• 検索結果がありません。

東日本大震災における住宅復興の現状とその課題

ドキュメント内 平成 (ページ 71-104)

―岩手県を中心に―

5-1 岩手県における住宅復興の状況とその対策 5-2 岩手県山田町における住宅復興とまちづくり

5-3 その他東北自治体における住宅復興計画の動向・枠組み

5-4 小括・まとめ

64

第5章 東日本大震災における住宅復興の現状と課題-岩手県を中心に

本章では、東日本大震災からの住宅復興の事例として、主に岩手県や同県内の山田町を取り上 げ、文献調査や現地でのヒアリング調査などから岩手県や山田町における復興計画や住宅復興の 方針、住宅の再建の進捗状況等について調査・検討を行う。そして、三重県における南海トラフ 巨大地震からの住宅復興を考えるうえでの参考となる取り組みなどを明らかにする。

5-1岩手県における住宅復興の状況とその対策 5-1-1 岩手県の被害状況と特徴

東日本大震災は、従来の想定を遙かに超える津波により東北地方に甚大な被害をもたらしただ けでなく、2 分以上続いた震度 5以上の強い揺れ、長周期地震動、液状化等により、東日本の広 範囲にわたってさまざまな影響を及ぼした。

東日本大震災による津波被害と住宅の復興はとくに被害の大きかった岩手・宮城・福島の3県 でも状況は異なる。岩手県の特徴としては、被災地がリアス式海岸のため被災した土地を除くと 宅地が少ないこと、ほとんどの人口が内陸に集中しているため被災した沿岸には比較的小さな市 町村しかないなどが考えられる72。実際、三重県南部の地勢は岩手県の三陸地域に酷似しており、

少子高齢化などの社会的条件もよく似ていることから、本研究では、岩手県を中心に、東日本大 震災からの住宅復興について検討していくこととする。

岩手県の地図73

72 勝又賢人「岩手県の住宅復興に向けた取組みと今後展望」、季報住宅金融、特集『東日本大震災から3年...復 旧・復興の現状と今後に向けて』、201312月、p.30。

73 岩手県 地図都道府県別 観光楽地図-MapFanWeb(マップ)

http://www.mapfan.com/kankou/03/jmap.htmlより引用

65 5-1-2 岩手県復興計画と住宅復興の基本方針

(1)岩手県における住宅復興の想定戸数と現状

東日本大震災による岩手県の死者・行方不明者は、災害関連死も合わせれば、2013年11月30 日現在、6,243人に上っている。また、家屋の全壊・半壊は25,023戸となっている。岩手県内で は、応急仮設住宅が 13,984 戸建設され、11,942 世帯の被災者が生活している。また、民間賃貸 住宅等のみなし仮設住宅にも3,053世帯が生活している(上記の数いずれも2013年11月30日 現在)。

このような被害状況の中、岩手県の復興に必要とされる住宅戸数については、全体で22,000~

24,000戸程度と考え、うち持家の新規取得は10,000~11,000戸、災害公営住宅は約6,100戸な

どと想定している。岩手県では、住宅の復興に当たり、被災者ができる限り持家等で住宅を自力 確保できるよう支援するとともに、自力確保が困難な方には、必要な災害公営住宅を整備してい く方針を示している。

また、被災者生活再建支援金の加算支援金の申請状況により、現時点の住宅復興の状況が概ね 把握されている。現在、住宅を新規取得した世帯が3,836件、住宅を補修した世帯は2,922件、

賃貸住宅に移転した世帯が622件となっている74(いずれも2013年11月30日現在)。 なお、岩手県における住宅の自力再建に向けた支援は以下のようなものがある75。 1)自力再建の直接的な支援

A)住民の新規取得に対する支援 B)住宅の補修・改修に対する支援 C)宅地の復旧に対する支援 D)二重ローンに対する支援 E)賃貸住宅の建設に対する支援

2)自力再建への間接的な支援 A)住宅再建相談会

B)住まいの展示相談会

C)岩手県震災復興の住宅モデルプラン

D)地域型復興住宅推進協議会(「地域型復興住宅」とは、地域にふさわしく、良質な住宅を、

被災者が取得可能な価格で提供することをコンセプトとしたもの)

3)住宅再建のコース

今回の東日本大震災における岩手県をはじめとする被災地では、津波による土壌の破壊(沈下)

や将来の津波危険性、放射能汚染など、土地そのものに関する阻害要因によって、必ずしも自力 再建できるわけではない。個別具体的にどのような住宅再建のコースが考えられるであろうか。

