BrownとHalmosの手法[3]により次の結果が示せる.
Theorem 3.17 ([25])f, g∈L∞とする. このときHfHg−HgHf = 0となる必要十分条件は,同 時に0とはならないあるa, b∈Cが存在して,af+bg∈H∞ が成立することである.
Proof. f =P∞
k=−∞fkzk,g=P∞
l=−∞glzkをf, gのFourier級数とする. Anm=〈HfHgzm, zn〉 (n, m≥0)と置くとき
Anm = 〈Hgzm, Hf∗zn〉
=
* (I−P)
∞
X
l=−∞
glzl+m,(I−P)
∞
X
k=−∞
fkzk+n +
=
* X
l+m<0
glzl+m, X
k+n<0
fkzk+n +
= X
k+n<0
gk−m+nfk
= X
k≥0
g−k−m−1f−k−n−1
= f−n−1g−m−1+X
k≥1
g−k−m−1f−k−n−1
= f−n−1g−m−1+An+1,m+1 (n, m≥0) 同様にしてBnm=〈HgHfzm, zn〉と置くと
Bnm=g−n−1f−m−1+Bn+1,m+1 (n, m≥0)
と な る. HfHg−HgHf = 0 と す る とAnm = Bnm (n, m ≥ 0)で あ る か らf−n−1g−m−1 = g−n−1f−m−1 (n, m≥0). f ∈H∞のときは(a, b) = (1,0)とすればよいからf /∈H∞とする. こ のときあるn0≥0が存在してf−n0−1̸= 0となるから
g−m−1=g−n0−1
f−n0−1
f−m−1 (m≥0)
である. よってλ=f−n−1/f−n0−1とおくとg−λf∈H∞となる. 逆は明らか. ✷ Corollary 3.18 ([25])f ∈L∞とするときHankel作用素Hfが正規作用素となる必要十分条件 はある絶対値が1か0の定数aが存在してf+af∗∈H∞となることである. したがってnormal Hankel作用素はHermitian Hankel作用素のスカラー倍である.
Proof. (→)f ∈H∞⇔f∗∈H∞であるからf, f∗∈H∞の時はa= 0とすれば良い. したがっ てf, f∗∈/ H∞とする. Theorem 3.18よりあるa∈Cが存在してf+af∗ ∈H∞となる. よって
∥Hf∥=|a|∥Hf∗∥であるからProposition 1.11 より|a|= 1がわかる. よってa=−eiθ として,さ らにF =e−i2θf と置くとF∗−F ∈H∞であるからHFはHermitianでありHf =a1/2HFとな
る. 逆は明らかである. ✷
Theorem 3.17と関連して次の結果が成立する.
Theorem 3.19 f, g∈L∞とする. この時以下は同値である. (1) ([Hf, Hg] =)HfHg−HgHfがコンパクト作用素.
(2)∥Fz∥=∥(Hfkz)⊗(Hg∗kz)−(Hgkz)⊗(Hf∗kz)∥ →0 (z→T).
(3)任意のm∈M(H∞+C)に対して次のどれかが成り立つ. (a)f|supp m∈H∞|supp m かつg|supp m∈H∞|supp m. (b)f∗|supp m∈H∞|supp mかつg∗|supp m∈H∞|supp m. (c)同時には0にならないa, b∈Cが存在して,
(af+bg)|supp m∈H∞|supp mかつ(af+bg)∗|supp m∈H∞|supp m. さらにf, g∈H∞であるとき上のは次とも同値である.
(4)H∞[f, g]∩H∞[f∗, g∗]∩ T
(a,b)̸=(0,0)
H∞[af+bg,(af+bg)∗]⊆H∞+C.
Proof. (1)→(2) Proposition 1.12(2)とLemma 1.24, 3.2によって
°°HfHg−HgHf−Tϕ∗z(HfHg−HgHf)Tϕz°
°
=°
°Hf¡
I−TϕzTϕ∗z¢
Hg−Hg¡
I−TϕzTϕ∗z¢ Hf
°
°
=∥Hf(kz⊗kz)Hg−Hg(kz⊗kz)Hf∥
=°
°(Hfkz)⊗¡ Hg∗kz
¢−(Hgkz)⊗¡ Hf∗kz
¢°
°
→0 (z→T) (2)→(1)任意のu, v∈H∞に対して
〈(HfHg−HgHf)u, v〉=〈Hgu,Hf∗v〉 − 〈Hfu,Hg∗v〉
= Z
D
[∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)− ∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)] log 1
|z|dA(z)
= Z
|z|>R
+ Z
|z|≤R
=IR+IIR
と置く. ただしR∈(1/2,1)とする. また二番目の等式はLittlewood-Paleyの公式による. claim 1. あるH2上のコンパクト作用素KRが存在して,
IIR=〈KRu, v〉. Proof of claim 1. Theorem 3.9 claim 1と同様にして示せる. claim 2. 任意のl >2に対してあるC >0が存在して
|IR| ≤C sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l∥u∥2∥v∥2.
