ユニット名 歴史資料保全のための地域連携研究ユニット
認 可 期 間 2007(平成19)年度 〜2011(平成23)年度(5年間)
組 織
氏 名 所 属 氏 名 所 属
(代表者)
平川 新
佐藤大介
蝦名裕一
東北アジア研究センター 教授
東北大学東北アジア研究 センター助教
東北大学東北アジア研究 センター教育研究支援者
天野真志 菊池勇夫
菊池慶子
斎藤善之 大藤 修
東北大学東北アジア研究 センター教育研究支援者 宮城学院女子大学人間文化 学部教授
聖和学園短期大学キャリア 開発総合学科教授
東北学院大学経済学部教授 東北大学大学院文学研究科 教授
研 究 モニター
氏 名 所 属
1 千葉正樹
2 菅野正道
3 籠橋俊光
尚絅学院大学 仙台市史編さん室 東北歴史博物館
外部評価会の実施 (中間):2009年9月 日
参加者:研究組織2名、モニター3名
研 究 経 費
(研究支援者、RAなどの配置)教育研究支援者1名(蝦名)
(研究スペース配分など)316研究室
(その他の主たる外部資金)
科学研究費補助金ほか政府関係資金〔金額 500万円〕
運営費交付金(個人研究費)
ユニットの 目標・目的
本ユニットの目的は、主に宮城県内に残されている歴史資料(古文書、古 美術品、民具及び生活用具など)を、行政および地域住民と協同して、災害 やその他の事情による散逸・消滅の危機から保全することである。宮城県では、
将来高い確率で宮城県沖地震が発生することが予想されており、防災対策と して歴史資料を保全する活動が不可欠である。
日本においては、多くの歴史資料が個人宅などで未整理のまま保管されて いる。これらは災害に加え、所蔵者の事情や社会環境の変化などで瞬時に失 われることもある。このような歴史資料を将来にわたって保全するとともに、
歴史研究や地域文化の振興に活用できるような、実践的な地域資料保全学の 構築を目指している。
研究の目的と 本年度の成果
ならびに 研究成果の 重要性の概要
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、
本研究ユニットの活動対象地域となったかつての仙台藩領である宮城県全域 と岩手県南部に広範な被害が及んだ。本研究ユニットでは、NPO法人宮城歴 史資料保全ネットワークと協同で、被災直後から歴史資料レスキューに取り 組んだ。被災直後の一ヶ月間はガソリン不足で被災地に赴いての活動が出来 なかったが、今回の震災以前からユニットで歴史資料保全活動を実施してき た所蔵者、自治体関係者、地元郷土史サークルと連絡を取り合い、500件を 越える被災歴史資料の情報を入手した。
4月以降は、宮城県など被災各地の教育委員会、文化庁が組織した東日本 大震災における被災文化財等救援事業(文化財レスキュー)と協力関係を持 ちながら被災地での歴史資料保全活動を展開した。主として個人が所蔵する 未指定の歴史資料を被災地から搬出し、津波で海水を浴びた紙史料への乾燥 や応急処置を進めた。11ヶ月間に87回の現地調査を行い、44件の歴史資料 を搬出することが出来た。一連の活動については、報道や仙台市博物館での 展示で広く紹介し、活動を秘録腐朽することが出来た。
一連の活動の中では、震災以前に保全活動を実施した古文書が、震災によ り消滅するという事態も起こった。しかし、震災以前の活動でデジタルデー タにより文字記録としての情報は保全されていた。また、震災以前から地元 と構築してきた交流関係が、震災後の情報収集や被災地の活動において極め て有効に機能することも明らかになった。ユニットの活動理念である「災害
「前」の歴史資料保全活動」が、新たな歴史資料の防災対策と継承に大きな意 義を持つことが証明された。
ユニットの成果を公表するURL
東北アジア 地域研究 としての意義
東北アジア地域研究としての位置づけが自覚的か〔 はい 〕
〈位置づけの内容〉
今回震災の被害を受けた宮城県や岩手県の歴史資料は、多くが個人宅で 未整理のまま保存されてきた。震災は、それ以前から進んでいた過疎化や 世代交代などにより急速に進みつつあった歴史資料の散逸という事態を急 加速させることになった。このような観点から、歴史資料を保全するため の新たな学問体系を、実践に基づき提起することが喫緊の課題である。
