以上要するに、本論文は単一の畳み込みニューラルネットワークにより、背景クラスの特殊性に 着目した新規な出力関数を用いることで、複数種類の地物抽出を同時かつ高精度に実現できること を示したもので、画像工学分野において工業上、工学上寄与するところが少なくない。よって、本 論文の著者は博士(工学)の学位を受ける資格があるものと認める。

- 78 -

内容の要旨

報告番号 甲 第 4428 号 氏 名 吉村 剛 主 論 文 題 目 :

A Study on Faults and Error Propagation in the Linux Operating System

(Linux オペレーティングシステムにおけるフォールトおよびエラー伝播に関する研究 )

オペレーティングシステムはアプリケーションの信頼性にとって重要である.オペレーティングシステ

ムにおいてフェイラが発生すると全てのアプリケーションのフェイラにつながってしまう.しかし,

Android

スマートフォンやクラウド基盤,航空管制システムなどの製品で利用されている

Linux

においても,近年の 調査で

NULL

ポインタ参照のような単純なバグをいまだ発生させていることが明らかになっている.オペ レーティングシステムにおけるフェイラを回避する手法の研究は,フォールトの検知とフェイラの回復の方 向性に分けられる.フォールトの検知はコードの静的検査やテストなどを利用して運用前に開発者が可能な 限りフォールトを修正する手法である.フェイラの回復はソフトウェア若化などを利用して,運用前に修正 されなかったフォールトが引き起こすフェイラを回避することや被害を最小限にする手法となる.

フォールトの検知手法やフェイラの回復手法の進展に向けて,本論文は Linux

を題材としてフォールト およびエラーの詳細な調査を行う.これまでフォールトの検知やフェイラの回復手法の改良は様々な研究で 取り組まれている.しかし,既存研究はフォールトおよびエラー伝播の全体的な傾向に基づかず,オペレー ティングシステムの開発者たちの経験や直感に基づく場当たり的な対策となってしまっている.例えば,

NULL

ポインタのチェック忘れをするフォールトが多いことを開発者が認識した結果,

NULL

ポインタの チェック忘れを検査する静的解析が開発されている.フェイラ回復手法はカーネル全体が常に単一エラーに よって破壊されることを前提としており,悲観的な方法となっている.

Linux

におけるフォールトを調査するため,本論文は

37

万件以上に渡る

Linux

のパッチに含まれる,

英語で記述されたコードの変更説明文を分析する.パッチに含まれるトピックを抽出するため,自然言語処 理の手法である

Latent Dirichlet Allocation

を利用し,抽出されたトピックに基づきパッチを

66

のクラスタ に分類する.得られたクラスタが先進的なコード検査につながることを示すため,割り込み処理に関するク ラスタの詳細な調査を行い,

160

件の割り込みハンドラの解放処理のフォールトを抽出する.抽出したフォ ールトの知識に基づきコード検査器を開発し,

Linux 4.1

において未発見のフォールト

5

件を発見した.

本論文はさらに Linux

におけるエラー伝播を調査する.エラー伝播の調査において,新しい概念として エラー伝播スコープを導入する.エラー伝播スコープはエラー伝播の距離を示す概念である.本論文では2 つのスコープである,プロセスローカルエラーおよびカーネルグローバルエラーを導入する.プロセスロー カルエラーはカーネル内のプロセスコンテキストに閉じるエラーであり,カーネルグローバルエラーはプロ セスコンテキストを超えて伝播するエラーとなる.本論文は実験において

73%

のエラーがプロセスローカル であり,カーネル内のプロセスコンテキストを超えて伝播しないことを示す.この結果はフェイルしたプロ セスをキルすることで,フェイラから回復する手法の可能性を示している.

本論文の貢献は2つに分かれる.ひとつはフォールトの調査結果により,これまで場当たり的な対策を

とってきたために,見逃されてきたフォールトを検知するコード検査器の開発を支援することである.さら に,オペレーティングシステムにおける軽量な回復手法の可能性を示し,今後の調査や研究における課題を 明らかにする.

- 79 -

論文審査の要旨

報告番号 甲 第 4428 号 氏 名 吉村 剛

論文審査担当者: 主査 慶應義塾大学教授 博士(理学) 河野 健二 副査 慶應義塾大学教授 博士(工学) 高田 眞吾 慶應義塾大学准教授 工学博士 斎藤 博昭 九州工業大学准教授 博士(理学) 光来 健一

学士(工学) ,修士(工学)吉村剛君提出の学位請求論文は, 「

A Study on Faults and Error Propagation in the Linux Operating System

Linux

オペレーティングシステムにおけるフォー ルトおよびエラー伝播に関する研究) 」と題し,全

6

章で構成されている.オペレーティングシス テムはアプリケーションの信頼性にとって重要である.例えばオペレーティングシステムにおいて フェイラが発生すると全てのアプリケーションのフェイラにつながってしまう.しかし,

Android

スマートフォンやクラウド基盤,航空管制システムなどの製品で利用されている

Linux

において も,近年の調査で

NULL

ポインタ参照のような単純なバグをいまだ発生させていることが明らか になっている.そのためフォールトの対策のためにフォールト検査やフェイラ回避の手法がこれま で研究されてきている.しかし,既存手法は開発者の経験則に依存しており,場当たり的な対策と なってしまっている.フォールトの検知手法やフェイラの回復手法の進展に向けて,本論文は

Linux

を題材としてフォールトおよびエラーの詳細な調査を行う.