Proof of claim 2. Proposition 2.9より, 2< l <3に対してr∈(1,2), a > 0, Ka, Nl >0 が存在 して
¯
¯
¯
¯
½
w∈Iz:B2δ(z)(u, v)(w)< a2Nl∥Fz∥(l−1)/l inf
w∈Iz
Λr(u)(w) inf
w∈Iz
Λr(v)(w)
¾¯
¯
¯
¯≥Ka|Iz|
が任意の1/2<|z|<1, u, v∈H∞に対して成立する. R∈(1/2,1)を固定する. w∈Tに対して ρ(w) = max
(
γ:Bγ(u, v)(w)≤a2Nl sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/lΛru(w)Λrv(w) )
と置くと Z
T
Bρ(w)(u, v)(w)dσ(w) ≤ a2Nl sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l Z
T
Λru(w)Λrv(w)dσ(w)
≤ a2Nl sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l∥Λru∥2∥Λrv∥2
となる. Hardy-Littlewood maximal functionはLp (p ∈ (1,∞))有界である (cf.[8, p24]) から 2/r∈(1,2)に考慮すると,あるAr>0が存在して
∥Λru∥2=∥M(|u|r)1/r∥2=∥M(|u|r)∥1/r2/r≤Ar(∥|u|r∥2/r)1/r=Ar∥u∥2 となる.よってさらにあるA′r>0が存在して
Z
T
Bρ(w)(u, v)(w)dσ(w)≤a2NlArA′r sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l∥u∥2∥v∥2 (3.9) となる. 一方χwをΓw,ρ(w)の特性関数と置くと,
Z
T
Bρ(w)(u, v)(w)dσ(w)
= Z
T
Z
Γw,ρ(w)|∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)− ∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)|dA(z)dσ(w)
≥ Z
T
Z
|z|>R
χw(z)|∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)− ∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)|dA(z)dσ(w)
Ez = {w∈Iz:ρ(w)≥2(1− |z|)}と置くとProposition 2.6より任意のR < |z| < 1に対して
|Ez| ≥Ka|Iz|となる. 今w∈Ezに対してz∈Γw,ρ(w)である.よって Z
T
Bρ(w)(u, v)(w)dσ(w)
≥ Z
|z|>R|Ez| |∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)− ∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)|dA(z)
≥Ka
Z
|z|>R|∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)− ∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)|(1− |z|)dA(z)
≥Ka
Z
|z|>R|∇(Hfu)· ∇(Hg∗v)− ∇(Hgu)· ∇(Hf∗v)|log 1
|z|dA(z)
≥Ka|IR|
(3.10)
よって(3.9)と(3.10)とをあわせて
|IR| ≤C sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l∥u∥2∥v∥2. を得る.
claim 1とclaim 2を合わせると,任意のu, v∈H∞に対して
|〈(HfHg−HgHf−KR)v, u〉| ≤C sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l∥u∥2∥v∥2. であるから仮定(2)より
∥HfHg−HgHf−KR∥ ≤ C sup
|z|>R∥Fz∥(l−1)/l
→ 0 (R→1) がえられる. よってHfHg−HgHfはコンパクト作用素である.
(2)↔(3) (→)m∈M(H∞+C)を任意に固定する. CarlesonのCorona定理よりD内のnet{zα} が存在して, zα→mとなる. もしlim infzα→m∥Hfkzα∥2= 0かつlim infzα→m∥Hf∗kzα∥2= 0と するとf|supp m∈H∞|supp mかつf∗|supp m∈H∞|supp mとなるから(a, b) = (1,0)とすれば(3)の (c)が成立する. よってlim infzα→m∥Hfkzα∥2 ≥c >0 またはlim infzα→m∥Hf∗kzα∥2 ≥c >0と する. lim infzα→m∥Hfkzα∥2≥c >0のとき,λzα=〈Hgkzα, Hfkzα〉.
