【MEMO】
第2節 株主総会
1.株主総会の権限
〔短答:A 論文:A〕(1) 株主総会の意義
① 取締役会設置会社の場合
株主総会とは,株主によって構成される会議体であり,会社の基本的重要事項について意思決定をする株 式会社の必要的機関をいう(295 条2項)。
② 取締役会非設置会社の場合
株主総会とは,株主によって構成される会議体であり,会社に関する一切の事項について意思決定をする 株式会社の必要的機関をいう(295 条1項)。
(2) 株主総会の権限
① 取締役会設置会社の株主総会
取締役会設置会社においては,取締役会による会社経営の適切かつ適時性のある意思決定を確保するため,
株主総会は会社法が規定する事項および定款が定める事項,すなわち,基本的重要事項に限り決議すること ができる(295 条2項)。
(ⅰ) 会社法が規定する決議事項
決議事項 会社の組織,事業の
基礎に根本的変動を 生じさせる事項
資本金の額の減少(447 条1項),定款の変更(466 条),事業譲渡等(467 条1項1~4号), 解散(471 条3号),株式会社の継続(473 条),合併・会社分割・株式交換・株式移転(783 条 1項,795 条1項,804 条1項)など
機関の選任および解任 に関する事項
株主総会に提出または提供された資料を調査する者の選任(316 条1項),株式会社の業務お よび財産の状況を調査する者の選任(316 条2項),取締役・会計参与・監査役・会計監査人・
清算人の選任および解任(329 条1項,339 条1項,478 条1項3号,479 条1項)など
計算に関する事項 計算書類の承認(438 条2項),財産目録の承認(492 条3項),貸借対照表の承認(492 条3 項,497 条2項),決算報告の承認(507 条3項)など
株主の重要な利益 に関する事項
自己株式の取得(156 条1項,160 条1項,171 条1項,175 条1項),株式の併合(180 条2 項),資本金の額の増減(447 条1項,450 条2項),準備金の額の増減(448 条1項,451 条2 項)剰余金の処分(452 条),剰余金の配当(454 条1項)など
取締役等による専横の 危険性がある事項
取締役・会計参与・監査役の報酬等の決定(361 条1項,379 条1項,387 条1項),役員等 の責任の一部免除(425 条1項),事後設立(467 条1項5号)など
(ⅱ) 定款が定める事項
取締役会設置会社においても,株主総会の権限を,定款の定めにより会社法が規定する事項より拡大す ることが認められている(295 条2項)。この点,2.取締役会から株主総会への権限委譲 において詳述 する。
② 取締役会非設置会社の株主総会
取締役会非設置会社の株主総会は,会社法に規定する事項および株式会社の組織,運営,管理その他株式 会社に関する一切の事項について決議することができる(295 条1項)。
すなわち,取締役会非設置会社においては,株主総会を万能の意思決定機関としているのである。
【取締役会設置会社における株主総会】
意 義 株主によって構成される会議体であり,会社の基本的重要事項について意思決定をす る株式会社の必要的機関
権 限 会社法が規定する事項および定款が定める事項
【取締役会非設置会社における株主総会】
意 義 株主によって構成される会議体であり,会社に関する一切の事項について意思決定を する株式会社の必要的機関
権 限 会社法に規定する事項および株式会社の組織,運営,管理その他株式会社に関する一 切の事項
2.取締役会から株主総会への権限委譲
〔短答:C 論文:B〕(1) 一切の制約なしに株主総会の権限とすることができるか
① 問題の所在・問題提起
取締役会設置会社において,取締役会の権限とされている事項であったとしても,定款の定めにより株主 総会の権限とすることが認められている(295 条2項)。そこで,取締役会の権限とされている事項を,一切 の制約なしに株主総会の権限とすることができるか問題となる。
② 規範定立 (ⅰ) 結論
株式会社の本質または強行法規に反しない限り,取締役会の権限とされている事項を定款の定めにより 株主総会の権限とすることができる。
(ⅱ) 理由
取締役会設置会社において株主総会の権限が縮小されている趣旨は,通常,株主が会社経営について自 ら参加する意思も能力もないと想定されるため,会社経営を経営の専門家である取締役に委ねることで,
適切かつ適時性のある意思決定を可能とすることが株主の合理的意思に合致すると考えたためである。し たがって,株式会社の実質的所有者である株主が,会社経営の専門性および効率性を犠牲にしても自ら意 思決定しようと考えるならば,株主総会の権限としてもよいと解される。
【一切の制約なしに株主総会の権限とすることができるか】
結 論 株式会社の本質または強行法規に反しない限りできる
理 由 株式会社の実質的所有者である株主が,会社経営の専門性および効率性を犠牲にして も自ら意思決定しようと考えるならば,株主総会の権限としてもよいため
(2) 個別的検討
① 業務執行の決定権限を株主総会の権限とすることができるか (ⅰ) 問題の所在・問題提起
取締役会設置会社においては業務執行の決定権限は取締役会が有するが(362 条2項1号,399 条の 13 第1項1号),定款により業務執行の決定権限を株主総会の権限とすることができるか問題となる。
(ⅱ) 規範定立 1 結論
株式会社の実情に応じて,定款により業務執行の決定権限を個別的(一定の金額以上の取引や支店の 設置等)に株主総会の権限とすることはできるが,業務執行の決定権限の全部を株主総会の権限とする ことは認められない。
2 理由
業務執行の決定権限を個別的に株主総会の権限とするのは原則通り認められる。しかし,業務執行の 決定権限の全部を株主総会の権限とすることは,取締役会の存在意義を否定することになり,株式会社 の本質に反する。
【業務執行の決定権限の委譲】
結 論 個別的にはできるが,全部を株主総会の権限とすることは認められない
理 由 全部を株主総会の権限とすることは,取締役会の存在意義を否定することになり,株 式会社の本質に反するため
② 代表取締役の選定権限を株主総会の権限とすることができるか (ⅰ) 問題の所在・問題提起
取締役会設置会社における代表取締役の選定権限は取締役会が有するが(362 条2項3号,399 条の 13 第1項3号),定款により代表取締役の選定権限を株主総会の権限とすることができるか問題となる。
(ⅱ) 規範定立 1 結論
代表取締役の選定権限を株主総会の権限とすることができる。
2 理由
(a) 代表取締役は株式会社の代表機関であるから,株式会社の実質的所有者である株主によって構成 される株主総会の権限としても理論上問題はない。
(b) 選定権限を有する機関が解職権限も有するのが原則なので,代表取締役の選定権限を株主総会の 権限とすると,取締役会では代表取締役を解職することができないことになり,取締役会の代表取 締役に対する監督権限(362 条2項2号,399 条の 13 第1項2号)の実効性が失われるという批判 がある。
しかし,選定および解職権限が委譲されたとしても,代表取締役は取締役会の決定に従わなけれ ばならない。また,取締役会は代表取締役の解職を議題とする株主総会を招集(296 条3項,298 条4項)することもできるため,取締役会に解職権限がなくても問題はない。
【代表取締役の選定権限を株主総会の権限とすることができるか】
結 論 できる
理 由
(a) 株式会社の代表機関を実質的所有者である株主によって構成される株主総会の権 限としても理論上問題はない
(b) 取締役会に解職権限がないと代表取締役に対する監督権限の実行性が失われると いう批判があるが,代表取締役は取締役会の決定に従わなければならず,また,取 締役会は代表取締役の解職を議題とする株主総会を招集することもできるため,問 題はない