1

章では,オペレーティングシステムのフェイラ対策の必要性や現状について論じ,本研究 の目的と論文の構成について述べている.

2

章の関連研究では,フォールトの回避やフェイラリカバリによるフェイラ対策を行う既存 手法について述べている.既存手法におけるフォールトやエラー対策では,それらに関する系統的 な調査および分析がなされていないために,経験則に基づく対策となっていることを示している.

3

章では,これまでのフォールトやエラーの調査研究で明らかにされてきたことについて述 べている.フォールトに関する既存の調査では特定のコンポーネントやパターンに対象を限定する 傾向にあり,大規模な調査はなされていないことを示している.

4

章では,

37

万件に渡る

Linux

の修正記録であるパッチに対し,自然言語処理を用いたフ ォールトの調査結果を示している.自然言語処理における

Latent Dirichlet Allocation

という手 法によって抽出されたトピックに基づき,パッチを

66

のクラスタに分類する.さらに,割込み処 理に関するクラスタについて詳細な調査を行い,割込みハンドラの解放処理に関する

160

件のフ ォールトを抽出・分析している.抽出したフォールトから得られた知見に基づきコード検査器を開

発し,

Linux 4.1

において未発見のフォールト

5

件を発見している.

5

章では,エラー伝播の調査のために,新しい概念であるエラー伝播スコープを導入し,プ ロセスローカルエラーおよびカーネルグローバルエラーというスコープを定義している.フォール トインジェクションを用いた調査の結果,

73%

のエラーがプロセスローカルエラーであり,カー ネル内のプロセスコンテキストを超えて伝播しないことを示している.この調査結果を通じて,フ ェイラから回復する手法の可能性と課題について議論している.

6

章では,本論文で得られた成果をまとめており,第

4

章と第

5

章で得られた結果から明 らかとなった,既存のフォールト対策やフェイラリカバリ手法の課題と今後の可能性について述べ ている.

以上,本論文は,オペレーティングシステムの信頼性を向上させるため,既存のフォールトおよ びフェイラ対策手法の今後の進展にとって重要な成果であり,その貢献は工学上寄与するところが 少なくない.よって,本論文の著者は博士(工学)の学位を受ける資格があるものと認める.

- 80 -

Registration

Number

“KOU” No.4429

Name

NAZIRUL AFHAM BIN IDRIS

Thesis Title

T- and O-band Optical Communication Networks Based on Arrayed Waveguide Gratings

Although optical communication networks conventionally utilize the C- and L-bands (1530 nm – 1625 nm), the T-band (1000 nm – 1260 nm) has recently been proposed as a possible wavelength resource through recent developments of quantum dot (QD) tunable lasers for this frequency band. The T-band combined with the relatively developed O-band (1260 nm – 1360 nm) offers more than 79 THz of bandwidth, which is 7 times of the C- and L-bands combined, and would be useful in realizing short-reach wavelength division multiplexing (WDM) networks with high capacity using simple transmission formats. In this study, the scalability of arrayed waveguide grating (AWG), which is a key component in WDM systems, is investigated for application in these bands. Highly scalable AWG configurations as well as large scale WDM systems employed in the T-band are proposed and demonstrated.

Chapter 1 summarizes the development of optical communications technologies in general, and the prospect of T-band optical communications in particular. The research objectives are also stated.

Chapter 2 describes in detail the operating principle of AWGs as well as cyclic AWGs, and summarizes previous works done on improving its performances. The main cause to its scalability limitation is investigated in detail. Calculations for determining the basic parameters in T-band AWG designing are also presented.

Chapter 3 explores the approach of engineering a standalone cyclic AWG with enhanced scalability.

Several techniques are discussed and AWGs are fabricated and evaluated as proof of concepts.

Chapter 4 investigates a WDM access network employed in the T-band using QD lasers, QD semiconductor optical amplifiers (SOAs), and AWGs. Preliminary transmission experiments are presented as a proof of concept, and to confirm the feasibility of T-band communication using QD active devices.

Chapter 5 explores the approach of cascading multiple AWGs in realizing a highly scalable wavelength router able to support the entire T- and O-bands. Transmission and wavelength routing demonstration using QD active devices are presented as a proof concept.

Chapter 6 summarizes the results of this study and discusses unresolved issues as well as future works to be done on realizing T-band optical communications.

- 81 -

In document 慶應義塾大学理工学部研究報告別冊第 80 号 2015( 平成 27) 年度秋学期 博士 ( 工学 ) 博士 ( 理学 ) 学位論文 論文の内容の要旨および論文審査の結果の要旨 慶應義塾大学理工学部 (Page 83-87)

Related documents