∥Hfkzα∥2 と置くと|λzα| ≤
∥g∥∞/cであるから,ある定数aに対してλzα →a(zα→m)として良い. Hfkzα⊥Hg−λzαfkzαで ることを考慮すれば
∥Hfkzα∥2°
°Hg−af∗ kzα
°
°
2+∥Hg−afkzα∥2°
°Hf∗kzα
°
°
2
≤ ∥Hfkzα∥2n°
°
°Hg−λ∗ zαfkzα
°
°
°+°
°
°H(λ∗
zα−a)fkzα
°
°
° o2
+n°
°
°Hg−λzαfkzα
°
°
°+°
°
°H(λ
zα−a)fkzα
°
°
° o2
°°Hf∗kzα
°
°
2
≤2∥Hfkzα∥2
½°
°
°Hg−λ∗ zαfkzα
°
°
°
2
+|λzα−a|2∥f∥2
¾
+ 2
½°
°
°Hg−λzαfkzα
°
°
°
2
+|λzα−a|2∥f∥2
¾
°°Hf∗kzα
°
°
2
≤C∥Fzα∥2+C′|λzα−a|2 (Lemma 2.8より)
→0 (zα→m) ここでC, C′はzαに依らない定数である.
よって
°
°
°Hg−af∗ kzα
°
°
°→0かつ∥Hg−afkzα∥°
°
°Hf∗kzα
°
°
°→0 (zα→m). すなわちLemma 1.20を 用いると
(g−af)∗|supp m∈H∞|supp mかつ(g−af)|supp m∈H∞|supp m (3.11) または
(g−af)∗|supp m∈H∞|supp mかつf∗|supp m∈H∞|supp m (3.12) である.よって(3.11)の場合は(c)が成立する. また(3.12)は
f∗|supp m∈H∞|supp mかつg∗|supp m∈H∞|supp m
と同値であるから(b)が成立する. lim infzα→m∥Hf∗kzα∥2≥c >0の時は上と同様に計算を行えば (3.12)の代わりに
(g−af)|supp m∈H∞|supp mかつf|supp m∈H∞|supp m
が得られて今度はやはり(a)が成立することがわかる.
(←) (2)が成立しないとする. このときあるδ >0とあるnet{zα}でzα→mなるものが存在 して, lim supzα→m∥Fzα∥ ≥δ とすることができる. ところが任意のa∈Cに対して
∥Fzα∥ ≤ ∥Hfkzα∥°
°Hg+af∗ kzα
°
°+∥Hg+afkzα∥°
°Hf∗kzα
°
°
であるから(3)のどの条件でも∥Fzα∥ →0 (zα→m)となり矛盾. (3)↔(4) f, g∈H∞とする.
(→) (3)よりm ∈ M(H∞+C)はH∞[f, g]またはH∞[f∗, g∗]上でmultiplicativeであるか または, ある(a, b) ̸= (0,0) が存在してH∞[af +bg]上でmultiplicativeとなる. よってmは H∞[f, g]∩H∞[f∗, g∗]∩T
(a,b)̸=(0,0)H∞[af +bg,(af+bg)∗]上でmultiplicativeである. よって M(H∞+C)⊆M
H∞[f, g]∩H∞[f∗, g∗]∩ \
(a,b)̸=(0,0)
H∞[af+bg,(af+bg)∗]
が成立する. したがってChang-Marshallの定理より(4)が得られる. (←)明らかに
\
(a,b)̸=(0,0)
H∞[af+bg,(af+bg)∗] = \
a̸=0
H∞[f+ag,(f+ag)∗]∩H∞[g, g∗]∩H∞[f, f∗]
である. 仮定とSarasonの結果(Lemma 1.23)より M(H∞+C)⊆M
H∞[f, g]∩H∞[f∗, g∗]∩ \
(a,b)̸=(0,0)
H∞[af+bg,(af+bg)∗]
⊆M(H∞[f, f∗])∪M(H∞[g, g∗])∪M(H∞[f, g])∪M(H∞[f∗, g∗])
∪
[
a̸=0
M(H∞[f+ag,(f +ag)∗])
∼
よってm∈M(H∞+C)が(最右辺の)最初の四つの集合のどれかに含まれる場合は(3)のいずれ かが成り立つことは容易に確かめられる. よって
m∈
[
a̸=0
M(H∞[f +ag,(f+ag)∗])
∼
と仮定する. このとき
m∈
[
|a|≤1
M(H∞[f+ag,(f+ag)∗])
∼
として一般性を失わない. 任意にεを与える. この時, 閉単位円板を直径がεであるような有限個 の円板{Dj}nj=1で覆うことができる.
