 意性等を争 わない こ とに よるもの と思 われる。DVDの
証拠 開示 の大部分 は,閲
覧,す
なわ ち検察庁 にお ける再生視聴 の方 法 に よるものであ る。 なお,検
証対象期間申,弁
護1人に対 し,DVDの
閲覧のみ―な らず,その謄 写 を認 めるべ きかが争 点 となつた類型証拠 開示 に関す る裁定請求が,1件あっ た。 これに対 し
,東
京地方裁判所は,「①謄写枚数は 1枚 とする。②謄写に係るDV
Dの
データを複写 して更にDVDを
作成 し,又
は,パ
ソーコiンのハー ドディスクに複 写 して記録す るな―どの一切の複写をしてはならな,い。③謄写に係るDVDを
再生す る.に際 しては,イ
ンターネ ット等によ り外部に接続 したパ ソコンを使用 してはな らない。④本被告事件についての弁護活動が終了した際には
,謄
写に係 るDVDの
デ ータを消去 しなければならない。」旨の条件を付 してDVDの
謄写を認める決定 (平成
19年 10月 19日
付け)を
した。4
証拠として取 リロベられたDVDと
書H所
の判断検証対象期間中
,公
判で捜査段階の供述の任意性等が争われた検証対象事件は,被告人の数にして
170件
中3件 (1.76%)で
あ り,任
意性等を立証するため の証拠 としてDVpが
公判廷で取 り調べ られた回数は4回
である(3件
の録音・録 画に係 る被告人の うちの一人については,自
らの公判において,自
らの自白の任意 性 を争い,DvDが
証拠 として取 り調べられたほか,共
犯者の公判において証人 とな り
,捜
査段階の供述 と異なる供述をしたことから,当
該証言よりも捜査段階の供 述が特に信用できる (以下‐「特信性」という。)と
して,捜
査段階で作成.された検‐察 官調書を刑事訴訟法第321条
第1項
第2号
所定の書面として証拠 とすることがで きるかどうかが争われ,そ
の特信性立証のためにDVD‐
が取 り調べ られた。)。DvDを
取 り調べた各裁判所の判断は,別
添 1の とお りである。第
3
餞行に目与 した検察官のアンケー ト結果1
試行に目与した検察官とアンケー トの方法 {1' 試行に目与 した検察官試行に関与 した検察官は
, 132人
であった。これを任官後の経験年数別等で見ると
,経
験年数10年
以上のシエア検事 (35人 ),同 10年
未満のシエア検事(38人 ):A庁
検事(34人 ),新
任明け検事(17人 );新
任検事(6人 )及
び副検事(2人 )で ,シ
エア検事の割合が約55
%に
上っている (表6,注
2)。 経験年数の長い検察官の割合が多くなっているの は,試
行の対象 とした殺人,強
盗殺人等の重大事件については,経
験年数の長い 検察官に事件配点がなされる傾向があるためと思われる。また,試
行に関与 した 検察官が,そ
れぞれ録音・録画を何回経験 したかを見ると1回 が106人 , 2回
が16人 , 3回
が5人 ,4回
以上が5人
であつた (表 7)。【表6】 検事等経験年数(人) 【表7】 実施経験日致(人)