住宅再建のコースには、①元の土地の利用可能性、②高台移転などのまちづくり事業への参加・

不参加、③住宅再建資金の有無という3つの要因により、ⅰ)現地再建、ⅱ)移転事業で再建、

74 前掲・注(72)、p.31。

75 同上、pp.31-34。

66

ⅲ)独自移転で再建、ⅳ)災害公営住宅入居という4つに分かれる。

さらに、従前宅地として利用可能かは、津波による被害の程度、回復の可能性、将来の津波被 害危険性、それを軽減する対策(防波堤、防潮堤、土地のかさ上げ等)などにより変わってくる。

また、従前の土地が津波被害の危険性の高い場合、防災集団移転事業や区画整理事業が適用され、

移転する可能性が出てくるが、その事業に参加すれば、移転先で住宅再建することとなる。しか し、移転事業では、市町村の負担は国の資金でカバーされるものの、個人の住宅再建費は被災者 自身で工面しなければならないため、そのめどが立たなければ移転できない。これは賃貸住宅へ の入居も含まれる。

住宅再建資金の有無については、国の被災者生活再建資金や自治体独自の支援金、義捐金など の程度によっても変わる。移転事業などにおける住宅宅地の買い取り価格によっても変化する。

このような住宅再建コースは、複雑かつそれぞれに影響を及ぼす要素が多くあるために、自分 の場合どういう資金が得られるかが明確にならなければ、進むべきコースを定めることができな

い(表 5-1-1)。したがって、事前にどの地域がどの程度まで津波で浸水するのか、その周辺に住

宅再建できる土地があるのかなどについてできる限り把握するとともに、岩手県や県内の市町村 のように、独自に支援金を上乗せするなど、自力再建をサポートできるよう想定できるコースを 用意しておきたい76

表5-1-1:住宅再建コース

住宅再建支援金

有り 無し

従前宅地利用可能性

利 用 可 能 現地再建可能

災害公営住宅 利用不可 に入居

移転事業参加 移転事業で再建

移転事業不参加 独自移転で再建

76 岸本達也「不安な住宅再建」、塩崎賢明『東日本大震災復興の正義と倫理』、クリエイツかもがわ、201212 月、pp.114-115。

67 (2)岩手県東日本大震災津波復興計画(復興基本計画)

①策定の背景

岩手県は、科学的、技術的な知見に立脚し、被災市町村等の復興を長期的に支援する考え方に 基づき、沿岸地域をはじめとした岩手県全体が、震災を乗り越えて力強く復興するための地域の 未来の設計図として、被災住民・市町村の意見等を十分に踏まえつつ、「岩手県東日本大震災津波 復興委員会」をはじめとする県内外の専門家、学識経験者からの提言等に基づき、「岩手県東日本 大震災津波復興計画」を2011年8月に策定した。

②計画の役割

本計画は、復興に向けての目指す姿や原則、まちづくりのグランドデザイン、具体的取組の内 容、復興への歩み等を明らかにしている。具体的には、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふ るさと岩手・三陸の創造」を目指す姿とし、復興に向けた3つの原則として「安全の確保」、「暮 らしの再建」、「なりわいの再生」を掲げている。そして、大地震や津波からの復興に当たり、本 計画は以下の役割を担う。

1) 被災者に寄り添い、一人一人の安全を確保し、その暮らしの再建となりわいの再生を支援す

る計画

2) 被災市町村が選定する復興計画等の指針となり、その自主的な復興を支援する計画 3)復興に当たり、地域社会を構成する主体が一体となり取り組むための指針となる計画

4)岩手県としての復興の方向性と取組を明らかにし、国へ必要な復興事業の推進や支援と提案・

要望する計画

5)国民や国際社会の積極的な支援と参画を通じた「開かれた復興」を促す計画

以上の考え方に基づき、復興の目指す姿である「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふる さと岩手・三陸の創造」に向けて、復興に向けた取組を推進することを目指している。

③計画の構成

本計画には、復興に向けての「目指す姿」や原則、具体的な取組等を明らかにする復興基本計 画とそれをもとに具体的な施策や事業、工程表を示した復興実施計画によって構成されている。

復興に向けては、被害の広域性、複合性、多様性、規模の大きさから、緊急的、短期的、中長期 的な取組を重層的に進めていくことが必要であることから、取組の当初から一体的な戦略に基づ き復興を目指すこととしている。

④計画期間

復興基本計画によれば、本県における復興計画の期間は、迅速な復興の推進を図るとともに、

2019年度に策定が予定される県の次期総合計画を見据え、2011年度から2018年度までの8年間 を全体計画期とし、以下の図5-1-1でも示した。

また、復興実施計画は、第 1期(基盤復興期間:2011年度から2013年度の3年間)を終え、

第2期(本格復興期間:2014年度から2016年度の3年間)、第3期(更なる展開への凍結期間:

2017年度から2018年度までの2年間)に区分し、取組を推進することとしている。

ドキュメント内 平成 (ページ 71-104)

関連したドキュメント