m∈
n
[
j=1
{M(H∞[f +ajg,(f+ajg)∗] :aj ∈Dj}
∼
よりある直径がεの円板Dに対して
m∈ {M(H∞[f+ag,(f+ag)∗]) :a∈D}∼
となる. よってあるnet mα ∈ M(H∞[f +aαg,(f+aαg)∗]), aα ∈D に対してmα → mとな る. すなわち(f +aαg)|supp mα ∈ H∞|supp mα かつ(f +aαg)∗|supp mα ∈ H∞|supp mαであるが f, g ∈ H∞よりある定数cα, c′αに対して(f +aαg)|supp mα = cα,(f +aαg)∗|supp mα = c′αとな る. このときある定数M が存在して|cα|,|c′α| ≤M が任意のαについて成立する. 今度は閉円板 {|z| ≤M}を直径がεの有限個の円板{Bj}mj=1で覆えば
m∈
m
[
j,k=1
{mα: (f +aαg)|supp mα =cα∈Bj,(f+aαg)|supp mα=c′α∈Bk}
∼
である. よってnetmαで,対応するaα, cαがdiam{aα},diam{cα},diam{c′α} ≤εなるものが存在 すると仮定してよい. またsubnetを取ることによりあるa∈Cに対してaα→aとして良い.
ところでsupp m⊆[∪supp mα]∼ である. なぜなら[7, p39]より
M(H∞|∪supp mα) ={ϕ∈M(H∞) :supp ϕ⊆[∪supp mα]∼}
であるから任意のαに対してmα ∈ M(H∞|∪supp mα) となる. ところが mα → mより, m ∈ M(H∞|∪supp mα)だからである.
x, y∈ ∪supp mαとするとα, βが存在してx∈supp mα, y∈supp mβとなる. よって
|(f+ag)(x)−(f+ag)(y)| ≤ |(f+ag)(x)−(f+aαg)(x)|+|(f +aαg)(x)−(f+aβg)(y)| +|(f+aβg)(y)−(f +ag)(y)|
≤ |a−aα|∥g∥+|cα−cβ|+|aβ−a|∥g∥
≤4ε∥g∥
よって(f+ag)|supp mは定数. 同様に(f+ag)∗|supp mが定数であることもも示せるから(3)の(c)
が成り立つ. ✷
Remark 3.20 もしf|supp m ∈H∞|supp mがf∗|supp m ∈H∞|supp mと同値であるならば(3) の 条件は著しく簡単になる(さらにTheorem 3.17とも非常に整合性のとれた形が得られる). しかし 一般にはf|supp m∈H∞|supp mとf∗|supp m∈H∞|supp mは同値とはならない. このような例はセ クション5で構成する.
この定理の系としてHankel作用素が本質的正規作用素(essentially normal operator)になるた めの必要十分条件が得られる. 作用素Aが本質的正規であるとはA∗A−AA∗がコンパクト作用 素になることを言う. 一般の本質的正規作用素については BDF (Brown-Douglas-Fillmore) 理論
([2])により多くの興味ある結果が得られている.
Corollary 3.21 (本質的正規Hankel作用素の特徴づけ) f ∈L∞とするとき次は同値である. (1)Hfはessentially normal作用素.
(2)∥Hfkz⊗Hfkz−Hf∗kz⊗Hf∗kz∥ →0 (z→T)
(3)任意のm∈M(H∞+C)に対して,ある絶対値が1か0であるa∈Cが存在して (f+af∗)|supp m∈H∞|supp mかつ(af+f∗)|supp m∈H∞|supp mとなる. さらにf ∈H∞であるならば次も同値である.
(4)T
|a|=1,0H∞[f +af∗, af+f∗]⊆H∞+C.