また、当地域は、特に16世紀から現代にかけて、ロシアや朝鮮半島・中国 大陸など東アジア地域とのの政治・経済・社会的関係が特に密接な地域で あった。したがって、宮城県内の地方文書を調査することは、当該時期の 日本の地域史を明らかにするだけにとどまらず、同時期の日ロ・日中関係 を初めとする対外関係に関する新資料を発見する可能性もあり、東北アジ ア地域の歴史を日本の一地域から考えていく重要なアプローチとして位置 づけている。
東北アジア地域を対象とする研究か〔 はい 〕
〈対象とした国・地域など〉
本事業で対象としているのは現在の宮城県および岩手県南が中心である。
当該地域は19世紀初頭の蝦夷地をめぐる政治情勢の中でロシアとの接触を 最初に行った地域の一つであり、この地域の歴史資料を分析することによっ
東北アジア 地域研究 としての意義
がある。このほか、中近世から近現代にかけての在地の資料には、中近世 以降の蝦夷地や北方民族との交流に関する史料や、19世紀末から20世紀 中頃における北太平洋と関連した生業活動の実態といった、東北アジア地 域との関わりを示す歴史資料も多く確認されている。これらの資料を対象 とする本研究は、東北アジア研究の一環として位置づけることが出来る。
東北アジア地域研究としての意義・特徴をアピールしてください
本事業では、主に宮城県内における歴史資料を調査することによって、災 害などに備えた資料保全活動を展開している。宮城県では30年以内に99パー セントの確率で発生すると言われていた宮城県沖地震を念頭に置いて各種の 活動がおこなわれている。このような活動は、昨年から今年にかけて日本列 島各地で発生した地震や津波災害からも明らかなように、災害に直面する日 本列島各地において不可欠な文化財の防災対策である。今後は東北アジア地 域においても同様の対応が必要となってくると考えられる。
本ユニットの活動の中心は宮城県内であるが、これまで行ってきた活動の 内容は、個別のケースに応じて多様な対応をとっている。各種の経験を蓄積 するとともに、普遍的な原則に基づく調査モデルを提示することで議論の活 性化をうながしているところである。
また、特に18世紀以降の宮城県の地域史は、ロシアや朝鮮、中国大陸な どとの密接な関わりの中で展開していた。幕藩体制改革にともなう儒学の導 入と新たな政治体制の模索、蝦夷地情勢をめぐるロシアとの接触、日清・日 露戦争への地域住民の従軍、戦後植民地経営への資金・労働力を通じた関わ りなど、多面的な問題を含んでいる。これらの問題について考察しうるよう な歴史資料の所在について、本年度の活動でも数多く確認するができた。こ れらの歴史資料は、中近世から近現代にかけて、日本と深い関わりを有した 東北アジア地域の歴史を考える上で新たな視点を提起する可能性があり、そ の点からも本ユニットによる研究活動は重要なものだといえる。
新 規 性
新規性の有無〔 有 〕
〈新規性の内容〉
災害「前」に歴史資料の所在を把握し、記録化を進めるという活動理念と、
それに基づく一日型での悉皆調査、デジタルデータによる記録化は、地域 の歴史資料を保全するための新たな方法論である。
従来、地域に遺されてきた歴史資料の災害対応は、発生「後」に被災し た対象をレスキューする活動が主なものであった。しかし、一つの地域で 歴史資料の所在が悉皆的に把握されている地域は、宮城県も含めほとんど ない。本ユニットでは、2003年に発生した宮城県での北部地震において、
文化財の所在自体をはあくするのにてまどり、多くの歴史資料を失った経 験から、上記の理念と方法に基づく活動実績を積み重ねてきた。
東日本大震災の歴史資料レスキュー活動では、事前に撮影されたデジタ ルデータにより原本が失われた古文書の内容保全を行うことができた。そ れ以上に、地域との密接な関係が、被災地での調査や、災害を受けた個人 所蔵の歴史資料を保全するうえで決定的な役割を果たすことがあきらかに なった。