Proof. (1)↔(3) Hf がessentially normalのときTheorem 3.19の(3)の条件(a), (b)はとも にf|supp m かつ f∗|supp m ∈ H∞|supp m となるがこれは条件(3)でa = 0の場合である. 次に Theorem 3.19の(3)の条件(c)は同時には0にならないa, b∈Cが存在して
(af+bf∗)|supp m∈H∞|supp mかつ(bf+af∗)|supp m∈H∞|supp m
となる. ここで|a| ̸=|b|とするとこれよりf|supp m かつf∗|supp m∈H∞|supp m が得られるから (2)を満たす. |a|=|b|のときもあきらかに(3)を満たす. 逆は明らかである.
Theorem 3.19を用いればその他も容易である. ✷
Remark 1.9の作用素Hf についてはcommutatorを考えることはできないが次の結果が成立する.
そこで
S=©
(a, b)∈C×C: (a̸= 0かつb̸= 0かつarga= argb) または(a= 0かつb̸= 0)または(a̸= 0かつb= 0)ª と置く.
Theorem 3.22 f, g∈L∞とする. この時H∗fHg−H∗gHf = 0となる必要十分条件はある(a, b)∈ S が存在してaf+bg∈H∞となることである.
Theorem 3.23 f, g∈L∞とする. この時,以下は同値である. (1)H∗fHg− H∗gHfがコンパクト作用素.
(2)∥(Hfkz)⊗(Hgkz)−(Hgkz)⊗(Hfkz)∥ →0 (z→T).
(3)任意のm∈M(H∞+C)に対して(a, b)∈ Sが存在して, (af+bg)|supp m∈H∞|supp m. さらにf, g∈H∞のときは次も同値である.
(4) T
(a,b)∈S
H∞[af+bg]⊆H∞+C.
Remark 3.24 最後に本論文と関係するその他の結果を簡単に述べておく.
Yoshino [24]はふたつのHankel作用素の積がまたHankel作用素になるための条件を特徴付け
た. これに関連してXia-Zheng [23]は二つのHankel作用素の積がHankel作用素とコンパクト作 用素の摂動で表される必要十分条件を得ている. またXia-Zheng [21], [22]は3つのHankel作用素 の積のコンパクト性を特徴付けている.
またAxler-chang-Sarason [1]は二つのToeplitz作用素のsemi-commutatorが有限階作用素にな る必要十分条件を特徴付けている([11], [18]も参照)が, ふたつのToeplitz作用素のcommutator, analytic Toeplitz作用素とHankel作用素の積,ふたつのHankel作用素のcommutator,これらが有 限階作用素に成るための条件は知られていないようである(cf.Theorem 3.8, Theorem 3.9, Theorem 3.17, Theorem 3.19).
A 補足
この節ではまず, Remark 3.20で述べたf|supp m∈H∞|supp mとf∗|supp m∈H∞|supp mが一般 には同値とはならない例を構成する.
Definition A.1 (ファイバー) α∈TとするときM(H∞)の部分集合Mαを Mα={m∈M(H∞) :m(χ1) =α}
と定義してα上のM(H∞)のファイバー(fiber)と呼ぶ. ここでχ1はT上の関数でχ1(w) =wで 定義されるものである. MαはM(H∞)の閉集合である. さらにMα(L∞) =Mα∩M(L∞)と定義 する.
Lemma A.2 f ∈H∞,α∈Tとする. {zn}をαに収束するD内の点列でζ= limzn→αf(zn)な るものとするとき,Mαに属するmが存在してm(f) =ζとなる.
Proof. I:={g∈H∞: limzn→αg(zn) = 0}とするとIはH∞のイデアルであるから, ある極大 イデアルJに含まれる. 一般の単位元を持つ可換Banach環に対して,極大イデアルと零でない複 素準同型の核(kernel)は1対1に対応するから, あるm∈M(H∞)が存在してJ = kermとなる. 従ってχ1−α, f−ζ∈Iであるから,m(χ1) =αかつm(f) =ζとなる. ✷ Lemma A.3 f ∈H∞とするときfがMα上で定数となる必要十分条件は,f がD∪ {α}まで連 続に拡張できることである.
Proof. (←)fがD∪ {α}まで連続に拡張できるとすると,あるζが存在して,αに収束するD内 の任意の点列{zn}に対してlimnf(zn) =ζとなる. f−ζを考えることによりζ= 0として良い. h(w) = (1 +αw)/2とするとh(α) = 1かつ[D]∼\ {α}上で|h|<1となる. f(α) = 0であるから, n→ ∞のとき, ノルム収束の意味で(1−hn)f →f となる. いま任意にm∈Mαを固定すると, m(h) = 1であるからm[(1−hn)f] = 0となる. したがってm(f) = 0. よってf はMαで恒等的 に0である.
(→)もしf がD∪ {α}まで連続に拡張できないとする. このときLemma A.2よりfがMαで定
数とならないことが導かれ矛盾である. ✷
Lemma A.4 α∈Tとする. このときmがファイバーMαに含まれるならば,supp mはMα(L∞) の部分集合である.
Proof. h(z)をLemma A.3 の証明の中で定義したものとする. Lemmas A.2とA.3よりMα上 でh= 1かつM(H∞)\Mα上で|h|<1となる. よって任意のm∈Mαに対して,その表現測度 をµmで表すことにすると,n= 1,2,3, . . . に対して
Z
M(L∞)
hndµm=m(hn) =m(h)n = 1
となる. hn →χMα (n→ ∞)かつ任意のn= 1,2, . . . に対して|hn| ≤1であるから, Lebesgueの 収束定理より
R
M(L∞)∩Mαdµm= 1. よってsupp m⊆M(L∞)∩Mα=Mα(L∞)である. ✷
さらにM(L∞)は (関数環)H∞ のSilov境界であることは良く知られている. すなわち任意の f ∈H∞に対してsupm∈S|f(m)|=∥f∥∞ となるようなM(H∞)の閉集合Sのうち最小のものが M(L∞)である. 以上を踏まえて目的の例を構成する. 次の例は昨年の研究集会において新潟大の 泉池敬司氏に教えていただいたものである
f|supp m∈H∞|supp mとf∗|supp m∈H∞|supp mが同値とはならない例 z∈Dに対して
f(z) = exp µz+i
z−i
¶
と定義すると,f ∈H∞,|f|= 1 a.e. onTでありf(z)はDで零点を持たない. 虚軸に沿ってzをi に近づけるとき,f(z)→0であるからLemma A.2によりあるm∈Miが存在してm(f) = 0とな る.
claim. M(L∞)上で|f|= 1である.
Proof of claim. あ るM(H∞)の 開 集 合U に 対 し てU 上 で|f| < 1で あ る と す る. も しU ∩ M(L∞)̸=∅とすると, M(L∞)は関数環H∞のSilov境界であるから, あるg∈H∞が存在して supm∈Uc|g|<∥g∥∞となる. よってM(H∞)上で|f g|<∥g∥∞となる. したがって
∥g∥∞> sup
m∈M(H∞)|(f g)(m)|=∥f g∥∞=∥g∥∞
となるがこれは矛盾である. よってclaimが示せた.
いまもしf|supp m∈H∞|supp mとすると,f ∈H∞であるからf|supp mは定数となるが,m(f) = R
supp mf dµm = 0よりf|supp m = 0となる. ところがLemma A.4 よりsupp m ⊂ Mi(L∞)で あるからこれは矛盾である. よってf|supp m∈/ H∞|supp mである. 一方Lemma A.2とA.3より M−i(H∞)上でf ≡1となり,従ってMi(H∞)上でf∗≡1. よってf∗|supp m= 1∈H∞|supp m.✷
最後にRemark 3.10で述べた例を挙げる. Definition A.5 (Blashke積) Q∞
k=1|ak|が収束するとき,整数p≥0に対して,無限積 B(z) =zp
∞
Y
k=1
· ak
|ak| z−ak
1−akz
¸
は収束して,これをBlaschke積と言う. B(z)はDで有界正則で{ak}を零点に持つ. またほとんど すべてのeiθ∈Tに対して, limr→1B(reiθ) = 1である.
Remark A.6 Q∞
k=1|ak|が収束することは,P∞
k=1(1− |ak|)が収束することと同値である. Proposition A.7 B(z)を零点が{ak}のBlaschke積とする. {ak}の集積点の集合と{1/ak}の 和集合をKとする. このときB(z)はC\Kで広義一様収束する. (したがって,B(z)はC\Kで 正則.)
Proof. K0をC\K内の任意のコンパクト集合とする. このときある定数d >0が存在して,
|1−akz| ≥d, |an−z| ≥d (z∈K0, n= 1,2, . . .)
となるから,
fn(z) = an
|an| z−an
1−anz と置くと,z∈K0のとき
|1−fn(z)|= 1
|an|
¯
¯
¯
¯|an| −|an|2−anz 1−anz
¯
¯
¯
¯= 1− |an|
|an|
¯
¯
¯
¯
1 +|an| 1−anz −1
¯
¯
¯
¯≤1− |an|
|an| µ2
d+ 1
¶ .
したがって,
|1− |fn(z)|| ≤ 1 min|an|
µ2 d+ 1
¶
(1− |an|) (z∈K0)
が得られる. P
n(1− |an|)<∞であるから,P
n(1− |fn(z)|)<∞,従って, Q
nfn(z)はK0で一
様収束する. ✷
TfHg (f ∈H∞)がコンパクト作用素となるような例
f = 0またはg∈H∞+CであるときはTfHgはコンパクト作用素となるが,これ以外でTfHg(f ∈ H∞)がコンパクトになる例をあげる.
b(z)をゼロ点が実軸に沿って1に近づくようなBlaschke積とする. Proposition A.7よりb(z) は (少なくとも) C\[−1,1]で解析的であるからT\ {1}上で|b(z)|= 1となる. よってLemma A.2より, 任意のα∈T\ {1}に対して, Mα上でb= 1となる. また上のclaimと同様にして,あ るm0∈M1が存在して,b|supp m0∈/H∞|supp m0. またf(z) =z−1とすると, Lemma A.2とA.3 により, 任意のm∈M1に対してf|supp m= 0 となる. よってg=bと置けば, Theorem 3.9より,
f, gが求める例となる. ✷
参考文献
[1] S. Axler, S. -Y. A. Chang and D. Sarason,Product of Toeplitz operators, Integral Equations and Operator Theory,1(1978), 285-309.
[2] L. G. Brown, R. G. Douglas and P. A. Fillmore, Unitary equivalence modulo the compact operators and extensions ofC∗-algebras, Proceedings of a Conferen on Operator Theory, P.
A. Fillmore (ed.), Lecture Notes in Math., Vol. 345, Springer-Verlalg, 1973, pp. 58-128.
[3] A. Brown, and P. R. Halmos, Algebraic properties of Toeplitz operators, J. Reine Angew.
Math.,213(1964), 89-102.
[4] S. -Y. A. Chang,A characterization of Douglas subalgebras, Acta Math.,137(1976), 81-89.
[5] R. G. Douglas, Banach algebra techniques in operator theory (second edition), Springer-Verlarg, 1997.
[6] P. L. Duren,Theory of Hp spaces, Dover Publication Inc., 2000.
[7] T. Gamelin,Uniform algebras, Printice Hall Inc., 1984.
[8] J. Garnett,Bounded Analytic Functions, Academic Press, 1981.
[9] P. Gorkin and R. Mortini, Interpolating Blaschke products and factorization in Douglas algebras, Michigan Math. J., 38(1991) 147-160.
[10] P. Gorkin and D. Zheng,Essentially commuting Toeplitz operators, Pacific Journal of Math., 190(1999), 87-109.
[11] C. Gu, Separation for kernels of Hankel operators, Proc. Amer. Math. Soc., 129 (2000), 2353-2358.
[12] K. Hoffman,Banach spaces of analytic functions, Prentice Hall Inc., 1962.
[13] K. Hoffman,Bounded analytic function and Gleason parts, Ann. of Math.,86(1967), 74-111.
[14] L. Kronecker,Zur Theorie der Elimination einer Variablean aus zwi algebraischen Gleichun-gen, Montasber. Konigl. Preussischen Acad Wies, Berlin, 1881, pp. 535-600.
[15] J. Marchikiewicz and A. Zygmund,A theorem of Lusin, Duke Math. J.4(1938), 473-485.
[16] D. E. Marshall,Subalgebtas ofL∞ containingH∞, Acta Math.,137(1976), 91-98.
[17] N. K. Nikol’skii,Treatise on shift operator, Springer-Verlag, 1986.
[18] D. R. Richman, A new proof of a result about Hankel operators, Integral Equations and Operator Theory,5(1982) 892-900.
[19] D. Sarason,Functions of vanishing mean oscillation, Trans. Amer. Math. Soc.,207(1975), 391-405.
[20] A. Volberg, Two remarks concerning the theorem of S. Axler, S. -Y. A Chang, and D.
Sarason, J. Operator Theory,8(1982), 209-218.